諸言語の歴史的変化に対する 数理的取り組み

諸言語の歴史的変化に対する
数理的取り組み
九州大学
村脇 有吾
2015年1月19日 NL研 招待講演@九大医学部百年講堂
日本語の起源、同系語は?
2
日本語の起源、同系語は?
•
•
•
•
•
•
•
•
朝鮮語 [Aston, 1879][金澤, 1910][Martin, 1966]
アルタイ語族 [Miller, 1971]
ノストラ語族 [Starostin, 1989]
ユーラシア語族 [Greenberg, 2000]
オーストロネシア語族 [川本, 1980][Benedict, 1990]
タミル語 (ドラヴィダ語族) [大野, 1980]
レプチャ語 [安田, 1955]
高句麗地名 [新村, 1916]
代表的な文献
必ずしも初出ではない
2
[長田, 2003]
3
[長田, 2003]
3
系統論への
計算的
取り組み
[Gray+, Nature 2003]
4
系統論への
計算的
取り組み
[Gray+, Nature 2003]
[Atkinson, Science 2011]
4
系統論への
計算的
取り組み
[Gray+, Nature 2003]
[Atkinson, Science 2011]
[Bouckaert+, Science 2012]
4
系統論への
計算的
取り組み
[Gray+, Nature 2003]
[Atkinson, Science 2011]
[Bouckaert+, Science 2012]
Taken from
http://www.fos.auckland.ac.nz/~quentinatkinson/
Quentin_Atkinsons_Website/Home.html
4
言語
言語学
考古学
統計・
生物学 機械学習
計算
5
言語
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計算
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言語
言語学
考古学
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_ ,. -‐ ァ´i 、`=一" / i j/∠//
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>'´
//l l `ー─‐イ l/ .l .l l />〈´ __I!, i l
>'´
.l .i li `ー==-"ィ彡l ̄l ̄ >'´  ̄l 二  ̄
l! i i.l
,ィ´
,r ´i ヽl l ト}圭圭三≧彡'ア´  ̄ 7'´i _二ニ─=-ュ.,__ li! i リ
,ィ ´ ̄`丶.l ` 、
l. =l=lゞリ/=―ア´
li
i r´./
`丶、
 ̄ l゙ー'´
/
'ベ丶 `≧ュヘ., ノイ/i
ゝ
ll
l i ヽ. ヘ
`丶、,. リ、
l
il ヽ.,rュ>ュ.l i '´ ,イ l
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li
l l ,'
゙i
',
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ll
li 〉
/
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ヽヾ. __,.ィ'
リ リト、 .l l .O i,リ.
i
l l ○ .l {.
i
リl
゙ゝ,
ノ ノ ヽ.l !
l l!
l
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ll
ヘ
ノ/
i` ー‐= "イ
lュ、', iソ
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ヾ. O .l i
ヽ
i" i
',
ヽ l
ヽ.
i.二三>=──‐-ュ、
i l
ゝ.
l' ,!
ノ
`ー─ァ>'´ ´  ̄,  ̄ ` 、 .i
l
`ゞミ二
l i`ー─ '´ ,.
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i ヽ_|l_ l
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l ', ',
ヽ. _ _ .ノ.
