SPS2008-04 - ieice

社団法人 電子情報通信学会
THE INSTITUTE OF ELECTRONICS,
INFORMATION AND COMMUNICATION ENGINEERS
信学技報
TECHNICAL REPORT OF IEICE
SPS2008-04 (2008-07)
GaN HEMT を用いた SSPS 用 5.8GHz 帯 F 級高効率増幅器
石川 亮† 黒田 健太† 本城 和彦† 津田 邦男†† 久田 安正‡
†電気通信大学先端ワイヤレスコミュニケーション研究センター
〒182-8585 東京都調布市調布ヶ丘 1-5-1
††株式会社東芝 研究開発センター 電子デバイスラボラトリー
〒212-8582 神奈川県川崎市幸区小向東芝町 1
‡宇宙航空研究開発機構 宇宙利用ミッション本部 地球観測研究センター
〒305-8505 茨城県つくば市千現 2-1-1
E-mail: †{ishikawa, kuroda, [email protected], [email protected], [email protected]
あらまし 宇宙航空研究開発機構(JAXA)では,宇宙太陽エネルギー利用システム(SSPS: Space Solar Power
System)に関するシステム総合研究および地上で実施可能な要素技術に対する要素試作試験を継続的に実施してい
る.本研究では,SSPS 用のマイクロ波送電用高効率増幅器として利用が期待されている F 級増幅器に関し,マイ
クロ波帯で高出力動作が可能である GaN HEMT 素子を用い,更に,低損失樹脂基板による分布定数型 F 級負荷回
路を用いて高出力 F 級増幅器を構成している.試作された F 級増幅器は,5.72 GHz で最大ドレイン効率 76.5 %,最
大電力付加効率 68.7 %,ドレイン効率最大時の出力電力 33.9 dBm という良好な特性を示した.本報告では,この F
級増幅器を設計する上で各構成部品に要求される特性および設計手法について述べる.
キーワード 宇宙太陽発電,F 級増幅器,AlGaN,GaN,HEMT,高効率,マイクロ波
High Efficiency Class-F Amplifier at 5.8 GHz Band Using GaN HEMT
for Space Solar Power System
Ryo ISHIKAWA† Kenta KURODA† Kazuhiko HONJO† Kunio TSUDA†† and Yasumasa HISADA‡
†Advanced Wireless Communication Research Center (AWCC), The University of Electro-Communications
1-5-1 Chofugaoka, Chofu-shi, Tokyo, 182-8585 Japan
††Electron Devices Laboratory, Corporate R&D Center, Toshiba Corporation 1 Komukai-Toshiba-cho,
Saiwai-ku, Kawasaki-shi, Kanagawa, 212-8582 Japan
‡Earth Observation Research Center, Space Applications Mission Directorate, Japan Aerospace Exploration Agency
2-1-1 Sengen, Tsukuba-shi, Ibaraki, 305-8505 Japan
E-mail: †{ishikawa, kuroda, [email protected], [email protected], [email protected]
Abstract Japan Aerospace Exploration Agancy (JAXA) has been conducting studies on Space Solar Power System (SSPS).
Current SSPS study undertaken by JAXA consists of three main subjects, SSPS concepts and architecture study, special
committee and working groups, and some important configuration of SSPS. In this paper, a high efficiency class-F amplifier at
5.8 GHz band for microwave power transportation in SSPS has been developed using a GaN HEMT. The class-F amplifier
consists of the GaN HEMT and a transmission line type class-F load circuit patterned on a low-loss resin circuit board. The
fabricated class-F amplifier delivered maximum drain efficiency of 76.5 %, maximum power added efficiency of 68.7 %, and
output power of up to 33.9 dBm at 5.72 GHz. Details of requirements for the components, and the design method for the
amplifier are presented.
