分散画像処理環境 VIOS III の開発 - MATSUO TSUMURA lab.

分散画像処理環境 VIOS III の開発
山本伸一 中田浩作 松尾啓志 岩田彰
名古屋工業大学電気情報工学科
〒 466 名古屋市昭和区御器所町
[email protected]
[email protected][email protected]像処
理環境 VIOS を提案してきた。本発表では、(1) 柔軟な並列処理記述能力を備えた新しい並列画像処理言語
VPE-p の開発 (2) ネットワークを介してアクセスする必要のある大域変数へのアクセスに対して、ユーザ
が明示的にバッファの統合方法を明記するプログラマブル大域変数バッファの導入 の2点の拡張を行った、
VIOS III の提案を行うとともに、並列画像認識アルゴリズムなどを実装することにより、新しい VPE-p
の記述能力および処理能力の評価を行う。
キーワード 分散処理、分散処理記述言語、画像処理、マルチスレッド
A Distributed Image Processing Environment
VIOS III
Shinichi Yamamoto, Kosaku Nakada, Hiroshi Matsuo, Akira Iwata
Dept. of Electrical and Computer Eng.,Nagoya Institute of Technology,
Gokiso-cho, Showa-ku, Nagoya, 466, Japan
Abstract We proposed a network computer software environment for parallel image processing, VIOS.
In this report, the third version, VIOS III is proposed. In VIOS III, a new parallel processing language
VPE-p which has exible syntax for describing parallel algorithms has been developed. And the new
programmable buer for accessing global variable through local area network is also proposed. The
description ability for parallel image processing algorithms and processing performance are investigated
by several image processing and recognition algorithms.
Keyword distributed processing, distributed processing description language, image processing, multi
thread
1
1
2
はじめに
分散画像処理 VIOS
2.1
近年、画像処理やパターン認識アルゴリズムが大
規模化しており、高速なワークステーションを用い
ても、数時間にも及ぶ計算時間を必要とするアルゴ
リズムも開発されている。一方、画像処理やパター
ン認識の分野では、画素ごと、もしくは小領域を単
位として並列実行可能なアルゴリズムも少なくない。
そこで我々は、従来よりネットワークで結合した複
数の CPU を利用することにより、大規模な画像処理
を実行する分散画像処理環境 VIOS を提案し、VIOS
I,VIOS II の開発を行ってきた [1][2][3] 。一方、近年
のワークステーションの高速化、低価格化、および
転送速度 100Mbit/sec を超えるネットワークの普及、
ネットワークで結合された複数のワークステーショ
ンを用いた分散処理や、共有バス方式のマルチCP
Uシステムなどが一般的となってきた。しかしこれ
らのシステムを用いるためには、ネットワークプログ
ラミング、排他制御などシステムプログラミングに関
する知識が必要となる。そこでネットワーク分散環境
を構築するためのライブラリとして、テネシー大学
などの PVM[5] 、アルグローネ国立研究所の MPI[6]
などがある。しかしこれらは比較的低水準のライブ
ラリとして実装されているため、利用にはやはり分
散処理の知識を必要とする。
一方画像処理の分野においても、ニューメキシコ
大学の Khoros[7], オスロ大学の XITE[8] 、AVS[9] な
ど画像処理環境が開発されている。しかしこれらは、
特定の処理だけをネットワーク上の他の計算機で実
