11 石油(PDF/134KB) - みずほ銀行

特集: 2014 年度の日本産業動向(石油)
石 油
【要約】
■ 2013 年度の燃料油内需は、電力用 C 重油の減少等から 190.1 百万 kl(対前年
度比▲3.7%)への大幅減となる見込み。2014 年度は燃転等の構造的要因が進
み、燃料油全体では 180.8 百万 kl(同▲4.9%)への減少を予想している。
■ 2013 年度の輸出は円安による採算改善等から 29.1 百万 kl(前年度比+17.5%)
となる見込みである。2014 年度は引き続き円安基調により 30.0 百万 kl(同
+3.0%)への増加を予想している。2013 年度の輸入は電力向け C 重油の減少
等によって 34.2 百万 kl(同▲12.1%)となった。2014 年度の輸入は引き続き C
重油の落ち込みにより、33.1 百万 kl(同▲3.3%)への減少を予想している。
■ 2013 年度の生産量は製油所が復旧する等、前年までの一時的要因の剥落等
によって 184.9 百万 kl(前年度比+0.8%)へと増加する見込みである。2014 年度
は設備能力削減等によって 177.4 百万 kl(前年度比▲4.0%)への減少が予想さ
れる。
■ 2013 年度の石油精製マージンは厳しい環境が継続している。しかし、2013 年度
末の高度化法に伴う設備能力削減によって、2014 年度のマージンは安定して
推移すると想定している。
■ 2013 年度の上場石油元売 5 社の業績は、石化マージンの改善等により営業利
益で 4,658 億円(対前年度比+3.6%)と増益となる見込みである。2014 年度は、
石油精製部門がマージン改善等により大幅増益が見込まれ、営業利益は
5,583 億円(同+19.9%)となる見通しである。
■ トピックスでは、我が国石油産業の投資動向について考察した。各社それぞれ
が強みとする事業への選別した投資が求められる。
Ⅰ.産業の動き
【図表11−1】石油製品需要
【実額】
内需
輸出
輸入
生産
摘要
(単位)
百万kl
百万kl
百万kl
百万kl
12fy
(実績)
197.5
24.8
38.9
183.5
13fy
(見込)
190.1
29.1
34.2
184.9
14fy
(予想)
180.8
30.0
33.1
177.4
13/上
(実績)
89.6
16.2
16.3
90.4
13/下
(見込)
100.6
12.9
17.9
95.4
14/上
(予想)
84.3
16.2
16.5
85.6
14/下
(予想)
96.5
13.7
16.6
91.8
摘要
(単位)
%
%
%
%
12fy
13fy
(実績)
(見込)
+ 0.7% ▲ 3.7%
▲ 2.4% + 17.5%
+ 4.1% ▲ 12.1%
▲ 1.0% + 0.8%
14fy
(予想)
▲ 4.9%
+ 3.0%
▲ 3.3%
▲ 4.0%
13/上
13/下
(実績)
(見込)
▲ 2.8% ▲ 4.6%
+ 17.5% + 17.5%
▲ 12.2% ▲ 12.0%
+ 1.6% + 1.0%
14/上
(予想)
▲ 5.9%
+ 0.5%
+ 0.8%
▲ 5.3%
14/下
(予想)
▲ 4.1%
+ 6.1%
▲ 7.1%
▲ 3.8%
【増減率】
内需
輸出
輸入
生産
(出所)石油連盟資料よりみずほ銀行産業調査部作成
(注)2013 年度、2014 年度の数値はみずほ銀行産業調査部予測値。
みずほ銀行 産業調査部
87
特集: 2014 年度の日本産業動向(石油)
1.内需: 2013 年度は電力向け C 重油が大幅減、2014 年度も構造要因による減少継続
2013 年度は電力向
け C 重油の大幅減
の影響大
2013 年度は電力向け C 重油の大幅減によって、燃料油全体では 190.1 百万
kl(対前年度比▲3.7%)への減少となる見込み。C 重油を除いたベースでは
169.4 百万 kl(同▲0.2%)の微減を見込む。油種別には、ガソリンは夏場の猛
暑による需要底上げがあったものの、燃費改善等の影響により 56.1 百万 kl
(同▲0.6%)へと減少、軽油は復興需要の影響等により 33.7 百万 kl(同
