Mori Junko 1999 Well may be exaggertaing but… - OPAC - 関西外大

関西外国語大学留学生別科 日本語教育論集 22 号
2012
モジュール型教材による中級後期日本語教科書開発プロジェクト
髙屋敷
真人
要旨
関西外国語大学留学生別科の日本語クラスは、七つのレベルに分かれており、
一学期 15 週間、週 5 コマ(一コマ 50 分)で行われる会話コースと週 3 コマの読
み書きコースに分かれている。本稿は、筆者が 2008 年度より日本語会話レベル 5
(中級後期)の教科書開発プロジェクトを立ち上げ、教材作成と試用を行っている経
緯について報告するものである。上記コースでは、学習者ができるだけ自ら教科書
の各課で学ぶトピックを選ぶことを可能にし、教師側がそれに基づき「モジュール型
教材」として教材を作成していくというアプローチを採用している。コースの立ち上
げから 3 年半の実践を通して得られたこと、学生からのコース評価の結果などを分析
し、学習者の自律的な学習を支援するためのコースデザインと「モジュール型教材」
を作成する際の留意点やその可能性、また、今後の展望などについて報告する。
【キーワード】 自律的学習、学習者主体、モジュール型教材、接触場面、
ディスカッション
1. はじめに:理論と背景
本稿は、関西外国語大学留学生別科において 2008 年秋学期(9 月~12 月)より新
たに開始された中級後期会話クラス(日本語会話 5: Spoken Japanese 5、以下、SPJ5)
のメインテキスト開発プロジェクトについての実践報告である。SPJ5 は、本学にお
ける日本語会話コースの中級後期レベルであり、日本語能力試験 N2 レベルの合格を
目指すコースとして設定されている。本学では 2007 年度まで、初級の SPJ1 から SPJ3
までの 3 レベルで『げんき I』と『げんき II』を終了し、それに続くレベルは、SPJ4
が初中級、SPJ5 が中級、SPJ6 で上級と 3 コースのみしか設定されていなかった。当
時は、本学の留学生数が増加している時期で、1 学期に 400 名を越えるようになり、
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中上級の学習者数も増加した結果、中上級合わせて 3 レベルでは、学習者の能力に見
合う適切なレベル分けができなくなる事態が生じるようになっていた。そのような
状況を踏まえ、2008 年度春学期(2 月~5 月)の学期末反省会で、下記のように中上
級にレベルを一つ増設し、7 コースを開設することが決定された。
初級:SPJ1~SPJ3
中級(日本語能力試験 N2 レベル):SPJ4(中級前期)と SPJ5(中級後期)
上級(日本語能力試験 N1 レベル):SPJ6
アカデミック(日本語能力試験 N1 レベル以上):SPJ7
使用教科書は、レベル 1 から 3 までが初級で『げんき I』と『げんき II』を使用、SPJ4
は従来のテキスト(関西外大オリジナルテキスト)のまま、SPJ6 では従来の SPJ5 の
テキスト(関西外大オリジナルテキスト『絆』)を使用することになり、SPJ5 のテキ
ストについては、新しく開発することになった。なお、SPJ7 では、市販の上級テキ
ストの一部に加え、主として生教材(新聞記事、ニュース、映画、テレビドラマなど
視聴覚教材)を使用して新シラバスを作成することになった。SPJ5 の教科書開発プロ
ジェクトは、筆者が担当することになり、2008 年度秋学期の試用を目指し、6 月から
準備に取り掛かった。
中級後期の新テキスト開発にあたり、以前、「モジュール型教材」「学習者主体」
「自律的学習」「接触場面」といったキーワードに代表される教育理念のもと『モジ
ュールで学ぶよくわかる日本語①②③』 (アルク、1993~1998)や『リビング・ジ
ャパニーズ
BOOK1』(くろしお出版、2006)、『リビング・ジャパニーズ
BOOK2』
(くろしお出版、2008)などを共同開発し出版した経験を活かせないかと考えた。例
えば、『モジュールで学ぶよくわかる日本語①②③』では、「接触場面」(ネウストプ
ニー 1995)や「モジュール型教材」(岡崎 1990)という教育理念にこだわり、本文や練
習の作成においては、「日豪の高校生が双方の国を訪れる。例えば、短期留学、ホー
ムステイ、修学旅行など。あるいは、日本の姉妹校からやって来た日本人生徒、日
本人の日本語教師、日本人観光客 などと自国で接触するなど。」といった場面設定
に留意しつつ開発が行われた。また『リビング・ジャパニーズ
BOOK1』でも同様に
「日本と欧米・アジア圏の大学生が双方の国に交換留学をする。自国で日本人留学
