第 8 回 西日本火山活動研究集会 「モニタリングと - ACRIFIS-EHAI

 第 8 回 西日本火山活動研究集会 「モニタリングとカルデラ噴火」 プログラム・講演要旨集 日時:2013 年 12 月 14 日(土)10:30〜17:30 会場:福岡大学七隈キャンパス 18 号館・1827 教室 主催:西日本火山活動研究集会 共催:福岡大学国際火山噴火史情報研究所 第8回 西日本火山活動研究集会「モニタリングとカルデラ噴火」
日時:2013 年 12 月 14 日(土)10:30〜17:30
会場:福岡大学七隈キャンパス 18 号館・1827 教室
主催:西日本火山活動研究集会
共催:福岡大学国際火山噴火史情報研究所
西日本火山活動研究集会は,
「火山研究の成果を,社会的な活動・事業と結びつけ,社会が
火山研究の成果を求めていることを研究者の方々に知ってもらって連携していく」という主
旨のもと,田中和広教授(山口大)を座長として 2005 年7月以降計 7 回の集会を行ってきま
した.昨年 12 月に開催した研究集会では火山リスク評価とモニタリングをテーマに議論しま
した. 2011 年3月に発生した東日本大震災は,政府の想定をはるかに上回る規模の巨大災害であ
り,こうした低頻度巨大災害を軽減するための防災・減災政策の新たな方向性が模索されて
います.一方,国の地震及び火山噴火予知の次期研究計画においても,低頻度ながら大規模
な地震及び火山噴火に関する研究の充実が課題として取り上げられ,長期的視点に立ち,学
術的な基礎研究を主体として実施する観測研究体制が必要であるとされています.この中に
はカルデラ噴火についても取り上げられており,先行する噴火活動の規模・様式,引き続く
噴火の推移や噴火に至るマグマ蓄積や噴火の周期性から,大規模噴火の発生過程を解明して
いこうとする具体的な動きもあります. こうした背景から今回の研究集会では,低頻度大規模現象であるカルデラ噴火について,
これまでどの程度のことが分かっているか,また今後モニタリングを含めてどう観測研究を
どう進めていくべきか等について話題提供して頂き,その現状を様々な角度から検討し,情
報交換を行い,低頻度大規模災害に対する対応の方向性を議論できればと考えています. 1
1. はじめに・趣旨説明 「モニタリングとカルデラ噴火:基調講演」(座長:奥野充 10:30~)
2. 小林哲夫(鹿児島大院・理工):九州のカルデラ火山-月刊地球 2008 年論文以降の進展- 3. 趙大鵬(東北大・理):日本の火山と長白山火山の深部構造とマグマ活動に関する新知見 「姶良カルデラ」(座長:小林哲夫 13:30~)
4. 奥野充(福岡大・理・国際火山噴火史情報研究所):カルデラと後カルデラ火山の活動史-今
後,桜島で薩摩(P14)クラスの噴火が起きるか?- 5. 宮町宏樹(鹿児島大院・理工)
:姶良カルデラ下における伝達関数の時空間変化の能動的モニ
タリング 「阿蘇カルデラ」(座長:小林哲夫 14:10~)
6. 宮縁育夫(熊本大・教育)
:67-30 ka のテフラ層序からみた阿蘇火山における後カルデラ噴火
活動 7. 長谷中利昭・黒川聖・山崎秀人(熊本大院・自然科学)・杉山芙実子(熊本大・理):阿蘇-4
噴火のマグマ供給系モデルの再検討 8. 大倉敬宏・安部祐希(京大・理・火山研究センター):阿蘇カルデラの深部構造 「マグマ溜まり」(座長:稲倉寛仁 15:20~)
9. 西村光史(東洋大・経済・自然科学研究室):斜長石の Sr 同位体累帯構造に記録されたマグ
マ蓄積率 10. 寅丸敦志(九州大院・理):カルデラ形成の支配要因-間欠泉実験からの示唆- 「データベース」(座長:稲倉寛仁 16:00~)
11. 高橋伸弥(福岡大・工)
・奥村勝(福岡大・情報処理センター)
・鶴田直之(福岡大・工): 国
際火山噴火史情報研究所における情報発信・収集の枠組みと現状 12. 鳥井真之(熊本大・減災型社会システム実践研究教育センター)
・稲倉寛仁(西日本技術開発)
:
wiki による火山モノグラフの作成-桜島火山を例にして- 総合討論(座長:西園幸久 16:50~) 2
九州のカルデラ火山-月刊地球 2008 年論文以降の進展小林哲夫(鹿児島大院・理工)
Aligned Active Calderas in Kyushu
Tetsuo Kobayashi (Graduate School of Science and Engineering, Kagoshima University)
九州の活動的なカルデラは主に北の別府-島原地溝,南の鹿児島地溝に沿って分布してい
るが,それ以南の南西諸島海域にも存在する.カルデラの多くは巨大噴火を何回も繰り返し
ており,カルデラ噴火の後には新しい火山が誕生している.それゆえ現在の活火山の活動は
次のカルデラ噴火への道程とみなすことができる.それではカルデラ噴火と活火山の成因関
係はどうなっているのであろうか?カルデラはどうのように噴火の準備をしているのだろう
か?九州地域の活動的なカルデラ火山の研究から,カルデラ噴火のメカニズムを探ってみた
い. 今回はカルデラ噴火に先行する地震や小規模噴火等の諸現象の地質学的な証拠を時系列に
並べ,カルデラ噴火のプロセスを再現するとともに,活火山-カルデラ系の深部構造を考察
する.研究対象としては,鬼界,阿蘇カルデラおよび海外のカルデラの事例をもとに火山-
カルデラ系のモデルを提示し,最後に最も活動的な姶良カルデラの現状をどうとらえるべき
かについて言及する.
