植込み型心臓治療デバイス - 電波利用ホームページ

電波利用環境シンポジウム
植込み型心臓治療デバイスのEMI
~その機序と携帯電話指針改正の背景~
豊島 健
http://square.umin.ac.jp/J-RIDT/
2015/06/10
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植込み型デバイス・テクノロジー講座
植込み型心臓治療デバイス
ペースメーカ
脈が遅くなる不整脈(徐脈)の治療
ICD
両心室
ペースメーカ
左右心室の拍動がずれてしまうための
心不全の治療
脈が早くなりすぎる不整脈
(心室細動)の治療
2015/06/10
 他の治療方法より効果が高い
ことが実証されている治療機器
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植込み型デバイス・テクノロジー講座
植込み型心臓治療デバイスの構造例
= ペースメーカ =
セラミック基板
リチウム電池
マイクロプロセッサ
集積回路
2015/06/10
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植込み型デバイス・テクノロジー講座
ペースメーカの概要
単極電極
リング(不関)電極
電極
双極電極
 電極の設置法
 静脈を経由して、右心房、右心室
壁に電極を接触させる
心房電極
心室電極
 ペースメーカの働き
 心臓を刺激する
 2.5V、3mA、0.4ms
 心電位を検出
 0.18mV~2mV
2015/06/10
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植込み型デバイス・テクノロジー講座
ペースメーカの動作
感度
心電位
設定周期
タイマー
0
 心電位を監視し、設定された周期内に
検出されなければ、心臓を刺激する。
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植込み型デバイス・テクノロジー講座
EMI(電磁干渉)とは
= 心電位が雑音で覆い隠されること =
センシング感度
心電位
通常動作時
?
?
?
?
?
センシング感度
心電位
雑音混入時
2015/06/10
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植込み型デバイス・テクノロジー講座
人体への雑音混入経路
+-
体に高圧電界があびせられる
体に伝導電流が流れる
体に変動磁界があびせられる
-+
+-
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植込み型デバイス・テクノロジー講座
伝導電流の例
= 電気器具からの漏電 =
冷蔵庫
衣類乾燥機
電子レンジ
漏洩
電流
食器洗い機
洗濯機
アース未接続
 漏電 は知覚限界(400µA)以下の強度 (>45µA)
でも ペースメーカ/ICDのEMIの原因となる。
 正しくアースを接続して使用する。
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電解還元水生成器
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植込み型デバイス・テクノロジー講座
変動磁界の影響
 単極リードは電極・不関電極
間の生体組織を含め、1回巻
コイルの
きコイルを形成する。
ループ面積
 コイルに変動磁界が照射さ
れると、起電力を生じる
(発電の原理)。
 双極電極の影響は単極電極
の1/6~1/10。
磁力線
単極: 0.2 Grms @ 50Hz→1mVpp (人体モデル使用時)
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植込み型デバイス・テクノロジー講座
磁石と磁力線
磁石
鎖交する磁力線の数
(発電の強さ)は異なる
コイル
鎖交した磁力線
磁石表面の磁力線密度
(磁石の強さ)は同じ
 磁力線の鎖交数は同じ強さ(磁束密度)の磁石でも、大きさに
よって異なる。
 大きな発生源は弱い磁界でも影響することがある。
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植込み型デバイス・テクノロジー講座
標準の人体モデル
 患者さんを危険な環境に置かずに
環境を評価する。
 オリジナルは Irnich が提案。
 より正確な評価ができるシステムと
して改善。
 総務省の調査研究で同一の物が
使用されている。
 ISO(国際標準化機構)のテクニカル
レポート(TR20017‐2011)に収載
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植込み型デバイス・テクノロジー講座
磁界発生源の大きさの影響
人体モデル中心での磁界 (G)
1000
 磁界発生源が大きいほど、
弱い磁界でも影響する。
100
10
1
1
コイル直径
コイル直径
コイル直径
コイル直径
コイル直径
コイル直径
0
20
40
60
等価コイルの直径 (cm)
80
 磁界発生源が大きいほど、
離れても減衰しにくい。
100
雑音振幅(mV)
0.8
0.1
=
=
=
=
=
=
10 cm
30 cm
40 cm
50 cm
100 cm
200 cm
0.6
0.4
0.2
0
0
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0.2
0.4
距離(m)
0.6
0.8
1
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植込み型デバイス・テクノロジー講座
心電位増幅回路のフィルター特性
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心電位領域
10V以上ないと感じない
電圧(Vpp)
1
100m
10m
1m
心電位
スペクトル
1
10
50Hz なら 2mV
で感じ
100
雑音領域
1k
10k
100k
周波数(Hz)
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植込み型デバイス・テクノロジー講座
一定振幅以上の信号の検出