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計算
言語学
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5
今日のおはなし
1.音法則
2.基礎語彙
3.類型論
6
今日のおはなし
1.音法則
比較言語学の伝統的手法
2.基礎語彙
言語年代学 (1950年代~)
Bayes統計の応用 (2000年代~)
3.類型論
系統論への応用は少ない
日本語系統論の最後の希望
6
今日のおはなし
1.音法則
比較言語学の伝統的手法
2.基礎語彙
3.類型論
7
音法則は安心と信頼の枯れた技術
• サンスクリットとラテン語、ギリシア語の共通起
源説と比較言語学のはじまり [Jones, 1786]
• インド・ヨーロッパ語族の系統樹 [Schleicher, 1853]
• Grimmの法則 [Grimm+, 1822] とVernerの法則
[Verner, 1875]
• 青年文法学派 (19世紀後半)
– 音法則の無例外性
(die Ausnahmslosigkeit der Lautgesetze)
• 喉音理論 [Saussure, 1879] のヒッタイト語による実証
[Kuryłowicz, 1927]
8
Source: [List+, 2013]
9
音対応と音変化
伊
西
ある言語ペアが系統関係にある
10
音対応と音変化
伊
latte otto stretto
/latte/ /ɔtto/ /stretto/
西
leche ocho estrecho
/letʃe/ /otʃo/ /estɾetʃo/
ある言語ペアが系統関係にある
⇔ 語彙が偶然や借用で説明できないほど類似
cf. 名前とname, 骨とbone
10
音対応と音変化
伊
latte otto stretto
/latte/ /ɔtto/ /stretto/
西
leche ocho estrecho
/letʃe/ /otʃo/ /estɾetʃo/
ある言語ペアが系統関係にある
⇔ 語彙が偶然や借用で説明できないほど類似
cf. 名前とname, 骨とbone
⇔ 規則的な音対応が存在
10
音対応と音変化
伊
latte otto stretto
/latte/ /ɔtto/ /stretto/
西
leche ocho estrecho
/letʃe/ /otʃo/ /estɾetʃo/
羅
lacte octo stricto
/lakte/ /okto/ /strikto/
ある言語ペアが系統関係にある
⇔ 語彙が偶然や借用で説明できないほど類似
cf. 名前とname, 骨とbone
⇔ 規則的な音対応が存在
10
音対応と音変化
規則的な音変化
kt > tt
伊
latte otto stretto
/latte/ /ɔtto/ /stretto/
西
leche ocho estrecho
/letʃe/ /otʃo/ /estɾetʃo/
羅
lacte octo stricto
/lakte/ /okto/ /strikto/ kt > tʃ
ある言語ペアが系統関係にある
⇔ 語彙が偶然や借用で説明できないほど類似
cf. 名前とname, 骨とbone
⇔ 規則的な音対応が存在
10
祖語の再構はアート
1. 通言語的傾向
– 起こりやすい変化
• 不変化: X > X
• 弱化: p > ɸ > h > Φ (zero), s > h
• 有声音間の有声化: p > b / vocalic _ vocalic
– 起こりにくい変化
• k > a, a > k
• 弱化の反対: h > p
2. 体系の自然さ
–
5母音体系なら/a/の出現頻度は30~40%が普通で、あま
りに少ないと不自然
3. 内的再構
–
交替現象: k ~ g, s ~ z, t ~ d ⇒ *p ~ b
11
祖語の再構手続き
1. 対象の言語群について、語源を共有する語
(同源語, cognate) の候補を収集
– 借用や偶然の一致を排除
2. 規則的な音対応を確立
– 例外を個別に説明
3. 共通祖語を再構
12
確率モデルによる祖語再構 1/2
‘grass’ 19
bubuʔru
…
buburu
bubure
buruburu
bubure
[Bouchard-Côté+, PNAS 2013]
buburu
buuburu
vuluvulu
13
確率モデルによる祖語再構 1/2
‘grass’ 19
bubuʔru
…
buburu
bubure
buruburu
bubure
[Bouchard-Côté+, PNAS 2013]
buburu
buuburu
vuluvulu
各同源語群
の現代語の
語形は所与
13
確率モデルによる祖語再構 1/2
‘grass’ 19
bubuʔru
…
buburu
bubure
buruburu
bubure
[Bouchard-Côté+, PNAS 2013]
buburu
buuburu
vuluvulu
系統樹も
所与!
各同源語群
の現代語の
語形は所与
13
確率モデルによる祖語再構 1/2
祖語の語形
を推定
‘grass’ 19
bubuʔru
…
buburu
bubure
buruburu
bubure
[Bouchard-Côté+, PNAS 2013]
buburu
buuburu
vuluvulu
系統樹も
所与!
各同源語群
の現代語の
語形は所与
13
確率モデルによる祖語再構 1/2
θ
θ
θ
θ
θ
θ
θ
祖語の語形
を推定
‘grass’ 19
bubuʔru
…
buburu
bubure
buruburu
bubure
[Bouchard-Côté+, PNAS 2013]
buburu
buuburu
vuluvulu
系統樹も
所与!
各同源語群
の現代語の
語形は所与
13
確率モデルによる祖語再構 1/2
文字列から文字列への
確率的変換 (transducer)
θ
θ
θ
θ
θ
θ
θ
祖語の語形
を推定
‘grass’ 19
bubuʔru
…
buburu
bubure
buruburu
bubure
[Bouchard-Côté+, PNAS 2013]
buburu
buuburu
vuluvulu
系統樹も
所与!