+0.7%)へと増加、灯油は燃転のさらなる進展により 18.4 百万 kl(同▲3.0%)
へと減少の見込み。また、C 重油は石炭火力の焚き増し等によって電力向け
が大幅に減少し、20.7 百万 kl(同▲25.3%)と大幅減の見込み。ナフサは、エ
チレン生産量の増加によって 44.3 百万 kl(同+2.8%)へと増加見込みである。
2014 年度も構造的
要因による需要減
が継続
2014 年度は電力向け C 重油の大幅減および燃費改善や燃転といった構造
的要因が進み、燃料油全体では 180.8 百万 kl(対前年度比▲4.9%)への減少
を予想する。油種別には、ガソリンは燃費改善等により 54.8 百万 kl(同▲
2.3%)へと 4 期連続の減少、軽油は復興需要の一巡およびトラック保有台数
の減少等により 33.3 百万 kl(同▲1.0%)へと減少、灯油は燃転のさらなる進展
により 17.9 百万 kl(同▲3.0%)へと減少を予想する。また、C 重油は電力向け
の落ち込みに伴って 13.8 百万 kl(同▲33.0%)と大幅減を予想。
【図表11−2】製品別需要
【実額】(百万kl)
ガソリン
ナフサ
ジェット
灯油
軽油
A重油
C重油
燃料油計
【図表11−3】製品別需要の推移
【増減率】(対前年度比)
12fy
13fy
14fy
12fy
13fy
14fy
(実績)
(見込)
(予想)
(実績)
(見込)
(予想)
56.4
43.2
4.0
19.0
33.4
13.8
27.7
197.5
56.1
44.4
4.9
18.4
33.7
11.9
20.7
190.1
54.8
44.4
4.8
17.9
33.3
11.6
13.9
180.8
▲1.3% ▲0.6% ▲2.3%
▲1.3% +2.8% +0.1%
▲5.7% +22.5% ▲0.5%
▲3.2% ▲3.0% ▲3.0%
+1.8% +0.7% ▲1.0%
▲6.3% ▲13.2% ▲3.0%
+16.8% ▲25.3% ▲33.0%
+0.7% ▲3.7% ▲4.9%
250
(百万kl)
200
C重油
A重油
150
軽油
灯油
100
(出所)【図表 11-2、3】とも、石油連盟資料よりみずほ銀行産業調査部作成
(注)2013 年度以降の数値はみずほ銀行産業調査部予測値
ジェット燃料
50
ナフサ
ガソリン
0
05
06
07
08
09
10
11
12 13e 14e
2.輸出入: 円安で輸出は回復も過度な楽観視はできない
頼みの輸出に過度
な期待はできない
2013 年度の輸出は円安による採算改善の追い風を受けて 29.1 百万 kl(前年
度比+17.5%)となる見込みである(【図表 11-1、4】)。ジェット燃料や C 重油のう
ち国内における国際線・外国船舶に対して供給された製品が輸出扱いとなっ
ており、実質的には軽油が輸出の中心である。輸出環境については、アジア
の需要が引き続き堅調であることがプラス要因であるものの、韓国等輸出競争
力の高い海外の製油所との競争、中国・インドを中心とした製油所の増設計
画による需給ギャップ拡大(【図表 11-7】)、等に鑑みると、ピーク時(2008 年
度:34.1 百万 kl)に並ぶほどの大幅な回復は期待できないと考えられる。ただ
し、2014 年度は引き続き為替が円安基調で推移する前提のもと、30.0 百万 kl
(同+3.0%)への増加を予想している。
みずほ銀行 産業調査部
88
(FY)
特集: 2014 年度の日本産業動向(石油)
輸入は電力用 C 重
油の減少の影響が
大きい
また、2013 年度の輸入は電力向け C 重油の減少等によって 34.2 百万 kl(同
▲12.1%)となる見込み(【図表 11-1、5】)。日本は国内が供給過剰であること
から、輸入はナフサを除いて需給調整程度の意味合いでしかなかったが、足
元では 2012 年度にかけて輸出競争力の高い韓国等からの輸入が増加してい
た。しかし、2013 年度は円安効果によって C 重油の影響を除いても輸入は減
少見込みである。また、2014 年度の輸入は、引き続き電力用 C 重油の減少等
により、33.1 百万 kl(同▲3.3%)と減少が継続すると予想。
【図表11−5】石油製品輸入数量
【図表11−4】石油製品輸出数量
