全文PDF - 日本政策投資銀行

2013年3月
株式会社日本政策投資銀行
関西支店
(関西バッテリーレポートシリーズ)
関西バッテリーベイにおける
リチウムイオン電池製造装置メーカーの重要性
-「関西ものづくりの集積」を活かした技術革新と積極的なマーケットメイクこそがバッテリーベイを救う<要旨>
1.日本政策投資銀行関西支店では、関西に集積する電池産業について継続的に調査を行っている(注1)。現在、日本
の電池メーカーは新興国メーカーの躍進等により、世界市場において苦戦を強いられている。かつて高い世界
シェアを有していた関西バッテリーベイ(注2)においても、携帯電話等に用いられる小型リチウムイオン電池分
野で急激にシェアを落としている。しかし、リチウムイオン電池市場で、今後成長が期待される「大型」のリチ
ウムイオン電池は、より高度な技術を要するため、日本メーカーがアプリケーション先(家庭用蓄電池・スマート
ハウス・電気自動車等の電池用途先)を含め世界に先駆けて開発・量産化を開始しており、その技術・市場はまだ
発展途上であるものの、2020年には現在の4倍以上に成長する見通しである。是非ともこの成長市場を、関西
バッテリーベイの集積を活かして関西企業が獲得していきたいものである。
2.電池メーカーが苦戦している一方、リチウムイオン電池産業の中でも装置メーカーはあまり世界シェアを落と
していない。リチウムイオン電池の各工程の製造装置は、今も日本メーカーが相応の世界シェアを有しており、
主なメーカーの所在地を分析してみると、関西、とりわけ大阪・京滋地域の企業が多い。ここに関西バッテリー
ベイの競争力の底堅さがうかがえる。
3.電池分野に限らず、関西にとってリチウムイオン電池製造装置メーカーは、非常に重要な存在である。装置
メーカーの多くは関西の伝統産業で培った技術を、半導体や液晶分野などその時代毎の最先端製品の製造装置に
取り組むことで磨きをかけ、電池の装置に応用している。つまり彼らは「電池」だけで強いのではなく、「最先
端の製品を作る技術」で強いと言えよう。また、電池の製造装置は部品点数が非常に多く、装置メーカーは数百
社にのぼる地元の調達先の部品サプライヤーと長年その技術をすり合わせて開発してきた。したがって、製造装
置メーカーが海外移転することは容易ではなく、彼らは関西に根付きその広範な部品サプライヤーを含めた雇用
を支える重要な産業と言える。このような装置メーカーの存在こそが、新興国メーカーとの差別化要因といえる。
4.現在、この製造装置の分野においても新興国メーカーの追い上げは著しい。まだ技術力の差はあるものの、新
興国メーカーは国策として産業の育成に取り組んでいることに加え、日本からの人材流出・技術流出による影響
も大きい。装置メーカー側には日本の電池メーカーと取引を維持・拡大したいという要望はあるものの、海外売
上高比率が高まっているのが現状である。もし最先端の高価な装置の販売先が新興国ばかりになれば、関西で最
先端の製品が誕生し、技術が蓄積され、次世代製品に繋がるという、正のサイクルが回らなくなる懸念がある。
5.関西バッテリーベイは苦戦しているという意見が散見されるが、底堅い競争力が潜在する。関西バッテリーベ
イの電池メーカー・部材メーカー・装置メーカー・公的研究所といった集積を活かした「すり合わせ」を行うこと
ができれば、高性能電池を世界に先駆けて事業化することが可能である。ただし、いくら高性能な電池を開発し
ても市場がなければ意味をなさず、同時に最先端のアプリケーションのマーケットメイクを積極的に支援してい
くことも不可欠といえよう。新興国メーカーの様なコスト競争力の強化ではなく、装置メーカーに代表される
「関西ものづくりの集積」を活かした技術革新の加速と積極的なマーケットメイクという方向性こそが、関西の