鬼 界 カ ル デ ラ の ア カ ホ ヤ 噴 火 (7300 年前)
アカホヤ噴火の推移については以前に報告しており,ここではその概略を示す(図 1).
図 1 鬼界カルデラ・アカホヤ噴火の前後に付随した地学現象の推移(小林.2008 を修正) カルデラ噴火の直前まで,火山活動(特に安山岩質マグマの籠港テフラ)は非常に活発で
あり,長期におよぶ静穏期が続いていたわけではない.カルデラ噴火数 100 年前には火山体
3
の地滑り崩壊が発生し,約 100 年前には,カルデラ噴火のマグマと同じ流紋岩質マグマの噴
出(長浜溶岩)があった.カルデラ噴火をもたらした数 10 km3 もの流紋岩質のマグマ溜りは,
数万年という長い時間をかけて成長したと考えられるため,籠港テフラは流紋岩質のマグマ
溜りとは別の火道を使い噴火していたと考えざるをえない.噴火直前のカルデラ中央の地下
深部には数 10 km3 もの流紋岩質マグマが数万年という長い時間をかけて蓄積されており,同
時に籠港テフラに代表される安山岩質マグマが噴出する火道系が存在していた.なお流紋岩
質マグマおよび安山岩質マグマはともに地殻物質の部分溶融により生産されるため,地殻深
部には熱源となる膨大な量の玄武岩質マグマの存在が想定される(小林,1987).密度の大き
な玄武岩質マグマは地殻下部に停留し,その周囲の地殻物質を溶融させ,その結果生じた流
紋岩質~安山岩質マグマは,それらの密度に応じて地殻内部にマグマ溜りを形成する.ただ
しアカホヤ噴火の前には,安山岩質マグマは大きなマグマ溜りを形成せずに,コンスタント
にマグマを地表に噴出していた.
カルデラの輪郭は北西-南東にのびた楕円形であり,薩摩硫黄島と竹島は外輪山を構成し
ている.カルデラの内部には海底が大きく隆起したドーム状の地形が存在する.アカホヤ噴
火直後は窪んだ海底地形であったはずであり,それ以降,急速にマグマが供給され海底が膨
張した再生ドームと推定される.活火山である薩摩硫黄岳,昭和硫黄島,稲村岳はカルデラ
の縁(環状割れ目)に沿って分布している.それゆえ鬼界カルデラは日本における活動的な
バイアス型に分類される.今後の活動を注視する必要がある. 阿 蘇 カ ル デ ラ の 阿 蘇 -2 噴 火 ( 約 14 万 年 前 )
阿蘇-2/1 溶岩はカルデラの東西の斜面で噴出した.西側では岩戸溶岩,秋田溶岩,砥川溶
岩等が分布し,東側には玉来川溶岩が分布する.これらの溶岩は,噴出年代が近接している
だけでなく,産状や岩石学的特徴も類似している(小林ほか,2009).溶岩は黒色・緻密なガ
ラス質で無斑晶にちかい岩石であり,基底面に破砕部分は認められない.岩体内部には大小
の球形の気泡が存在し,玄武岩質のパホイホイ溶岩と酷似している.ただし溶岩の表面は赤
褐色のクリンカーに覆われており,アア溶岩と類似する.
岩石は斑晶に乏しい輝石安山岩であり,SiO2 の含有量は約 60 wt%である.輝石温度計によ
る推定晶出温度は,1123ºC~1045ºC,またマグマの粘性は 104 Pa s であった.通常の
安山岩の温度は 900-1000ºC,粘性は 108~9 Pa s 程度なので,阿蘇-2/1 溶岩は安山岩質
溶岩としては異常に高温で,玄武岩質溶岩とほぼ同じくらいの温度と粘性を保持して
ことになる.ちなみに阿蘇-2 火砕流のマグマ温度は 950-970ºC であり,下位の溶岩にくら
べ 100-200 ºC ほど低温であった.
噴火地点が明らかなのは砥川溶岩(赤井火山)のみであるが,他の溶岩カルデラを南南西
-北北東に断ち切る断層にそった割れ目火道から噴出したものと推定される,秋田溶岩の噴
出時期は阿蘇-2 火砕流噴火の直前(一週間程度前?)であり,溶岩上に堆積した火砕流は,
4
溶岩からの熱で強溶結の岩石に変化している,一方,玉来川溶岩も阿蘇-2 噴出物の直下に存
在するが,挟在するローム層から数 100 年程度の時間差があったと推定される.他の溶岩で
は時間差を示唆する証拠を得ていないが,阿蘇カルデラの東西で,非常に似通ったマグマが,
おそらく数 100 年間の間に時間をおいて噴出したのであろう.
阿蘇-2 火砕流噴火の場合も,安山岩質マグマが流紋岩質マグマ溜りを経由しないルートで
噴出している,それゆえ噴火直前のカルデラの深部構造は鬼界カルデラと類似していたと推
定される.ただし阿蘇-2 の場合は,安山岩質マグマは随時放出されていたわけではなく,流
紋岩質マグマ溜りよりも深部で,高温に加熱された状態で長期間貯蔵されていた可能性があ
る.それが断層運動に付随するように,割れ目火口から次々と噴出したものと推定される.
海外のカルデラ噴火の事例
アメリカの Crater Lake caldera 形成の噴火(約 7000 年前)では,その数 100 年前から直前
にかけて,流紋岩質マグマの溶岩流・溶岩ドームが順次噴出した(Bacon, 1983).最新の
Cleetwood lava はカルデラ噴火の直前に噴出したもので,それを覆う降下軽石は溶岩の熱で強
溶結している.フィリピンのピナツボ火山では 1991 年のカルデラ形成に直結した破局的噴火
の数日前に,安山岩質マグマの溶岩ドームが出現した(カルデラ形成により消滅:Hoblitt et al,
1996).イロシンカルデラでも約 4 万年前の噴火の直前(おそらく 10 年以内)に,現在のカ
ルデラ縁の外側(Malobago lava dome)と内側(火砕流堆積物中に岩片としてのみ産出)で流
紋岩質マグマの噴出があった(Delfin, 1991; Takashima and Kobayashi, 2014).インドネシアのバ
ツールカルデラの噴火でも,噴火の 100 年以内?前に流紋岩質マグマが噴出している(未公
表データ).