生にキャンパスや学生寮を紹介する。日本の留学先の大学でサークルや学園祭など
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で日本人学生と話す。母語が異なる留学生同士が日本語を媒介にしてコミュニケー
ションをはかる。」など実際に学習者が遭遇するような実践的な場面にこだわり、学
習者にとってよりコミュニカティブな学びの場を提供することを目指して開発を行
った。
1991 年に西口が「コミュニカティブ・アプローチというものを整理し、伝統的アプ
ローチとコミュニカティブ・アプローチを融和していくための筋道を提案」してから、
確かに「日本語教育の方法の原理に関する議論・論争が途絶えて」久しいが(西口
2012)、そこからの脱却を図るべく、コミュニカティブ・アプローチの様々な理念を
応用し、多くの日本語教師が「モジュール型教材」「学習者ストラテジー」、「チュ
ートリアル」、「リソース型教材」、「個人ファイル/ポートフォリオ/パフォーマ
ンス・チャート」「ポッドキャスト」などのキーワードに代表される新しい方法を模
索し、「自律学習」、すなわち、学習者が学びたいと思うことを自ら選択し自発的に
学 べ る よ う な 学 習 法 を 目 指 し 様 々 な 試 み が な さ れ て い る 。 ( 岡 崎 他 1990; 伴
2003/2009; 桜美林大学 2007; トムソン木下 2009; 江田他 2005; 佐藤・熊谷編 2011 な
ど)しかし、異なる背景や動機を持ち、大変な速度で多様化、変容する個々の学習者
のニーズをコースシラバスに反映させ実際の教室活動を実現していくのは、やはり
一筋縄では行かないことである。「学習者主体」の「自律的」な教室活動を促すよう
な日本語教育の理念を取り入れつつ、日々流動変化していく学習者のニーズに応え
得るコースを作り上げるためには一体どうすればよいのであろうか。この問いへの
一つの解答として、西口は、Scarcella and Oxford が提唱するところのタペストリー・
アプローチを引き、「どのように教えるか」ではなく、学習指導の現場での「いかに
補助的な指導を即興的に有効に行っていくか」という観点が今後より重要な意味を持
つのではないかと指摘している。(西口 2012)そのような観点も踏まえ、以下、関西
外大留学生別科 SPJ5 コースの新規設立に関して、どのようにコース及びシラバス・
デザイン、教材開発などが行われて来たかについて述べていきたい。
2. コース/シラバスデザインにおける留意点
関西外国語大学留学生別科の日本語コースは、9 月開始の秋学期と 2 月開始の春学
期にそれぞれ 15 週間、開設され、学生は、1 学期のみの短期コースか 2 学期の通年コ
ースで学んでいる。コースは、週 5 コマ(月曜から金曜まで毎日午前中 1 コマ 50 分)
の会話コースと週 3 コマの読み書きクラスに分かれており、担任制で運営されている。
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このようなコースに見合うコースデザイン、シラバスデザインを設計するにあたり、
下記を留意点とすることにした。
① モジュール型教材の採用:モジュールとは「教科書のように特定の順序に沿
って一つ一つの課を学習するタイプの教材とは違い、学習者が既に学習し終
わっている項目から一定程度独立して使えるようにした教材」である。
(岡崎
1989)つまり、
「通常の教科書が順序を無視して使うのが難しいのに対して、
学習者のニーズが新たに生起したその時点においてそのニーズに合わせた形
の活動を実施するような使い方を可能」
(岡崎 1989)にさせるものである。
本コースは中級後期レベルであり、媒介語なしで、ある程度、日本語のみで
のコミュニケーションが可能なレベルであるので、中上級レベルでの学習項
目(文型)の提出順序を積み上げていく必要がないこと、また、常に変化流
動する学習者のニーズに柔軟に対応できるのではないかという観点から、モ
ジュール型教材が適しているのではないかと判断した。最近の日本語学習者
の留学の動機は多岐に渡り、専門化、細分化、個別化、いわばオタク化して
きている。また学習者の興味関心が流行に合わせて流動変化するスピードも
早くなって来ている。時間をかけて作成した会話教材も、翌年にはトピック
が時代遅れになっていることも多くなった。しかし、モジュール型教材であ
れば、古くなった箇所のみ簡単に取り換え可能であるので、この点にも対応
できると感じた。
② 接触場面を明確にすること:ターゲットとなる学習項目を使用し、学習者がい
つ・どこで・誰と何を行うのか? それによって何ができるようになるのか?
