3.海外工事報告 -中国潤揚大橋上部工架設 - 日本橋梁建設協会

3.海外工事報告
-中国潤揚大橋上部工架設エンジニアリング業務-
企画委員会 国際小委員会
央径間 1,490m)と北側の斜張橋で構成されており、全
1. はじめに
潤揚長江公路大橋は、中華人民共和国(以下、中
体工事費は約 53 億人民元(約 700 億円、2004 年現
国)江蘇省鎮江市と揚州市とを結ぶ揚子江に架けられ、
在)で、吊橋部分(以下、吊橋部分を潤揚大橋)が約
この地域の高速道路ネットワークの重要な位置を占め
35 億人民元(約 450 億円)、斜張橋部分が約 6 億人民
る(図-1)。
元(約 80 億円)とされている。潤揚大橋はこれまで中国
一であった江陰大橋(中央径間 1,385m)を抜き、現在
中国一、世界第三位の吊橋となっている。
本橋建設以前の中国においては、1,000m を超える
吊橋を建設した経験を有する中国企業はこれまで存在
しなかった。先述の江陰大橋においては英国政府開
発援助による建設であり、建設も英国の企業が中心と
なって実施された。
そこで、潤揚大橋の施主である江蘇省長江公路大
橋建設指揮部(以下、建設指揮部)は、純国産技術に
よる建設を主眼にしながらも、品質、技術に重点を置き、
図-1 建設地点
例えば、吊橋構造上重要な要素であるケーブル材料
本橋は、揚子江の中州を間に挟み、南側の吊橋(中
は日本から購入した。また、上部工架設の入札におい
潤揚大橋概要
2430000
2430
470
470000
1490
1490000
218905
218.905
鎮江側
69.300
69300
25015
18400
[email protected]=708400
[email protected]=611800
215580
215.580
25015
[email protected]=96600
メインケーブル
φ906(φ895ケーブルバンド部)
揚州側
34.300
34300
鋼線
φ5.3
3.000
470
470000
3000
図-2 潤揚大橋一般図
ては、技術評価の割合を高くし、結果として中国企業を
一方架設においては、アンカレイジ、塔、側径間をコ
サポートする十分な経験を有する外国企業によるエン
ンクリート架設し、その架設企業のひとつである中国第
ジニアリングを主体とした参画が必要となった。
二公路工程局(以下、二公局)がケーブル、桁の架設
ここでは、潤揚大橋上部工架設に対して実施したエ
ンジニアリング業務について報告する。
を請負った。
ここで、二公局は本橋以前においては、支間 500m
程度の吊橋架設の経験しか持たなかったため、経験あ
2. 橋梁諸元および工事概要
本吊橋概要は以下の通りである。
図-2 に吊橋一般図、写真-1 に建設状況を示す。
る日本企業によるエンジニアリングサポートをする条件
で本橋架設を受注した。
これらの工事体制を示すと以下のようになる(表-1)。
①施主:江蘇省長江公路大橋建設指揮部
江蘇省長江公路大橋建設指揮部
②設計:中国交通部公路規劃設計院
製作
③工事期間:2000 年 10 月~2005 年 4 月 30 日開通
④支間長:470m+1,490m+470m(単径間吊橋)
⑤幅員構成:29.5m(上下 6 車線の鋼箱桁)
桁製作
⑥ケーブル重量:約 21,000 ton
中国鉄道大橋局
(PWS-φ5.3-127 × 184 Strand / Cable)
ケーブル製作
⑦桁重量:約 23,000 ton
⑧主塔:RC 構造(216 m)
線材 日本
⑨アンカレイジ:RC 構造
亜鉛めっき中国
⑩側径間:PC 箱桁
PWS 日本-中国合弁、他
工事
塔・アンカレイジ・側径間工事
中国第二公路工程局(二公局)、他
ケーブル・桁架設
中国第二公路工程局(二公局)
写真-1 建設状況写真
ケーブル・桁架設計画及び S.V.