Keyword Space Solar Power System, Class-F Amplifier, AlGaN,GaN, HEMT, High efficiency,Microwave
1. は じ め に
て継続的に電気エネルギーを生成し,その電気エネル
エネルギー消費は世界的規模で年々増加の一途を
ギーを,マイクロ波などを利用した高効率無線伝送に
辿っており,新たなるエネルギー源の開拓が望まれ続
より地上に供給するものであり,安定かつ安全にエネ
け て き て い る . 宇 宙 エ ネ ル ギ ー 利 用 シ ス テ ム ( SSPS)
ルギーを供給する方法として期待されている.我々は
は,宇宙空間に設置された太陽光発電システムによっ
5.8 GHz の マ イ ク ロ 波 を 利 用 し た シ ス テ ム ( M-SSPS)
-1-
に関して,高効率マイクロ波伝送を実現するための F
2.2. F 級 負 荷 回 路 の構 成 法
級 増 幅 器 の 研 究 を 進 め て 来 て い る [1].昨 年 度 は ,前 年
我 々 は 既 に ,原 理 上 任 意 次 数 ま で 処 理 可 能 な F 級 増
よ り 特 性 が 改 善 さ れ た GaN HEMT 素 子 を 用 い て
幅器用の高調波処理回路について,分布定数線路を用
5.72 GHz で 最 大 ド レ イ ン 効 率 76.5 %,最 大 電 力 付 加 効
い た 手 法 [5] な ら び に 集 中 定 数 素 子 を 用 い た 手 法 [6]を
率 68.7 %,ド レ イ ン 効 率 最 大 時 の 出 力 電 力 33.9dBm と
提 案 し て い る .後 者 は 寄 生 成 分 の 影 響 に よ り 2 GHz 以
いう良好な特性を得ている.ここでは,本結果を得る
上 で 実 現 す る こ と は 困 難 で あ る た め , 5.8 GHz 帯 の F
にあたり,高周波帯で高効率動作を実現するための F
級増幅器には前者の手法が適用される.図2に分布定
級増幅器の構成法に関して詳述する.
数 線 路 を 用 い た F 級 負 荷 回 路 図 を 示 す .FET の ド レ イ
ン出力端子に,基本波の4分の1波長の分布定数線路
2. F 級 増 幅 器 実 現 の た め の 課 題
が接続されており,その先に,各高調波に対して点 A
2.1. F 級 増 幅 器 の概 念
で零インピーダンスとするための高調波処理スタブが
トランジスタを用いた電力増幅器において,ゲート
接 続 さ れ て い る . こ れ ら に よ り , FET に 対 し て 奇 数 次
電 圧( FET を 想 定 )を B 級 バ イ ア ス と し ,更 に 高 調 波
高調波で無限大,偶数次高調波で零となる負荷インピ
処理を行う負荷回路を出力側に接続した増幅器を F 級
ーダンスが実現される.その他に,基本波での整合用
増幅器と呼ぶ.図1に理想的な F 級動作時における
の線路が付加される.
FET で の 電 流 ・ 電 圧 波 形 を 示 す . 基 本 波 お よ び 偶 数 次
この回路の実現に際し,線路の接続点での物理寸法
高調波の合成で表せる半波整流形の電流波形は,B 級
の 影 響 , FET 内 の 寄 生 成 分 の 影 響 , 等 々 に よ り , 調 整
バイアスおよび奇数次高調波に対する負荷インピーダ
が必要な場合が生じる.このことは周波数の上昇に伴
ンスを無限大とすることにより得られる.一方,電流
い 顕 著 化 す る . そ こ で 次 に , 2 GHz 以 上 の 周 波 数 で 高
波形と逆相の基本波および奇数次高調波の合成で表せ
効率動作を行うために,トランジスタに要求される特
る矩形の電圧波形は,偶数次高調波に対する負荷イン
性および F 級負荷回路に要求される特性について具体
ピ ー ダ ン ス を 零 と す る こ と に よ り 得 ら れ る .こ の と き ,
的に述べる.
電 流 と 電 圧 の 積 が 零 で あ る た め FET 部 で の 電 力 消 費 が
2.3. トランジスタに要 求 される特 性
使用するトランジスタが寄生成分を有する場合,各
零 と な り , 100 %の 動 作 効 率 が 得 ら れ る .