各同源語群
の現代語の
語形は所与
13
確率モデルによる祖語再構 1/2
文字列から文字列への 潜在変数とパラメータ
確率的変換 (transducer)
⇒ EMで推定
θ
θ
θ
θ
θ
θ
θ
祖語の語形
を推定
‘grass’ 19
bubuʔru
…
buburu
bubure
buruburu
bubure
[Bouchard-Côté+, PNAS 2013]
buburu
buuburu
vuluvulu
系統樹も
所与!
各同源語群
の現代語の
語形は所与
13
確率モデルによる祖語再構 2/2
• オーストロネシア
語族 (659言語)
• 言語学者の再
構した語形にか
なり近い
• 言語に関する新
たな知見は?
[Bouchard-Côté+, PNAS 2013]
14
音法則の限界
• そもそも同源語候補を大量に集めないと始まら
ない
– 日本語と朝鮮語でそれができる可能性は低い
• さかのぼるのは6,000~7,000年が限度?
• 祖語の年代、位置のような連続値は直接推定
できない
15
日本語と朝鮮語の間で
同源語を確立するのは望み薄
• 候補が依然として347ペア [Whitman, 1985] しかないので
量より質で勝負するしかない
– cf. オーストロネシア語族: 同源語群7,708セット、142,661語形
[Bouchard-Côté+, PNAS 2013]
• そのほとんどが同源語と認めがたい
[Vovin, 2010]
16
今日のおはなし
1.音法則
2.基礎語彙
言語年代学 (1950年代~)
Bayes統計の応用 (2000年代~)
3.類型論
17
語彙の2値ベクトル化
水
大きい
英語
water
big
ドイツ語
Wasser
gross
ロシア語
вода
большой великий
フランス語
eau
grand
イタリア語
acqua
grande
18
語彙の2値ベクトル化
同源語群 水
大きい
英語
water
big
ドイツ語
Wasser
gross
ロシア語
вода
большой великий
フランス語
eau
grand
イタリア語
acqua
grande
18
語彙の2値ベクトル化
大きい
同源語群 水
1
3
big
water
英語
4
gross
Wasser
ドイツ語
5 большой 6 великий
вода
ロシア語
2
7 grand
eau
フランス語
イタリア語
acqua
grande
{1, 3}
{1, 4}
{1, 5, 6}
{2, 7}
{2, 7}
18
語彙の2値ベクトル化
大きい
同源語群 水
1
3
big
water
英語
4
gross
Wasser
ドイツ語
5 большой 6 великий
вода
ロシア語
2
7 grand
eau
フランス語
イタリア語
acqua
grande
1010000
{1, 3}
{1, 4}
1001000
{1, 5, 6}
1000110
{2, 7}
0100001
{2, 7}
0100001
18
語彙の2値ベクトル化
言語の近さが
簡単に計算できる
大きい
同源語群 水
1
3
big
water
英語
4
gross
Wasser
ドイツ語
5 большой 6 великий
вода
ロシア語
2
7 grand
eau
フランス語
イタリア語
acqua
grande
1010000
{1, 3}
{1, 4}
1001000
{1, 5, 6}
1000110
{2, 7}
0100001
{2, 7}
0100001
18
言語年代学 (glottochronology) 1/2
• 人類学・言語学のアメリカ・インディアン分類問題
[Sapir, 1921]
– 音法則によらず語彙の異同で分類したい
• 考古学での放射性炭素年代測定 [Libby, 1946]
• 祖語の年代推定への応用 [Swadesh, 1948,1951]
– インド・ヨーロッパ語族から基礎語彙の残存率を求め、アメリカ・インディ
アンの言語に適用
• 日本語方言、アイヌ語方言への適用 [服部, 1954][服部+, 1960]
• 系統論の消極的手がかり: 日本語と朝鮮語が仮に同系だとし
ても、祖語は6,000年以上前 [服部, 1999[1956]]
• 生物学の分子時計仮説 [Zuckerkandl+, 1965]
19
言語年代学 (glottochronology) 2/2

•
•
•
log 
=
P
2 log 
: 祖語Pの年代 (単位: 千年)
: A, Bの基礎語彙共有率
: 基礎語彙の残存率 (200項目で0.81)
A
B
1K 2K 3K 4K 5K 6K 7K 8K 9K
年代
共有率 (=.81) .66 .43 .28 .19 .12 .08 .05 .03 .02
20
言語年代学への批判
• 基礎語彙の残存率が一定という仮定がなりた
たない
– 古ノルド語からアイスランド語への残存率は>0.95
[Bergsland+, 1962]
• 同系言語からの借用は区別が難しい
• 基礎語彙の中でも語によって安定性が異なる
のでは?