行する機能は含まれているものの、画像処理の持つ
データ並列性を考慮したプログラムを作成すること
はできない。
VIOS
のシステム構成
VIOS は、VPE・IPU・OM の 3 種類のプロセス
から成り立ち、図 1 に示すように、ネットワーク上
の複数のワークステーションに各プロセスが分散し
て存在する。この 3 種類のプロセスが、互いに通信
しながら処理を行う分散処理環境である。
VPE(Visual Programming Editor)
ユーザとのインタフェースプロセス。エディタ
機能を有し、処理プログラム (VPE-p) を作成
することができる。
IPU(Image Processing Unit)
VIOS において、実際の画像処理を行う画像処
理エンジンプロセス。すでに存在する画像デー
タに画像処理モジュールで記述された処理を施
すことにより、新しい画像データを生成する。
このプロセスをネットワーク上に複数配置する
ことにより分散処理を実現する。
OM(Object Manager)
画像データ、IPU の管理、および処理のスケ
ジューリングを行うプロセス。VPE から送ら
れてくる命令を解析し、適切な IPU へ処理を
振り分けることにより処理の分散化を行う。
VPE
IPU
IPU
VIOS は、並列プログラミングの知識があまりな
いユーザにも容易に並列処理が記述できる画像処理
用並列記述言語 VPE-p を有する汎用並列画像処理環
境である。しかし VIOS II で開発した並列画像処理
OM
言語( VPE-p) は、画像処理の中でも、画素、行、列
IPU
単位の処理並列性に注目して並列処理を記述する手
IPU
法を導入したため、並列処理記述能力が低いという
欠点があった。そこで本発表では、(1) 柔軟な並列処
理記述能力を備えた新しい並列画像処理言語 VPE図 1: VIOS のシステム構成
p の開発 (2) ネットワークを介してアクセスする必
要のある大域変数へのアクセスに対して、ユーザが
明示的にバッファの統合方法を明記するプログラマ
2.2
VIOS I
ブル大域変数バッファの導入 の2点の拡張を行った
VIOS I では、画像処理アルゴリズムの実行過程
VIOS III の提案を行うとともに、並列画像認識アル
ゴリズムなどを実装することにより、新しい VPE-p で、
(中間)画像から(中間)画像を生成する画像間
演算を処理の基本単位
(以下画像処理モジュール)と
の記述能力および処理能力の評価を行う。
2
し、並列実行単位とした。例えば、入力画像を、ラ
box
演算処理が 1 ブロックごとに独立で、必要な
プラシアンフィルタリングを行い、中央値フィルタ
入力画像の範囲が注目しているブロックとその
リングの後、二値化するような処理の場合は、おの
周辺画素である演算。
おの3つの処理をモジュールとして定義した。VPE
において、視覚的にプログラミングされたプログラ
all
演算処理が分割実行不可能で、1 度に全体の計
ムを解析し、画像処理モジュール間で互いにその処
算を行う演算。
理が独立なものを、別の IPU で実行することにより
分散処理を行った。
さらに VIOS I では、負荷予測を元にした分散ス
2.4
VIOS II の問題点
ケジューリングを提案した。これは、IPU から定期
的に送られてくる負荷情報と OM 内部での負荷推定
ワーキングセットの導入により、明らかなデータ
を元に瞬時的な負荷を予測し、処理のスケジューリ 並列性がある画像処理演算については簡単に処理を
ングを行うものである。
記述することが可能となった。しかし記述できる処
理は、松山らが分類した基本演算パターン [4] で分
類した場合、画素すべてに対して同一な演算を行う
2.3
VIOS II
一括型演算と、1画像と単一要素データが入力とな
VIOS II では、画像処理モジュール内の並列性に る分散型演算のみであり、その他の分類である集約
注目し、モジュール内の並列性に合わせて、画像を 型演算、スキャン型演算、展開型演算は記述不可能
(1) データ並列の依存関係、(2) 処理の中心となる画 であった。
素集合(以後注目画素)、(3) 参照だけを行う画素集
例えば、入力画像から最大値を発見する演算は、
合(以下周辺画素)の3つの情報を持つ並列画像処 明らかに画像を部分的に分割した単位で並列性が存
理ワーキングセット(以下ワーキングセットと呼ぶ) 在するが、VIOS II の VPE-p では、ブロック単位で
と呼ぶ最小単位まで分割することにより分散処理を の実行ができるワーキングセット box は存在するも
行う手法を提案した (図 2参照) 。
のの、言語構造の中に集約型演算の枠組みが記述不
