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牛ウイルス性下痢・粘膜病
動衛研
(BVD-MD: bovine viral diarrhea-mucosal disease)
病原体: フラビウイルス科ペスチウイルス属のRNAウイルスである。細胞病原性
(CP)と非細胞病原性(NCP)の2つの生物型がある他、遺伝子型で1型、2型に分
かれ、さらにいくつかの血清型が存在する。
感受性動物: 牛、山羊、羊、豚、鹿等に本ウイルスは感染可能だが牛が最も感受
性が高い。
発生原因: 感染牛との直接・間接接触、あるいは空気伝播により感染が起こる。
NCP株が抗体陰性妊娠牛に感染すると胎児への垂直感染し死流産や先天性奇
形を引き起こす。特に免疫応答が未熟な100日齢以下の胎児感染ではウイルスを
一生排泄しつづける持続感染牛が出産されることがある(免疫寛容)。持続感染牛
はCP株の重感染により致死的な粘膜病を発症する高リスク群と考えられている。
臨床症状: 発症牛では鼻粘膜、胃粘膜、腸粘膜の糜爛、潰瘍、出血等が認められ
る。一般的には二峰性の軽い発熱と一過性の白血球減少症が起こるだけだが、免
疫機能が抑制されるので呼吸器病にかかりやすくなる。
予防法: 多量のウイルスを排泄する持続感染牛を摘発・淘汰することが最も重要。
感受性牛群に対する本ウイルスの蔓延を防ぐ手段としてワクチン接種が有効。
BVDとBVD-MD
成牛が罹患するBVDは、大きな問題ではない。
しかし、妊娠牛が感染すると・・・
胎児の感染は、次世代の様々な問題を引き起こす: 流産、死産、奇
形、・・・・
それよりも大きな問題は、持続感染(PI: persistent infections)!
大量のウイルスを排出する持続感染牛は、
粘膜病(MD)を発病して2年程度で死亡する。
妊娠牛を感染さえ、子牛生産に莫大な被害をもたらす。
持続感染牛ができる「免疫寛容」とは? 「Self」 と 「Not-Self」?
免疫寛容(Immune Tolerance)とは、特定抗原に対する特異的免疫反応の欠如あるいは抑
制状態のことを示し、自己体組織成分に対する免疫無反応性はこれに由来する。牛ウイルス
性下痢ウイルス、ボーダー病ウイルス、豚コレラウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスな
どでは胎子期における垂直感染により、病原体に対する免疫寛容が成立することがある。牛
ウイルス性下痢ウイルスに対して免疫寛容が成立した動物は重要な感染源となる。
こうした理由から、BVDよりも、粘膜病(MD)に注意を喚起するた
めに、BVD-MDと命名している。
公共牧場を中心とした牛ウイルス性下痢・粘膜病対策について
公共牧場で感染した牛を介して農場内へBVDVが侵入・流行した事例
ホルスタイン種112頭を飼養しており、公共牧場入牧牛にのみ入牧約1カ月前に牛
伝染性鼻気管炎(IBR)ワクチンが接種されていた。一般に胎齢40日から120日で
の感染で持続的感染(PI)牛が産生されるとされており、当該牛の母牛はPI牛産生
のリスクの高い時期の殆どを公共牧場内
で飼養されていたことが判明した。また、本
農場では、この年に入牧した妊娠牛の子牛
の半分以上で、死産・出生後死亡等の異
常が認められた。
感染時期の違いによる胎子への影響
種
付
け
0
妊
30
60
娠
90
期
間
120
胚死滅
150
180
210
死流産
胎齢60日以降
胎齢60日まで
持続感染牛
妊娠中に感染した場合、
妊娠時期によって胎子には、
様々な影響が現れる。
胎齢40~120日
分
娩
分
娩
先天異常
胎齢100~150日
牛ウイルス性下痢・粘膜病をご存知ですか?