21
Bayes
系統推定
モデル
[Gray+,
Nature 2003]
22
インド・ヨーロッパ祖語の
年代と故地 (Urheimat)
1. クルガン仮説
5,000-6,000年前
黒海周辺のステップ
遊牧民の軍事的征服
言語学者の広い支持
2. アナトリア仮説 (Gray+はこちら)
– 8,000-9,500年前
[Bouckaert+, Science 2012]
– アナトリア
– 農耕とともに拡大
– 考古学者 (Renfrew) の農耕・言語同時伝播モデル
– 批判: 印欧語アナトリア語派は祖語からかけ離れすぎ
–
–
–
–
23
Bayes
系統推定
モデル
[Bouckaert+,
Science 2012]
24
[Bouckaert+, Science 2012]
25
Bayes系統推定 1/3
-2
+4
{1, 3, 4}
{1, 2, 3}
+5
{1, 2, 3, 5}
-2
-3
{1, 2, 5}
{1, 3, 5}
• 二分木を推定 (cf. 言語ペアの比較)
• 同源語の生死を直接モデル化 (cf. 共有率)
26
Bayes系統推定 1/3
-2
+4
+4
-5
{1, 3, 4}
{1, 3, 4, 5}
{1, 2, 3}
+2
{1, 3, 5}
+5
+6
-4 -3
{1, 2, 3, 5}
-2
-6
{1, 2, 5}
{1, 3, 5}
• 二分木を推定 (cf. 言語ペアの比較)
• 同源語の生死を直接モデル化 (cf. 共有率)
26
Bayes系統推定 1/3
-2
+4
{1, 3, 4}
{1, 2, 3}
+5
{1, 2, 3, 5}
-2
-3
{1, 2, 5}
{1, 3, 5}
• 二分木を推定 (cf. 言語ペアの比較)
• 同源語の生死を直接モデル化 (cf. 共有率)
26
Bayes系統推定
-2
+4
{1, 3, 4}
{1, 2, 3}
+5
枝が長い
1/3
⇔ 多くの変化
{1, 2, 3, 5}
-2
-3
{1, 2, 5}
{1, 3, 5}
• 二分木を推定 (cf. 言語ペアの比較)
• 同源語の生死を直接モデル化 (cf. 共有率)
26
Bayes系統推定による拡張 2/3
• 語の誕生 (0→1)、死亡 (1→0) のモデル
– cf. DNAの突然変異 (ACGTの置換モデル)
− 
言語変化の
遷移行列:  =  −
速度を制御
遷移確率:   = |  = ,  = exp  ,
• 緩和時計モデル
 ~ Exp 
遷移率を一定にせず、
事前分布を置く
or  ~ LogNormal ,  2
27
Bayes系統推定による拡張 3/3
• 年代較正 (calibration)
– 古代語の年代に事前分布をおく
age Latin ~  = 2050.0 BP,  = 75.0
– 間接的に遷移率を制御
• ベイズ推定
– パラメータを点推定するのではなく、事前分布を
おいて潜在変数扱いする
 潜在変数 観測変数, ハイパーパラメータ
– サンプリング (≒ランダム探索) で近似的に求解
28
結局、Bayes系統推定は
言語年代学と何が違うのか
• 変化の速度 (遷移率) が
一定という制約を緩和
• 代わりにいくつかの古代語
の絶対年代をソフトな制約
として与えて年代較正
• サンプリングにより、祖語の
年代を点ではなく、分布とし
て推定
[Gray+, 2011]
29
30
モデル屋とデータ屋の分業
30
疑問: 本当に木構造が適切か
-2
+4
{1, 3, 4}
{1, 2, 3}
+5
{1, 2, 3, 5}
-2
分岐前は
同一の状態
-3
{1, 2, 5}
{1, 3, 5}
分岐後は
別々に変化
31
疑問: 本当に木構造が適切か
-2
+4
{1, 3, 4}
{1, 2, 3}
+5
{1, 2, 3, 5}
-2
分岐前は
同一の状態
-3
{1, 2, 5}
4, 5}
{1, 3, 5}
分岐後は
別々に変化
31
疑問: 本当に木構造が適切か
-2
分岐後の接触
{1, 2, 3}
(水平伝播) は
仮定に違反
+5
+4
{1, 3, 4}
{1, 2, 3, 5}
-2
分岐前は
同一の状態
-3
{1, 2, 5}
4, 5}
{1, 3, 5}
分岐後は
別々に変化
31
日本語
方言へ
の適用
[Lee+, 2011]
(R. Soc. B)
32
[Lee+, 2011]
(R. Soc. B)
33
[Lee+, 2011]
(R. Soc. B)
33
[Lee+, 2011]
(R. Soc. B)
ここ500年で生じた分岐で
本土諸方言が形成された?