可能であったため、このような処理は並列実行不可
working set に
能であった。
分割
pixel working set
処理
2.5
処理
入力画像
図
VIOS III
での拡張
VIOS III では、画像処理アルゴリズムが有する
様々な並列性の記述を可能とするために並列画像処
理記述用言語 VPE-p に以下のような拡張を行った。
出力画像
2: 並列画像処理ワーキングセット単位の処理
モジュール内に逐次処理記述部を導入
画像処理の記述方法は、C 言語に似た文法を持つ
並列画像処理記述言語 VPE-p によって行う。VPEp での並列性の記述は、ワーキングセット単位で行
う。従って並列実行が可能なワーキングセット (pixel,
row, column, box) では、1モジュールが複数のワー
キングセットを有することとなる。
ワーキングセットは、以下の 4 種類が現在実装さ
れている。なお実行時には、ワーキングセットの実
行は、同じ IPU に割り当てられたワーキングセット
群を単位に行う。
pixel
演算処理が 1 画素ごとに独立で、必要な入力
画像の範囲が注目画素と注目画素近傍の周辺
画素である演算。
row, column
演算処理が 1 列ごとに独立で、必要な入力画
像の範囲が注目画素行(注目画素列)とその近
傍の周辺画素である演算。
逐次的な処理を含む画像処理演算をモジュー
ル内部に記述できるように、モジュール内部を
ワーキングセットごとの記述を行う複数の並
列処理記述部と、ワーキングセットによる分割
を前提としない処理の記述を行う複数の逐次
処理記述部に別けて記述が行えるようにする。
この拡張を box ワーキングセットと組み合わ
せることにより、並列記述能力は飛躍的に向上
するものと考える。
ネットワーク透過型大域変数の導入
ネットワーク上に分散配置されている複数の
ワーキングセット間での共有可能な変数とし
て、モジュール内で大域的にアクセスできる大
域変数を定義する。このことにより、並列処理
記述部の間や、逐次処理部と並列処理部の間で
3
値を受け渡すことが可能となる。さらに、ワー
キングセットを超えた画素データのアクセスも
可能とする。
引数宣言部では、以下のように入出力の型などを
指定する。
データ型 変数名
非同期実行
ネットワーク分散処理の様に、計算資源が並列
レベルに対して多く配置できる場合、非同期実
行を導入することにより、より並列性が増し、
結果として処理速度が向上する。MPI では、非
同期実行を導入することにより、並列記述能力
の向上が可能である。VIOS III では、VPE-p
のすべての記述部に非同期実行を導入するこ
とは、制御の複雑性を増すと考え、モジュール
間の処理関係を記述する メインフロー記述部
において、変数の依存関係を解析することによ
り、モジュールの非同期実行を可能とする。
プログラマブル大域変数バッファ
入出力変数が Image 型1 のときは 、on に続いて
ワーキングセットタイプを指定する。演算に周辺画
素が必要なときには、cache に続いて、その幅を指
定する。
モジュール内部はワーキングセットごとの記述を
行う並列処理記述部と、画像分割を行わない処理の
記述を行う逐次処理記述部に分けられる。
図 3は、512x512 画素からなる画像を 32x32 画素
の box ワーキングセットに分けて、最大値検出を行
う画像処理モジュールの記述例である。
module Max(a:input, x:output)
int a on box[32][32];
int x;
{
int max[16][16];
concurrent
{
max[hotx(a)/32][hoty(a)/32]=a[0][0];
for (int i = 1; i < 32; i++)
for (int j = 0; j < 32; j++)
if (max[@x][@y] < a[i][j])
max[@x][@y] = a[i][j];
}
{
x = max[0][0];
for (int i = 0; i < 16; i++)
for (int j = 0; j < 16; j++)
x = (x > max[i][j]) ? x:max[i][j];
}
}
画像処理にはハフ変換やジオメトリックハッシ
ングなどの確率的手法のように、変数のアクセ
スに必ずしも、厳密な排他制御を必要としない
場合や、ある処理単位の終りに、適切な規則に
基づいて各 IPU 内に設けたバッファを統合す
ることにより大域変数へのアクセスを IPU 内
の局所変数へのアクセスに置き換え可能な場
合も少なくない。そこで VIOS III では、分散
画像処理環境に適したプログラマブル大域変
数バッファを提案する。