3. 工事体制
工事体制は施主である建設指揮部を頂点として、大
日本
きくは製作と架設に分かれる。製作、架設ともに元請業
西南交通大学
者は中国企業であるが、ケーブル材料だけは施主が
表-1 工事体制
日本から購入し、支給した。桁の製作業者は輸送、架
設後の現場溶接までを請負範囲とする。ケーブルの製
このように、上部工建設のうち、ケーブル製作、ケー
作については、中国において亜鉛めっき鋼線を製作し、
ブル・桁架設に対して日本の技術が導入されることとな
ケーブル製作メーカーが製作、輸送までを請負った。
った。
なお、ケーブル製作については、架橋地域にある日中
の合弁会社が半数以上を請負った。
4. 潤揚大橋エンジニアリング業務
ここでは、潤揚大橋建設工事に関してのエンジニア
リング業務について述べる。
この架設計画に対して、現場の状況を反映し、必要
に応じて変更することを二公局と検討協議し、問題なく
実行することができるようにすることを S.V.に求められ
た。
4.1 業務内容
さらに、現地調達が不可能、あるいは品質上重要とな
今回、エンジニアリング業務として関係するものとして
以下のものがあげられる。
1)ケーブル等の供給
る架設設備については貸与するとともに、現地 S.V.を
実施した。
ここで、現地企業と業務を進めていく上で重要なこと
2)架設計画の実施
は、現地に精通した営業マンと優秀な通訳をもつことで、
3)ケーブル・桁架設 S.V.
これによって資金回収も含めたスムーズな業務の実行
4)架設設備の供給(ここでは貸与)
が可能となる。
ここで、エンジニアリング業務について定義しようとし
4.3 安全・品質管理
た場合、潤揚大橋においては、プライムコントラクターと
製品供給は当然品質が最も重要な点であり、契約上
して直接工事に携わるのではなく、サブコントラクターと
も Spec.の厳守が実行責任上重要となる。この点につ
して、ケーブルなどの主要部材の供給を現地合弁企業
いては、日本調達となるものはそれほど問題とならない
と一体となって携わる一方で、架設において、現地架
が、中国合弁工場で製作する場合は十分な品質管理
設会社に対して、架設計画、現場指導、設備の貸与と
となるよう注意し指導していく必要がある。
いう立場で携わっていく、ということができる。
エンジニアリング業務
部材の供給
一方、現地架設計画・S.V.においては、契約上の安
全・品質に対して責任を負わないこととした。これは、安
全に対する中国社会的見解、また、現地ワーカーにお
ける安全認識、品質認識の違いが大きく、そこまで立ち
入った現場管理を S.V.としてできないからである。
架設計画・S.V.
4.4 契約関係
設備の貸与
次に、本業務について主要な契約上の点を述べる。
主な契約フローについては表-2 の工事体制と同等で
4.2 業務の進め方
ケーブルの製作においては、現地合弁企業に対して
設備の立上げから関与指導し、試作、展開確認試験を
実施して問題のないことまでを確認した。
一方、上部工架設計画を進めていく際には、まず、架
設会社との綿密な打合せの後、日本側が計画立案し、
ある。すなわち、ケーブル材料については日本から施
主が調達、支給し、製作は現地合弁企業が直接施主
である、建設指揮部と結んだ。
一方、架設計画・現地 S.V.については入札条件から
現地架設会社に対して契約を結ぶこととなったが、設
備の貸与は直接施主と契約を結んだ。
それに対して架設会社が現地状況、コスト的な観点か
このように、契約先が二つに分かれたことにより、資
らの修正要求をしながら進めていった。また、出来上が
金回収先や立場的な違いによる複雑さを伴ったが、中
った計画、特に高度な設計技術を必要とするものに対
国潤揚大橋建設に対する日本企業の参画という点に
しては、架設会社指定大学(ここでは西南交通大学)の
対しては、施主である建設指揮部への対応が非常に
第三者チェックを実施し、さらにそれに対して、施主側
重要であり、十分配慮しながら実行した。
の評価委員会が審査するといった三段階の流れで進
められた。キャットウォークの設計、桁架設計画などが
それにあたる。