33
[Lee+, 2011]
(R. Soc. B)
ここ500年で生じた分岐で
本土諸方言が形成された?
歴史時代の分岐が信頼で
きないなら、祖語の分岐
年代の信頼性も怪しい
33
水平伝播を無視するには
規模が小さすぎるのでは?
[Gray+, 2011]
34
方言地理学は空間的説明
[柴田, 1982]
35
方言地理学は空間的説明
等語線 (isogloss)
[柴田, 1982]
35
方言地理学は空間的説明
中心からの波
= 恒常的な
水平伝播
等語線 (isogloss)
[柴田, 1982]
35
時間構造 v. 空間構造
• 系統樹は時間構造のモデル
– 言語間の類似は祖語の共有による
– 水平伝播はモデルの仮定に違反
• 方言地理学は空間構造のモデル
– 言語のネットワーク
– 恒常的な水平伝播
36
時間構造 v. 空間構造
• 系統樹は時間構造のモデル
– 言語間の類似は祖語の共有による
– 水平伝播はモデルの仮定に違反
• 方言地理学は空間構造のモデル
– 言語のネットワーク
– 恒常的な水平伝播
ネットワークは木よりも自
由度が高く、推定が大変
36
時間構造 v. 空間構造
• 系統樹は時間構造のモデル
– 言語間の類似は祖語の共有による
– 水平伝播はモデルの仮定に違反
• 方言地理学は空間構造のモデル
– 言語のネットワーク
– 恒常的な水平伝播
ネットワークは木よりも自
由度が高く、推定が大変
とりあえずシミュレーショ
ン。結果を系統モデルに与
えて実データを再現する
36
空間構造モデル 1/2
1.00
2.00
0.44
A
B
0.22
0.16
0.25 1.00
2.00
0.16
1.00
8.00
D
C
0.25
37
空間構造モデル 1/2
1.00
2.00
0.44
A
B
0.22
各ノードは言語
エッジは影響力
0.16
0.25 1.00
2.00
0.16
1.00
8.00
D
C
0.25
37
空間構造モデル 2/2
1.00
2.00
0.44
A
B
{1}
{1}
0.22
0.16
0.25 1.00
2.00
0.16
1.00
8.00
D {1, 2}
C
{2}
0.25
時刻 t
38
時刻 t + 1 空間構造モデル
2.00
2/2
1.00
0.44
A
B
{1}
{1}
0.22
0.16
0.25 1.00
2.00
0.16
1.00
8.00
D
C
{3}
{2}
0.25
{1, 2}
38
時刻 t + 21 空間構造モデル
2.00
2/2
1.00
0.44
A
B
{1}
{1,{1}
3}
0.22
0.16
0.25 1.00
2.00
0.16
1.00
8.00
D
C
{3}
{2}
0.25
{1, 2}
38
時刻 t + 231 空間構造モデル
2.00
2/2
1.00
0.44
A
B
{4}
{1}
{1,{1}
3}
0.22
0.16
0.25 1.00
2.00
0.16
1.00
8.00
D
C
{3}
{2}
0.25
2}
{1, 3}
38
シミュレーション:
殖民型のトポロジー
0.5
C
2.0
1.5
2.0
A
4.0
1.5
1.5
0.5
F
0.5
1.5
2.0
H
1.5
E
0.5
4.0
G
0.5
1.5
2.0
1.5
0.5
J
1.5
1.5
2.0
2.0
D
1.5
0.5
2.0
I
0.5
1.5
K
0.5
39
シミュレーション:
殖民型のトポロジー
東西間に隘路
0.5
C
2.0
1.5
2.0
A
4.0
1.5
1.5
0.5
F
0.5
1.5
2.0
H
1.5
E
0.5
4.0
G
0.5
1.5
2.0
1.5
0.5
J
1.5
1.5
2.0
2.0
D
1.5
0.5
2.0
I
0.5
1.5
K
0.5
39
シミュレーション:
殖民型のトポロジー
東西間に隘路
0.5