接触場面での学習者の年齢/性別/社会的・文化的立場などを考慮している
か?(ネウストプニー1995; 宮崎・マリオット 2003)
③ 学習者の興味/関心/ニーズに合致しているか?
各課のトピックの選定の際、
本学留学生の興味関心を考慮することは言うまでもなく、そのトピックは教
室活動の最終目的である「ディスカッション」のテーマとしてふさわしいも
のであるかどうか。
④ Morrow が提唱したコミュニケーションにおける三つの伝達過程をできるだけ
盛り込んでいるか? (岡崎 1990)
a インフォメーション・ギャップの有無?
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b 選択権の有無?
c フィードバック (意味の交渉)の有無?
⑤ 自然な接触場面を想定し、縮約形(例:~てる、~とく)
、短縮句/省略(例:
~て➚?)、助詞の省略 、 変化した言葉(例:とこ=ところ、どっち)
、繰
り返し(例:そうそう、だめだめ、来た来た)
、聞き返し、倒置、あいづち、
間投詞、フィラー、呼び掛け、決り文句(慣用句/挨拶)、終助詞「ね/さ/よ」
などを適宜使用しているか?
⑥ 文法項目の意味概念を優先しながらもその言語形式が疎かにならないように
考慮してあるか? インプット強化、コンシャスネス・レイジング、フォーカ
ス・オン・フォームなど
⑦ 教室活動中の「即興的な」発話の拡大/発展が可能性になるように考慮して、
教材が作成してあるか?
3. ユニットのトピック及び学習項目(文型)の選定
3.1 各ユニットのトピックの選定
実際のコース/シラバス設計は、まず本学の 15 週間というコース期間に合致する
ように、各モジュール(ユニット)を六つ作成し、テレビドラマを使用した映像教材
を使用するユニットを一つ加えたコースにすることに決めた。一つのユニットを、1
週 5 コマで完結できるようにすれば、復習週間、復習テスト(2 ユニットごと)、中
間試験、期末試験、口頭試験などを含めて、15 週間で無理のないスケジュールが組
めそうであった。次に各ユニットのトピック(大場面)を設定する必要があった。そ
の際には、学習者の個々のニーズや個性を自発的に引き出せるようなカリキュラ
ム・デザイン(岡崎他 2003)を心掛けることに決めた。筆者は、2004 年から自分が
担当して来た上級学習者には学期前にアンケートとインタビュー形式双方での簡単
なレディネス調査、ニーズ調査を行い、その結果を基に学習者の要望を聞き入れ、
ある程度読解教材を学習者自身に選んもらうという読み書きコースの試みを行って
いる。(髙屋敷 2011) 詳しくは、拙論「学習者主体のディスカッションによる上級
読解授業の実践-学習者が読み物教材を選べる上級読み書き授業-」で詳しく述べて
あるので、ここでは、繰り返さないが、私が担当した上級読み書きコースでは、あ
る程度学生自身にコースで学ぶ読み物を選ぶ自由を与え、教師がそれを教材化し、
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コース(カリキュラム)・デザインを作成していた。その際、過去のアンケートやイ
ンタビューの結果を基に私が担当した上級コースで取り上げた読み物教材のうち学
生の反応が良かったものを学習支援のためのリソースバンク型教材(田中・斉藤
1993)としてプールしていたので、その中で特に反応の良かったトピックを会話 5 の
ユニットで取り上げられるのではないかと考えた。その際、できるだけ話題が偏ら
ないように留意したことは言うまでもない。将来、中級後期レベルの学生に随時ア
ンケート調査を行い、彼らが興味があるトピックを更にストックしておくつもりで
あるが、取り急ぎ新規コースの各ユニットのトピックは、下記のように決定した。
Unit1 Mixi って何?
Unit2 交通機関のマナー
Unit3 夫?主人?
Unit4 ユニクロ、MUJI は海外で成功するか?
Unit5 インターネットは人類を幸せにしたか?