5. 上部工架設エンジニアリング業務実行詳細
ここでは、上部工架設を中心にエンジニアリング業務
に関する実行詳細について説明する。
キャットウォークロープを曳き出す方式を採用している。
(単線往復式)
PWS 架設時(図-3)には、アンカレイジ背面に片連 2
台づつのウィンチを配置し、反対側アンカレイジにター
5.1 ケーブル架設工事
ンシーブを設置することでホーリングロープを折り返す
通常吊橋の建設はアンカレイジ、タワーが完成すると、
形式を採用している。これにより、1 ケーブル当り 2 連の
次はそれらを結ぶケーブル工事へと移行する。本橋の
ホーリングラインを形成して、設備効率を高めている。
吊橋ケーブルは長さ約 2,600m で直径φ5.3mm の高
(複線往復式)
張力鋼線(強度:1670MPa)を 23,368 本束ねて円形と
することで構成される。本橋においてはこのケーブルを
ここで、ホーリングロープとしては直径φ36mm のよ
り線ロープを用いた
架設する際に現場で素線を一本一本架設していくエア
このように、大型設備となりがちな引き出しウィンチの
スピニング(Air Spinning)工法に対して、素線 127 本
必用設備能力が最小となるようなホーリングシステムが
を工場にて予め束ねてソケッティングしたものを現場に
要求された。
搬 入 し 、 こ れ を 一 本 ず つ 架 設 す る PWS ( Parallel
Wire Strand)工法が採用された。
5.3 キャットウォーク構造
この PWS を頭上に配置した引き出し設備(ホーリン
キャットウォークは吊橋架設において不可欠な空中
グシステム(Hauling System))を使ってキャットウォー
作業足場であり、また、建設工費・工期、吊橋ケーブル
ク上に一本一本引き出し、積み重ねながら最終的に円
品質を大きく作用するものである。このため、主に日本
形に閉め固めていく。こうした、ホーリングシステム、キ
において改良、簡素化が進み、今回この潤揚大橋にお
ャットウォークを架設すること自体が吊橋ケーブル架設
いても日本で実績のあるストームロープ(耐風安定対策
においては最も労力を必要とし、また工期・工費、ケー
用ロープ)を省略したストームレスキャットウォーク構造
ブル品質を左右する重要な要素となる。
が要求された。
これまで日本において中央径間 1,000m を超える吊
5.2 ホーリングシステムの概要
橋でストームレス構造が採用された例としては、明石海
ホーリングシステムとは吊橋ケーブル架設およびそ
峡大橋、来島海峡大橋が挙げられる。キャットウォーク
の準備工程であるキャットウォーク架設のための重要な
をストームレスとするためには、キャットウォーク自身の
引き出し装置であり、一方のアンカレイジから他方のア
ねじれ剛性を十分に確保し、ケーブルストランド架設時
ンカレイジまで2つの塔頂を通ってウィンチロープが展
における架設性を確保するとともに、暴風時(潤揚大橋
開する一種のロープウェイのような構造である。
設計風速 V10=29.1m/s)におけるキャットウォークの大
今回、このホーリングシステムはキャットウォーク架設
変形に対して十分問題のないものとする必要がある。
時とケーブル架設時とで異なり、キャットウォークロープ
さらに、前述のケーブル架設時のホーリングシステム
架設時には、両アンカレイジ前面に片連1台づつ、計4
により、本キャットウォークは一連当たり 2 本の PWS を
台のウィンチを配置したホーリングシステムを形成した。
引き出す必要があり、これらに対するスペースの確保と
これにより塔頂間に張り渡した固定サスペンダー上に
安定性のある構造が要求される。以上を通してキャット
図-3 ホーリングシステム(ケーブル架設時)
図-3 ホーリングシステム(ケーブル架設時)
図-4 図-4
キャットウォーク構造
キャットウォーク構造
ウォークロープ(CWR)の安全率 3.0 を満足させること
造とした。また、ロープ、ロッド等以外はほとんど全て現
が要求された。
場製作とすることとし、キャットウォークロープにおいて
こうしたストームレスキャットウォークに対して潤揚大
