向こう5年間の日本経済見通し - 三井住友信託銀行

住友信託銀行 調査月報 2009 年 8 月号
経済の動き∼向こう5年間の日本経済見通し
向こう5年間の日本経済見通し
<要旨>
○2009 年度に入ってから国内景気が回復の動きを見せているが、今後この勢いは
一旦鈍化し、年度内の景気は横ばいの推移に留まるだろう。2010 年度以降は、
米国をはじめとする世界経済の回復とともに輸出が伸びを高めていくことと、
こ
れまで極端な低水準に抑えられていた設備投資が高い伸びを示すことで、
輸出と
設備投資主導の明確な回復局面に入る。2012 年度から設備投資の伸びが鈍化し
始めるために成長率は低下するが、
この頃から労働需給が逼迫して家計所得が伸
びることである程度は個人消費が補い、2013 年度まで1%以上の成長率は確保
すると予想している。
○2008 年度後半の大幅マイナス成長によって、需給ギャップのマイナス幅はかな
り拡大しており、この解消には時間がかかることから、日銀による次の利上げは
2011 年度にずれ込むと見ている。長期金利は、政策金利が据え置かれる 2010 度
までは2%未満で推移し、利上げが現実味を増す 2011 年度以降は2%前半で推
移するだろう。財政赤字拡大による「悪い金利上昇」のリスクは残るが、家計貯
蓄率はプラスを維持すると見られることと、
今後企業部門がかなりの資金余剰状
態になることなどから、
決定的な国債需給悪化による大幅な金利上昇は回避でき
ると見ている。円ドルレートについては、米国の利上げが先行する 2010 年度ま
では金利格差拡大による円安、日本での金利正常化が進み始める 2011 年度以降
は円高を見込んでいる。
総括表 2011年度までの経済見通し
(作成日:2009年7月24日)
GDP
物価
雇用
家計
企業
金融
(末値)
年度
実質国内総生産
個人消費
住宅投資
設備投資
公的固定資本形成
財・サービス輸出
財・サービス輸入
名目国内総生産
GDPデフレーター
消費者物価騰落率(05年基準)
一人当雇用者報酬伸び率
雇用者数
失業率
鉱工業生産伸び率
無担保コールレート
10年国債利回り
円ドルレート
2008
-3.3
-0.5
-3.1
-9.8
-4.4
-10.2
-3.5
-3.6
-0.3
1.2
-0.5
0.0
4.1
-12.7
0.10
1.35
99.0
2009
-4.2
-0.8
-10.9
-18.4
18.7
-18.6
-13.9
-2.6
1.7
-1.3
-1.4
-1.2
5.5
-13.6
0.10
1.43
100.0
→予想
1
2010
1.3
0.4
-0.8
4.1
2.1
5.1
2.6
0.8
-0.5
-0.6
-0.7
0.1
5.6
8.5
0.10
1.85
108.0
2011
1.7
0.5
-0.2
7.5
-8.0
7.5
5.0
1.6
-0.1
0.4
0.0
0.8
4.9
9.0
0.50
2.10
105.0
2012
1.5
0.7
0.0
5.0
-5.0
6.0
4.5
1.8
0.3
0.7
0.6
0.8
4.1
6.0
1.00
2.25
100.0
2013
1.1
0.8
0.2
3.0
-4.0
5.0
3.5
1.5
0.4
0.6
0.8
0.4
3.4
4.0
1.25
2.30
98.0
住友信託銀行 調査月報 2009 年 8 月号
経済の動き∼向こう5年間の日本経済見通し
1.景気の現状と 2009 年度内の日本経済見通し
2008 年 9 月のリーマンショック以降、輸出と生産がかつてないペースで減少し
たが、2009 年 2 月をボトムに双方とも回復してきている。景気転換点の時期に関
するわが国政府の公式見解は、鉱工業生産の動きに非常に大きな影響を受けるこ
とを踏まえると、事後的に決定される景気の谷は 2009 年2∼3月となる可能性が
高い。日本経済は既に景気回復局面に入っていると見て差し支えないと思われる。
しかし、2 月以降の輸出と生産の回復は、国内外の在庫調整一巡によるところが
大きく、持続的な生産増加の条件である「最終需要回復」はまだ満たされていな
い。このため夏場以降の日本経済は、一旦踊り場とも言うべき局面を迎えよう。
外需について、最大の経済規模を持つ米国では、家計の債務調整圧力がまだし
ばらく残っており、当面の成長ペースは緩やかなものに留まると見られる。政府
の経済政策が奏効しているとされる中国の需要に対する期待が高まっているが、