50
45
50
(百万kl )
45
(百万kl )
40
C 重油
40
C重油
35
A重油
35
A重油
30
軽油
30
軽油
25
25
灯油
20
15
10
5
ジェット燃料
15
ナフサ
10
ガソリン
0
05 06 07 08 09 10 11 12 13e 14e
灯油
20
(FY)
ジェット燃料
ナフサ
5
ガソリン
0
(FY)
05 06 07
(出所)石油連盟資料よりみずほ銀行産業調査部作成
(注)2013 年度以降の数値はみずほ銀行産業調査部予測値
08 09 10 11
12 13e 14e
(出所)石油連盟資料よりみずほ銀行産業調査部作成
(注)2013 年度以降の数値はみずほ銀行産業調査部予測値
3.生産: 設備能力の削減によって一時的に稼働率は改善へ
2014 年度の生産は
製油所閉鎖により
減少予想
2013 年度はコスモ石油の千葉製油所が復旧する等、前年までの一時的要因
の剥落等によって生産は 184.9 百万 kl(前年度比+0.8%)と比較的高水準で
推移する見込み。2014 年度は高度化法の期限となる 2014 年 3 月に予定され
るトッパー閉鎖に伴い 177.4 百万 kl(前年度比▲4.0%)への減少を予想。
2014 年度の稼働率
は 85%を上回る水
準へ上昇見込み
定修影響を除く製油所の実稼働率は、2008 年度以降 80%程度での推移が継
続しているが、高度化法に伴う精製能力削減によって 2014 年度は 85%を上
回る水準にまで回復(2005 年度以来の水準)すると予想している。しかし、そ
の後は再び内需縮小に伴い、緩やかに稼働率は低下すると見込まれる。
【図表11−6】日本の製油所稼働率の見通し
(万b/d)
500
原油処理能力
原油処理量
【図表11−7】アジア太平洋の需給ギャップ
実稼働率(右軸)
95%
90%
400
40
35
30
80%
300
200
8.0
7.5
7.0
6.5
6.0
5.5
5.0
4.5
4.0
3.5
(CY)
3.0
2.5
2010 2011 2012 2013e 2014e 2015e 2016e 2017e 2018e 2.0
1.5
1.0
1
0.5
0.0
0
精製能力
85%
75%
(百万b/d)
25
70%
20
65%
15
60%
10
05 06 07 08 09 10 11 12 13e 14e 15e 16e 17e 18e (FY)
需要
需給ギャップ(右軸)
(出所)BP、IEA 資料よりみずほ銀行産業調査部作成
(注)2013 年以降はみずほ銀行産業調査部予測
(出所)石油連盟資料よりみずほ銀行産業調査部作成
(注)2013 年度以降はみずほ銀行産業調査部予測
みずほ銀行 産業調査部
89
特集: 2014 年度の日本産業動向(石油)
4.市況:マージンは厳しい環境が継続も 2014 年度は改善へ
低マージン継続も、
2014 年度は改善を
見込む
石油製品の精製マージンは 2013 年 4 月以降に悪化した。これはポスト高度化
法を見据え、元売が稼働率を維持すべく、シェア争いが一段と厳しくなったた
めと考えられる。その後、夏場の猛暑も重なり 7-8 月にマージンは持ち直した
が、一部の製油所復旧による需給緩和の影響も加わり、9 月以降は再び悪化
(【図表 11-8】)。ただし、高度化法の期限となる 2013 年度末には設備能力が
削減されるため、2014 年度のマージンは需給改善に伴い改善すると見込む。
【図表11−8】主要製品別精製マージンの推移
20
【図表11−9】ガソリン価格の推移
(円/l)
180
ガソリン
15
軽油
(円/l)
ガソリン(業転価格)
ガソリン(小売価格)
160
灯油
A重油
140
10
120
5
100
0
80
09/4 09/10 10/4 10/10 11/4 11/10 12/4 12/10 13/4 13/10
09/4 09/10 10/4 10/10 11/4 11/10 12/4 12/10 13/4 13/10
(出所)【図表 11-8、9】とも、日本経済新聞社、石油連盟資料等よりみずほ銀行産業調査部作成
(注)精製マージンは業転価格から税金および原油 CIF 価格を控除したものの 3 ヶ月平均を利用