姶良カルデラの現状
姶良カルデラは約 3 万年前に大規模なカルデラ噴火が発生し,南九州一帯に広大な火砕流
台地(シラス台地)が形成された.桜島火山はその後に出現した後カルデラ火山であり,現
在も盛んに活動を続けている.シラス台地は広大な地域を厚く覆っているためか,先駆的現
象の顕著な事例は見つかっていない.しかし十万年間という長い時間スケールでみると,姶
良カルデラの内部~周辺で,7500 年に一度の頻度で噴火が発生し,3 万年前の巨大噴火直近
の 3000 年間は 1000 年に一度の割合に急増している(長岡ほか,2001).大規模なカルデラ噴
火の直近で流紋岩質マグマの噴出頻度が増しているのは,注目すべき現象である.
桜島火山は姶良カルデラ噴火の後に誕生した火山である.噴火史は,古期北岳,新期北岳,
南岳の3つのステージに区分できる.古期北岳から新期北岳誕生までの静穏期に,姶良カル
デラでは 2 回も噴火が発生している.1.9 万年前(奥野,2002)の高野ベースサージ(TBS)
と,約 1.6 万年前(亀山ほか,2005 より判断)の新島軽石である.高野ベースサージの噴火
5
地点は姶良カルデラ内の東側海底に存在する海底火山(沖瀬),また新島軽石の給源は若尊カ
ルデラと考えられる.両者の噴火地点は桜島とは異なっており,またマグマの組成も桜島と
は同源的ではなく,姶良カルデラのマグマと類似する(西村・小林,2012).このことは桜島
の誕生以降に,姶良カルデラ系のマグマが噴出しており,桜島火山と姶良カルデラのマグマ
溜りが分離して存在していることを示唆している.
桜島火山のマグマ供給系のモデル(Kamo, 1989)では,桜島火山のマグマ溜りは 1 つでは
なく,主要なマグマ溜りは姶良カルデラの中心付近の海面下 5 km 以深に存在しており,そこ
から桜島直下の浅いマグマ溜り(火口直下数 km)に移動し,ついに噴火すると推定されてい
る.しかしこのモデルでは,2 つのマグマ溜りとも蓄積されているのは安山岩質マグマであ
り,流紋岩質マグマ溜りの存在については言及していない.姶良カルデラの深部には流紋岩
質のマグマが蓄積されていないのだろうか?
現在の姶良カルデラの状況は,カルデラ噴火を起こす前の鬼界カルデラと似ている.すな
わち南岳の現在の活動は,鬼界カルデラの籠港テフラの活動と非常に良く似ている.それゆ
え姶良カルデラにおいても鬼界カルデラの深部構造モデルと同様に,カルデラ内部では成長
しつつある珪長質マグマ溜りが存在するはずである(小林ほか,2010).Kamo (1989)の主要
なマグマ溜りを流紋岩質マグマ溜りとみなし, 安山岩質マグマ溜りはその深部に存在すると
仮定するなら,安山岩質マグマは流紋岩質マグマ溜りの側面をすり抜けて南岳直下のマグマ
溜りに達することになる.このように姶良と鬼界カルデラは,基本的に同じタイプのマグマ
供給系とみなすことができる.
カルデラでの噴火発生の可能性
鬼界カルデラでは,カルデラの中央部に再生ドームが存在しており,アカホヤ噴火以降,
マグマの蓄積が急速に進行したものと推定される.すなわち次のカルデラ噴火に向けたプロ
セスが進行中と判断せざるをいない.しかし現在がどの段階まで進行しているのかを判断す
るデータは何もない.
姶良カルデラでは再生ドーム状の隆起地形は存在しないが,長期にわたりカルデラ周辺の
地盤が上昇している(図 2:加茂・石原,1980).活動が静穏な時期にはカルデラ周辺の地盤
が徐々に隆起するが,大規模な噴火の後には急速に地盤が沈降するという規則性が見出され
た.また主要なマグマ溜りにはほぼ一定の割合(1000 万 m3/year)でマグマが蓄積されている
ことが推定された.しかし噴火後に地盤が元の高さまで沈降することはなく,1.3 mm/year の
割合(泉ほか,1991)で上昇を続けている.このことは,表面的な噴火とは関係なく,地下
深部(姶良カルデラ)ではマグマが蓄積され続けていることを示唆している.桜島火山のマ
グマ溜りとは別に姶良カルデラのマグマ溜りが存在すると仮定するなら,1.3 mm/year を示す
広域的なの地盤の上昇は,基本的には流紋岩質マグマ溜りの増大を反映したものと考えざる
をえない.安山岩質マグマ溜りは,数百年以内という短い間隔で,マグマを溜めては放出す
6
る心臓のような働きを繰り返しているのであろう.流紋岩質マグマが過去 3 万年の間,一定
の割合で蓄積されてきたと仮定すると,現在の姶良カルデラには一定量のマグマ(数 10 km3
程度か?)が蓄積されていることになる.将来のカルデラ噴火の予知のためにも,マグマ溜
りの存在形態・状態だけでなく,火山-カルデラ系の実体についての更なる研究が望まれる.
図 2 姶良カルデラ周辺の過去 500 年間の地盤変動(加茂・石原,1980);泉ほか,1991) 文献
Bacon, C. R. (1983) J. Volcanol. Geotherm. Res., 18, 57-115.