ドル建てで見た GDP は米国の 3 分の 1 未満と経済規模が決して大きくないことや、
中国の GDP に占める輸出比率は 32%と非常に高いことから、中国景気の持続的な
拡大には、結局先進諸国の安定回復が必要となろう。従って、外需がこのまま一
本調子の回復を続ける可能性については、慎重に見ておくべきだろう。
国内に目を向けても、企業収益が 2009 年 1-3 月期に前年同期比▲70.1%と 3 分
の 1 未満にまで減っているため、設備投資など企業部門の需要は、少なくとも 2009
年度内は低迷を続けよう。失業率の急上昇など所得環境悪化がまだ続いている家
計部門にも期待できない。公共投資を含めた政府の支出は増加するものの、その
効果は内外需の低迷を多少補う程度であり、政府部門主導による持続的な景気回
復局面入りを見込むのは無理がある。結果として 2009 年度内の国内景気は、ほぼ
横ばいでの推移に留まると予想している。
2.2010 年度以降の成長率回復期における牽引役
安定した景気回復局面入りには、やはり外需の回復、すなわち米国をはじめと
する先進諸国経済の立ち直りが必要であろう。その米国では、ISM 指数回復の他、
失業保険新規申請件数が低下し始めるなど、底打ちの兆しが出てきている。2010
年に入る頃から、こうした下げ止まりの動きが、緩やかながらも安定した景気回
復につながり、それが他の先進国や新興国にも波及していくことになるだろう。
これによって日本からの輸出は増加していく。2010 年度以降、数年間の輸出
(財・サービス含む)の伸びは実質ベースで5∼8%前後になると予想している。
この増加率は、2002 年に始まった前回の景気回復局面における 10%前後には及ば
ない。この理由は、この時期の高い伸びは、複数の先進国の家計部門がハイペー
スで負債を積み上げながら消費を続けた結果であり、次の回復局面で同じ事が起
2
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経済の動き∼向こう5年間の日本経済見通し
きるとは考えにくいためである。しかしそれでも日本経済には大きなメリットで
あり、景気の牽引役を果たすには十分なインパクトとなろう。
これを受けて、2010 年度からの設備投資は比較的速いペースで増加していくと
予想している。GDP に占める設備投資の比率を見ると、80 年代半ば以降、バブル
期を除いて概ね 14∼15%前後を中心に推移してきたが、2009 年度の設備投資大幅
減を織り込むと、設備投資比率は 12%台と、過去 20 年間で最も低い水準まで落ち
込むと予想される(図1)。このような極端な低水準に抑制された後の反動増が、
2010 年度以降の設備投資伸び率を一層高める要因になると見る。
(%)
図1
GDPに占める設備投資の比率
19
予測
18
17
16
15
14
13
12
85
88
91
94
97
00
03
06
(資料)内閣府「国民経済計算」等により住友信託銀行調査部作成
09
12
結果として、2010 年以降の国内経済は、輸出と設備投資を牽引役として回復色
を強めていき、2011 年度の経済成長率は1%台後半まで高まるだろう。但し資本
ストック循環の観点からみて、設備投資の高い伸びはいつまでも続くわけではな
いため、2012∼2013 年度にかけて設備投資の伸び率は5%未満まで低下していく
と予想している。
3.向こう5年間の国内家計部門の姿
(1)家計所得はいつ回復するのか
現在の家計所得環境は、急激に厳しさを増しており、直近 2009 年 5 月の失業率
は 5.2%、僅か半年で 1.2 ポイント上昇と過去にないペースで上昇している。景気
とほぼ同じタイミングで変動するとされる有効求人倍率は、5 月に 0.44 倍まで低
下し、既に過去最低を更新した。景気に遅行するとされる失業率も、2009 年度内
に過去最高値である 5.5%を上回り、6%近くまで上昇すると予想する。
2010 年度に入って設備投資が伸びを取り戻し、成長率が高まり始めても、家計
部門はまだしばらく厳しい状態に置かれ続けるだろう。国内企業が人件費の増加
に対して慎重な姿勢を取ることが、賃金や雇用者数の増加を抑制するためである。
3
住友信託銀行 調査月報 2009 年 8 月号
経済の動き∼向こう5年間の日本経済見通し
失業率は 2010 年度半ばにピークアウトするものの、その後の低下ペースは緩やか