C
2.0
1.5
2.0
A
4.0
1.5
1.5
0.5
F
0.5
1.5
1.5
H
2.0
1.5
E
0.5
4.0
G
1.5
2.0
1.5
0.5
2.0
0.5
J
1.5
1.5
2.0
2.0
D
0.5
2.0
I
0.5 1.5
2.0
1.5
K
0.5
2.0
B
39
シミュレーション:
殖民型のトポロジー
東西間に隘路
0.5
C
2.0
1.5
2.0
A
4.0
1.5
1.5
0.5
F
0.5
1.5
1.5
H
2.0
1.5
E
0.5
4.0
G
1.5
0.5
2.0
¾の時点でAをB
に複製 (分岐)
1.5
2.0
0.5
J
1.5
1.5
2.0
2.0
D
0.5
2.0
I
0.5 1.5
2.0
1.5
K
0.5
2.0
B
39
殖民型のNeighborNet
読み方:
• 距離に基づく
クラスタリング
• 網 (平行四辺形)
が矛盾を示す
• 2辺の長さ比が
1に近いほど
木らしくない
殖民元
殖民先
40
殖民型のNeighborNet
東側
西側
読み方:
• 距離に基づく
クラスタリング
• 網 (平行四辺形)
が矛盾を示す
• 2辺の長さ比が
1に近いほど
木らしくない
殖民元
殖民先
40
殖民型のNeighborNet
東側
A、Bは
依然近い
西側
読み方:
• 距離に基づく
クラスタリング
• 網 (平行四辺形)
が矛盾を示す
• 2辺の長さ比が
1に近いほど
木らしくない
殖民元
殖民先
40
殖民型の推定された系統樹
殖民先
殖民元
41
殖民型の推定された系統樹
殖民先
西側
殖民元
41
殖民型の推定された系統樹
A、Bが早々に
分岐している!
殖民先
西側
殖民元
41
[Lee+, 2011]
(R. Soc. B)
京都、東京が早々
に分岐しているの
も同じ現象?
京都
東京
42
関連研究
• Word of mouth: 世論形成、マーケティング、
技術革新の拡散
[Watts, 2007]
• 進化グラフ
ゲームの利得行列:
 

 
[Nowak+, 2010]

 
43
今日のおはなし
1.音法則
2.基礎語彙
3.類型論
系統論への応用は少ない
日本語系統論の最後の希望
44
言語類型論 (Linguistic Typology)
• 世界の言語を類型によって分類
– 語順、助数詞の有無、声調の有無, etc
• The World Atlas of Language Structures
(WALS)
– 2,679言語
– 192種類の特徴量
– ただし言語・特徴量ペアの被覆率は<15%
• 欠損値推定問題はとりあえず忘れてください
45
Feature 81A:
Order of Subject, Object and Verb
http://wals.info/feature/81A
46
Feature 55A: Numeral Classifiers
(助数詞を使うか)
http://wals.info/feature/55A
47
WALSの応用例:
言語と社会の相関
[Roberts, 2013]
48
語順変化確率の推定 [Maurits+, PNAS 2014]
VSO
?
?
?
SVO
SVO
SOV
?
SOV
+
SOV
SVO
VSO
 =
VOS
OVS
OSV
−1
2 21
3 31
4 41
5 51
6 61
SOV
1 12
−2
3 32
4 42
5 52
6 62
SVO
1 13
2 23
−3
4 43
5 53
6 63
VSO
1 14
2 24
3 34
−4
5 54
6 64
VOS
1 15
2 25
3 35
4 45
−5
6 65
OVS
1 16
2 26
3 36
4 46
5 56
−6
OSV
49
語順変化確率の推定 [Maurits+, PNAS 2014]
VSO
?
?
?
SVO
SVO
SOV
?