Unit6 急増する外国人雇用
ユニット1は、当時大流行し始めていた SNS「ミクシィ」について取り上げた。本学
の 70~80%を占める米国からの留学生はほとんど Facebook に加入しており、それと
の比較でディスカッションも盛り上がったという経緯があった。ユニット 2 は、日本
の電車やバス内でのマナーについて、例えば、携帯電話での会話を慎むことなど、日
本独自のマナーであり議論の的になった。ユニット 3 は、ジェンダーや性差別の問題
について、「夫に仕えているわけではないのに何故いまだに主人/ご主人というよう
な呼称の使用が許されているか」などがいいディスカッション・ポイントになった。
ユニット 4 では、国際ビジネスなどを専攻している学生にも考慮し、世界的成功を収
めた自動車や電子機器以外の日本企業、例えば、衣料品のユニクロなどの企業が海外
で成功できるかどうかについて議論できるようにした。ユニット 5 は、インターネッ
トに潜む危険性、例えば、情報管理、ネット中毒、SNS 疲れの問題などについて取り
上げた。インターネット関連のトピックは、毎回ディスカッションが非常に盛り上が
り、学生の関心が高かった。ユニット 6 は、日本の少子化問題、それに伴う若い労働
力の不足を補うための「外国人労働者の移入問題」について取り上げてみた。上記の
ユニット(モジュール)は、1 から 6 まで順番に並んでいるが、この順番通りに学習
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していく必要はなく、その時々の学習者の要望、国内事情、時事問題の変化などに応
じて、どのユニットからでも学習することが可能である。パケットは 1 冊にまとめず
に、各ユニット開始の前週にプリントとして配布することにした。
3.2 各ユニットの学習項目の選定
SPJ5 では、日本語能力試験 N2 レベルの文型を取り扱うことになっていたので、す
でに作成されていた SPJ4 の教科書で取り上げられている N2 レベルの文型と重複しな
いように考慮し、文法項目を決定し、下記のように各ユニットに振り分けた。
Unit1 Mixi って何?
~とおり/~といえば/~かねない/
~というわけだ/~といった N/~たびに
Unit2 交通機関のマナー
~によって/~にとって/~だけに(なおさら)
~ことに/~ずに/~がきっかけだ
Unit3 夫?主人?
~からすると/N のことだから/~ようがない
~ないことはない/~どころか~さえ~ない/V-る・V-た+以上
Unit4 ユニクロ、MUJI は海外で成功するか?
N 次第/~にしろ~にしろ/~わりに(は)
V という N/それにしても/~ような感じ・気がする/~とは限らない
Unit5 インターネットは人類を幸せにしたか?
~ならともかく/~くらい(例:ペンくらい貸してくれてもいいのに)
~ばいいというものではない
グラフ・表を説明する表現(増加・減少・横ばいなど)
Unit6 急増する外国人雇用
~によると/~に比べると・比較すると~になっている/~まして
~をはじめ/~傾向にある
この作業を行う際、各ユニットのトピック(大場面)に基づいて、特定場面を設定し
た上で、特定場面での会話で用いられるような文型を選定して行った。ここでいう特
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定場面とは、例えば、ユニット1「Mixi って何?」であれば「大学のコンピューター
ルームで、アメリカからの留学生ジョンに日本人学生のまりがミクシィの登録方法を
教える」などのように大場面(トピック)について更に細分化した場面のことである。
まず選定した文型がどのような特定場面で用いられるか考え、最も自然で無理のない
場面を選ぶという方法を採った。それぞれの文型がどのような場面で用いられるか、
あるいは、効果的に使用されるのはどのような場面であるかを考慮しながら注意深く
選定を行った。
4.各ユニットの本文、語彙リスト、文法説明、練習等の作成
次に各ユニットにつき、特定場面を 3 場面から 4 場面ほど考え、選定した文法項目
を組み込みながら、本文 (Main Dialogues) を作成して行った。下記はユニット1「ミ
クシィって何?」からの例である。
Unit 1
ミクシィ(Mixi)って何?
会話1
まり
【大学のコンピュータールームで】
:
ジョン、何してるの?
メール?
ジョン:
あ、まりちゃん。うん、ほら、これ、フェイスブック。
まり
あ、フェイスブック?
:
フェイスブックといえば、ジョンは、ミクシィ、
やってる?
ジョン:
ミクシィ?
ミクシィって何?