なものに留まろう。2011 年度頃までは失業率の高止まりとともに労働需給が緩ん
だ状態が続き、一人あたり賃金は伸び悩む。そしてこの間の個人消費の伸びも、
実質ベースでせいぜい 0.5%前後に留まると見る。
しかし、2012 年頃からは様相が変わってくる。労働力人口、特に生産年齢人口
とされる 15∼64 歳の人数が減少するペースがこの頃から速くなり、労働需給がタ
イト化していくためである。
人口問題研究所の推計によれば、生産年齢人口とされる 15-64 歳人口の減少ペ
ースは、2012 年度から若干加速する(図2)。各年齢層の人口と労働力率につい
て一定の仮定を置き、2013 年度までの労働力人口・就業者数を計算したのが下の
表1である。2012 年度からの労働力人口減少ペースの高まりに、景気回復による
労働需要の高まりが重なることで、失業率は明確に低下していくと見込まれる。
図2
(万人)
8,400
生産年齢人口の推移
(%)
2.0
1.5
8,300
1.0
8,200
0.5
8,100
0.0
-0.5
8,000
-1.0
7,900
前年比伸び率(目盛右)
-1.5
生産年齢人口
7,800
-2.0
2007 2008 2009 2010 2011 2012
(資料)人口問題研究所「将来人口推計」
表1
2013
(年)
向こう5年間の失業率シミュレーション
実績← →試算値
2007
労働力人口:(a)
前年比伸び率(%)
就業者数:(b)=(c)+(d)
自営・家従:(c)
6,668
2008
2009
失業率(%):(e)÷(a)
2012
2013
6,627
6,620
6,609
6,574
6,529
▲ 0.3
▲ 0.3
▲ 0.1
▲ 0.2
▲ 0.5
▲ 0.7
6,414
6,373
6,264
6,249
6,283
6,303
6,299
891
853
810
790
774
751
725
▲ 5.0
▲ 2.5
▲ 2.0
▲ 3.0
▲ 3.5
5,454
5,459
5,508
5,552
5,575
5,523
5,520
前年比伸び率(%)
完全失業者数:(e)=(a)-(b)
2011
6,648
0.1
前年比伸び率(%)
雇用者数:(d)
(万人)
2010
▲ 1.2
0.1
0.9
0.8
0.4
255
275
363
371
327
270
230
3.8
4.1
5.5
5.6
4.9
4.1
3.5
(資料)総務省「労働力調査」等により住友信託銀行調査部作成
4
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経済の動き∼向こう5年間の日本経済見通し
過去における失業率と一人あたり賃金の関係を見ると、失業率4%前半が賃金
増減の境界線となっていることがわかる(図3)。この経験則を前提とすれば、
2012 年度以降は失業率が4%近くまで下がることで一人あたり賃金が明確に上昇
していくことが見込まれ、これによって消費の伸び率も1%近くまで高まるだろ
う。設備投資の伸び鈍化を完全には補えないものの、消費が成長率を下支える要
因となると予想している。
図3
失業率と賃金伸び率との関係
(一人当たり雇用者報酬前年比伸び率%)
6.0
4.0
2.0
0.0
-2.0
-4.0
2.0
2.5
3.0
3.5
4.0
4.5
5.0
5.5
(失業率、%)
(資料)総務省「労働力調査」内閣府「国民経済計算」
(2)家計貯蓄率はどう推移するのか
この間、家計貯蓄率はどう推移するだろうか。内閣府「国民経済計算」による貯
蓄率は、80 年代から 90 年代にかけて 10%を超えていたが、2000 年以降低下傾向
にあり、
2007 年度は 2.2%となっている。
10 年前である 1997 年度の貯蓄率は 11.4%
であった。貯蓄額は 35.7 兆円から 6.3 兆円まで、実に 5 分の 1 未満にまで減少し
た。この要因を探るため、所得・消費などの数値を 97 年度と 07 年度で比較する
と、消費が 7.4 兆円増加したことも貯蓄減少の要因の一つであるが、やはり最も
大きいのは可処分所得の減少であり、金額にして▲21.9 兆円、率で見れば▲7%
もの減少となっている(表2)。
表2 家計貯蓄率低下の要因
1997
可処分所得
313.9
自営業主の所得
27.9
雇用者報酬
279.7
財産所得
38.8
その他所得−税等負担差引分