3
分散画像処理記述言語 VPE-p
VPE-p は、各モジュール間の処理の流れを記述す
るメインフロー記述部と、個々の画像処理アルゴリ
ズムを記述するモジュール定義部からなる。
3.1
画像処理モジュール内並列記述の拡張
モジュール定義部は、実際の画像処理の記述を行
う部分である。入出力のワーキングセットのタイプ
を変数名とともに指定し、各ワーキングセットの処
理を記述する。
モジュール宣言部では以下のように入力画像デー
タ名、出力画像データ名、その他の変数名の順に並
べて記述する。
module モ ジュー ル 名 (a1,…:input, x1,…
:output, p1,…:paramator)
[on working set [cache n]]
図
3: 処理モジュール定義例 (最大値検出)
逐次処理部において宣言された変数は、大域変数と
して扱われる。この例では、max が大域変数である。
concurrent ブロックは、モジュール内でのワーキ
ングセット単位での並列処理を記述するブロックで
あり、モジュール内に複数個配置することができる。
conncurrent ブロック内部では、引数宣言部で指定
されたワーキングセットごとの記述を行う。このブ
ロック内の画像の座標は、ワーキングセットの原点
からの相対座標で表される。concurrent ブロックの
1 行目における a[0][0] は、各 box の最も左上の値と
なる。なおワーキングセットに分割する前の原画像
1 VIOS では画像特有のデータ構造として、Image 型を導入した。この型は、本来画像が持つべき種々の情報 (各画素の型、大き
さ、過去の処理の履歴など) を持つ
4
3.3
の原点からの座標でアクセスするときは、二重かっ
こ ([[添字]]) を用いる。また、hotx(),hoty() は、原
画像におけるワーキングセットの注目画素(複数の
注目画素がある場合は左上)の位置を表す組み込み
関数である。
並列処理部と逐次処理部の間では、並列処理部単
位に同期がとられる。つまりすべての並列部で記述
されたすべてのワーキングセットの演算が終了する
まで、逐次処理部に制御が移ることはない。
この例は、concurrent ブロック内において各 box
ワーキングセット内ごとの最大値を大域変数 max に
代入し、すべてのワーキングセットの最大値の中か
ら、原画像の最大値を求める処理例である。
3.2
遠隔データへのアクセス
従来の VIOS では、ワーキングセット外へのアク
セスを行うことは不可能であった。しかし、この制
限は明らかに多様な分散画像処理を記述する上での
重大な欠点となった。そこで、VIOS III ではワーキ
ングセットを超えた画素データへのアクセスを透過
的に行えるように VPE-p の拡張を行った。
しかし、(1) 透過的なアクセスを実現するために
は、ワーキングセット内の画素データに対するアク
セス毎に、そのアクセス方法を決定する必要がある。
(2) ワーキングセット外の画素へのアクセスは、ネッ
トワークを介して行われると同時に、排他制御も必
要なため莫大なアクセスコストが必要となる。一方、
画像処理においては画素値に厳密さを必要としない
場合も少なくない。
この2点を考慮して、ワーキングセット外の画素
へのアクセスポリシとして、次に示す4つのポリシ
を用意し、ユーザがアルゴリズムに応じて明示でき
るものとした。
ワーキングセット外の画素へのアクセスをチェ
ックしない (デフォルト )
画像処理は、一般に複数の画像から新しい画像を
作り出すといった動作の連続で構成されるものが多
い。VIOS II では、こういった処理をモジュールの
形で記述し、メインフローにおいてモジュールを組
み合わせることにより画像処理全体を構成する。つ
まり、モジュールは逐次的な組み合せで実行される
ことになる。
しかし、逐次的に処理されるモジュール間で依存
関係のないものについては、同時に実行が可能であ
る。VIOS III ではこの点に着目し、メインフロー
の変数の依存関係を実行時に解析することによりモ
ジュールを非同期に実行することを可能にした。
図 4は、メインフローの記述例である。load はファ
イルから画像を読み込むモジュールで、VIOS にあら
かじめ用意されているものである。ここで、PreSyori() は、画像に固有な値を計算するモジュール、Syori
は、入力画像から新しい画像を作り出すモジュール
であるとする。
この例では、load モジュールは同時に実行するこ
とが可能である。また、2 つの PreSyori は、load モ
ジュールの終了を待つ必要がある。次の if 文では、
a と b の値を必要とするので、PreSyori モジュール
