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平成22年
12月20日
第5号
発行:熊谷市立江南文化財センター
TOPICS
県 民 の日 ・文 化 財 イベント
埼 玉 県 民 の 日 で あ る 1 1 月 1 4 日 ( 日 )、 文 化 財 イ ベ ン ト を 市 内 各 地 で 開 催 し ま し た 。
江南文化財センターにおいては、
「 ま が 玉 づ く り・火 お こ し 体 験 」を 開 催 し 、小 学 生 の 児 童 を 中 心 に
約40名が参加しました。真剣なまなざしで、世界で一つだけのまが玉を作り上げていました。
星渓園(鎌倉町)においては、埼玉県立熊谷女子高等学校・埼玉県立熊谷西高等学校・立正大学の
茶道部にご協力いただき、お茶に親しむ会を開催しました。今
年は天候にも恵まれ、合計137人もの参加者が来園し、日本
の伝統文化である「一期一会」のお茶を楽しんでいました。
国登録有形文化財の坂田医院旧診療所(妻沼)においては、
「 近 代 化 遺 産 全 国 一 斉 公 開 2010」の 一 環 と し て 、内 部 の 一 般
公開を開催し、県外からも含め約60名が来場しました。映画
の撮影で使用されることの多い、旧診療所のレトロな雰囲気を
味わいながら、写真撮影をするなど、多くの方がじっくりと建
物と向き合う様子がありました。
お茶に親しむ会
第 3回 地 域 伝 統 芸 能 今 昔 物 語
1 1 月 2 3 日( 火 ・祝 )、「 第 3 回 地 域 伝 統 芸 能 今 昔 物 語 」が 大 里 生 涯 学 習 セ ン タ ー「 あ す ね っ と 」
文 化 ホ ー ル で 開 催 さ れ 、市 内 各 地 に 保 存 継 承 さ れ て き た 市 指 定 無
形 民 俗 文 化 財 5 団 体( 熊 谷 木 遣 、下 恩 田 さ さ ら 獅 子 舞 、手 島 八 木
節 笠 踊 り 、間 々 田 万 作 お ど り 、成 沢 屋 台 囃 子 )と 、一 般 芸 能 5 団
体( 熊 谷 市 三 曲 協 会 、沖 縄 舞 踊 愛 好 会 、大 里 音 頭 の 会 、妻 沼 八 木
節 保 存 会 、む さ し 江 南 音 頭 保 存 会 )が 共 演 し 、日 々 修 練 を 重 ね て
い る 伝 統 芸 能 を 披 露 し ま し た 。あ わ せ て 無 形 民 俗 文 化 財 の パ ネ ル
展 示 も 行 い ま し た 。ま た 、無 形 民 俗 文 化 財 の 披 露 で は 、未 来 の 継
承者となる小学生が多く出演し、舞台を盛り上げました。
間々田万作おどり
市 政 宅 配 講 座 ―伝 統 芸 能 の世 界 「今 昔 物 語 」
11月21日(日)、市政宅配講座・伝統芸能の世界「今昔
物 語 」を 、箱 田 児 童 高 齢 者 ふ れ あ い セ ン タ ー に て 開 催 し ま し た 。
箱田地区の市民を中心に構成されている「はこだ友の会」から
の依頼を受け、市内の無形民俗文化財について学ぶ機会を提供
しました。この講座では、平成21年に開催した「第2回地域
伝統芸能今昔物語」の様子を収録した動画を放映しながら、市
内における伝統芸能の分布や、獅子舞の種類などを中心に説明
しました。この講座では、伝統芸能の楽しさや素晴らしさを皆
さんのところへお届けしますので、ぜひご活用ください。
市内遺跡発掘情報
前 中 西 遺 跡 「古 墳 時 代 の河 川 の跡 を確 認 」