実際には無限次数の高調波処理が不可能であるた
高調波に対するインピーダンス条件が崩れることにな
め,有限次数での F 級増幅器が構成される.表1に処
る .図 3 左 図 に FET の 寄 生 容 量 を 示 す .こ れ ら の 容 量
理 次 数 と 効 率 の 関 係 を 数 学 的 に 導 出 し た 結 果 [2] に つ
は周波数増加に伴いインピーダンスが低下するため,
いて示す.一般には回路構成の都合上,主に3次高調
F 級負荷回路の無限大の状態が崩れることになる.こ
波 程 度 ま で 処 理 さ れ た も の が 試 作 さ れ て お り [3-4],低
の崩れた特性は,F 級負荷回路の線路長を調整するこ
マ イ ク ロ 波 帯 で 70% 台 の ド レ イ ン 効 率 を 有 す る F 級 増
とにより多少の補正は可能であるが,その場合も次数
幅器が実現されている.しかしながら,表より,更な
る 高 次 処 理 で 10% 前 後 の 効 率 上 昇 が 期 待 さ れ る .
図1
理 想 的 な F 級 動 作 時 の FET で の 電 流 ・ 電 圧 波 形
図2
表1
分布定数線路を用いた F 級負荷回路
理 想 増 幅 器 の 高 調 波 処 理 次 数 と 効 率 の 関 係 [2]
図3
-2-
FET の 寄 生 容 量 ( 左 ) お よ び 最 大 電 力 利 得 特 性 ( 右 )
毎に適正に調整することは非常に困難であるため,ド
2.4. 回 路 に要 求 される特 性
レイン端子付近の寄生成分を極力減らすことが重要と
F 級負荷回路を実際に構成する場合の問題点として,
な る .ま た ,F 級 増 幅 器 は 高 調 波 を 利 用 し て い る た め ,
前述した複数の線路が接続する点の物理寸法,および
処理する高調波の周波数でトランジスタが十分に利得
線路の損失がある.高周波化に伴い線路構造は縮小さ
を有している必要がある.図3右図の利得特性におい
れ,伝送距離が短くなるために一見損失は減りそうで
て ,経 験 上 , 最 大 安 定 電 力 利 得 ( MSG) と 最 大 有 能 電
あるが,信号線幅も狭まるために導体損が増す.低比
力 利 得( MAG)の 変 換 点 程 度 の 高 調 波 ま で が 処 理 の 対
誘電率化で縮小を抑えようとすると,基板内での誘電
象となる.この利得特性は寄生成分とも関係している
損は周波数に比例して増加するため,やはり損失が増
が,トランジスタ寸法にも依存する.高出力化を図る
える可能性がある.従って,両方の損失を考慮しつつ
場 合 , ゲ ー ト 長 ( フ ィ ン ガ ー 長 ×並 列 数 ) を 増 や し て
最適な材質および構造を考える必要がある.
面積を稼ぐ必要があるが,フィンガー長が長すぎると
図 6 に 樹 脂 基 板 を 用 い て 試 作 さ れ た 1.9 GHz 帯 用 の
電極上での位相回転で特性が劣化し,並列数が多すぎ
F 級 負 荷 回 路 を 示 す . 左 図 は 一 般 的 に 用 い ら れ る FR4
ても結合時の位相ずれで特性が劣化する.このことを
基板を使用しており,右図はセラミック基板と同程度
シ ミ ュ レ ー シ ョ ン で 最 適 化 す る こ と が で き る [7].図 4
に低損失な樹脂基板を使用している.図7にこれらの
に FDTD 法 と 回 路 解 析 を 連 動 さ せ て GaN HEMT の フ ィ
ンガー長に対する影響を解析する手法の概念図を示す.
単 位 長 さ( こ こ で は 50 µm)の GaN HEMT の 小 信 号 等
価 回 路 を 実 測 よ り 求 め ,そ れ を FDTD 解 析 構 造 上 に 並
べることで,電極近傍の電磁界分布を考慮して長フィ
ンガー構造全体の特性を得ている.図5に解析結果を
示す.長フィンガー化に伴い,高周波での利得が減衰
していく様子が見て取れる.この特性を参考に処理次
数を考慮して基準のフィンガー長を決定することがで
きる.