は日本においてこれまで主に使用してきた構造用スト
橋では、キャットウォークの剛性を確保し耐風安定性を
ランドロープを用いず、より一般的なより線ロープを使
高めるために、キャットウォークロープ間隔を最適配置
用した(表-2)。
するとともに、クロスブリッジ間に水平変位抑制索、鉛直
しかし、これを実現するためには中国調達されるロー
変位抑制索を配置する対策を講じた。これら変位抑制
プの構造特性、品質、精度、鍛造品の加工最大寸法な
策は、主に明石海峡大橋において実績のある対策で
ど十分な事前確認を実施し、構造に反映することが必
ある(図-4)。
要であった。たとえば、キャットウォークロープについて
これに対して、現地施工会社のコスト削減要求も大き
く、なるべく製作コストのかからない構造とした。その一
は、精度、製作上の問題からロープを 3 分割し、塔頂
付近で連結する構造とした。
例としては、塔頂部分にキャットウォークロープの定着
一方、本橋特有の条件としては、側径間で桁を吊っ
構造を設けないで連続構造とし、両アンカレイジにてロ
ていない単径間吊橋であるため、ケーブル架設時にお
ッドで定着してキャットウォークの形状調整等をできる構
いて塔頂における水平張力を等しくさせるためのセット
表-2
キャットウォーク構造比較
キャットウォーク諸元比較
潤揚大橋
明石海峡大橋
来島第三大橋
来島第一大橋
南備讃
1490
1990
1030
600
1100
ストームロープ
無
無
無
無
有
Rope 種類
IWRC6×
Spiral 1×
IWSC7×
IWSC7×
IWSC7×
SW36
127
19
19
37
Rope 直径(mm)
54
52
46
30
56
Rope 断面積(mm2)
1384.3
1652
1010
429
1490
Rope 単位重量(kg/m)
12.23
13.6
8.37
3.56
12.4
破断荷重(kN)
2030
2900
1402
597
2040
弾性係数(MPa)
1.2×105
1.6×105
1.4×105
1.4×105
1.4×105
床組幅員(m)
4
5.5
4
4
4.5
設計死荷重 CWR 張力(kN)
5600
9500
3300
1300
6150
CW 床組重量(kg/m)
254
320
220
180
330
キャ
ットウォーク
キャットウォーク
中央径間(m)
バック量が約2mと非常に大きくなる。ここで、塔は RC
5.4 キャットウォークの架設
構造のため塔自身をセットバックすることは許容限界値
キャットウォークの架設に際しては、まず前述のホーリ
を超え不可能なため、塔頂サドル自身を約2mセットバ
ングシステムを架設する。本橋においては最初の一本
ックさせ、桁架設時にその架設状態に応じてセットバッ
目のロープを架設する渡海(ここでは渡河)は、ホーリン
クを解放していく構造をとった。そのため主ケーブルの
グロープリールを載せたバージ(barge)上をタグボート
線形がケーブル架設時と桁架設時とで特に塔頂付近
で対岸まで引っ張り、ロープを河底に敷設し、その後ウ
において異なってくるため、キャットウォークの線形と常
ィンチで引き上げる河底敷設工法が採用された。その
に平行を確保するため、キャットウォークを塔頂付近で
後、両アンカレイジ前面に配置したウィンチに繋ぎホー
プルダウンして主ケーブルとの間隔を一定とする構造
リングシステムとし、キャットウォークを架設するためのサ
を考案した。
スペンダーロープやサスペンダーを順次架設していく。
今回、キャットウォークロープは直径φ54mm、単位
キャットウォークロープの架設
ケーブルストランド架設(PPWS架設)
トラムウェイサポートロープ
PPWS
Hauling Rope
ギャローズフレーム
キャリアー
ウィンチ
PWSリール
図-5 キャットウォーク,PWS の引き出
写真-2 ケーブル架設
重量 12.2kg/m と非常に重いことから、これまで日本で
予め工場にて長さ約 2,600m の素線 127 本を束ねてソ
多く採用してきたキャットウォークロープを空中に直接
ケティングし、これをリールに巻き取ったもので、総重量