バッテリーベイの競争力向上と関連産業の雇用確保に繋がるのではないだろうか。
(注1)関西バッテリーレポートシリーズを発行
(注2)関西バッテリーベイとは、関西におけるリチウムイオン電池・太陽電池関連産業の集積を示す名称
(お問い合わせ先)株式会社日本政策投資銀行
関西支店企画調査課 及川雄太・大田麻衣
TEL:06-4706-6455、E-mail:ksinfo@dbj.jp
1.関西バッテリーベイの現状
~足下苦戦を強いられる電池メーカー~
•日本政策投資銀行関西支店では、関西に集積する電池産業について継続的に調査を行っている(注1)。
•現在、日本のリチウムイオン電池メーカーは新興国メーカーの躍進等により世界市場で苦戦を強いられている。特にマー
ケットの主流である小型のリチウムイオン電池(ノートPC・携帯端末・デジカメ等に使用)分野では、新興国メーカーにおける
技術水準の向上や大型投資のために競争が激化しており、当行の試算では、関西バッテリーベイ(注2)においても、
2008年には約3割あった小型リチウムイオン電池における世界シェアは、2012年には約1割まで低下していると推計され
る(図表1-1)。
•しかし、リチウムイオン電池市場において、今後成長が期待される「大型」のリチウムイオン電池は、日本メーカーがアプリ
ケーション先(家庭用蓄電池・スマートハウス・電気自動車等の電池用途先)を含めて世界に先駆けた開発・量産を開始し
ており、未だ高い競争力を有している。大型のリチウムイオン電池は小型分野よりも高い性能・品質が求められるため、今
後解決すべき課題も多く、まさに技術革新をリードしてきた日本メーカーが得意とする分野である。大型のリチウムイオン
電池の市場は2012年度では3,100億円であるが、今後は小型分野を上回る速度で成長し、2020年度には現在の4倍
以上である1兆4,500億円まで拡大すると見込まれている(図表1-2、1-3、注3)。この成長市場を、是非とも関西バッテ
リーベイの集積を活かして関西の企業で獲得していきたいものである。
(注1)2010年5月『バッテリースーパークラスターへの展開』、2012年10月『関西バッテリーベイのシェア動向』、同年12月『車載用電池産業の成長が
関西バッテリーベイにもたらすインパクト』を発行。
(注2)関西バッテリーベイとは、関西におけるリチウムイオン電池・太陽電池関連産業の集積を示す名称。
(注3)詳しくは日本政策投資銀行『車載用電池産業の成長が関西バッテリーベイに与えるインパクト』『蓄電池産業の現状と発展に向けた考察』参照。
図表1-1 小型リチウムイオン電池の生産金額予測と
関西の世界シェア(当行試算)
(億円)
33.1%
35.0%
16,000
30.0%
14,000
29.9%
12,000
24.7%
10,000
(億円)
(世界シェア)
25.0%
20.0%
8,000
12,000
10,000
17.3%
8,000
6,000
15.0%
6,000
10.0%
5.0%
0.0%
関西の世界シェア
)
(備考)日本エコノミックセンター『2012リチウムイオン電池業界の実態と将来展望』、
経済産業省『機械統計』、近畿経済産業局『主要製品生産実績』を元に日本
政策投資銀行試算
(出所)日本政策投資銀行『関西バッテリーベイのシェア動向』
2020
0
(年)
2019
2012
2018
関西生産金額
2011
2017
2010
2016
世界生産金額
2009
年(度
2008
2015
0
2,000
2014
2,000
3,100
4,000
2013
10.7%
2012
世界市場の伸びに反し、関西
バッテリーベイのシェアは急落
2010
4,000
14,500
2011