7 月 ~ 10 月 半 ば ま で 発 掘 調 査 を 行 い ま し た 。衣 川 の 旧 流 路 と 考 え ら れ る 河 川 の 跡 や 直 線 に 並 ぶ 杭 、
溝跡などが見つかりました。河川跡からは大量の土器とともに、農具とみられる木製品を検出してい
ま す 。今 回 は 、鋤( す き )、多 叉 鋤( た ま た す き )、田 下 駄( た げ た )、横 槌( よ こ つ ち )な ど が 見 つ か
り、いずれも腐らずに残った貴重なものです。溝跡は用水路と
して機能し、集落の生産基盤である農地を支える役割があった
と考えられます。これらは古墳時代後期(6~7世紀)頃のも
のと推測しています。
9 月 29・30 日 に 地 元 小 学 校 を 対 象 に 遺 跡 見 学 会 を 行 い ま し
た 。こ の 他 、職 場 体 験 、実 習 の 受 入 な ど も 実 施 し 、259 人 の 参
加 が あ り ま し た 。ま た 、政 府 間 の「 バ ー ミ ヤ ー ン 遺 跡 保 存 事 業 」
の一環として日本で研修を受けているアフガニスタン人考古学
者も遺跡を訪れ、識見を深めていました。
木製品の出土した様子
上 之 地 区 に弥 生 時 代 の竪 穴 住 居 出 現 !
1 1 月 1 3 日( 土 )、上 之 地 区 に お い て 古 代 体 験 イ ベ ン ト「 弥 生
時代へタイムスリップ」を開催しました。イベントでは、上之地
区に広がる前中西遺跡で実際に見つかった住居跡をもとに復元し
た弥生時代の竪穴住居や出土した弥生土器や石器などを一般公開
し、まが玉づくりや火おこしなどの体験も行いました。
このイベントは主に上之地区在住の市民を対象に行ったもので、
407名もの参加があり、会場はにぎわいを見せていました。
竪穴住居の見学
連載
埋蔵文化財の保護活動
第5章
発掘調査報告書の作成について
発掘調査報告書とは、埋蔵文化財の発掘作業から整理等作業
にいたる、発掘調査全般の成果を的確にまとめたものです。発
掘調査は、この報告書が適切に刊行されることによって完結し
ます。
通常、発掘調査は、埋蔵文化財のうち、開発等で破壊され現
状保存の措置をとることができなかった遺跡を、後世に残すこ
とが目的の記録保存です。したがって、報告書は、破壊される
遺 跡 の 代 わ り に 、後 世 に 残 す 記 録 の 中 で 最 も 中 心 と な る も の で 、
埋蔵文化財の内容を過不足なく記載したものが求められます。
また、発掘作業から整理等作業を通じて得られた情報を、客観的かつ的確に収録したものであると
同時に、理解しやすいものでなければなりません。
熊谷市教育委員会は、毎年、発掘作業を実施した遺跡の報告書を刊行して、多くの方々に、その成
果を公表しています。刊行した報告書は、市内・県内をはじめとした図書館や博物館等に配布してい
ま す 。江 南 文 化 財 セ ン タ ー お よ び ホ ー ム ペ ー ジ「 熊 谷 市 の 文 化 財 」で も 閲 覧 す る こ と が で き ま す の で 、
興味のある方は、熊谷市の歴史を知る一つの手立てとして、ぜひご利用ください。
文化財センター通信
名園で俳句を―俳句入門講座
名 勝 星 渓 園 の 星 渓 寮 に お い て 、9 月 1 6 日 か ら 、1 0 月 7 日 、
14日、28日、11月4日の計5回に渡り、俳句入門講座が
開催されました。
この講座は、日本の伝統文化である俳句を通して、市の名勝
である星渓園をもっと多くの方に知っていただきたいという趣
旨で始まり、今年で4年目となります。