引き出すフリーハング工法を採用するとウィンチ必要能
は約 60ton 程度となる。これを一つずつトレーラーにて
力が大きくなる。そこで、予め空中に設置したサスペン
現場に搬入し、搬入された PWS はストックヤードに一
ダー上を引き出すことによりロープ自重の影響を低減さ
時保管された。
せる、サスペンダー方式を採用した。この方式は中国
最初のケーブルストランドが 2 連のキャットウォーク上
江陰大橋(中央径間 1,385m)においても採用されてお
を一本づつ引き出され各サドルに移設しアンカレイジ
り、中国では一般的な方法のようである。
に定着した後、これらに対して形状調整を実施する(ケ
引き出されたキャットウォークロープは順次塔頂固定
ーブルストランドの絶対サグ調整)。
部、アンカレイジ固定部に固定され、最終的に個々の
この最初のストランドはケーブル断面の最下部に位
ロープの形状を調整し、整える(相対サグ調整)。その
置し、その後のケーブル架設の基準(基準ストランド)と
後、このキャットウォークロープ上に金網、定着梁などで
なることから非常に重要であり、温度変化の少なく風雨
構成された床組を塔頂より順次連続して引き出すが、
のない夜間に数回形状調整を行った。形状測量は光
中央径間では引き出し距離が大きく勾配が緩やかとな
波測距儀を使用した。
り床組とキャットウォークロープとの摩擦力が大きくなる
2 本目以降のストランドはこの基準ストランドに対して
ため、床組を 150m 程度に分割して引き出す分割架設
相対的な調整(相対サグ調整)を行って順次架設して
工法を採用した。
いった。
その後、キャットウォークのハンドロープやホーリング
ロープを支持するトラムウェイサポートロープ、ギャロー
ケーブルストランド架設は 2003 年 5 月 26 日に No.1
ストランドが引き出され、同年 10 月 1 日に終了した。
ズフレーム、PWS 用引き出しローラーなどを設置し、最
ストランド架設終了後、ストランド配列を整え円形に整
終的にキャットウォークの形状を調整して完成となる。
形するケーブルスクイズが実施され、その後ケーブル
(キャットウォークの絶対サグ調整)
形状を再度測定してハンガーロープ長を決定した。ケ
なお、最初の渡河は 2003 年 3 月 9 日に実施された。
5.5 ケーブルストランドの架設
ーブルスクイズ後ケーブルバンドを架設した。
5.6 補剛桁の架設
キャットウォーク完成後、ホーリングシステムを前述し
補剛桁の架設は、日本の白鳥大橋や来島大橋と同
たケーブル架設用のシステムへと変更する。こうしてア
様にリフティングガントリー(Lifting Gantry)による桁
ンカレイジ背面に設置したアンリーラー上に PWS リー
ブロックの直下吊工法が採用された。1 ブロックは長さ
ル(ケーブルストランド)を設置し、ホーリングシステムを
約 32m、計 47 ブロックあり、最大重量は約 500 トンで
用いてキャットウォーク上に引き出していく。
ある。
ここで、前述したとおり、今回このケーブルストランドは
リフティングガントリーは、海外では多くの実績を持っ
General Girder Erection
Center Block Girder Erection
y
r
t
n
a
G
g
n
i
t
f
i
L
South Side Girder Erection
y
r
t
n
a
G
g
n
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L
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n
a
B
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S
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C
0
0
3
4
3
y
r
t
n
a
G
g
n
i
t
f
i
L
CW
S20
‡ @
S21
S22 ‡ D
CW
‡ E
S23Block
‡ A
‡ B
‡ C
Winch