の終了を待つ必要がある。つまり、load モジュール
が終了するまでの間、このプログラムはブロックす
る。load モジュールが終了すると、それに対応した
PreSyori モジュールが起動される。そして、2 つの
PreSyori モジュールの実行が終わるまで if 文でブ
ロックする。2 つの PreSyori モジュールの実行が終
了すると if 文の条件式が評価され、対応する Syori
モジュールが起動される。
main()
{
image A,B,C;
int a,b;
ワーキングセットが有する情報から、画素値を
補完する (comlete)
なお VPE-p 上では、以下のように記述する。
#vios boundary 画像データ名 access mode
(get,complete,const 定数のいずれか。指定が無
い場合はネットワークを介してアクセスするこ
とはしない)
A = load("foo.obj");
B = load("bar.obj");
C = new("hoo.obj");
ネットワークを介して真の値を獲得する (get)
指定した定数を参照結果とする (const n)
非同期実行可能 main 文
}
5
PreSyori(A,a);
PreSyori(B,b);
if (a > b)
Syori(A,C);
else
Syori(B,C);
図
4: メインフロー記述例
4
る仮想計算機として実装し、IPU を動作させるため
の言語として、PostScript に似た構文を持つ IPU-p
を導入した。
IPU を仮想計算機する理由として
プログラマブル大域変数バッフ
ァを用いた遠隔データへの書き
込み
画像処理には、比較的パラメータの調整など対
大域変数へのアクセスは、各プロセッサ間の通信
話的な要素が必要な処理が多い。そこで、処理
遅延が膨大なネットワーク分散環境においてはシス
部をインタープリタとして実装することによ
テムのボトルネックになる。しかし、画像処理、認
り、処理の対話性を向上させる。なおデバック
識アルゴリズムの中には大域変数を局所変数と見な
やパラメータの調整の終わったモジュールは、
して実行し適当な処理単位毎にそれぞれの値を統合
IPU の記述言語である C++へ変換して IPU
し処理を進めることができるものが多い。VIOS III
内に実装を行う方式とする。
では、画像処理が持つこのような特性を利用し、各
ワーキングセット群を処理する IPU 毎にバッファを
現在の汎用OSが提供する情報だけでは、分
持たせ、演算に応じてユーザがバッファの統合処理
散スケジューリングを行う上で必要な情報を
を指定することにより大域変数へのアクセスの高速
得ることができない。そこで IPU を実装計算
化を実現した。
機として実装することにより、例えばモジュー
図 5は、濃度ヒストグラムの計算にバッファ統合
ル内に設定された部分の実行時間の通知など、
処理を用いた場合のデータの流れである。各 IPU ご
分散スケジューリングをより効率よく行える情
とに大域変数 hist のバッファを持たせ、バッファに
報を得ることが可能となる。
対して書き込みを行う。eld の実行がすべて終わっ
た時点で、各バッファを足し合わせることによりヒ が挙げられる。
ストグラムの計算が終了する。
VIOS III では、基本的に IPU を VIOS II と同じ
考えかたで実装を行ったが、以下の変更を加えた。
IPU
hist
IPU
hist
バッファ
バッファ
hist
従来、IPU で実行されるすべてのモジュール
を、インタプリタ言語である IPU-p に変換し
て実行可能としていたが、C++にコンパイル
して、IPU 内に組み込む方式に比べて数十倍
実行速度が遅く、大規模な演算が多い画像処理
では、たとえデバックのためといえども致命的
な遅さであった。そこで VIOS III ではインタ
プ リタとして実行可能なモジュールを メイン
フロー部分のみとし、他のモジュール部分は、
VPE-p から直接 C++に変換し、コンパイル
した後ダイナミックロード [11] することした。
この変更によっても、初期の目的である対話性
とスケジューリング情報の獲得には問題ないと
考える。
IPU
hist
バッファ
入力
各IPUに
バッファを用意
;演算終了後
IPU
IPU
hist
hist
IPU
出力
hist
hist
図
バッファの統合
(和)
5: プログラマブル大域変数バッファを用いた濃
スレッドライブラリを SunOS4.1.x の LWP(Light
Weight Process) からスレッドに独立な CPU 資
源を割り当てることが可能な Solaris Thread[10]