講座の開催にあたりましては、創立40年有余年の歴史を持
つ、熊谷市俳句連盟の皆さんにご協力をいただき、会長であり
ます伊佐山春愁先生に講師をお願いいたしました。伊佐山先生
の丁寧なご指導のもと、21名の参加者たちは夏から秋へと変わりゆく星渓園の中で俳句の創作に勤
しんでいました。
龍 淵 寺 における傍 示 標 の設 置
11月上旬、上之にある龍淵寺に、指定文化財を案内する傍示標を設
置しました。龍淵寺は、鎌倉時代から安土桃山時代にかけて忍城を中心
に勢力を広めた成田氏の菩提寺として、県内有数の古刹であり、複数の
文 化 財 を 所 有 し て い ま す 。今 回 設 置 し た 傍 示 標 に は 、
「奥原晴湖の墓」
(県
指 定 文 化 財 : 旧 跡 )、「 成 田 氏 の 墓 」( 市 指 定 文 化 財 : 史 跡 )、「 梵 鐘 」( 市
指定文化財:歴史資料)についての説明を記しました。なお、梵鐘は新
たに建てられたお堂に設置されており、その景観は目を見張るものがあ
ります。設置した傍示標とあわせて、ぜひご覧ください。
文化財探訪 根岸家長屋門③―修理工事の完了
平 成 22 年 4 月 か ら 修 理 事 業 を 行 っ て い た 市 指 定 文 化 財 建 造 物 の 「 根 岸 家 長 屋 門 」 は 、 1 1 月 に 工
事を完了し、12月に竣工式を迎えました。
今回行った修理の主たる目的は、歪みたわんだ屋根を修復し雨漏りを防止することでした。実際の
作業はすべての屋根瓦を取り去り、腐朽した隅木・棟木・垂木等を交換した上で、割れた瓦を交換す
る な ど し て 葺 き 直 し を し ま し た 。 屋 根 瓦 は 約 12,000 枚 に 達 し 、 通 常 住 宅 の 二 倍 も あ る 分 量 で し た 。
ま た 、当 初 の 長 屋 門 の 姿 に 近 づ け る た め 、後 世 に 増 築 さ れ た 下 屋 な ど を 取 り 払 う 工 事 も 行 い ま し た 。
その過程で、かつての長屋門の壁が今まで知られて
いた白壁ではなく灰色を呈した「ねずみ壁」である
ことが判明し、前面の塗り直しも実施しました。
整然と並んだ瓦の葺き筋や、整った軒の先端を見
上げると、重厚な色調の壁とあいまって、幕末の志
士が通り抜けた時代を思い起こさせます。
なお、根岸家では門内に小展示室(友山・武香ミ
ュージアム)を新たに設け、来場者への情報発信の
場として活用されることになりました。
修理工事完了後の長屋門
よろい づ か
文 化 財 コラム 古 代 と の 遭 遇 ・ 第 5 話
地 下 に埋 もれた前 方 後 円 墳 ― 鎧 塚 古 墳 ―
「カーン、カーン」市内上中条にある鎧塚古墳の発掘調査開
始の杭打ちが始まりました。発掘調査は、まっすぐなトレンチ
(土の埋まり方や遺構の概要を知るための試掘溝)を入れるた
めに決まった方位と距離を保って杭を打つことから始まります。
「ここに打とう」と決めた最初の杭が、これ以上にない、実に
奇跡に近い都合の良い位置で、この発掘の成果を大きなものに
する原因となるとは、この時、夢にも思っていませんでした。
当地は、地上から見て古墳があるなんて想像もつかない、一面真平な水田地帯の中だったのです。
しかし、杭は水田下に埋もれていた鎧塚古墳の後円部のど真ん中に打ち込まれたのです。先ずこの杭
を中心に東西南北十字にトレンチを入れたところ、なんと北・東・南同じ距離で古墳の縁辺部に埴輪
列 が ほ ぼ 20 ㎝ 間 隔 で 出 て き ま し た 。 径 31.8m の 円 墳 で あ る こ と が 分 か っ た の で す が 、 西 側 が 出 て