図6
図4
HEMT 電 極 の FDTD 電 磁 界 − 回 路 統 合 解 析 の 概 念 図
1.9 GHz で の F 級 負 荷 回 路 基 板 ( 7 次 ま で 処 理 )
( a) 負 荷 イ ン ピ ー ダ ン ス 特 性
( b) 最 大 透 過 量 特 性
図7
図5
GaN HEMT の 各 フ ィ ン ガ ー 長 に 対 す る 利 得 特 性
図 6 の 負 荷 回 路 の ( a) 負 荷 イ ン ピ ー ダ ン ス 特 性
お よ び ( b) 最 大 透 過 量 特 性
-3-
F 級 負 荷 回 路 の 諸 特 性 を 示 す . FR4 基 板 は 負 荷 イ ン ピ
0.12
ーダンス特性において,3次以上の特に奇数次高調波
0.1
に対する高インピーダンス特性が得られていない.最
0.08
Ids [A]
大透過量特性(入出力整合により透過し得る最大の透
過量)を見ると,周波数の増加に対して,誘電損によ
り透過量の減少が著しいことがわかる.一方,低損失
0.04
の 樹 脂 基 板 の 場 合 , 7 次 高 調 波 の 14 GHz 付 近 で も 損
0.02
失が少なく,負荷インピーダンス特性もそれほど崩れ
0
0
ていない.以上より,誘電損が特性に与える影響は特
20
40
60
80
100
Vds [V]
に高調波に対して大きいことがわかる.近年は安価な
図9
樹 脂 基 板 で も 低 損 失 の も の が 利 用 で き , 5.8 GHz 帯 で
試 作 し た AlGaN/GaN HEMT の Id/Vd 静 特 性
(Wg = 100 µm, Vg = +1 V∼ –5 V, 1-V step)
も5次高調波程度までは処理可能である.ただし,前
述のように高周波化による構造縮小の影響は回避でき
な い た め ,こ の 場 合 ,線 路 形 状 へ の 工 夫 が 必 要 と な る .
0.06
図 9 に 試 作 し た AlGaN/GaN HEMT の Id/Vd 静 特 性 の
測 定 結 果 を 示 す . 測 定 に は , ゲ ー ト 幅 100 µm の 評 価
用 TEG を 使 用 し て い る .飽 和 ド レ イ ン 電 流 は 約 1 A/mm
3. AlGaN/GaN HEMT 素 子
で あ っ た . ド レ イ ン 電 圧 ス ト レ ス 100 V で は 電 流 コ ラ
5.8 GHz 帯 F 級 増 幅 器 に 用 い る GaN HEMT 素 子 は 東
プ ス に よ る ド レ イ ン 電 流 減 少 が 見 ら れ る も の の , 60 V
芝 で 継 続 的 に 試 作 を 進 め て き て い る [1].図 8 に 試 作 し
では顕著な電流コラプスは見られなかった.したがっ
た AlGaN/GaN HEMT の 断 面 模 式 図 を 示 す . 半 絶 縁 性
て ,ド レ イ ン 電 圧 30 V 程 度 で あ れ ば ,電 流 コ ラ プ ス の
SiC 基 板 上 に AlGaN/GaN HEMT 構 造 を MOCVD 成 長 し
影響のない安定した動作が期待できる.
た エ ピ タ キ シ ャ ル ウ エ ハ を 用 い た .GaN 系 HEMT で は ,
実 際 の F 級 増 幅 器 の 検 討 に 用 い た デ バ イ ス は ,単 位
高ドレイン電圧ストレス印加時にドレイン電流が減少
フ ィ ン ガ ー 長 96 µm で ,2∼ 4 W 程 度 の 出 力 を 想 定 し て
する,電流コラプスと呼ばれる現象が発生することが
フ ィ ン ガ ー 本 数 は 10 本 と し た .こ の デ バ イ ス の 小 信 号
知られている.その低減方法の一つとして,ゲートフ
ィールドプレートあるいはソースフィールドプレート
S パ ラ メ ー タ 測 定 か ら 求 め た 最 大 発 振 周 波 数 f m ax は
45 GHz で あ っ た .
によってゲート電極のドレイン端部の電界集中を緩和
す る こ と が 有 効 で あ る こ と が 報 告 さ れ て い る .し か し ,
フィールドプレートの付加は寄生容量の増加につなが
るため,高周波特性とのトレードオフを考慮する必要
が あ る [1].
我 々 は , 一 昨 年 度 の F 級 増 幅 器 の 検 討 で , 1.9 GHz
帯 で 最 大 ド レ イ ン 効 率 80.1 % , 最 大 付 加 電 力 効 率
72.7 %を 達 成 し た こ と を 報 告 し た [1].こ の と き の デ バ
イスは電流コラプス抑制を優先して,ゲートフィール
ドプレートとソースフィールドプレートを採用した.