公正取引委員会が
ガソリン流通実態に
関する報告書を発
表
2013 年 7 月に公取からガソリン流通に関する報告書が発表され、「一般特約
店にとって相対的に高い仕切価格を設定」「系列特約店に対しては業転玉の
購入・販売を制限」などの指摘がされた。業転価格で仕入れる PBSS(プライベ
ートブランドのサービスステーション)と比較して、ブランド料等の上乗せによっ
て系列 SS は高い仕入れ価格を支払っている(【図表 11-9】、系列の仕切価格
は業転よりも 4 円程度高いとされる)。
業転市場の実態が
明らかになる可能
性
石油連盟は 2013 年 12 月、石油製品流通証明書導入ガイドラインを公表した。
流通証明書によって SS が仕入れたガソリンが製油所などから納入されるまで
の物流経路を確認できるようになる。証明書が導入されても稼働率を維持す
るために元売各社が業転市場への供給を継続する可能性はあるが、業転の
実態が明らかになることで、「(元売にとって)採算を悪化させる玉」とされる業
転玉の供給を絞り、業転価格が上昇することも想定される(【図表 11-10】)。
【図表11−10】業転玉の取り扱いに関する影響
2013年7月
以降
公正取引委員会がガソリン流通に関する問題点を報告書で指摘。
資源エネルギー庁が見解を示し、元売各社に収益環境を
改善するための取り組みを要請
2013年12月
石油連盟が全石連の協力を得て、石油製品流通証明書の
ガイドラインをとりまとめ
今後
系列外SSへ業転玉を販売する実態が明らかになることで、
元売が業転玉の供給を絞り、需給改善により価格が上昇する可能性も
(出所)各種資料よりみずほ銀行産業調査部作成
みずほ銀行 産業調査部
90
特集: 2014 年度の日本産業動向(石油)
Ⅱ.企業業績
1.2013 年度は石化の好調に支えられるも精製マージンが悪化し、実質営業利益が減少
2013 年度は会社計
画以上の精製マー
ジンの悪化により実
質減益
2013 年度の上場石油元売 5 社の業績は、営業利益で 4,658 億円(対前年度
比+3.6%)と増益、在庫評価益の影響を除いた実質営業利益では 3,308 億円
(同▲3.7%)と減益となる見込み(【図表 11-11】)。部門別に見ると、中核事業
である石油精製部門は精製マージンの縮小により大幅減益、上流(開発)部
門は油価下落の影響により減益、石油化学は BTX(芳香族)マージンの改善
等により大幅増益となる見込み。石油化学の好調に支えられるも、精製マー
ジンの悪化によって実質営業利益は減少する見込みである。
2.2014 年度は需給改善により精製部門が大幅増益に
精製マージンの改
善によって 2014 年
度の実質営業利益
は 2006 年度以来の
高水準
2014 年度は油価が前年度よりも低下する前提のもと、営業利益は 5,583 億円
(対前年度比+19.9%)となる見通しである(【図表 11-11】)。在庫評価を除いた
実質営業利益は 5,203 億円(同+57.3%)への大幅増益を予想している。実質
営業利益を部門別に見ると、石油精製部門が設備能力削減によるマージン
改善によって 1,994 億円(同+2.1 倍)と大幅増益、上流(開発)部門は円安によ
って 1,796 億円(同+19.7%)と増益、石油化学部門は円安によるプラス効果は
あるものの前年度好調だった BTX マージンの縮小等により 1,156 億円(同▲
12.0%)と減益を想定(【図表 11-13】)。精製マージンの改善に支えられて、実
質営業利益は 2006 年度以来の高水準となると予想。高度化法対応による需
給(稼働率)改善を勘案すれば(【図表 11-6】)、当面は精製部門の好調が継
続すると想定される。
【図表11−11】企業業績の見通し
(単位)
売上高
(億円)
営業利益
(億円)
実質営業利益 (億円)
【実額】
12fy
(実績)
232,676
4,497
3,436
13fy
(見込)
258,700
4,658
3,308
14fy
(予想)
250,939
5,583
5,203
【図表11−12】石油精製の実質営業利益とマージン
(億円)
1,500
石油精製営業利益(在庫評価除く、左軸)
(円/l)