Delfin, F. G. Jr. (1991) Petrogenesis of Mt. Bulusan Volcanic Complex, Bicol Arc, Philippines. M. Sc.
Thesis, University of South Florida, 124p.
Hoblitt, R. P. et al. (1996) In: Fire and Mud, 457-511.
泉 拓良・他(1991)京大防災研年報, 第 34 号 A, 81-190.
亀山宗彦・他(2005)第四紀研究, 44, 15-29.
Kamo, K. (1989) Proceedings of Kagoshima International Conference on Volcanoes 1988. 3-13.
加茂幸介・石原和弘 (1980) 桜島地域学術調査協議会調査研究報告,鹿児島県,19-28.
小林哲夫(l987)火山, 32, 237-257
小林哲夫(2008)月刊地球 総特集 カルデラ生成噴火-準備過程の理解に向けて―,海洋出
版, 号外 no. 60, 65-76.
小林哲夫・他 (2009) 日本火山学会講演予稿集(2009年度秋季大会), 19.
小林哲夫・他(2010)京大防災研年報, 第 53 号 B, 269-275.
長岡信治・他(2001)地質学雑誌,107, 432-450.
西村光史・小林哲夫(2012)日本火山学会講演予稿集 2012 年度秋季大会, 165.
奥野 充 (2002) 第四紀研究, 41, 225-236.
Takashima, I. and Kobayashi, T. (2014) J. Geogr. (accepted)
7
日本の火山と長白山火山の深部構造とマグマ活動に関する新知見
趙大鵬(東北大・理)
New insight into deep structure and magmatism of Japanese and Changbai volcanoes
Dapeng Zhao (Department of Geophysics, Tohoku University)
E-mail: zhao@aob.gp.tohoku.ac.jp
We determined high-resolution P-wave tomography for 3-D radial and azimuthal
anisotropy of the Tohoku and Kyushu subduction zones using a large number of high-quality
arrival-time data of local earthquakes recorded by the dense seismic network on the Japan
Islands. Trench-normal P-wave fast-velocity directions (FVDs) are revealed in the back-arc
mantle wedge in both Tohoku and Kyushu, which are consistent with the model of
slab-driven corner flow. Trench-parallel FVDs with amplitude <4% appear in the forearc
mantle wedge under Tohoku and Kyushu, suggesting the existence of B-type olivine fabric
there. Trench-parallel FVDs are also visible in the mantle wedge under the volcanic front in
Tohoku but not in Kyushu, suggesting that 3-D flow may exist in the mantle wedge under
Tohoku and the 3-D flow is affected by the subduction rate of the oceanic plate. Negative
radial anisotropy (i.e. vertical velocity > horizontal velocity) is revealed in the low-velocity
zones in the mantle wedge under the arc volcanoes in Tohoku and Kyushu as well as in the
low-velocity zones below the Philippine Sea slab under Kyushu, which may reflect hot
upwelling flows and transitions of olivine fabrics with the presence of water in the upper
mantle. Trench-parallel FVDs and positive radial anisotropy (i.e. horizontal velocity >
vertical velocity) are revealed in the subducting Pacific slab under Tohoku and the Philippine
Sea slab under Kyushu, suggesting that the slabs keep their frozen-in anisotropy formed at the
mid-ocean ridge or that the slab anisotropy is induced by the lattice-preferred orientation of
the B-type olivine.
The origin of intraplate volcanoes in Northeast Asia is considered to be associated with
upwelling of hot and wet asthenospheric materials in the big mantle wedge above the stagnant
Pacific slab in the mantle transition zone. Among these intraplate volcanoes, Changbai is the
largest and most active one, and very deep earthquakes (500–650 km depths) in the Pacific
slab under East Asia occur ∼300 km to the east of the Changbai volcano. Integrating the
findings of geophysical, geochemical and petrologic studies so far, we suggest a link between
Changbai volcanism and the deep earthquakes in the Pacific slab. Many large shallow
8
earthquakes occurred in the Pacific Plate in the outer-rise areas close to the oceanic trench,
and sea water may enter down to a deep portion of the oceanic lithosphere through the active
normal faults which generated the large outer-rise earthquakes. Sea water or fluids may be
preserved in the active faults even after the Pacific Plate subducts into the mantle. Many large
deep earthquakes are observed that took place in the subducting Pacific slab under the Japan
Sea and the East Asian margin. At least some of the large deep earthquakes are caused by the
reactivation of faults preserved in the subducting slab, and the fluids preserved in the faults
within the slab may cause the observed non-double-couple components of the deep
earthquake faulting. Fluids preserved in the slab may be released to the overlying mantle
wedge through large deep earthquakes. Because large deep earthquakes occur frequently in
the vicinity of the Changbai volcano, many more fluids could be supplied to this volcano than
in other areas in Northeast Asia, making Changbai the largest and most active intraplate
volcano in the region.
References
Zhao, D., Y. Tian (2013) Changbai intraplate volcanism and deep earthquakes in East Asia:
A possible link? Geophys. J. Int. 195, 706-724.
Wang, J., D. Zhao (2013) P-wave tomography for 3-D radial and azimuthal anisotropy of
Tohoku and Kyushu subduction zones. Geophys. J. Int. 193, 1166-1181.
Huang, Z., D. Zhao et al. (2013) Aseismic deep subduction of the Philippine Sea plate and
slab window. J. Asian Earth Sci. 75, 82-94.