14,000
図表1-2 大型リチウムイオン電池の世界生産金額予測
(備考)数値は日本エコノミックセンター予測
(出所)日本エコノミックセンター『2012リチウムイオン電池業界の実態と将来展望』
を元に日本政策投資銀行作成
図表1-3 リチウムイオン電池産業分野別世界市場規模予測
携帯端末 (世界販売台数:15億8,000万台)
ノキア、サムスン電子、LG化学、
アップル等
ノートパソコン(世界販売台数:2億1,230万台)
ヒューレットパッカード、デル、エイサー、
レノボ、東芝等
小型分野
大型分野
2020年度
2兆9,500
億円
車載用電池 (市場規模:2,000億円)
電気自動車、プラグイン・ハイブリッド等
産業用バッテリー (市場規模:1,060億円)
建機、重機、車輌、装置のバックアップ等
1兆4,500
億円
デジタルカメラ(世界販売台数:1億3,010万台)
キヤノン、ソニー、ニコン、サムスン電子等
タブレッド端末 (世界販売台数:9,070万台)
アップル、エイスース、サムスン電子、
モトローラ等
家庭用蓄電池 (市場規模:40億円)
スマートハウス、集合住宅、商店・店舗等
1兆3,600
億円
3,100
億円
2012年度
系統安定化用蓄電池 (市場規模:ごく小規模)
再生可能エネルギー関連、発電所等
(備考)2012年度、2020年度市場規模数値は日本エコノミックセンター予測
(出所) 日本エコノミックセンター『2012リチウムイオン電池業界の実態と将来展望』、各種公表情報を元に日本政策投資銀行作成
1
2.底堅い競争力を持つ装置メーカー ~関西、特に大阪・京滋地域を中心に集積~
・電池産業を俯瞰すると、総じて日本の電池メーカーが苦戦している一方、リチウムイオン電池の部材や製造装置といった
分野においては依然として世界シェア上位に日本メーカーが並ぶなど存在感を示している。
•リチウムイオン電池は、主要4部材と呼ばれる正極材・負極材・セパレータ・電解液から構成され、その製造工程は、極材
の素となる活物質の攪拌、塗布から始まり、活物質を塗布した正負極材及びセパレータの裁断、巻き取り・積層を経て最
後に電池を組立て、電解液を注入して完成する(図表2-1)。各工程における製造装置メーカーを見ると、今も日本メー
カーが相応の世界シェアを有しており、その主要メーカーは関西、とりわけ大阪・京滋地域に本社を置く企業が多い。ここ
に関西バッテリーベイの競争力の底堅さがうかがえる(図表2-4)。
•リチウムイオン電池製造装置の世界市場は、設備投資の一巡により足下一服感があるものの、2015年ごろより大型のリ
チウムイオン電池市場の伸びと相まって設備投資が活発化する見通しであり、今後の市場拡大が見込まれる(図表22)。リチウムイオン電池製造装置の地域別市場規模をみると、最大の市場は日本であるが、韓国・中国・台湾を合わせ
れば日本に匹敵する規模となっており、最先端の日本製装置がこれらの国々に輸出されている(図表2-3)。
図表2-1 リチウムイオン電池の主な製造工程および構造
工程
攪拌
塗布
裁断
巻回
活物質
材料溶融
・分散
活物質を
金属箔に
塗工
金属箔を
切断
巻き取り
積層
電池
組立
ケース
挿入等
注液
電解液
注入
外装
外装
正極と負極の間をリチウムイオンが
移動することで充電や放電を行う
コータ
ワインダ
スタッキ
ング装置
スリッタ
電池組立
装置
注液装置
外装組立
装置
エンジニアリング
FDK
キヤノンマシナリー
キヤノンマシナリー
長野オートメーション
長野オートメーション
キヤノンマシナリー
皆藤製作所
日立設備エンジニアリ
ング
西村製作所
ゴードーキコー
荻原工業
ヒラノテクシード
テクノスマート
東レエンジニアリング
プライミクス
淺田鉄工
井上製作所
主