き ま せ ん 。「 お か し い な あ ー 」と 思 い さ ら に 西 へ 進 め る と 、円 の 外 12m で 直 線 と な る 墳 丘 の 終 わ り が
見つかったのです。
「 す ご い 、前 方 後 円 墳 だ よ ー 」な ん と 、当 地 で は 初 め て の 発 見 と な る「 帆 立 貝 式 前
方 後 円 墳 」 が あ ら わ れ た の で す 。 昭 和 5 4 年 夏 8 月 の こ と で す 。( 寺 社 下 、 記 )
特 集 西 別 府 遺 跡 群 -郡 家 とそれを支 えた祈 りと祭 り―
西 別 府 遺 跡 群 は 、熊 谷 市 の 西 部 、深 谷 市 境 に 所 在 す る 西 別 府 遺 跡 、
西別府廃寺、西別府祭祀遺跡の3遺跡の総称で、古代幡羅郡家(郡
役所)跡である深谷市幡羅遺跡とともに重要な遺跡です。
西別府遺跡は幡羅郡家の一部と考えられ、調査により平安時代
( 9 世 紀 後 半 ~ 11 世 紀 後 半 ) の 大 型 掘 立 柱 建 物 を 伴 う 二 重 溝 区 画
が 発 見 さ れ 、郡 家 を 構 成 す る 重 要 な ブ ロ ッ ク と の 評 価 を 得 て い ま す 。
西別府廃寺は、奈良時代(8世紀前半)に創建された寺院で、建立には幡羅郡家の役人が関わり、経
済的・精神的な支えとなっていたと推定されます。西別府祭祀遺跡(右上、現況写真)は、幡羅郡家
が で き る 少 し 前 の 古 墳 時 代 後 期( 7 世 紀 後 半 )か ら 始 め ら れ た 水 の 恵 に 対 し て 行 っ た お 祭 り の 場 所 で 、
郡 家 に 付 属 す る 祭 祀 場 所 と し て 機 能 し 、西 別 府 廃 寺 の 僧 侶 も 関 わ り 祈 り を 捧 げ て い た と 考 え ら れ ま す 。
郡家・寺院・祭祀の3つが揃って発見されている例は全国的にも珍しく、岐阜県弥勒寺官衙遺跡群
に次いで2例目で、現在国指定史跡をめざして、調査・研究を行っています。
編集後記
平成22年は、文化財保護法制定60周年という記念すべき
年でありました。昭和24年に発生した法隆寺金堂壁画の焼損
という出来事が発端となり、翌年制定された法律は、有形と無
形の文化財を幅広く類型化するなど、世界的に見ても画期的な
内容を含んでいました。この法律もその後の課題と向き合いな
がら進化を続けています。なお、本年9月、ポーランドで開催
さ れ た A S E M( ア ジ ア 欧 州 会 合 )で は 、
「文化財と地球温暖化」
という新たな課題についての議論が交わされました。これはま
さに、夏の猛暑地である熊谷にとっても重要なテーマです。
発行:平成22年12月20日
熊谷市立江南文化財センター(熊谷市教育委員会社会教育課文化財保護係)
〒 360-0107 熊 谷 市 千 代 3 2 9 番 地
電 話 048-536-5062 FAX 048-536-4575
メ ー ル c-bunkazai@city.kumagaya.lg.jp
ホ ー ム ペ ー ジ : 文 化 財 の 紹 介 、 埋 蔵 文 化 財 の 取 扱 方 法 、「 BUNKAZAI 情 報 」 カ ラ ー 版 な ど を 豊 富 に 掲 載
「 熊 谷 市 の 文 化 財 」 http://www.kumagaya-bunkazai.jp/
「 熊 谷 市 web 博 物 館 」 http://www.kumagaya-bunkazai.jp/museum/index.htm