に変更した。この変更により、単にネットワー
ク分散環境だけでなく、マルチ CPU の計算機
で1つの IPU から複数のスレッド を実行する
ことにより、処理速度の向上が期待できる。
度ヒストグラムの計算
バッファの統合手法としては、現在、最大値、最
小値、和を実装している。
5
5.1
VIOS III
IPU
の実装と性能評価
IPU 内には、IPU-p を理解し実行する ip(image
processor) を用意する。ip は 1thread として実装し
の実装
VIOS II では、IPU を画像処理モジュールの実行
が可能で、動的に画像処理モジュールの追加ができ
た仮想的なプロセス資源であり、無限に作成可能で
あると同時に、複数並列に動作する。この ip を必
6
が少なく、またデータ並列を前提とする VPE-p で
導入することは困難である。
さらに、松山ら実装したソーベルフィルタおよび
非極大点の抑制による細線化、大津の閾値決定法に
よる閾値選択、二値化、ハフ変換、ジオメトリック
ハッシングを含む並列認識処理過程 [4] についても
記述が可能であることが確かめられた。
要時に確保し画像演算処理を実行させることで、1
IPU 内での処理の並列実行を実現する。
ip は、モジュール定義・起動 ip(以後 ip0) 、処理演
算実行 ip(以後 ip1 )と、メインフロー実行用 ip(以
後 ip2) の 3 種類の ip から構成される。ip0 は、OM
からの入力を受付、その入力に応じてモジュールの
定義や、他の ip の起動を行う。ip1 では、IPU にあ
らかじめ定義されたモジュールまたはユーザの定義
したモジュールを実行する。ユーザ定義モジュール
は、ダ イナミックロード ライブラリを用いて動的に
IPU にロード し、実行する。ip1 は、モジュールの
修了時に解放される。ip2 では、インタプリタとし
て実行されるメインフローの実行を行う。
5.2
module Histogram(in:input,
histogram:output)
int in
on box[32][32];
int histogram[];
#vios mutex histogram off add
{
concurrent
{
for (int x = 0; x < 32; x++)
for (int y = 0; y < 32; y++)
histogram[in[x][y]]++;
}
}
大域変数へのアクセス方法とその実装
通常モジュールは、IPU の数に応じてそのワーキ
ングセットのタイプに応じた適当なワーキングセッ
ト群単位で、複数の IPU に振り分けられ分散実行さ
れる。大域変数は、その複数の IPU のうち、最も処
理能力の高い計算機で実行されている IPU に保持す
る。これは、逐次処理部を実行するメインフローモ
ジュールから大域変数のアクセスを、ネットワーク
を介さず行えるようにするためである。
なお VPE-p 上では、大域変数への排他制御を以
下のように記述する。
#vios mutex 変数名 [on | o]
5.3
図
5.4
6: ヒストグラム演算プログラム
実行性能評価
次に、VIOS III 上で以下の画像処理を実行するこ
とにより、プログラマブル大域変数バッファの有効
性、及び台数効果性能の評価を行った。
並列処理記述能力
拡張した VPE-p の並列処理記述能力を調べるた
め、オスロ大学で開発されている画像処理ライブラ
リ XITE[8] のうち、明らかに処理に並列性があるも
のについて VPE-p での記述を試みた。その結果以
下に示すような並列性を持つものについて、拡張し
た VPE-p で記述が可能であることが確かめられた。
5.4.1
プログラマブル大域変数バッファの評価
ネットワークで結合された 4 台のワークステーショ
ン上で IPU を実行し、さらに OM 、VPE を別々の
ワークステーション上で実行した分散環境上で、入
力画像からヒストグラムを作成する図 6で示したプ
ログラムを実行することにより、バッファ統合の有
効性を検討した。その結果を表 1に示す。なお表中
IPU でヒスト
のヒストグラム演算の列は、実際に各
一括型演算 (微分処理、ノイズ除去、線分検出、
グラム演算を行うために必要であった実処理時間で
Sobel などのマスク処理など)
あり、分散処理コストは、ネットワークを介したヒ
ストグラム配列へのアクセスコストである。表に示
分散型演算 (濃度変換、二値化など)
す通り、バッファ統合なしの場合は、ヒストグラム
集約型演算 (濃度ヒストグラム、最大値検出、 を格納する配列をアクセスする毎にネットワークを
線分検出など)