装シ
置ェア
世な
界高
装ー
置メ
メ
カー
ーカー
コバルト酸リチウム等
装置
ミキシン
グ装置
放電
正極材
電解液
カーボン等
セパレータ
負極材
負極財
主要
部材
正極材
4
充電
セパレータ
電解液
(備考)青字は関西本社企業
(出所)各種公表資料より日本政策投資銀行作成
図表2-2 リチウムイオン電池製造装置の
世界市場規模見込み
図表2-3 リチウムイオン電池製造装置の地域別市場規模
(2011年度実績)
(億円)
400
欧州
26億円
9%
300
米州
29億円
9%
台湾
16億円
5%
200
日本
137億円
44%
韓国
55億円
18%
100
リチウムイオン電池装置の
約4割がアジア向けに販売
されている。
中国
46億円
15%
0
2011
2012
2013
2014
2015 (年)
(備考)数値は富士経済予測
(出所)富士経済『アドバンストデバイス製造装置関連市場の将来展望2012』より
日本政策投資銀行作成
(出所)富士経済『アドバンストデバイス製造装置関連市場の将来展望
2012』より日本政策投資銀行作成
2
図表2-4 関西における主なリチウムイオン電池製造装置メーカー
社名
主な分野
府県
従業員数
(人)
上場
売上
(百万円)
資本金
(百万円)
淺田鉄工(株)
攪拌・分散等装置
大阪
130
99
(株)市金工業社
セパレータ製造装置
滋賀
85
100
(株)皆藤製作所
巻取機
滋賀
85
30
キヤノンマシナリー(株)
電池組立装置、注液装置等
滋賀
(株)栗本鐵工所
攪拌・分散等装置
大阪
(株)サンクメタル
巻取機
兵庫
12
(株)ゴードーキコー
スリッタ
京都
46
東1・大1
1,061
28,903
2,781
1,907
97,075
31,168
(株)品川工業所
攪拌・分散等装置
奈良
(株)シンマルエンタープライゼス
攪拌・分散等装置
大阪
143
45
ダイキン工業(株)
ドライクリーンルーム装置
大阪
東1・大1
44,110
1,218,700
85,032
大日本スクリーン製造(株)
コータ
京都
東1・大1
4,890
250,089
54,044
(株)タクミナ
ポンプ
大阪
大2
270
6,808
893
(株)テクノスマート
コータ
大阪
大2
246
15,356
1,003
東洋ハイテック(株)
攪拌・分散等装置
大阪
146
99
(株)ナカキン
ポンプ
大阪
392
84
30
ナグシステム(株)
溶接装置
大阪
14
10
(株)西村製作所
スリッタ
京都
144
376
日本スピンドル製造(株)
攪拌・分散等装置
兵庫
320
3,276
(株)パウレック
部材加工装置
兵庫
114
75
兵神装備(株)
ポンプ
兵庫
343
9,500
100
(株)ヒラノテクシード
コータ
奈良
大2
235
17,484
1,847
プライミクス(株)
攪拌・分散等装置
大阪
大2
208
ホソカワミクロン(株)
部材加工装置
大阪
東1・大1
352
15,459
14,496
大日本スクリーン製造㈱
本社
㈱西村製作所
本社
淺田鉄工㈱
本社・工場
東洋ハイテック㈱
粉体技術センター
80
キヤノンマシナリー㈱
本社
㈱市金工業社
本社
ナグシステム㈱
本社
㈱ナカキン
本社
㈱テクノスマート
滋賀工場
㈱皆藤製作所
本社
㈱サンクメタル
本社
㈱パウレック
本社
東レエンジニアリング㈱
瀬田工場
㈱井上製作所
大阪工場
日本スピンドル製造㈱
本社
兵神装備㈱
本社
㈱ゴードーキコー
本社
ホソカワミクロン㈱
本社
ダイキン工業㈱
本社
㈱品川工業所
本社
プライミクス㈱
本社
㈱シンマルエンタープライゼス
本社
㈱シンマルエンタープライゼス
工場
㈱ヒラノテクシード
本社
㈱タクミナ 東洋ハイテック㈱