9
カルデラと後カルデラ火山の活動史 -今後,桜島で薩摩(P14)クラスの噴火が起きるか?奥野充(福岡大・理,国際火山噴火史情報研究所)
Eruptive History of Caldera and Post-caldera Volcanoes
Mitsuru Okuno (Faculty of Science also ACRIFIS-EHAI, Fukuoka University)
九州には,阿蘇,加久藤・小林,姶良,阿多,鬼界とカルデラ火山が南北に並んでいる.これ
らのカルデラでは,広域テフラをもたらすような大規模火砕流噴火(以下,カルデラ形成噴火)
が繰り返され,それぞれの最新のカルデラ形成噴火は,340 ka の加久藤,110 ka の阿多,90 ka の
阿蘇4,30 ka の入戸(AT),7.3 ka の幸屋(アカホヤ)などである.一方,これらのカルデラ形
成噴火とは別に,後カルデラ火山に位置づけられる小規模な成層火山の活動もある.阿蘇中岳,
霧島火山群,桜島,開聞岳,薩摩硫黄岳などであり,すべてカルデラ縁に形成されている.後カ
ルデラ火山の位置は,カルデラ形成時の割れ目やカルデラ噴火をもたらしたマグマだまりの存在
を反映していると考えられる.この講演では,カルデラ火山の噴火史でのカルデラ形成噴火と後
カルデラ火山の関係を考え,桜島火山(図1)で最大規模の噴火である薩摩(P14)が今後起きる
かどうかを議論する.
上記のカルデラは,阿蘇カルデラの例(阿蘇1〜4)のように,複数回のカルデラ形成噴火に
よって現在の地形になっている.また,阿多カルデラ内の池田カルデラでもわかるように,1 回
の火砕流噴火に対応する“カルデラ”がクラスターを形成していると考えられ,次のカルデラ形
成噴火を予測するうえでも,これらを分解して捉えることが重要であろう.このように考えると,
阿蘇カルデラの“中央火口丘”もカルデラ地形が鮮明な“阿蘇谷”の南縁にあるように見える.
鬼界カルデラも複雑な輪郭であり,そのような視点での分解が必要であろう.
入戸(30 ka)と幸屋(7.3 ka)の噴火後,それぞれ桜島と薩摩硫黄岳などの後カルデラ火山が活
動を開始したが,2000〜3000 年程度の休止期しか見られない.また,鬼界カルデラでは籠港テフ
ラ群の活動が,幸屋(7.3 ka)噴火に先行しており,カルデラ形成噴火と後(間)カルデラ火山の
マグマが同時並行的に蓄積・噴出している.この両者の同時並行性は,姶良カルデラでも測地学
的に認められている.桜島の薩摩(P14)噴火は,古期北岳ステージ後の長い休止期(約1万年間)
をおいて起ったものであり,十分なマグマが蓄積する時間があったといえる.この休止期間中に
は,姶良カルデラ起源の高野ベースサージや新島軽石が噴出している.すなわち,桜島と姶良カ
ルデラは,独立したマグマだまりであるが,空間的には隣接しており,姶良カルデラ起源のマグ
マの間欠的な噴出は,桜島のマグマだまりの安定的な蓄積に寄与した可能性がある.薩摩(P14)
噴火以降の噴火史を見ると,姶良カルデラ起源のマグマの噴出はなく,桜島火山がコンスタント
10
に活動している.したがって,桜島火山では今後,薩摩(P14)噴火の規模の噴火をする可能性は
低く,むしろ,現在,姶良カルデラで蓄積が続いているマグマだまりからの噴火がより大規模に
なるであろう.
図1 桜島火山の階段図(Okuno, 1997) 11
姶良カルデラ下における伝達関数の時空間変化の能動的モニタリング
宮町宏樹(鹿児島大院・理工)
Active seismic monitoring for temporal and spatial variation of
transfer function in the Aira caldera
Hiroki Miyamachi (Graduate School of Science and Engineering, Kagoshima University)
桜島を含む姶良カルデラ下の地震波の伝播特性の時空間変化を捉えるため,桜島火山の北西麓
に能動的人工震源“アクロス(Accurately Controlled Routinely Operated Signal System)を 2012 年3月
に設置し,試験運転の後,2012 年9月から本格的連続運用を開始し,現在も稼働している.この
人工震源アクロスは2台の回転震動源から構成され, 5〜10Hz と 10〜15Hz の周波数帯域におい
て周期 50 秒の FM 変調方式で精密に制御された極微小震動(信号)を発振している.これらのア
クロス人工信号は,姶良カルデラ内およびその周辺域に展開されている既設の 22 カ所のテレメー
タ地震観測点(京都大学,鹿児島大学,気象庁,防災科学技術研究所(HINET))と6カ所の臨時
地震観測点によって収録されている.各観測点で収録されたデータとアクロス震源関数をデコン
ボリューションすることにより,アクロス震源と各観測点間の伝達関数(transfer function)を求め
ることができる.この伝達関数は地下の地震波の伝播特性を表している.したがって,伝達関数の時
間変化は,地下の伝播特性(特に,速度構造)が変化したことを意味している.この伝達関数の時間
変化を引き起こしている種々の要因の中から,地下のマグマに起因する変化を特定し,マグマの移動
とその時間変化を検出することを目的としている.本発表では,アクロスの概要と実際に得られて
いるアクロス信号の時間変化について,紹介する.
図1.アクロス(■)と観測点分布. 図2.観測点SH06(Tt成分)の伝達関数の時間推移例.
12
67-30 ka のテフラ層序からみた阿蘇火山における後カルデラ噴火活動
宮縁育夫(熊本大・教育)
Post-caldera explosive activity inferred from improved 67-30 ka tephrostratigraphy
at Aso Volcano, Japan
Yasuo Miyabuchi (Faculty of Education, Kumamoto University)
Aso Volcano, located in central Kyushu, southwestern Japan, is one of the largest caldera volcanoes in
the world.
Between 270 to 89 ka, four gigantic andesitic to rhyolitic caldera-forming eruptions took place.
Post-caldera central cones were initiated soon after the formation of the last caldera-forming eruption (89
ka), producing not only local lava flows but also voluminous tephra layers that fell far beyond the caldera.
At the post-caldera central cones, explosive eruptions have frequently occurred although they have been
much smaller than the caldera-forming stage eruptions.