今 回 は , 目 標 周 波 数 が 5.8 GHz と 高 い こ と を 考 慮 し ,
高周波特性を優先してフィールドプレートは採用しな
い こ と と し た . ゲ ー ト 長 は 0.4 µm で あ る .
Lg = 0.4μm
Gate (Pt/Au)
Source (Ti/Al)
PE-CVD SiN
4. AlGaN/GaN HEMT の モ デ ル 化
F 級負荷回路および増幅器の試作にあたり,回路シ
ミュレーションによる負荷インピーダンスおよび基本
波整合の調整が必要不可欠となる.特にトランジスタ
内の寄生成分が影響し始める高周波領域では,F 級負
荷回路の微調整が必要となるため,トランジスタモデ
ルを組み込んだシミュレーションが必要となる.そこ
で , 試 作 さ れ た AlGaN/GaN HEMT を , EE-HEMT 大 信
号 モ デ ル [8]を 用 い て モ デ ル 化 を 図 っ て い る .大 信 号 モ
デル化された素子特性の測定値との比較に関して,図
10 に 静 特 性 を 図 11 に S パ ラ メ ー タ 特 性 を 各 々 示 す .
図より,モデルにより素子の特性が良く再現されてい
ることが分かる.このモデルを用いて無損失回路で構
成 し た F 級 増 幅 器 の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン を 行 っ た .図 12
Pad (Au)
に 5.8 GHz で の 入 出 力 電 力 特 性 お よ び 効 率 特 性 の シ ミ
Drain (Ti/Al)
ュレーション結果を示す.なお,F 級負荷回路は 3 次
i-AlGaN
i-GaN
までの高調波処理スタブを設け,トランジスタの寄生
成分を考慮して効率が最大となるように調整している.
ド レ イ ン 電 圧 25 V,ゲ ー ト 電 圧 –5.5 V の バ イ ア ス 条 件
S.I. SiC substrate
で ,最 大 ド レ イ ン 効 率 76.7 %,最 大 電 力 付 加 効 率 71.9 %
であり,この値が同処理次数で最大と考えられ,この
図8
試作したトランジスタの断面模式図
値を目標に試作を行うことになる.
-4-
5. 5.8 GHz 帯 F 級 増 幅 器 の 試 作 お よ び 評 価
前 節 ま で の 結 果 を 踏 ま え て 5.8 GHz 帯 の F 級 増 幅 器
の 試 作 を 行 っ た . 図 13 に 試 作 さ れ た F 級 増 幅 器 を 示
す.F 級負荷回路は,トランジスタ特性および回路構
造を考慮して3次までの高調波スタブが設けられてお
り,シミュレーションにより効率が最大となるように
最適化がなされている.スタブ接続点では実効波長を
考慮して寸法が狭められており,また,扇形とするこ
とにより導体損の増加を防ぐ工夫がなされている.入
力側には入力整合回路があり,各直流バイアスは,外
部に接続されるバイアスティーを介して供給される.
図 14 に , 試 作 し た F 級 電 力 増 幅 器 の 入 出 力 電 力 特
図 10
Id/Vd 静 特 性 の EE-HEMT モ デ ル と 測 定 値 の 比 較
性および効率特性の測定結果を示す.ドレイン電圧
25 V 、 ゲ ー ト 電 圧 –5.5 V の バ イ ア ス 条 件 で , 周 波 数
5.72 GHz に お い て ,最 大 ド レ イ ン 効 率 76.5 %,最 大 電
力 付 加 効 率 68.7 %、 最 大 PAE 時 出 力 33.9 dBm が 実 現
された。
図 11
図 12
S パ ラ メ ー タ の EE-HEMT モ デ ル と 測 定 値 の 比 較
図 13
試 作 し た 5.8 GHz 帯 F 級 増 幅 器
EE-HEMT モ デ ル と 無 損 失 回 路 に よ る F 級 増 幅 器 の
入出力電力特性および効率特性のシミュレー
図 14
試作した F 級電力増幅器の入出力電力特性および
ション結果(3次高調波までのスタブ+調整)
効率特性の測定結果
(Vd = 25 V, Vg = –5.5 V @ 5.8 GHz)
( Vd = 25 V, Vg = –5.5 V @ 5.72 GHz)
-5-
[8] Agilent Technologies, “ADS Documentation, user
manuals, ” Version ADS2008.