Girder Erection Cross Section
図-6 桁架設方案
図-6 桁架設方案一般図
写真-3 建設状況写真
もすべてリフティングガントリー上に設置されたオペレ
ータ室内から運転ができる仕組みとなっている。
リフティングガントリーは 1 基当たり 370ton の吊り上
げ能力があり、桁の架設には 2 基を併用した。また、引
き上げ速度は実際平均 32m/hour 程度であり、移動速
度は 12m/hour 程度であった。
架設は中央径間中央から両側の塔に向かって、2 基
リフティングガントリーを用いて行われ、桁間の接合は
基本的にはヒンジ架設工法である。南塔近辺において
ているマルチストランドジャッキを装備したストランドジャ
は陸上部となり台船が接岸できないことから桁仮置き用
ッキ方式であり、イギリスより技術導入を行った。 ディ
桟橋を架設し、一度桁をそれに載せた後、塔近傍に順
ーゼルエンジンを備えているために独立しており、また、
次移動し、同じく上部に移動したガントリーにより直下
リフティングガントリー自身の移動にも油圧ジャッキが用
吊り架設を行った。また、桁の閉合においては塔際の
いられ、単独に運転が行なうことが出来た。なお、操作
桁をセットバックして、閉合桁との間隔を確保し、架設
後にそれらを戻した。なお、閉合の際には、日本で多く
表-3 上部工架設工程実績
潤揚大橋上部工架設実績工程
2001
8
9 10 11 12 1
2002
2
3
4
5
6
7
2003
8
9 10 11 12 1
2
3
4
5
6
7
2004
8
9 10 11 12 1
2
3
4
5
6
7
2005
8
9 10 11 12 1
2
3
4
サドル設置・仮設備の設置
潤揚大橋上部工架設実績工程
キャットウォークの架設
メインケーブルの架設
スクイズ・バンド架設
桁架設準備
桁架設
桁溶接
▼
ケーブルラッピング・塗装
採用されている隣接桁間調整用のセッティングビーム
れる。
などは用いず、ガントリーの調整と桁間に設置したチェ
2003 年 4 月から中国全土では SARS が蔓延し、ま
ーンブロックのみによりボルト取りを行った(図-6、写真
た 60 年ぶりと言われた 8 月の記録的な猛暑といい、非
-3)。
常に厳しい環境のなかで、中国の作業者は非常に逞し
桁の搬入は工場から直接揚子江上を運搬し、架設
く、粘り強く働き、我々の技術サポートに対して十分理
の際には揚子江の流れに対して安定した位置決めが
解し改善工夫し完成させていった。もちろん文化的な
出来るよう、運搬用の台船に加えて、係留用の台船を
違いによる議論のずれがなかったと言えば嘘であるが、
使用している。
日本の物差しで考えること自身がナンセンスであり、そ
桁の全架設終了後桁間の溶接作業に入った。
最初の桁架設は 2004 年 1 月 20 日に実施され、同
年 4 月 17 日に閉合、4 月 24 日に桁の溶接を開始し、
5 月 31 日に桁の溶接作業を終了している(表-3)。
6.まとめ
潤揚大橋の上部工の建設は 2003 年 3 月に渡海(渡
河)が始まり、約 3 ヶ月でキャットウォークの架設が終了
しストランドの引き出しが開始し、約 4 ヶ月で終了した。
2004 年 4 月には桁が閉合、翌 5 月に桁の溶接終了と
いう、非常に短い工期の中で完成されていった。
これが可能となった理由としては、国家的プロジェク
トであり、施主を頂点として、元請、下請けと比較的一
体となった関係のもとに実行されたこと、また、日本と比
較しても、各種規制面で比較的対処が容易であること、
また、上部工架設を一括で管理したことなどが挙げら
れる。
今回上部工のエンジニアリング業務においては、事
前の計画が大変重要であり、いかに現地企業と情報を
交換し、友好的に打合せ検討していくかが結果を左右
したと思われる。よって、こうした業務を推進する場合、
単に一方的な価値観(計画)を押し付けるのではなく、
相手の状況、要求を的確に捉え、それを技術的に可能
とすることを提案することにおいて我々の価値が見出さ
うしたことを理解するとかえって彼らの方が理屈があっ
ていると感じることも多々あった。