まり
え、知らないの?
おな
:
いっしゅ
フェイスブックやマイスペースと同じ、
さんかしゃ
たが
ゆうじん
しょうかい
かんけい
SNS の一種だよ。参加者がお互いに自分の友人を 紹 介 して、友人関係を
ひろ
にほんこくないさいだい
広げられるウェブサイトのこと。日本国内最大のサービスなんだって。
ジョン:
へぇー、そうなんだ。
まり
うん。私の友達も、みんな、やってるよ。
:
なかま
ジョンもミクシィに入らないと、仲間はずれになりかねないよ。
ぼく
はい
ジョン:
え、ほんと?
じゃあ、僕も入れる?
まり
うん、もちろん。じゃあ、私が、今、私の携帯サイトから 招 待 してあげ
けいたい
:
しょうたい
る。はい、今、ジョンのメルアドに招待メールを送ったから、見てみて。
とど
届いている?
ジョン:
どれどれ、あ、うん、届いてるよ。
さっそく
とうろく
じゃあ、早速、登録してみようかな…。
まり
:
ジョン:
てつだ
うん、手伝ってあげるよ。私が教えたとおり、やってみて。
うん、ありがとう!
- 126 -
とうろくがめん
会話2
【ミクシィの登録画面を見ている二人】
かいいん
しょうたい
ジョン:
ミクシィは、会員になっている人から 招 待 されないと、入れないの?
まり :
うん、そう。18歳以上の人に限られるんだけどね。それで、招待しても
さいいじょう
かぎ
なまえ
せいべつ
じゅうしょ
たんじょう び
しゅみ
らったら、プロフィールに名前や性別、 住 所 、 誕 生 日、趣味なんかを
とうろく
とうろくよう
がめん
書き込んで、登録すれば、いいのよ。これが、プロフィール登録用の画面
よ。
はじ
ジョン:
ほんみょう
だ め
よし、始めは名前だね。名前は、 本 名 じゃないと駄目?
ほんとう
まり :
だいじょうぶ
そんなことないよ。本当の名前じゃなくても、大丈夫。
こうかい
ミクシィでは、本名を公開している人は少ないかも…。みんな、たいて
じぶん
だれ
とくめい
おお
い、自分が誰かわからないように、匿名の名前で登録してる人が多いよ。
私のニックネームは、
「マリン」だよ。
ジョン:
そっか、じゃあ、僕もやってみる。
まり
うん。あ、それから、このジョンのプロフィールの 情 報 を制限すること
じょうほう
:
せいげん
もできるよ。
ジョン:
ほんと?
どうすればいい?
まり :
見て、ここに公開先って、書いてあるでしょう。
こうかいさき
にっき
だれ
えら
ジョンのプロフィールや日記を誰にまで公開するか選べるのよ。
ぜんたい
ここに「友人」
「友人の友人」
「全体」とあるでしょう?
えら
ジョン:
なるほど。この中から選べばいいんだね?
がめん
会話3
【ミクシィの画面を見ている二人】
いちらん
ジョン:
ここに「マイミクシィ一覧」って、あるけど…?
まり :
うん、今は、ジョンのマイミクは私一人だけよ。
ジョン:
わかった。あ、すごい、まりは、マイミクが 150 人もいるんだね?
ふ
どうやって、マイミクを増やせばいい?
じぶん
まり :
しょうたい
いろ
そうねぇ、まず、自分の友達を 招 待 したらどう?
おな
それから、色んな人
しゅみ
のページの日記を読んで、同じ趣味の人を見つけたり、気が合いそうな
人にメッセージを送ったりするの。
なかよ
とうろく
そして、仲良くなった人をマイミクシィとして登録すればいいんだよ。
てがる
ジョン:
にっき
へぇー、おもしろそう。つまり、ブログみたいに手軽に日記が書けるっ
ていうわけだね。それで、同じ趣味の人は、どうやって、見つけるの?
かんしん
まり :
ここに「コミュニティ」っていうのがあるでしょ。ここで、ジョンが関心
も
けんさく
を持っていることを検索すればいいの。
けんどう
ジョン:
わかった。僕、剣道をやっているから、あとで剣道のコミュニティを検
索してみるよ。ええと、この「足あと」っていうのは何?