▲ 28.8
名目消費額
278.2
貯蓄額
35.7
貯蓄率(%)
11.4
(資料)内閣府「国民経済計算確報」
2007
291.9
16.9
265.7
25.4
▲ 16.7
285.6
6.3
2.2
(兆円)
変化幅
減少率(%)
▲ 21.9
▲ 7.0
▲ 11.0
▲ 39.3
▲ 14.0
▲ 5.0
▲ 13.4
▲ 34.5
+ 12.2
+ 7.4
+ 2.7
▲ 29.4
▲ 82.3
▲ 9.2
可処分所得が大幅に減少した要因をみると、最も大きいのは雇用者報酬(▲
5.0%減少)、自営業主の所得(▲39.3%減少)という労働所得の減少であり、次
5
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経済の動き∼向こう5年間の日本経済見通し
いで金利低下による財産所得減少(▲34.5%減少)もかなり影響していることが
確認できる 1 。
T P
P T
今後の家計貯蓄率は、少子高齢化の影響もあって間もなくマイナスに落ち込む
との見方もあるが、当部は、まだその可能性は低いと考えている。
2009 年度は、一人あたり賃金・雇用者数の双方が減ることが確実であり、これ
は雇用者報酬の減少を通じて貯蓄率を押し下げる要因となる。しかしその一方で、
定額給付金など無視できない規模の所得増加要因もあることや、2009 年度は名目
消費額もかなりの勢いで減少する見込みであること 2 などから、最終的な貯蓄額は
T P
P T
2007 年度と同程度になり、結果として 2009 年度までの貯蓄率は横ばいで推移する
可能性が高いと見る。
その後は、前述の通り雇用情勢の回復によって雇用者報酬が上向き始めることや、
金利上昇によって財産所得が増え始めることで、可処分所得の伸びはプラスに戻
っていくと予想している(図4)。この時期には名目消費も増え始めるものの、
金利上昇が消費性向を押し下げることもあって、最終的な貯蓄率は横ばいから若
干の上昇となるだろう(図5)。
図4 家計可処分所得伸び率の実績と見通し
(%)
5.0
利子支払
社会保障給付受取
自営所得他
雇用者報酬
4.0
3.0
財産所得
その他負担
税・社会保障負担
系列8
(%)
18.0
図5
家計貯蓄率の推移
16.0
14.0
予測
12.0
2.0
10.0
1.0
8.0
0.0
6.0
-1.0
4.0
-2.0
2.0
-3.0
0.0
予測
-4.0
1985 1988 1991 1994 1997 2000 2003 2006 2009 2012
2004 2005 2006 2007 2008 2009
(資料)内閣府「国民経済計算」
2010
2011
2012
2013
(資料)内閣府「国民経済計算」
前掲表1で見たように、2012 年度から労働力人口は減少するものの、雇用者数
が1%弱のペースで増加するだけで、就業者全体の数が大幅に減る事態は避けら
れる。向こう5年程度の間に、少子高齢化の影響で働き手が減り、家計所得全体
が大幅に減少する可能性は低いということである。むしろ、失業率が目立って低
下することで、一人当たりの賃金が押し上げられるプラスの影響の方が大きく、
1
この 10 年間に、自営業主の数は▲19.3%減少し、雇用者数は+2.4%増加した。この増減率と比
べて、自営業主・雇用者それぞれの所得総額が大幅に減少したのは、所得減少の主因が少子高齢化
ではなく、景気悪化による労働需給の緩和であったことを示している。
2 2009 年度 4-6 月期以降の四半期毎消費額が、1-3 月期比横ばいで推移した場合、2009 年度は前年
比▲2.0%の減少となる(▲2%ポイントのマイナスのゲタが生じている)
。
T P
P T
T P
P T
6
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経済の動き∼向こう5年間の日本経済見通し
雇用者報酬全体では前年比増を維持できると見ている。家計所得に対する少子高
齢化の悪影響がはっきりと表れるのは、更に先のこととなるだろう。
以上、向こう5年間の経済見通しをまとめると、2009 年度内の国内景気は明確
な回復には至らず、横ばいの推移に留まる。2010 年度に入る頃から、米国を筆頭
とする世界経済が上向くことで日本からの輸出が増え、これが国内景気の持続的
回復局面入りのきっかけとなる。設備投資も回復に向かい、それまで極端な低水