4油種加重平均マージン(右軸)
1,000
500
14.0
-1,500
09/1Q 09/3Q 10/1Q 10/3Q 11/1Q 11/3Q 12/1Q 12/3Q 13/1Q
%
%
%
【図表11−13】部門別実質営業利益の推移
6,000
5,000
(億円)
その他
4,000
10.0
3,000
上流(開発)
8.0
2,000
石油化学
6.0
-1,000
売上高
営業利益
実質営業利益
12.0
0
-500
(単位)
【増減率】
12fy
13fy
14fy
(実績)
(見込)
(予想)
+ 3.0% + 11.2% ▲ 3.0%
▲ 43.2% + 3.6% + 19.9%
▲ 12.3% ▲ 3.7% + 57.3%
1,000
4.0
▲ 1,000
2.0
▲ 2,000
▲ 3,000
0.0
(FY)
石油精製
0
05 06 07 08 09 10 11 12 13E14E
( FY)
(出所)【図表 11-11∼13】全て、各社 IR 資料および日本経済新聞社等よりみずほ銀行産業調査部作成
(注 1)上場 5 社…昭和シェル石油、コスモ石油、東燃ゼネラル石油、出光興産、JX ホールディングス(非鉄部門除く)
(注 2)実質営業利益は、会計上の在庫評価の影響等を除いた営業利益
(注 3)部門別実質営業利益の一部および 2013 年度以降の数値はみずほ銀行産業調査部予測値
(注 4)4 油種加重平均マージンは主要 4 油種を需要量で加重平均したものを利用
みずほ銀行 産業調査部
91
特集: 2014 年度の日本産業動向(石油)
Ⅲ.トピックス
今後の投資動向の潮流を探る ∼石油産業∼
元売の中計では
「非石油」「上流」
「海外」などを強化
大手石油元売 5 社は 2013 年 2 月から 3 月にかけて中期経営計画を発表し
た(【図表 11-14】)。国内における石油需要の減退が確実視される中、各社と
もに「非石油」「上流」「海外」などを強化する姿勢を明確にし、事業構造の転
換を図っている。例えば JX HD では 2020 年度にかけて石油事業と非石油事
業、上流事業と中・下事業をバランスさせることを目指している(2012 年度から
2020 年度にかけて在庫影響を除いた経常利益【非鉄含む】は、非石油事業
の比率:35%→55%、上流事業の比率:40%→50%となる計画)。また、出光興
産ではベトナムのニソン製油所建設(出光出資比率 35.1%、2017 年商業開始
予定)など海外の大型案件に投資し、戦略投資 3,400 億円のうち海外比率は
8 割にも上る。
【図表11−14】中期経営計画における各社の主要施策
昭和シェル石油
投資計画
石油精製
コスモ石油
非公表
東燃ゼネラル石油
2,800 億円
コスト削減、ショート
1,300 億円+α
千葉リニューアル
ポジション確立
潤滑油
石油化学
韓国パラキシレン
上流
電力等
戦略投資 3400 億円)
(うち金属 1,300 億円)
ベトナムニソン
コスト削減、
H-Oil 能力増強
製油所
石化工場化
ベトナム等、
韓国グループⅢ
海外拠点の拡大
ベースオイル
粘接着剤/エンプラ
韓国パラキシレン
ビジネス強化
パプアニューギニア
石炭事業の再構築
風力発電事業
太陽電池
北海油田、
新規油田開発、
UAE 油田開発
扇島パワー、
JX HD
1 兆 3,000 億円+α
統合効果の実現、
ビジネス拡大
アジア事業展開
出光興産
4,500 億円(うち
LNG
再エネを電源とする
八戸・釧路 LNG
電力事業拡大
基地、電力事業拡大
(出所)各社資料よりみずほ銀行産業調査部作成
(注)投資計画は出光興産、JX HD が 2013-2015 年度、その他が 2013-2017 年度の数値
3 つの戦略方向性
大手石油元売が成長するために残された道は、①マージン改善に向けたコン
ビナート再編などコア事業における競争力強化、②上流権益の獲得や電力
やガス事業への取組みなど総合エネルギー産業化、③アジアでの潤滑油事
業や製油所建設など海外展開、の 3 つであると考えられる(【図表 11-15】)。
【図表11−15】大手石油元売における 3 つの戦略方向性
②総合エネルギー産業化
①コア事業の競争強化
電力
石油
ガス
その他