本社
本社
㈱テクノスマート
本社
㈱栗本鐵工所
本社
(C)Esri Ja pan
(備考)ヒアリング等より作成しており、全てのデータを網羅している訳ではない。
なお、従業員数、売上高、資本金等の情報は各社ホームページ記載の数値を使用。上場企業については直近決算期の有価証券報告書記載の数値を使用。
(出所)各種公表資料、ヒアリング等より日本政策投資銀行作成
3
3.関西のリチウムイオン電池製造装置メーカーの重要性
~関西の技術を蓄積し、雇用を支え、新しい製品を生む土壌~
•電池分野に限らず、関西にとってリチウムイオン電池製造装置メーカーは非常に重要な存在である。
•装置メーカーの歴史をみると、その多くは繊維や製薬など古くから関西(とりわけ大阪・京滋地域)が強みを持つ産業で
培った「核」となる技術を、その時代毎の最先端製品の製造装置に取り組むことで磨きをかけ、電池の装置に応用してい
る(図表3-1)。彼らは「電池」だけで強いのではなく、「最先端の製品を作る技術」で強いと言えよう(図表3-3)。このため
現に、電池に加えて次世代産業の有機EL・新型太陽電池・高性能半導体等に取り組む装置メーカーも多い。こうした次
世代産業に対し、近年では装置メーカーが現場における生産性向上に止まらず、より川上の研究開発(大学・企業の研
究所等)に寄与している例も増加傾向にある。接点の無かった装置メーカーと研究者が学会等を通じて関係を構築する
ことで、従来にはない視点で次世代産業の研究開発が進む可能性があるだろう。
•また、リチウムイオン電池の製造装置は部品点数が多く、人手のかかる細やかな調整が求められる。装置メーカーは数
百社にのぼる関西の部品サプライヤーと長年その技術をすり合わせて開発してきた。したがって、装置メーカーが海外移
転することは容易ではなく、彼らは関西に根付き、その広範な部品サプライヤーを含めて地域の雇用を支える重要な産
業と言える(図表3-2)。
•このように関西には、新しい製品が生まれ、その市場ができ、生産拠点が作られることで技術が蓄積され、また新しい製
品が生まれてきた土壌がある。この土壌こそ新興国との差別化要因となっており、ここに関西バッテリーベイの競争力の
源泉があると言えよう。
図表3-1 関西の装置メーカーが携わった先端技術の変遷
図表3-2 関西のリチウムイオン電池装置産業のすそ野
電池メーカー
13社
繊維
製薬
オーディオ
ビデオテープ
電子
半導体
部品
液晶
電池
製造装置メーカー
次世代
電池メーカー1社あたり
数社~20社から調達
部品サプライヤー
関西の装置メーカーは伝統産業の装置の製造を発祥とし、
常に最先端の製品の製造に携わることで、技術を蓄積してきた。
(備考)ヒアリング等より作成しており、全てのデータを網羅している訳ではない。
(出所)ヒアリングより日本政策投資銀行作成
装置メーカー1社あたり100~300社から調達
(ほとんどが装置メーカーの地元企業)
(備考)ヒアリング等より作成しており、全てのデータを網羅している訳ではない。
(出所)ヒアリングより日本政策投資銀行作成
図表3-3 「最先端の製品をつくる技術」を持つリチウムイオン電池装置メーカー例
電池製造装置
ヒラノテクシード
(奈良)
【コータ】
世界シェア約3割
技術の強み
【スリッタ】
世界シェア約4割
パウレック
(兵庫)
次世代電池の
製造装置
巻物状のフィルム・金属箔・紙などの材料に機能性材料を塗る技術、乾燥・熱処理およびそれらの高度な
コントロール技術を有する。
歴史
繊維染色の乾燥技術が応用できる分野としてカセットテープの磁性材料を塗工・乾燥する機械を製造した
ことを皮切りに、PC、携帯電話、液晶テレビ、電池と時代の最先端の製品にかかる塗工機を製造してきた。
今後の戦略