準に抑えられていた反動もあって、2011 年度まではかなり高い伸びを維持するだ
ろう。
2010 年度から 2011 年度までの成長率は、
輸出と設備投資を牽引役として1%
台半ばから後半まで高まると予想する。
2012 年度以降は、資本ストックの水準が上昇することで設備投資の伸びが鈍化
していく一方、労働需給の逼迫によって雇用者報酬に上昇圧力がかかり始める。
これによって個人消費の伸びが高まり、成長率を押し上げる要因となろう。ただ
し、設備投資の伸び鈍化を完全に補うほどの勢いはないため、経済全体の成長率
は 2012 年度から 2013 年度にかけて、1%台前半まで低下していくと見込む。
なお消費税率の引き上げは、行われるとすれば家計所得の回復が明確となって
からある程度の時間が経過した 2013 年度前後になる可能性が高いが、政治的な面
での不確定要因が強いため、今回の見通しには織り込んでいない。
4.金融市場の動き
(1) 短期金利(政策金利)の動き
日本の政策金利の引き上げは、2011 年度以降になると予想している。2008 年度
後半の大幅なマイナス成長により、現時点での GDP ギャップは急激にマイナス方
向に振れており、今後の国内物価情勢はデフレ色を強めていくことが避けられな
い。この状態は少なくとも 2010 年度まで続き、従って消費者物価上昇率もマイナ
スのまま推移する。こういった環境下での利上げは現実的ではないため、2010 年
度末までの政策金利は据え置かれることになると見ている。
2011 年度に入って景気回復色が明確になると、国内物価もようやく下げ止まり、
この段階で日銀が利上げに踏み切ると見る。その後も1%以上のプラス成長が続
くことで、政策金利は 2013 年度末までに1∼1.5%に引き上げられると予想して
いる。
(2) 長期金利の動き
長期金利(10 年国債利回り)は、2009 年度内は 1.5%前後にとどまり、景気回
復色が強まる 2010 年から上昇し始めるだろう。
消費者物価上昇率がプラスに戻り、
日銀による利上げが行われる 2011 年度末には2%を上回り、そのまま 2013 年度
7
住友信託銀行 調査月報 2009 年 8 月号
経済の動き∼向こう5年間の日本経済見通し
末まで2%台前半で推移すると予想している。2013 年度末の長短金利組合せは、
短期金利1∼1.5%、長期金利2%台前半となろう。
この間、政府部門の負債は、残高のみならず GDP 比で見ても上昇し続けること
は避けられないため、財政赤字の影響による「悪い金利上昇」のリスクはあるが、
①上で見たように家計貯蓄率がマイナスにまで落ち込むとは考えにくいことに加
えて、②目先の設備投資大幅減によって今後少なくとも2∼3年間は、国内企業
部門が大幅な資金余剰となるとみられること−から、国債需給の決定的な悪化は
避けられるシナリオをメインに据えている(図6)。
図6
(兆円)
企業・家計部門のISバランス
40
予測
30
20
10
0
企業部門資金余剰
-10
家計部門資金余剰
-20
1995
1998
2001
2004
2007
2010
2013
(資料)内閣府「国民経済計算」
(3) 為替の動き
2009 年 7 月現在、円ドルレートは 1 ドル=95 円前後と、過去の水準からみると
かなり円高で推移している。これは、米国景気の悪化が進んだことで、FF レート
の 0∼0.25%と過去最低の水準まで引き下げられ、政策金利が 0.1%である日本と
の政策金利格差が殆どなくなってしまったことが大きい。
このように、為替変動の要因を主に両国間の金利格差に求める見方に立てば、
今後米国景気が安定して FF レートが引き上げられる時期には、日米間金利格差が
再び拡大し、円安ドル高に戻ると考えるのが自然であろう。具体的な水準として
は、2010 年度末において無担保コールレートは 0.1%のまま据え置かれる中、FF
レートは先に利上げに移行すると見られるため、円ドルレートは1ドル=105∼
110 円程度まで円安が進むと予想している。2011 年度以降は、日本でも政策金利
が引き上げられて金利が正常化していく段階に入り、円高が進行する局面に入る
と予想する。
(花田: hanadah@sumitomotrust.co.jp )
H T U
U T H
※本資料は作成時点で入手可能なデータに基づき経済・金融情報を提供するものであり、投資勧誘を
目的としたものではありません。
8