The present study focuses on the 67-30 ka tephra
sequence preserved atop the Aso pyroclastic-flow deposits to evaluate explosive activity in the post-caldera
stage of Aso Volcano.
The total tephra volume in the period between 67 and 13.5 ka is estimated to be about 5.9 km3 (DRE),
corresponding to an average tephra discharge rate of 0.11 km3/ky.
Overall, explosive mafic eruptions
were more common than explosive silicic eruptions.
Explosive eruptions occurred frequently in the
period 67-50 ka, but they were infrequent in 50-30 ka.
Between 50 and 31 ka, silicic and mafic tephra
volumes were small, but multiple explosive silicic eruptions occurred at 31-30 ka, and the 30 ka
catastrophic Kusasenrigahama eruption discharged voluminous magma (1.1 km3) as a pumice-fall deposit.
Thus, individual tephra discharge volumes were relatively small (<0.57 km3) during the periods when
explosive eruptions frequently occurred, whereas large amounts of magma were discharged after a long
gentle period of about 20,000 years in the case of both silicic and mafic eruptions.
Chemical
characteristics of tephras and temporal variations in the tephra discharge volume between 67 and 30 ka
suggest a magma plumbing system model in which mafic magmas were steadily intruded from mantle to
the lower crust; silicic magmas generating explosive pumice eruptions were believed to be produced by
crustal anatexis due to heating of the crust by mantle-derived mafic magmas beneath Aso Volcano in the
post-caldera stage.
The 67-30 ka tephrostratigraphy highlights characteristics of explosive activity at the
post-caldera central cones of Aso Volcano and provides important information that will assist in preventing
and mitigating future eruption disasters.
13
阿蘇-4 噴火のマグマ供給系モデルの再検討
長谷中利昭・黒川聖・山崎秀人(熊本大院・自然科学)・杉山芙実子(熊本大・理)
Reexamination of magma supply system of Aso-4 caldera-forming eruption
Toshiaki Hasenaka, Kiyoshi Kurokawa, Hideto Yamasaki (Grad. School of Sci. Tech., Kumamoto
Univ.), and Fumiko Sugiyama (Fac. Science, Kumamoto University)
九万年前の阿蘇では穏やかな噴火に続いて爆発的なカルデラ噴火が時間的,空間的に近接し
て起こった.カルデラ縁から西方 5km に位置する大峰火砕丘,それに伴う高遊原溶岩の流出とそ
の後に起こった阿蘇-4 火砕噴火である.高遊原溶岩流は厚さが 80-120m,東西 9km,南北 4km で
ある(2.0 km3).平坦な台地を形成し,阿蘇くまもと空港の滑走路はこの溶岩流の上にある.高遊
原溶岩は阿蘇-4 テフラに覆われているが,間に土壌をはさまず,K-Ar 年代の報告値も両者が誤
差の範囲で等しく(松本ら,1991),両者の間に時間間隙がほとんどなかったことを示している.
対照的な噴火様式を起こしたマグマ供給系の物理化学条件の変化を探るために,高遊原溶岩
の側端崖,末端崖から採集した試料,大峰火砕丘のスコリア試料,国土交通省九州地方整備局,
熊本河川国道事務所に保管されているボーリングコア試料を化学分析し,岩石学的特徴を調べた.
溶岩流は上下に破砕部を持つが中央は塊状で,クリンカーを挟まないので,1 フローユニットで
あると考えられる.分析した試料は複輝石安山岩およびデイサイトであった.それらは全て微斑
晶サイズの普通角閃石を含み,輝石や斜長石斑晶よりも後の晶出過程を示す.新鮮な結晶から完
全にオパサイトに変わったものが観察される.斜長石の多くはへき開やクラックに沿って融食し
た組織を示すことが特徴である.不均質な様相を示す石基組織も時々見受けられた.高遊原溶岩
のシリカ含有量は 63~66 wt.%,大峰火砕丘のスコリア試料のシリカ含有量は 61~66 wt.%で,すべ
て高カリウム系列である.これに対して直後の阿蘇-4 噴火産物の組成はバイモーダルで,玄武岩
ないし玄武岩質安山岩スコリア(SiO2=49-56 wt.%)とデイサイト軽石(SiO2=65-72 wt.%)が報告
されている.大峰-高遊原の噴出物は阿蘇-4 噴出物とは異なる化学トレンドを示し,マフィックな
マグマの存在を示す包有物などを見つけることはできなかった.今後,岩石学的な研究によって
巨大カルデラ噴火を起こすマグマ供給系モデルの再検討をすることは重要である.