じどうてき
まり
:
きろく
ひょうじ
あ、それは、ジョンのページを読んだ人を自動的に記録して、表示して
ぎゃく
くれるの。 逆 に、ジョンが誰かのページを読んだ時も、ジョンの足あと
がその人のページに残るのよ。ジョンが日記を書いた時、
「○○さんは読ん
- 127 -
でくれた。」
、「××さんは読んでいない。」といったこともひと目でわかる
のよ。
けいじばん
ジョン:
そうか、誰が読んだかすぐわかるから、ブログや掲示板みたいに知らない
へん
か
こ
めいわく
しんぱい
すく
人に変な書き込みをされたり、迷惑メール送られたりとかの心配が少ない
んだね。
まり
:
うん、そういうこと。
すうじつご
会話4
【数日後キャンパスで】
ふ
まり
:
ジョン:
あ、ジョン!
どう?
あれから、マイミクは増えた?
たの
けんどう
はい
うん、おかげで楽しんでるよ。剣道のコミュニティに入ったから、マイ
あたら
こうかいさき
ゆうじん
ゆうじん
げんてい
ミクも増えて、 新 しい友達もできたよ。公開先を「友人の友人」に限定
こじんてき
にっき
しゃしん
しているおかげで、ミクシィに個人的な日記や写真をアップしても、イ
ふとくていたすう
ンターネットの不特定多数の人に見られることがないからね。
もんだいてん
まり
:
そう。でも、問題点がないわけじゃないから、気をつけてね。
ジョン:
へぇ、どんな問題?
まり
うん、例えば、うちのお姉ちゃん、あるアイドルの「追っかけ」なの。
たと
:
ねえ
かいしゃ
お
どうりょう
こじんてき
しゅみ
つつぬ
それで、会社の 同 僚 にそういう個人的な趣味が筒抜けになって、あとで
はずか
恥 しかったんだって。
べつ
かいいんとうろく
べつじん
それから、同じ人が別のメールアドレスで会員登録をして、別人になり
ちじん
すまして、知人の日記をこっそり読んだりすることもあるんだって…。
ジョン:
へぇ。
まり
それに、この 間 、健が言ってたんだけど、健君、ミクシィ 中 毒 になっ
あいだ
:
けん
けんくん
ちゅうどく
ちゃったんだって。
ジョン:
ミクシィ中毒?
まり
そう。日記を書くたびに、誰が日記にコメントをつけているかと気に
:
いちにち
なんじゅっかい
な っ て 、 一日 に 何 十 回 も ロ グ イ ン し ち ゃ う ん だ っ て …。 そ れ で 、
すいみんしょうがい
睡 眠 障 害 になっちゃったんだって。
ぼく
ジョン:
そっか…、僕らも気をつけなくちゃね。
上記のようにこのユニットで扱う文法項目(文型)には下線をひいた。このような本
文を作成したのち、語彙リスト、文法説明、文型練習(会話練習)、本文理解と内容
質問を順に作成していき、ユニットごとにモジュールパケットとしてまとめることに
した。
5.日本語会話コース 5(SPJ5)の概要
本コースの目的は下記のように定めた。
- 128 -
1.
上級レベルに行くために中級後期(日本語能力試験 N2)のよりアカデミック
な文型・語彙を学ぶこと。
2.
ディスカッションや発表で、日本語だけで意見を言うこと、説明することなど
ができるようになること。
3.
ニュースやテレビ番組、映画で使われる自然な日本語を理解し、様々な話題に
ついて会話できるようになること。
4.