SOV
+
SOV
SVO
VSO
 =
VOS
OVS
OSV
−1
2 21
3 31
4 41
5 51
6 61
SOV
1 12
−2
3 32
4 42
5 52
6 62
SVO
1 13
2 23
−3
4 43
5 53
6 63
VSO
1 14
2 24
3 34
−4
5 54
6 64
VOS
1 15
2 25
3 35
4 45
−5
6 65
OVS
1 16
2 26
3 36
4 46
5 56
−6
OSV
SOVからSVOへの
変化の方がその
反対より起こり
やすい
49
類型論
は日本
語系統
論最後
の希望
[Janhunen, 2003]
50
類型論
は日本
語系統
論最後
の希望
[Janhunen, 2003]
50
類型論は日本語系統論最後の希望
• 任意の言語が比較できる
日本語:
朝鮮語:
アイヌ語:
1 1 2
2 2 1
0 1 1
…
…
…
0 4
0 4
0 4
• 類型論の変化は長期的
– 語順の変化は多くても2,000年に1回程度
• cf. 基礎語彙の残存率は1,000年で~81%
– ただし、不確実性が高く扱いが難しそう
51
通時類型論 (Diachronic Typology)
の従来研究
• 特徴量の変化を諸言語から調査
• 言語連合: 系統に反する特徴量の変化
[Trubetzkoy, 1923][Aikhenvald+, 2001][Daumé III, NAACL 2009]
• 特定の特徴量の歴史的安定性の主張
[Nichols, 1992][松本, 2007[2003]]
• 欠けている研究
– 特徴量の (系統に沿った) 安定性の定量的議論
– 特徴量の安定性を考慮した系統推定
52
[松本, 2007[2003]]
53
太平洋沿岸言語圏
[松本, 2007[2003]]
53
従来の計算的取り組みは
データの特性を無視
[Teh+, NIPS 2007]
木の確率モデル (提案手法)
+
各言語
2 2 0
の
ベクトル
+
…
−
遷移行列:  = 


−
3 3
54
従来の計算的取り組みは
データの特性を無視
[Teh+, NIPS 2007]
木の確率モデル (提案手法)
+
各言語
2 2 0
の
ベクトル
+
0
…
−
遷移行列:  = 


−
3 3
1-of-K変換によるバイナリ化
0
1
0
0
0
…
0
1
54
従来の計算的取り組みは
データの特性を無視
[Teh+, NIPS 2007]
木の確率モデル (提案手法)
+
各言語
2 2 0
の
ベクトル
+
推定された
祖語
…
−
遷移行列:  = 


−
3 3
1-of-K変換によるバイナリ化
0
0
1
0
0
0
0
1
1
0
0
1
…
…
0
1
1
0
54
従来の計算的取り組みは
データの特性を無視
[Teh+, NIPS 2007]
木の確率モデル (提案手法)
+
各言語
2 2 0
の
ベクトル
+
推定された
祖語
…
−
遷移行列:  = 


−
3 3
1-of-K変換によるバイナリ化
0
0
1
0
0
0
0
1
1
0
0
1
論理的にありえない!
…
…
0
1
1
0
54
類型論の目的の一つは
普遍性の探究
• 示唆的普遍性 (implicational universal)
[Greenberg, 1963][Daumé III, ACL 2007]
– OV ⊃ 後置詞型, VO ⊃ 前置詞型
– 後置詞型 ⊃ 属格節-名詞の語順
• 斉一性 (uniformitarianism) 仮説
[Jakobson, 1971[1957]]
– 現代語から導かれる普遍性は古代語にもあてはまる
55
類型論の目的の一つは
普遍性の探究
• 示唆的普遍性 (implicational universal)
[Greenberg, 1963][Daumé III, ACL 2007]
– OV ⊃ 後置詞型, VO ⊃ 前置詞型
– 後置詞型 ⊃ 属格節-名詞の語順
• 斉一性 (uniformitarianism) 仮説
[Jakobson, 1971[1957]]
– 現代語から導かれる普遍性は古代語にもあてはまる
• 特徴量間に相関があるなら、行列をかけて変換すれ
ば良いのでは?
• 言語 (特徴量ベクトル) の自然さを現代語から教師な
しで学習し、祖語に適用すれば良いのでは?