14
阿蘇カルデラの深部構造
大倉敬宏・安部祐希(京大・理・火山研究センター)
Deep crustal structure beneath Aso Caldera
Takahiro Ohkura and Yuki Abe (AVL, Kyoto University)
阿蘇火山は,約 27 万年前から 4 度の大規模火砕流噴火を経て,南北約 25km 東西約 17km の世
界最大級のカルデラを有する火山となっている.最後の大規模噴火から約 9 万年が経過した現在,
カルデラの下で次の大規模噴火の準備がどの程度進んでいるかを調べることは重要である.これ
まで阿蘇カルデラでは,地震波トモグラフィ法により地下 10km までの地震波速度構造が明らか
にされている(Sudo and Kong, 2001, Bull. Volcanol.).この研究では、中央火口丘西部の草千里の深
さ約 6km を中心とする低速度領域が見出されており,この低速度領域がマグマ溜りに対応すると
考えられている.我々は、レシーバ関数解析により,それより深部の地殻構造を明らかにしたの
で報告する. レシーバ関数(RF) とは,遠地地震の P 波の水平成分を鉛直成分でデコンボルブして得られる
時間関数で,主として地震波速度不連続面で変換・反射した S 波で構成される.RF 解析では,ほ
ぼ鉛直に入射する遠地地震波を用いるので,解析に必要とされる地震観測網の空間的スケールは
マグマだまりの水平スケールの倍程度でよい.また,速度構造の深さ分解能(約 1km)がトモグ
ラフィーより格段に良く,さらに,3年間の観測波形で精密な構造が決定できるなど,短期間の
データセットでの解析にも適している. 本研究の解析には,阿蘇カルデラおよびその周辺に設置された Hi-net,火山基盤観測点および
京都大学火山研究センターの定常観測点と臨時観測点における遠地地震(震央距離:30-90 度、M5.5 以上) の波形記録が用いられた.この波形から RF を計算し,得られた RF に遺伝的アルゴリズム
インバージョンを用いて各観測点直下の 1 次元 S 波速度構造を決定し,それを重ね合わせること
により,阿蘇カルデラ全域の 3 次元的な S 波速度構造を推定した. その結果,阿蘇カルデラ中央部の深さ 9-16km 付近には地震波低速度領域(S 波速度が 2.5km/s)
が存在することが明らかになった.この領域は地殻変動源および深部低周波地震発生域の直上に
位置しており,何らかの流体が蓄積されている可能性が高い.仮に、この低速度領域にメルトが
含まれているとしても,その体積は最大で約 20km3 であり,前回の大規模火砕流噴火で放出され
たマグマの 10 分の 1 にすぎない.しかし、次期大規模噴火にむけて,この領域にどのようにマグ
マが蓄積されていくか,注視すべきであると我々は考えている. 15
斜長石の Sr 同位体累帯構造に記録されたマグマ蓄積率
西村光史(東洋大・経済・自然科学研究室)
Magma recharge rate recorded in isotopically zoned phenocrysts
Koshi Nishimura (Natural Science Laboratory, Toyo University)
日本列島では,数千年に一度,カルデラ形成を伴う巨大火山噴火が生じている.噴火の規模は
従来の噴火の数千倍から数万倍と桁違いに大きく,一旦噴火が生じてしまうと,未曾有の災害と
なると予測されている.米国のイエローストーンでは,すでに巨大噴火を危惧した観測体制がと
られており,2004 年以降の 3 年間,カルデラの地表面が急速に隆起し(年間 7cm 以上)、世界の
注目を集めたのは記憶に新しい(Chang et al., 2007, Science).しかし,現在,生きている人類は
カルデラ形成噴火を経験していないため,どの程度のマグマ蓄積率が危険なのかについてはほと
んど知りえていない.そこで本研究では,過去に生じたカルデラ噴火の噴出物の結晶内部の同位
体組成変化から,噴火前のマグマ蓄積率を明らかにする方法を検討する.
90 年代以降の局所同位体分析技術の発展により,鉱物内部の同位体累帯構造の存在が明らかと
されてきたが,累帯構造形成の定量的モデルはこれまで存在しなかった.本研究では,質量保存
則に基づき,開放系マグマ溜まりプロセスを組み込んだ鉱物組成進化の数理モデルを構築した.
モデル計算の結果, (1) 結晶化が優勢でマグマ部分が収縮していく場合,メルトや結晶の固相濃
集元素(全岩分配係数 D>1)の濃度および同位体比は定常組成に達するが,液相濃集元素(D<1)
の濃度および同位体比は定常組成に達しないこと,(2) マグマ部分が膨張していく場合,固相濃
集元素,液相濃集元素ともに濃度および同位体比が定常組成に達することが明らかになった.す
なわち液や結晶中の液相濃集元素の濃度および同位体比が定常組成に達していれば,マグマ溜ま
りは膨張していたことになる.定常組成は注入されるマグマと同化物質の組成,全岩分配係数,
浮遊結晶量,マグマ注入率,同化率の簡単な関数として表され,噴出率は影響しない.同化率を
一定と仮定すれば,定常組成からマグマ注入率(蓄積率)を求めることが原理的に可能となる.
モデルをこれまで報告されているいくつかの火山の斜長石中の Sr 同位体組成構造(Davidson et
al., 2007, Ann. Rev. Earth Planet. Sci.)に適用したところ,87Sr/86Sr 比の累帯構造をよく再現で
きることが明らかとなった.斜長石内部に記録されている Sr 濃度および 87Sr/86Sr 比の定常値や
Sr vs 87Sr/86Sr 図のトレンドからマグマ注入率を見積もることが可能である.今後、モニタリン
グデータの充実している桜島の噴出物等にモデルを適用し,実際のマグマ蓄積率を再現できるか
検討しながらモデルの高精度化を図っていく予定である.
16
カルデラ形成の支配要因-間欠泉実験からの示唆- 寅丸敦志(九州大院・理)
Mass and style of eruptions in experimental geysers –
Atsushi Toramaru (Department of Earth and Planetary Sciences, Kyushu University)
In the present study, we conducted laboratory experiments of geysers to reproduce the time predictability
of natural geysers in Yellowstone and other geothermal areas. We measured pressure and temperature in a
hot water chamber, flux from a cold water reservoir, and mass erupted by each eruption (total number of
eruptions are up to 100), varying experimental conditions such as the heating rate, water quality, and
system geometry. We observed two styles of eruptions, “jet” and “flow” depending on the maximum height
reached. Under some conditions, only jet events occurred, while under other conditions, jet and flow events
co-occurred. Based on the statistical analysis of the erupted mass, an experiment setup that produces
onlyjet events exhibits a narrower frequency distribution with a relatively large average mass. As the
proportionof flow events increases, the frequency distribution of the erupted mass widens with relatively
small average mass. The temperature measurements indicated that jet-dominated experimental setups had
smaller temperature fluctuations than flow-dominated setup. We proposed a triggering condition involving
boiling of water that defined the onset of an eruption. We assumed two thresholds of the efficiency of
decompression boiling that defined explosivity and eruption development on the basis of hydrodynamic
energetics. Using the triggering condition and the two thresholds, to explain experimental correlations
between erupted mass, eruption style, and the magnitude of thermal fluctuation, we conducted a Monte
Carlo simulation in a square consisting of 256 × 256 parcels with the superheating temperature as a
stochastic variable by a Gaussian probability density function (PDF). The results showed that when the
PDF has a larger average and smaller standard deviation, the event tends to be explosive and large fraction
of water is evacuated, as in jet events. Decreasing the average temperature or increasing the standard
deviation of the PDF shifts the events to an explosive style followed by an effusive event and to an event
that produces only effusive flow. This transition of eruption styles from explosive to effusive and the
relationship with the erupted mass is consistent with results of the laboratory experiments, suggesting that
the spatial distribution pattern of supersaturated portions just prior to an eruption is a factor controlling the
style and transition of the eruption.