塗工の技術はどんな製品でも必要とされる。
今後も、光学フィルム、セラミックコンデンサなど最先端の製品をターゲットに当社でしか作ることができ
ない塗工機を提供する。
電池製造装置
西村製作所
(京都)
【コータ】金属箔に正極材・負極材の活物質を塗工し乾燥する装置。
薄く高精度に塗工した材料をひび割れやはがれのないように均一に乾かすことが求められる。
技術の強み
【スリッタ】電極材・セパレータを各電池メーカーの規格に裁断する装置。
電池発火の原因となるバリ(電極材の剥がれや裁断面の乱れ)を最小限に裁断することが求められる。
バリを最小限にし、均一な力で裁断するコントロール技術を有する。
歴史
創業時より裁断機を専業に手がける。着物に使用する金糸銀糸の裁断機を皮切りに、紙・金属・フィルム
などあらゆるものの裁断機を製造してきた。
今後の戦略
裁断の技術はあらゆる産業で必要とされる。高度な裁断機については、技術が確立するまでの立上げ期で
勝負し、先行者利益を得て、新しい製品・新しい技術に挑んでいく。
ターゲットは次世代電池、光学系フィルム、炭素繊維等の新素材。
電池製造装置
技術の強み
歴史
今後の戦略
(出所)ヒアリングより日本政策投資銀行作成
【次世代電池製造装置】活物質の粉末にコーティングを行う装置。
全固体電池のイオン伝導率向上に資する。
製薬分野で培った高度な粉粒体技術を有する。
製薬の粉体処理装置をメインに製造。製薬で培った高度な技術を食品、電子部品、化学向けに展開してきた。
電池分野では、次世代電池の開発に参加している。
全固体電池等、次世代電池への装置提供。
4
4.リチウムイオン電池製造装置メーカーをとりまく現状と課題
~新興国メーカーにおける内製化の進展と国内ものづくり基盤の危機~
•現在、リチウムイオン電池製造装置分野においても新興国メーカーが日々追い上げてきている。特に、小型リチウムイオ
ン電池の製造装置は、技術がある程度確立してしまったため新興国メーカーの台頭が著しい。中でも韓国・中国などは国
策として蓄電池産業を積極的に支援していくことを掲げ、装置・部材の内製化にも熱心である。装置の内製化には、もちろ
ん新興国における生産コストや補助金の有無もあるが、日本製装置の購入や日本からの人材流出・技術流出といった影
響も極めて大きい(図表4-1,4-2,4-3)。
•新興国メーカーへの技術流出を踏まえて、装置メーカーには、日本メーカーとの取引維持・拡大を求める声が多い。しか
し、日本メーカーは足下の業況が厳しいこともあり、高価な最新装置の導入に積極的ではないのが現状である。このた
め、装置メーカーでは日本メーカーへの販売が伸びず、海外売上高比率が高まっている傾向がある。
•関西装置メーカーは、日本メーカーへの最新装置供給により、各時代における最先端製品の開発や生産技術の向上に
関与・貢献してきた。また同時に、装置メーカー自身もノウハウを蓄積し、競争力を高めて次の最先端製品に活かしていく
という正のサイクルを描いてきた。だが、日本メーカーへの装置の販売が減少してくれば、こうした正のサイクルが途絶え
てしまう懸念がある。関西のものづくり基盤を維持・向上するためには、最先端製品が生まれ、生産される土壌を維持して
いかなければならない(図表4-4)。
図表4-1 新興国の装置の内製化に向けた動き
補助金・生産コスト
の安さを活かし、
実績を積む
日本からの
人材流出・
技術流出
による装置
技術向上
装置を内製化を後押し
するため、対象企業や
装置購入企業に対する
補助金を投入
技術水準が向上
し、装置の内製が
可能になる
日本製装置の購入と
リバースエンジニア
リング(※)等による模倣
(備考)リバースエンジニアリングとは、競合製品の分解等により製造方法を分析
する手法。
(出所)ヒアリング、各種公表情報より日本政策投資銀行作成