上流
火力発電、
再生可能エネルギー
油田開発
ガス田開発
鉱物・石炭
資源開発
中流
電力卸売
石油精製・卸売
ガス卸売
下流
電力小売
サービスステーション
ガス小売
化学
③海外展開
水素、エネファーム
基礎製品(パラキシレン等)、高機能製品等
製品輸出、潤滑油展開、海外での製油所建設など
(出所)経済産業省、石油連盟資料等よりみずほ銀行産業調査部作成
みずほ銀行 産業調査部
92
特集: 2014 年度の日本産業動向(石油)
成長投資の資金確
保のためコア事業
の安定化が必要
したがって、石油元売各社が対応すべきは、キャッシュフロー確保のためにコ
ア事業を強化しつつ、成長に向けた投資を実施することである。しかし、以下
に挙げるように、規模・投資体力、時間が限られる中、海外の大手石油メジャ
ーのように多面的に経営資源を振り向けるのは困難であり、各社強みとする事
業を中核に据え、選別した投資が求められる。
元売の制約①
規模・投資体力
大手元売 5 社の外資系格付会社による評価は BBB-BB 格の水準であるが、
上流を強みとする海外の大手石油メジャー等では AA 格以上の会社も多く、
規模の面も含めて投資体力は相対的に劣後するといわざるを得ない。投資と
いう観点では上流や海外製油所建設などの金額が膨らみやすく、かつ国内
の石油精製事業と比較してこれらは相対的に事業リスクが高い。同じ財務指
標を維持していたとしても、コア事業が安定化しないまま、これらの事業のウェ
イトが高まれば、さらに信用力が低下することにも繋がりかねない。
資金負担の少ない
潤滑油事業
規模・投資体力における制約がある中、例えば石油元売による海外潤滑油事
業(エンジンオイルなど)への進出が挙げられる。潤滑油は現地生産等に際し
て比較的資金負担が限定される事業である。潤滑油はガソリンや軽油といっ
た一般の石油精製事業と比較して製品を差別化しやすく、日系自動車メーカ
ーなどと強固な関係を有する企業も存在する。
元売の制約②
時間
また、国内石油精製事業においては、高度化法対応による設備削減の効果
で一定期間の需給改善は見込めるものの、2018 年度には再び稼働率 80%を
割り込むと見込まれる。2014 年 3 月以降のポスト高度化法時代においても、マ
ージンを安定させるため、さらなる製油所再編などの施策を実施しなくてはな
らならず、時間の面でも制約が存在すると言えよう。
政府もコンビナート
連携を後押し
政府(経済産業省/資源エネルギー庁)は、これまでも「緩やかな連携」を促進
してきたが、今後はさらに踏み込んで、複数製油所等の統合型運営や、高効
率な石油精製・石油化学等設備への集約・増強、非効率設備の廃棄等を促
進していく方針である。一方、製油所連携においては石油パイプラインの敷
設などが考えられるが、現時点においては成田空港向けやコンビナート内に
おける大口需要家向け等の利用に留まっている。例えば、安全面での対応を
前提に各種規制緩和(保安 4 法、石油パイプライン事業法等)を実施すること
ができれば、更なるコンビナート連携の促進に繋がるのではないだろうか。
コスモ石油、極東
石油の千葉製油所
に続く決断が求めら
れる
2013 年 9 月にコスモ石油、極東石油(三井石油と東燃ゼネラル石油の子会社
である EMG マーケティング合同会社との間の 50:50 の合弁会社)は京葉臨海
コンビナートにある製油所で共同運営などの事業連携を検討すると発表した。
さらには 2013 年 12 月に東燃ゼネラル石油が三井石油を買収すると発表し、
同コンビナート連携のスピードアップが期待される。ポスト高度化法時代にお
いて、コンビナート再編に向けた政府の支援も後押しする中、さらなる各社の
決断が求められる。
(素材チーム 松本 成一郎)
seiichiro.matsumoto@mizuho-cb.co.jp
みずほ銀行 産業調査部
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特集: 2014 年度の日本産業動向(石油)
/44
2014 No.1
平成 26 年 2 月 21 日発行
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