通常時動作
センシング感度
入力
EMIモード動作
センシング感度
入力
出力
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植込み型デバイス・テクノロジー講座
過大入力保護ダイオード
 患者の身体に高電圧を印加することがある。
 体外式除細動器(3~4kV)
 電気メス(~400V)
 デバイス内電子部品の保護
電流
過大入力保護ダイオードの
特性
チップ・リング間
-10
カン・チップ間
-5
5
10
電圧(V)
カン・リング間
大きな電流が流れて
も電圧は一定
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全ての人体に接する金属部の間に
過大入力保護ダイオードを配置
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植込み型デバイス・テクノロジー講座
非線形回路による包絡線検波
包絡線
線形回路
の反応
検波の出力が小振幅
でも増幅器で増幅される
非線形回路
の反応
包絡線検波:高周波の包絡線の情報を取り出す操作。
振幅変調波に対する復調操作。
⇒デバイスに低周波雑音を誘起
20ms
PDC方式携帯電話の電波
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PDC方式携帯電話の電波で
ペースメーカに混入した雑音
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植込み型デバイス・テクノロジー講座
ペースメーカでの対策
サファイア絶縁体
ニオビウム導線
 技術的対応
フィードスルー
フィルター
 フィードスルーフィルター
フィードスルー
 貫通コンデンサと同機能
 450MHz以上の高周波を吸収
 携帯電話等の電波をシャット
アウト
回路に10V以上の電圧が
加わらないように保護
過大入力
保護回路
回路
電池
回路
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植込み型デバイス・テクノロジー講座
最初の携帯電話の調査
 平成7~9年
不要電波問題対策協議会(現:電波環境協議会)
 アナログ、PDC、PHS
方式の携帯電話
 ペースメーカ 228機種
 影響を受けたのは15cm
未満の距離
 22cmで雑音強度半減
 指針
 ペースメーカ植込み部位
から 22cm 離して、携帯
電話を使用/携行する
2015/06/10
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植込み型デバイス・テクノロジー講座
電波の医療機器等への影響
に関する調査研究 (総務省平成12年~)
 電波利用が発展し、日常生活で必要不可欠となった。
 昭和の頃の身近な電波発射源:電話子機、カラオケマイク、
シチズンバンドトランシーバ? … 一家に1台?
 現在では:携帯電話、Wi‐Fi … 一家に何台?
 身近になった電波の影響への国民の関心が高まる。
 最新の実証実験により正しい情報を提供し、国民の
不安を解消。
 総務省/厚生労働省/経済産業省/国土交通省/
日本不整脈デバイス工業会/電波発射装置の業界
代表が協同実施
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植込み型デバイス・テクノロジー講座
携帯電話の試験結果
 平成12~13年、平成16年~21年
22cm
 全方式の携帯電話(含む:レピータ)
 植込み型心臓治療デバイス全体を
網羅
 試験結果
 15cmを超える影響は観察されず
 ICDは5cm以内で不要ショック発生
 小電力レピータは影響なし
 22cm指針は、全ての植込み型心
臓治療デバイス、携帯電話に対し
妥当
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植込み型デバイス・テクノロジー講座
携帯電話とローソク
光
磁力線
22cm
ペースメーカ
携帯電話
電波
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植込み型デバイス・テクノロジー講座
ワイヤレスカードシステム
 平成14年
 ペースメーカ 27機種、
ICD 6機種
 カードリーダー 13機種
 試験結果
 ペースメーカ
最大影響距離: 8cm
 ICD
影響なし
 指針
 植込み型デバイスから
12cm 以上離す。
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植込み型デバイス・テクノロジー講座
無線LAN/WiMAX
 無線LAN(平成15年)/WiMAX(平成22年)
 ペースメーカ 27機種、
ICD 6機種
 16機種の無線LAN(全方式)
 アクセスポイント/クライアント
両者を含む
 ペースメーカ、ICDへの影響
は認められなかった。
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植込み型デバイス・テクノロジー講座
電子商品監視装置(EAS)
 最大影響距離
 280cm
 リセットを受けたペースメーカ
 3機種(最大影響距離25cm)
 不要ショックを発生したICD
図書館
PC量販店
CDレンタル
ショップ
 平成14~15年
 ペースメーカ 28機種、
ICD 7機種
 EAS 40機種(全方式)
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 5機種(最大距離42.5cm:対峙
状態で充電時間を越えて留まっ
た場合)
 正面を向いた状態では、ゲート
から20cm以上離れれば、不要
ショックは発生しない。
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植込み型デバイス・テクノロジー講座
EASの指針
ゲート
外部への
磁力線の漏れ
ゲートの
磁力線
の範囲
外部への
磁力線の漏れ
要注意範囲
 ゲートの外側にも磁力線は漏れている。
 ゲートの中央を正面を向いて、立ち止まらずに通り過ぎる。
 ゲートに近付いたり、体をゲートの方に向けない。
 待ち合わせなど長居をする場合は、3m以上離れた場所で!!