図表4-3 韓国の蓄電池産業支援政策の方針
図表4-2 日本、韓国、中国の生産環境比較
単位:ドル
日本(千葉)
韓国(ソウル)
中国(北京)
法人税(国税+地方税)
2012.4現在
35.64%
(23年度改正後)
24.20%
(2億ウォン以上)
25.00%
人件費
一般工職(月額)
3,718
1,696
538
工場土地代
㎡あたり購入価格
355
267
71~87
電気代
(月額/kWhあたり)
基本料金20.54
/0.15~0.16
基本料金4.22
/0.06
基本料金なし
/ 0.13
水道代
(月額/㎥あたり)
基本料金なし
/0.30
基本料金含め
0.03~0.06
基本料金なし
/0.98
ガス代
(月額/㎥あたり)
基本料金179.56
/0.82
基本料金なし
/0.68
基本料金なし
/0.45
(備考)法人税の数値は財務省ホームページより引用。
その他は日本貿易振興機構の2011.12~2012.1実施の現地調査による
データ。為替は2012.1.6時点のレート。
(出所)日本貿易振興機構『第22回アジア・オセアニア・主要都市・地域の投資関連
コスト比較(2012年4月)』、財務省ホームページより日本政策投資銀行作成
図表4-4 関西の製造装置メーカーをとりまく現状
ノウハウ
を蓄積
人材育成
蓄電池分野の
修士・博士級人材
1,000人育成
企業育成
グローバル素材
企業を10社以上
育成(目標:世界
シェア50%)
最先端の
製品生産
に貢献
教育施設
関西
新しい製品が
うまれる土壌
最先端の
製品開発
に関与
各大学の課程拡
大、専門大学院の
新設
韓国
最先端の
製品生産?
(出所)2010.7韓国政府策定ロードマップ、
ヒアリングより日本政策投資銀行作成
(出所)日本政策投資銀行作成
製造装置
を開発
5
5.【まとめ】世界をリードする関西のものづくり技術のために
~「関西ものづくりの集積」を活かした技術革新とマーケットメイク~
•これまで関西における装置メーカーの集積について議論を進めてきたが、ここで装置メーカーの強みをまとめると、①広い
すそ野産業の存在、②伝統産業から培ったノウハウの蓄積、③人材の特異性、④中長期的な目線での経営、が挙げら
れる。こうした強みは、装置メーカーがその部品サプライヤーとともに長年関西に密着して実績を積み重ねてきた結果で
あり、新興国メーカーに対する強固な差別化要因であると考えられる(図表5-1)。
•加えて、地域経済への貢献性という視点で見たときに、装置メーカーとその部品サプライヤーの多くは地域密着の中小・
中堅企業であるうえ、人手のかかる製品を手がけているため、地域の人材を長期積極採用する傾向が強い。すなわち、
地域において優良な雇用を創出するという重要な役割を果たしているのである(図表5-2)。
•現在、高成長が見込まれる大型リチウムイオン電池のアプリケーション(家庭用蓄電池・スマートハウス・電気自動車等)
は、搭載する電池の性能面・コスト面に課題があり、本格的な普及には至っていない。つまり、逆にいえば、もし電池の性
能面・コスト面における課題を解決することができれば、一気に普及が加速し、巨大市場を獲得できる可能性がある。関
西の装置メーカーは、最先端製品の事業化(開発・量産)において重要な役割を果たしてきた経緯があり、電池の上記課
題の解決に取り組む際にも大きく貢献すると考えられる(図表3-1)。
•しかし、装置メーカーの目下の課題として、主要顧客である国内電池メーカーの苦戦が挙げられる。日本の電池メーカー
が新興国メーカーに対して競争優位に立つには、単なるコスト競争を脱却し、電池市場での新たなアプリケーションを世
界に先駆けてマーケットメイク(市場創造・開拓)をしていくことが重要と考えられる(注1)。マーケットメイクでは、電池性能・