できるだけ日本語だけで言い換えたり、考えたりできるようになること。
本コースは、学習者が自ら各ユニットのトピックについて日本語でディスカッション
を行うことを最終目的とし、そのために学生自身がディスカッションのための文献や
資料を自分で探し出し調べ、ディスカッション・ポイントも自分で考え、ユニットご
とに順番にディスカッションの司会を行えるようにコース設計した。毎週 5 コマの 50
分授業で、1 週間に一つのトピックについて日本語でディスカッションを行うことが
できるようにするために、「学習者主体」、「自律学習」、「協同参加型学習」を基本理
念とし、学習者自らが能動的に学習過程に参加できるように、具体的に下記のような
プリントを配布し、クラス運営を行った。
◆ 勉強のしかた:
 Unit の語彙リストの言葉の意味や使い方を覚える。
(予習)
 Unit ごとに 10 分くらいの単語クイズをする。
 言葉の意味や使い方を覚えているかどうかテストします。
 授業でやった単語練習シートの問題を復習する。
 授業で練習した新しい文型の使い方を覚える。(予習・復習)
 Unit のディスカッションのポイントを3つ、考える。
(予習)
 ディスカッションの時、自分のディスカッション・ポイントやわからなかったこ
となどについて話し合いをする。できるだけ、新しい言葉や文型を使いましょう。
◆ Unit のディスカッション・リーダーの発表について:
 Unit のトピックについて、ディスカッションに必要な情報を自分で集めて、まと
める。トピックの背景について、本、雑誌、インターネット、統計資料などをで
きるだけたくさん調べて、発表原稿を作る。
- 129 -
 レジュメを作ること。
(A4、1~2 枚で)
 どうしてそのトピックを選んだか
 トピックの背景について・資料の説明/解説
 ディスカッション・ポイントを 6 つから 7 つ考え、それについて、皆に意見を聞
き、でディスカッションを進める。
 質問など
*
パワーポイントを使いたい人は、事前に知らせて下さい。
各ユニットのディスカッション・リーダーは、学期始まりの最初の週に、クラスで学
生同士が自由に話し合って、各自好きなトピックを選び担当者を決定できるようにし
た。
1 週間で一つのユニットを終えるわけだが、1 コマ目と 2 コマ目のクラスでは、各
ユニットの文型を用いた会話練習、3 コマ目が語彙テストと語彙表現練習用シートを
使用した作文練習を行っている。4 コマ目で、本文会話の練習を行い、5 コマ目でト
ピック(本文内容)についてディスカッション・リーダーがディスカッションを行う
ようにしている。リーダーは、まず、クラスで 15~20 分くらいで、なぜこのユニッ
トのトピックについて話したかったのかを説明し、ディスカッションのポイント(テ
ーマ、内容、背景など)について調べてきたことを説明する。その後、自らが考えて
きたユニットのトピック(本文内容)についてのディスカッション・ポイントについ
て最終的にクラスで意見を聞き、話し合いを行うことになっている。ディスカッショ
ン時は教師はできるだけ余計な介入を避け、一参加者として加わり、クラスの主導権
はすべてリーダーに一任するようにしている。下記の例は、実際にユニット1「ミク
シィって何?」において学生が考えてきディスカッション・ポイントである。
 Facebook では本名を使うが、ミクシィではよくニックネームを使います。ど
う思いますか?
 SNS に個人的な情報をアップして、何か困ったことがありましたか。
 ミクシィにも Facebook と同じ機能を作ったほうがいいと思いますか。
 ミクシィが日本だけに限られることについて、どう思いますか。
 匿名であることは、友人関係を広げることを邪魔すると思いますか。
- 130 -
筆者は、このモジュール型の新教科書の試用を重ね、2011 年まで 3 年半ほどレベル 5
を担当したのであるが、学生の積極的なクラス参加、発言回数の増加などに効果があ
ったように感じている。この方式を採る以前、教師がディスカッションの司会を行う
と、時に間違いなどを恐れたり、妙に構えてしまったりして積極的に発言しない学生
がいることは否定できないことであった。しかし、教師主導ではなく、学生主体でク
ラスメイトがディスカッション・リーダーになった場合、普段の文型練習、会話練習
時にはおとなしくあまり手を挙げない学生がトピックによっては突然意見を言い始
めたりすることもあり、皆の前で発言するハードルが下がる効果があるのではないか
と思っている。
6. 終わりに:コース評価と今後の展望
コース後の授業評価は概ね好評である。コース終了時に行われる授業評価の過去 2
年半の結果を見ると、「このクラスで使用された教科書は適切であったか」という設
問に対し、2009 年度秋学期は 86%、2010 年度春学期は 64%、2010 年度秋学期は 82%、
2011 年度春学期は 80.5%、2011 年度秋学期は 85.5%の履修者が 5 段階評価の 4 以上
(適切あるいは大方適切である)という回答であった。私が SPJ5 のクラス担当を離
れて 1 年後の 2012 年度秋学期も 67%であった。2009 年度、2010 年の履修者の意見と
して、
「トピックが面白かった」などという意見のほかに、
「語彙・表現がたくさん覚
えられた。」