健康(抗体産生)
胎齢150日以上
摘発された持続感染牛
(
腸粘
の膜
割病
面で
:
粘死
膜亡
面し
のた
出子
血牛
、の
び腸
ら病
ん変
)
滋賀県
粘膜病で死亡した黒毛和種子牛
粘膜病(MD)とは、持続感染牛がおこす
病気の一つで、発熱、水様性下痢、脱水、
口腔粘膜のびらん・潰瘍などの症状を呈
し、2週間ほどで死亡する。全身の粘膜に
出血やびらん、潰瘍がみられる。6か月~
2歳での発病が多い。持続感染牛の内、
約2割が粘膜病になり、死亡する。
子宮内感染した子牛にみられる
小脳性運動失調。催奇形成
先天異常としては、子牛の盲目、小脳
欠損、奇形などを示す。 (下)
日本獣医師会
血液や粘液
の混じった
下痢が特徴
(上)
BVD-MDの問題点
BVD-MDは終生免疫を与える感染症で(一度感染すると、再び
感染しない)、 健康牛は軽度の呼吸器・下痢症状をおこして回復す
る。それなのに、BVD-MDが問題視されているのはなぜだろうか?
それは、持続感染牛が同居牛に与える影響が大きく、結果として経
済的な被害をもたらすからである。 「回復する」とはいえ、BVDウイ
ルスに感染すると、生体の免疫能が低下する。 特に、子牛や育成牛
はBVDウイルスによって他のウイルスや細菌、寄生虫に感染しやす
くなる。 また、その症状は通常よりも重篤になるため、治療が長期化
し、治療費の増大につながる。 さらに、乳牛飼養農場では、牛群の
疾病発生率が高くなるばかりか、繁殖成績の低下、乳量の減少がお
こることが報告されている。
これらのことから、持続感染牛を農場内に放置しておくことは、結
果として生産性の低下につながる。 しかしながら、持続感染牛は健
康牛と区別がつかないこともあり、農場内で見つけ出すことは困難で
ある。 北海道
大分
兵庫
鳥取
長野
群馬
岐阜
BVD-MDの対策
最重要対策は、持続感染牛を早期摘発し、淘汰することである。
持続感染牛は継続的、 多量にBVDウイルスを排出しているので、感
染源を根本から断つ必要がある。持続感染牛を摘発するには、血液
からのBVDウイルス分離やウイルス遺伝子を検出する方法、 乳用
牛群の場合はバルク乳を検査する方法があり、年に2回はバルク乳
の検査を実施することが望ましい。
次に、ワクチンの適切な使用です。呼吸器系3~6種混合ワクチ
ンが現在発売されている。
早期摘発: 流産等の異常産の発生、繁殖成績の低下や虚弱な子
牛などが見受けられる場合は、 持続感染牛の存在が疑われる。
侵入防止: 導入に当たっては、BVD-MDの検査を受けている牛を
選ぶ(検査結果の分かる証明書等を求める)。
感染予防: 生ワクチンと不活化ワクチンがあり、 それぞれの詳細は
異なりますが、子牛では1~4ヵ月齢の間に、 育成牛や成牛では人
工授精の1ヵ月前の接種が有効である。
成牛の所見: さほどの問題ではない
第四胃の炎症 (右)
FAO: Manual on meat inspection
for developing countries
食肉検査時の所見
CHAPTER 3.
SPECIFIC DISEASES OF CATTLE
第一胃粘膜の鬱血と糜爛
舌
の
潰
瘍
舌の潰瘍
(
左
)
2006 1-6
2006 7-12
世界各地で
発生している
が、その他の
重要疾病の
対策に追わ
れてOIEへの
報告が不十
分である。
日本でも毎年
発生しており、
上半期での
発生もあるが
BVDの主要国によるOIEへの発生報告の推移
2005
前 後
Sweden
Finland
Denmark
Netherlands
Germany
France
Spain
Switzerland
Austria
Russia
Korea
China
Japan
2006
前 後
2007
前 後
2005
前 後
2006
前 後
2007
前 後
Taipei
Indonesia
Australia
New Zealand
Canada
USA
Mexico
Panama
Guatemala
Venezuela
Brazil
Paraguay
Uruguay
Argentina
その他の重要疾病に対する対策で手が回らない?
情報なし
過去にも報告なし
感染はあるが臨床例なし
この期間に報告なし
臨床例を確認
擬似症例はあるが未確定
限定地域で感染確認
頭、戸
180
160
140
戸数
北海道戸数
頭数
北海道頭数
急激に増加している!
120
100
80
60
40
20
頭数で62%、戸数で64%が
北海道で発生!
0
BVD-MD発生の年次推移と地域性
頭、戸
2005年
2006年
計
165頭
110戸
162頭
129戸
327頭
239戸
25
20
1戸当り1.37頭
頭数
15
10
戸数
5
昆虫による媒介ではない!
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
月
BVD発生における季節性の有無(2005、2006年の平均)