品質等の技術的な課題が生じるが、こうした課題の解決は、まさに装置メーカーが得意とするところではなかろうか。
•つまり、関西バッテリーベイは苦戦しているという意見が散見されるが、関西バッテリーベイの電池メーカー・部材メーカー・
装置メーカー・公的研究所といった集積を活かした「すり合わせ」を行うことができれば、過去の最先端製品の事例同様、
大型リチウムイオン電池においても数多の課題を解決し、高性能電池を世界に先駆けて事業化することが可能なのであ
る。ただし、いくら高性能な電池を開発しても市場がなければ意味をなさず、同時に最先端のアプリケーションにおける
マーケットメイクを積極的に支援していくことも不可欠といえよう。
•新興国メーカーの様なコスト競争力の強化ではなく、装置メーカーに代表される「関西ものづくりの集積」を活かした技術
革新の加速と積極的なマーケットメイクという方向性こそが、関西バッテリーベイの競争力向上と関連産業の雇用確保に
繋がるのではないだろうか(図表5-3)。
(注1)詳しくは日本政策投資銀行関西支店『蓄電池産業の現状と発展に向けた考察』(2013年3月発行)参照
図表5-1 関西装置メーカーの強み
強み
図表5-3 関西バッテリーベイの競争力向上に向けて
概要
広いすそ野産業の存在
装置メーカー1社あたり、100-300社程度の部
品メーカーから部品を調達。
この部品メーカーは殆どが地場(関西地域)にある。
伝統産業から培った
ノウハウの蓄積
電池に限らず、常に最先端製品の事業化に携
わってきた。
人材の特異性
人材を育成するのに5-10年程度の期間がかかる。
中長期的な目線での経営
規模が小さく、オーナー企業も多いため、中長
期的な開発投資・人材育成が可能。
(出所)ヒアリング、各種公表情報より日本政策投資銀行作成
高性能電池の
事業化・量産化
単なるコスト競争力の強化
ではなく、高性能電池の
事業化とそのマーケット
創出の積極的支援を実施
図表5-2 関西装置メーカーの地域における貢献性
役割
概要
雇用維持
人手のかかる製品を手がけているため、雇用
の創出能力が高い。主に地域の人材を積極採
用している。専門性が高いこともあり、雇用
期間が長い。
最先端製品の創出に寄与
関西における最先端製品の事業化において重
要な役割を果たしてきた(詳細はP4)。
地場企業
部品メーカーサプライヤーや従業員との関係
から、関西地域から出ることは難しいケース
が多い。
(出所)ヒアリング、各種公表情報より日本政策投資銀行作成
装置メーカーに
代表される
「関西ものづくり
の集積」の活用
マーケットメイク
(市場の創造)
(出所)ヒアリング、各種公表情報より日本政策投資銀行作成
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当レポートの分析内容・意見に関わる箇所は、筆者個人に帰するものであり、株式会社日本政策
投資銀行の公式見解ではございません。
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本資料は著作物であり、著作権法に基づき保護されています。著作権法の定めに従い、引用する際
は、必ず、出所:日本政策投資銀行と明記して下さい。
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さい。
(お問い合わせ先)
株式会社日本政策投資銀行 関西支店 企画調査課
〒541-0042
大阪市中央区今橋4-1-1 淀屋橋三井ビルディング13F
Tel:06-4706-6455
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