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植込み型デバイス・テクノロジー講座
RFID
平成15、16年度
ペースメーカ 28機種、ICD 7機種
RFID:ゲートタイプ10機種、ハンディタイプ21機種、
据置きタイプ45機種
ゲートタイプ
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ハンディタイプ
据置きタイプ
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植込み型デバイス・テクノロジー講座
RFIDの影響
ゲートタイプ
 最大影響距離:50cm
 ICDは密着状態で不要ショッ
ク発生の可能性あり
 EASと区別がつきにくい
 指針:EASの指針に従う
 表示:EASと同等
ハンディタイプ/据置きタイプ
 最大影響距離
 ハンディタイプ:15cm
 ICD は1cm以内で不要ショック
 据置きタイプ:14cm
 ICD は6cm以内で不要ショック
 ガイドライン
 22cm以内に近づけない
2015/06/10
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植込み型デバイス・テクノロジー講座
新たなRFIDの影響
平成18年
高出力型950MHz帯パッシブタグシステム
平成18年
据置きタイプRFID
最大75cmの影響
100cm指針
アンテナ
2015/06/10
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植込み型デバイス・テクノロジー講座
携帯電話指針見直しの検討
 背景
 第2 世代(PDC)携帯電話の運用停止(平成24 年7 月)
 運用停止を鑑みて「規制・制度改革に係る方針」により、
指針見直しを閣議決定(平成23 年4 月8 日)
 新指針として『15㎝』を提案(平成24年度報告書)
 ペースメーカー等は国際安全規格で携帯電話の周波数
帯で15㎝で影響を受けないことの確認を要求されている
 第3世代以降の携帯電話の影響は数cmと小さい
 携帯電話の将来方式でも、影響が変わらないかは不明
 国際的な指針との整合が取れる
2015/06/10
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植込み型デバイス・テクノロジー講座
植込み型デバイスの国際安全規格
ISO14708(含む:EMC要求)
交流電源
電位治療器 低周波治療器 IH
RFID
EAS
10
電圧(Vpp)
ANSI/AAMI PC69を適用
技術的対応が
困難な領域
携帯電話
[email protected]
1
20kHz
100m
設計どおりの動作
をすべき領域
影響を受けては
ならない領域
心電図
10m
167kHz
[email protected]
2mVpp
1m
10
100
1k
10k
100k
1M
10M
100M
1G
10G
周波数(Hz)
2015/06/10
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植込み型デバイス・テクノロジー講座
植込み型心臓治療デバイスの
国際規格EMC要求への適合証明
国際安全規格(ISO14708) のEMC要求への
適合証明の添付が薬事承認の条件となった
平成15年10月1日以降の申請に適用
平成18年4月1日以降、非適合品は販売不可
この規格の携帯電話該当部分の内容は、
15㎝の距離で影響を受けないことを確認
すること
2015/06/10
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植込み型デバイス・テクノロジー講座
植込み型心臓治療デバイスの
電磁両立性規制の推移
15cmの距離で携帯電話の
影響を受けないことの確認
EN 50061-A1
prEN 45502-2-1 + PC69
1995
平成 5
2000
10
指針(22cm)
2015/06/10
ISO14117
ANSI/AAMI PC69 ISO14708-2 + PC69
指針(15cm)
2005
15
薬事申請時の
国際安全規格への
適合確認要求
2010
20
25
新指針
(15cm)
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植込み型デバイス・テクノロジー講座
総務省の改正指針
平成25年1月24日
ア 植込み型医療機器の装着者は、携帯電話端末の使用及び携行に
当たっては、植込み型医療機器の電磁耐性(EMC)に関する国際
規格(ISO14117等)を踏まえ、携帯電話端末を植込み型医療機
器の装着部位から15cm程度以上離すこと。
また、混雑した場所では、付近で携帯電話端末が使用されている
可能性があるため、注意を払うこと。
イ 携帯電話端末の所持者は、植込み型医療機器の装着者と近接し
た状態となる可能性がある場所では、携帯電話端末と植込み型医
療機器の装着部位との距離が15cm程度以下になることがないよ
う注意を払うこと。なお、身動きが自由に取れない状況下等、15㎝
程度の離隔距離が確保できないおそれがある場合には、事前に
携帯電話端末が電波を発射しない状態に切り替えるなどの対処を
することが望ましい。
2015/06/10
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御清聴ありがとうございました
2015/06/10
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