介したアクセスおよび排他制御が必要となり膨大な
分散処理コストが必要となる。一方バッファ統合あ
なお松山らの分類でのスキャン型演算、展開型演 りの場合は、ヒストグラム演算終了後の統合処理の
算は、今回提案した拡張でも記述不可能である。し みが必要であり、大幅な処理時間の短縮結果が得ら
かし、各画素に別々の処理を割り当てる展開型演算 れた。
は、一般的な画像処理アルゴリズムとしては適応例
7
ヒストグラム演算 (秒)
分散処理コスト (秒)
合計処理時間
速度比
表
バッファ
バッファ
統合なし
統合あり
0.6
15206.4
15207.0
1.0
0.6
1.9
2.5
6082.0
本システムの今後の課題として、次の点を検討中
である。
分散スケジューリングアルゴリズムの強化
処理モジュールの実行時間や、プログラムのフ
ローから、処理モジュールに優先順位をつけ割
り振りを最適化するようなスケジューリングを
検討中である。
1: バッファ統合手法の有無によるヒストグラム
画像処理ライブラリの充実化
算出アルゴリズムの実行時間
5.4.2
VIOS の処理ライブラリは、基本演算しか用意
されていない。そこで汎用的に使えるように最
低限必要なライブラリをそろえる。
密結合計算機による実行性能の評価
次に VPE-p で記述した松山らの実装した並列認
識処理過程 [4] を、8 CPU がローカルバスで結合さ
れたサンマイクロシステムズ社製の SS-1000 上で実
行することにより、IPU の増加による実行速度向上
の評価を行った。なお入力画像は 512x512 画素から
なる画像を用いた。実行結果を表 2 に示す。表に示
す通り、8台の CPU を用いて実行した場合、約6
倍の速度向上結果を得た。
IPU 数
処理時間 (秒)
速度比
表
6
1
612.6
1.00
2
329.4
1.86
4
167.0
3.67
なお本研究の一部は財団法人中部電力基礎技術研
究所の助成により行われた。
参考文献
[1] 松尾啓志、和田錦一、岩田 彰、鈴村宣夫:\分散
画像処理環境 VIOS", 信学論, Vol.J75-D-II, No.8,
pp.1328-1337(1992)
[2] H.MATSUO, A.IWATA:\A distributed image
processing enviroment VIOS II", ACCV93,
pp.715-718(1993)
8
101.6
6.03
[3] 加藤博之、松尾啓志 、岩田彰:\分散画像処理環
境 VIOS II の検討", 通学技報, Vol.PRU92-166,
pp.79-86(1993)
2: 並列認識処理過程の並列処理効果
まとめ
VIOS システムは、ユーザとのインタフェースで
ある VPE 、画像処理演算を行なう IPU 、画像データ
や IPU の管理その他処理のスケジューリングを行う
OM の3つのプロセスをネットワーク上に配置した
分散画像処理システムである。
並列画像処理記述用言語 VPE-p の拡張を行い、
様々な並列性を持つ画像処理アルゴリズムの記述が
可能であることを確認した。また、ネットワーク大
域変数へのアクセス手法として、プログラマブル大
域変数バッファの提案、実装を行い、実験によりシ
ステムの有効性を示した。
本システムは、ソフトウェアのみによって成り立
つシステムであり、特別なハード ウェアを必要とし
ない。また、近年急速に普及してきた、ネットワー
クで結合された複数のワークステーション上での実
装を仮定しているので、導入が容易であり、計算機
資源の有効利用に役立つものと考える。
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[4] 松山 隆司:\再起トーラス結合アーキテクチャに
基づく並列画像理解システムに関する研究", 平
成7年度科学研究費補助金(一般研究( B ))研
究成果報告書 (課題番号 05452359)
[5] http://www.epm.ornl.gov/pvm/
pvm home.html
[6] http://www.osc.edu/lam.html#MPI
[7] http://www.khoral.com/khoros/
[8] http://www.i.uio.no/~blab/Software/Xite/
[9] 吉川慈人ほか:\ビジュアルプログ ラミング技術
を使った可視化ツール AVS", 日経 CG,pp.193203(1991/4)
[10] SunSoft:\Solaris 2.5 Multithread Programming Guide"
[11] SunSoft:\Solaris 2.5 Linker and Libraries
Guide"