「自分で教材を選べて良かった。」
「日本語でディスカッションする自信が
ついた」などの意見が寄せられている。
私が 2008 年秋学期に新教科書を使用し始めた直後、リーマン・ショックによる金
融危機の影響で、ユニット 6 のトピックである「急増する外国人労働者」という本文
が時代に合わないものになってしまった。しかし、1 冊の完成した教科書ではなく、
ユニットごとに簡単に取り換え、修正が利く「モジュール型教材」であったために、
即座に対応することが可能であった。翌年 2009 年春学期は、ユニット 6 の本文を「外
国人労働者、受け入れますか?」に変更し、フィリピンやインドネシアからの看護師
や介護士が日本での就労に苦労しているという内容のトピックに変更することがで
きた。また、私が担当した 3 年半の間に、ミクシィの登録の仕方が招待制から誰でも
すぐに登録できるように変更されたり、誰が自分のページを見に来たかが即座にわか
る「足跡」機能がなくなったりというような変更があったのであるが、その都度、本
文の該当箇所をすぐに取り換えられたのも、1 冊のまとまった教科書を買わせるとい
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う体裁ではなく、ユニットごとにプリントとして配布する「モジュール型教材」であ
ったからこそ可能であったのではないかと思う。このように「モジュール型教材」が
学生のニーズや国内のみならず世界の文化事情、社会時事や流行の移り変わりにも柔
軟に対応できる可能性を秘めた教材であることが改めて実感できた次第である。
今後、更に関西外国語大学留学生別科に留学に来ている欧米系学習者という観点
から、彼らがより主体的、自律的、自発的に学習を進められるような方法について考
えていければと思う。具体的には、彼らの興味関心、ニーズがどこにあるかの更なる
広範な調査と中級後期のレベルに適したトピックの模索がまず考えられるであろう。
今後、学生からのアンケート調査、インタビューを基にトピックごとにユニット(モ
ジュール)の数を増やしていけば、コース開始前にどのユニット(モジュール)を勉
強したいかを学生に選んでもらうことも可能になって行くと思う。また、教室活動中
に学習者がもっと自由にその場その場で「即興的」に発言をすることを補助し「その
場その場」のコミュニケーション能力を高めていけるような教師/教授法/教材のあ
り方についての考察なども進めて行きたい。始めから一つの決まった正しい解答に向
けて解答を求める/導く、あるいは、善悪、正否といった二項対立的な考え方の枠に
はめ込み、どちらか決めさせるといった教え方ではなく、最終的な答えを出させるこ
とを目的しない、その場その場のコミュニケーションの積み重ねの過程を重視した教
え方について模索していきたい。言い換えれば、ある一つの問題についての多様な解
釈の提示、あるいは、多元的な意見交換に柔軟に対応できるような教授法の実現に多
少なりとも貢献できる教材開発を目指していければと考えている。
参考文献
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岡崎敏雄・岡崎眸(1990)
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人社
岡崎洋三・西口光一・山田泉 編著(2003)『日本語教師のための知識本シリーズ③
人間主義の日本語教育』凡人社
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短編小説を使った多読授業の実践」
『日本語教育』126 号 pp.74-83.
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佐藤慎司・熊谷由里編(2011)
『社会参加をめざす日本語教育』ひつじ書房
J.V.ネウストプニー (1995)『新しい日本語教育のために』大修館書店
J.V.ネウストプニー (1982) 『外国人とのコミュニケーション』岩波書店
髙屋敷真人(2011)「学習者主体のディスカッションによる上級読解授業の実践―学
習者が読み物教材を選べる上級読み書き授業―」
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日
本語教育論集』21 号 pp.15-35.
田中望・斉藤里美(1993)
『日本語教育の理論と実際―学習支援システムの開発―』
大修館書店
トムソン木下千尋 編(2009)『学習者主体の日本語教育
オーストラリアの実践研
究』ココ出版
伴紀子(2003)「学習ストラテジーは学習の過程でどのように変化するか」宮崎里司・
ヘレン・マリオット編『接触場面と日本語教育
ネウソトプニーのインパクト』明
治書院
西口光一「
『教育』分野―日本語教育研究の回顧と展望―」『日本語教育』153 号
pp.8-23.
伴紀子 監修・宮崎里司 編著(2009) 『タスクで伸ばす学習力
学習ストラテジー
を活かした学びの設計』凡人社
宮崎里司・ヘレン・マリオット編『接触場面と日本語教育
ネウソトプニーのインパ
クト』明治書院
(mtakayas@kansaigaidai.ac.jp)
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