17
国際火山噴火史情報研究所における情報発信・収集の枠組みと現状
高橋伸弥(福岡大・工)・奥村勝(福岡大・情報処理センター)・鶴田直之(福岡大・工)
Current Status of Data Collection Framework for AIG Collaborative Research Institute for
International Study on Eruptive History and Informatics
Shinya Takahashi (Faculty of Engineering, Fukuoka Univ.), Masaru Okumura (Info. Tech. Center,
Fukuoka Univ.), Naoyuki Tsuruta (Faculty of Engineering, Fukuoka Univ.)
火山地質学において露頭情報を軸とした研究データの収集,蓄積は研究者個人だけでなく防災
やアウトリーチの面からも非常に重要である.このような露頭情報データベースの重要性は,以
前より指摘されており,いくつかの提案およびシステム構築事例が存在している.
福岡大学の産学官連携研究機関の1つである国際火山噴火史情報研究所では,これまで,これ
らの先行研究を参考に,より大規模で,かつ利用者層を拡大できるような露頭情報データベース
の提供を目的として,①特定多数の専門家により編集された一般向けの情報を公開するための噴
火史情報 wiki ページ(http://www.acrifis-ehai.fukuoka-u.ac.jp/mediawiki/)および,②不特定多数の
一般ユーザからの情報提供・共有を目的とした地図情報サイト「じおログ」
(http://www.acrifis-ehai.fukuoka-u.ac.jp/geolog)の 2 種のウェブサイトを試験的に公開し,データ
ベース構築の方針について検討を進めてきた.さらに,これらのサイトの試験運用を通して明ら
かになった課題を解決するため,地理情報システム向けのデータベースプラットフォーム
MOMD-GIS を提案し,これを用いた「じおログ2」の公開を開始したところである.また,大量
かつ有益なデータを収集するためには,研究者自身にとっても利用する上で大きなメリットがあ
り,かつ共有可能なデータについてはその一部を公開してもらえるような仕組みが必要となるこ
とから,研究者が個人的に所有している大量の露頭データの管理を容易にすることを目的として,
地図上から取得した経緯度情報や任意のキーワード・コメントを露頭画像のメタデータ領域に一
括して付与することができるツール「o-GIE」の開発を行っている.
上記以外にも,研究所ウェブページ(http://www.acrifis-ehai.fukuoka-u.ac.jp/)および Facebook ペ
ージ(http://www.facebook.com/EHAIReseachCenter),Twitter アカウント(https://twitter.com/EHAIDB)
の開設を行い,これらを連動する形で情報発信を行ってきた.
本発表では,これら国際火山情報研究所における情報発信および収集の枠組みを紹介し,現状
での課題および今後の展望を述べる.
18
wiki による火山モノグラフの作成 - 桜島火山を例として鳥井真之(熊本大・減災型社会システム実践研究教育センター)・稲倉寛仁(西日本技術開発)
An attempt to create monograph of the Sakurajima Volcano using wiki system
Masayuki Torii (IRESC, Kumamoto University) and Hirohito Inakura (West Japan Engineering
Consultants, Inc.)
火山を対象とした研究は随時行われその理解は日々進んでいる.これらの研究に基づき特定の
火山の形成史や噴火の特徴などを整理することは,学術的価値だけではなく火山周辺住民の防災
活動にとっても重要な情報となる.しかし,多数の研究者が多様な分野から研究を進めているた
め,研究者ですら必要な情報収集に手間が掛かっており,行政担当者や一般市民にとっては情報
取得がより困難な状況になっている.このような現状を踏まえ,特定の火山を対象に包括的にレ
ビューした火山モノグラフを作成する必要が生じている.火山モノグラフは現時点における研究
の到達地点を示すマイルストーンとしての役割もあり,さらには研究成果をアウトリーチするた
めの手法として活用することも可能である.これまで火山をテーマとして,レビュー的な研究と
しては産総研による火山地質図などの他に,北海道駒ヶ岳(北海道防災会議,1975)のように将来予
測のための資料としてまとめられたものがある.その後,インターネットの普及に伴って,Web
公開を前提とした秋田駒ヶ岳や安達太良(藤縄,2005;
設計:工藤・星住)などが作成され,さらに,
Wiki ベースで薩摩硫黄島や有珠が火山研究解説集(設計:宮城・篠原・斉藤)として作成公開され
ている.Wiki にはネットワーク上のウェブブラウザさえ利用できれば,文書を作成・変更できる
こと.リンクを利用することで他のネットワーク上の情報にアクセスしやすいなどの利点がある
が,もっとも特徴的なのはオンライン上で協働編集作業ができることにある.このシステムを利
用することで複数編者による多様な価値観の反映や情報の相互補完をおこなうことが可能となる
ことから情報をより包括的にまとめることが容易となる.私たちは手始めとして桜島火山のモノ
グラフ作成をおこなっている.講演では作成途上の桜島火山モノグラフとともに,その作成上に
おいての課題を紹介する.
19