6. ま と め
5.8 GHz 帯 の マ イ ク ロ 波 を 利 用 し た 宇 宙 エ ネ ル ギ ー
利 用 シ ス テ ム( SSPS)の 送 信 用 電 力 増 幅 器 と し て 利 用
が 期 待 さ れ る F 級 増 幅 器 に 関 し て ,現 状 の 研 究 進 行 状
況の報告を行った.先ず,F 級増幅器の原理に関して
述 べ , そ れ を 5.8 GHz 帯 で 実 現 す る 際 に , ト ラ ン ジ ス
タ素子の寄生成分および回路基板の損失等が高調波処
理に悪影響を及ぼすこと,そしてこれらを考慮して設
計 す る 手 法 に つ い て 述 べ た . 以 上 を 考 慮 し て 5.8 GHz
帯 の F 級 増 幅 器 の 試 作 を 行 い ,5.72 GHz で 最 大 ド レ イ
ン 効 率 76.5 %,最 大 電 力 付 加 効 率 68.7 %,ド レ イ ン 効
率 最 大 時 の 出 力 電 力 33.9dBm と い う 良 好 な 特 性 を 得 ら
れている.今後,素子構造の改善および回路構造の更
なる最適化により,更なる効率の改善を目指す.
謝辞
F 級増幅器の試作にあたり,回路樹脂基板の試作に
関 し て 御 協 力 下 さ っ た YKC に 感 謝 致 し ま す .
また,本研究の推進にあたり御協力頂いた徳島大学
の大野泰夫教授,パウデックの河合弘治氏に感謝致し
ます.
な お ,本 研 究 は H19 年 度 JAXA 委 託 業 務 の 一 環 と し
て行われました.
文
献
[1] 高 田 賢 治 , 津 田 邦 男 , 石 川 亮 , 本 城 和 彦 , 久 田 安
正 ,“SSPS 用 GaN 半 導 体 デ バ イ ス の 試 作 結 果 ,” 第
17 回 宇 宙 太 陽 発 電 時 限 研 究 専 門 委 員 会 研 究 会 ,
no. SPS2007-03, pp. 11-17, Apr. 2007.
[2] F. H. Raab,
“Class-F
power
amplifiers
with
maximally flat waveforms,” IEEE Trans. Microw.
Theory Tech., vol. 45, no.11 pp.2007-2012, Nov.
1997.
[3] V. Radisic, Y. Qian and T. Itoh, “Novel architectures
for
high-efficiency
amplifiers
for
wireless
applications,” IEEE Trans. Microw. Theory Tech.,
vol. 46, no. 11, pp. 1901-1909, Nov. 1998.
[4] P. M. White, “Effect of input harmonic terminations
on high efficiency class-B and class-F operation of
PHEMT devices,” IEEE MTT-S Int. Symp. Dig.,
pp. 1611-1614, Jun. 1998.
[5] M. Seki, R. Ishikawa, and K. Honjo, “Microwave
class-F
InGaP/GaAs
HBT
power
amplifier
considering up to 7th order higher harmonic
frequencies,” IEICE Trans. Electronics, vol. E89-C,
no. 7, pp. 937-942, Jul. 2006.
[6] 相 川 清 志 , 本 城 和 彦 , “集 中 定 数 素 子 の み か ら 構
成 さ れ た マ イ ク ロ 波 F 級 増 幅 回 路 の 設 計 法 ,” 電
子 情 報 通 信 学 会 論 文 誌 C , vol. J87-C, no. 12,
pp. 1008-1016, Dec. 2004.
[7] A. Chokki, Y. Shinohara, R. Ishikawa, and K. Honjo,
“Finger length optimization for AlGaN/GaN HEMT
and
InGaP/GaAs
HBT
by
using
FDTD
electromagnetic
and
device
co-simulation
technique,” Proc. Int. Conf. Solid State Devices and
Materials, pp. 298-299, Sept. 2007.
-6-