55
提案手法: 類型論の連続空間表現
h
x
0.21
0.84
…
0.03
encode
0
0
1
0
h =  We x + be
0
0
…
0
多値の特徴量をバイナリ列へ変換 (1-of-K変換)
v 2 2 0
…
3 3
56
提案手法: 類型論の連続空間表現
v′ 2 2 0
…
3 3
バイナリ列から多値の特徴量へ変換
x′′
0
0
1
0
0
0
…
0
特徴量の制約に基づきバイナリ列を復元
x′ 0.01 0.00 0.92 0.02 0.01 0.01 … 0.00
x′ =  Wd h + bd
decode (誤差あり)
h 0.21 0.84 … 0.03
encode
h =  We x + be
… 0
x
1
0
0
0
0
0
多値の特徴量をバイナリ列へ変換 (1-of-K変換)
v 2 2 0
…
3 3
56
提案手法: 類型論の連続空間表現
自然さ判定
v′ 2 2 0
…
3 3
バイナリ列から多値の特徴量へ変換
… 0
x′′ 0
1
0
0
0
0
P x =
exp( ℎ )
特徴量の制約に基づきバイナリ列を復元
∑ exp( h′ ) x′ 0.01 0.00 0.92 0.02 0.01 0.01 … 0.00
x′
x′ =  Wd h + bd
decode (誤差あり)
h 0.21 0.84 … 0.03
encode
h =  We x + be
… 0
x
1
0
0
0
0
0
多値の特徴量をバイナリ列へ変換 (1-of-K変換)
v 2 2 0
…
3 3
56
(極端な) 例: オーストロアジア語族の
ムンダ諸語とモン・クメール諸語
ムンダ
文法
語順
接辞
モン・クメール
統合的
分析的
主辞後置
主辞前置
OV
VO
後置詞
前置詞
接頭辞/接中辞,
接尾辞
接頭辞/接中辞
孤立的
ソラ語 ɑnin dɔŋ- ɲɛn dɑrəj -ən ə- tiy -ben idsɨm -tɛ ted
(ムンダ) he/she OBJ- me rice -ART INF- give –INF want -3PR not
クメー k*ət ʔət
he/she not
ル語
cɑŋ
want
ʔaoy
give
bay
rice
kŋom
me
[Donegan+, 2004]
57
言語としての自然さ
ムンダリ語
(ムンダ)
混合比
クメール語
58
言語としての自然さ
離散特徴量の
混合は不自然
ムンダリ語
(ムンダ)
混合比
クメール語
58
言語としての自然さ
連続空間上での線形
補間は自然さを保つ
離散特徴量の
混合は不自然
ムンダリ語
(ムンダ)
混合比
クメール語
58
言語としての自然さ
後置詞型から前置詞型
SOVからSVO
強い接尾辞型
から
弱い接辞型
連続空間上での線形
補間は自然さを保つ
離散特徴量の
混合は不自然
ムンダリ語
(ムンダ)
混合比
クメール語
58
祖語の自然さと
特徴量の安定性を考慮した
世界の系統樹
59
連続空間上で安定性を考慮した
日本語と他の現代語との距離
安定性を考慮した距離
1. jpn
2. ryu Japonic
3. khk Altaic->Mon.
4. lep ST->Tib.-Bur.
5. chv Altaic->Tur.
6. mvf Altaic->Mon.
7. bxm Altaic->Mon.
8. der ST->Tib.-Bur.
9. uum Altaic->Tur.
10. huu Witotoan
76
-33
-198
-202
-209
-213
-217
-221
-228
-229
離散特徴量上の距離 (不一致率)
1. jpn
0.0
2. kxv Dravidian
-0.394
3. grt ST->Tib.Bur. -0.397
4. ggo Dravidian
-0.403
5. lez NC->EC->Legzi. -0.409
6. chv Altaic->Tur. -0.431
7. huu Witotoan
-0.436
8. khk Altaic->Mon. -0.453
9. ryu Japinic
-0.460
10.mal Dravidian
-0.461
60
まとめ
• 諸言語の歴史的変化は計算でこそ解けるかも
– 不確実性な手がかり、連続値 (変化率、年代、場
所) が扱える
– 組み合わせ爆発が (近似的に) 扱える
• 生物学由来のモデルをそのまま言語に適用す
ることが多かった
• 言語の性質を踏まえてモデル化する必要
61