プラズマにおける輸送モデリングと構造形成 - 京都大学工学研究科核

2004/03/22
筑波大学 物理学研究科・数理物質科学研究科 物理学専攻 集中講義
プラズマ特講I
プラズマにおける輸送モデリングと構造形成
福山 淳 (京大工)
• プラズマにおける輸送現象
• 衝突による輸送
• 乱流による輸送
• 乱流輸送の抑制
• 輸送障壁と構造形成
• 輸送シミュレーション
プラズマの閉じ込め
• 何を閉じ込めるか
対象
粒子
エネルギー
運動量
物理量
粒子密度
温度
トロイダル回転速度
物理現象
粒子拡散,電離,再結合,核反応
熱伝導,対流,放射
粘性,荷電交換
• 巨視的閉じ込め特性
◦ 閉じ込め時間
例:エネルギー閉じ込め時間
3nT V
d
3nT V = Pheat −
dt
τE
定常状態では
τE =
• 輸送はなぜ起こるか?
3nT V
蓄積エネルギー
=
Pheat
加熱パワー
閉じ込め時間の比例則 I
• エネルギー閉じ込め時間:τE =
Wplasma
Pheating
閉じ込め性能を表す指標
• ジュール加熱領域
◦ エネルギー閉じ込め時間のパラメータ依存性
τE = 0.07 (n/1020) a R2 q [s]
◦ 強い密度依存性
— SOC: Saturated Ohmic Confinement
(密度分布:平坦)
— IOC: Improved Ohmic Confinement
(密度分布:ピーク)
◦ ASDEX トカマクにおける τE の密度依存性
閉じ込め時間の比例則 II
• 追加熱領域:
◦ 加熱パワーの増大とともに τE の低下
◦ Lモード(Low confinement mode)
τEITER89−P = 0.048 I 0.85 R1.2 a0.3 κ0.5 (n/1020)0.1 B 0.2 M 0.5 P −0.5 [s]
(κ:楕円度, I:MA, P :MW, M :平均質量数)
• τEITER89−P と実験値の比較
閉じ込め時間の比例則 III
• 熱拡散係数 χ のパラメータ依存性
◦ 加熱パワーと損失パワーの釣り合いから
W
nT κa2R
P =
=
τE
τE
◦ P を消去すると
τE ∝ I 1.7 R1.4 a−1.4 n−0.8 B 0.4 A T −1
◦ χ ∼ a2/τE によって χ を評価すると
T n0.8 a3.4
χ∝
A B 0.4 I 1.7 R1.4
周辺部で小さくなり,実験結果と会わない
• 熱拡散係数が温度の勾配に依存
◦ 熱流束が温度勾配に比例しない:q ∝ (−∇T )2∼3
Hモード
• Hモード (High confinment mode)
◦ 追加熱時に閉じ込めの良い状態へ遷移(ASDEX トカマク, 1982)
◦ 閉じ込め時間が2倍程度長くなる.
◦ プラズマ周辺部に強い密度勾配(輸送障壁),粒子束の減少
◦ 揺動の抑制
Hモード II
• 物理機構
◦ イオンの径方向の力の釣り合い
dpi
ei(Er + vθ Bφ − vφBθ ) = −
dr
◦ 圧力勾配の増加
=⇒ 径方向電界の生成
=⇒ E × B 回転速度の空間変化
=⇒ 揺動励起の抑制
=⇒ 輸送係数の減少
◦ 引き金は何か?
• Hモードにおける閉じ込め時間比例則
ITERH.DB3
τE,th
= 0.0365 I 0.97 R1.7 a0.23 κ0.67 (n/1020)0.41 B 0.08 M 0.2 P −0.63 [s]
内部輸送障壁
• 周辺境界部ではなく,プラズマ内部にも輸送障壁
• 高 βp モード:プラズマ電流が少なく,圧力が高い
• 負磁気シア配位:周辺部に電流が流れ,磁気シア s =
r dq
が負
q dr
• 物理機構
◦ 局所的な磁気シアが負になると輸送係数が低下?
◦ 圧力勾配により生じた径方向電界により輸送係数が低下?
輸送過程
• 衝突輸送
◦ 衝突の種類による分類
中性粒子との衝突 (低温) 衝突周波数
ν0 ∝ T 1/2
クーロン衝突
νC ∝ T −3/2
(高温) 衝突周波数
◦ 粒子軌道による分類
古典輸送 (均一磁場) サイクロトロン運動+衝突
新古典輸送 (不均一磁場) 旋回中心のドリフト運動+衝突
• 乱流輸送
◦ プラズマ中の圧力勾配や電流密度勾配によって励起される微視的揺動
静電モード(E = −∇φ)
— 電場揺動(E × B 運動)
電磁モード(E = −∇φ − ∂A/∂t)
— 磁場揺動(乱れた磁力線に沿う運動)
◦ 非線形減衰機構による揺動振幅の飽和
◦ 電磁場揺動による半径方向流れの誘起
拡散現象
• 酔歩問題(Random walk)
◦ 時間 ∆t の間に ∆x または −∆x 変位する.
◦ 個々の変位は統計的に独立
◦ 時刻 t = n ∆t に変位が x = m ∆x となる確率
n!
pn(m) = n + m n − m
!
!
2n
2
2
◦ 時刻 t = n ∆t における位置 x の期待値
n
x =
m ∆x Pn(m) = 0
m=−n
◦ 時刻 t = n ∆t における x2 の期待値
n
x2 =
m2 (∆x)2 Pn(m) = n (∆x)2
m=−n
拡散係数と拡散方程式
• 拡散係数
(∆x)2
x2
=
D = lim
n→∞ 2n ∆t
2∆t
• 密度分布 n(x, t) の時間発展を記述する拡散方程式
∂
∂n
∂n
=
D
∂t
∂x ∂x
• 基本解
◦ 初期条件:n(x, t0) = δ(x − x0)
◦ 境界条件:n(x = ±∞, t) = 0
(x − x0)2
1
exp −
n(x, t) =
4D(t − t0)
4πD(t − t0)
√
◦ 幅は時間 t の平方根に比例:δr ∼ 2Dt
√
◦ 高さは時間 t の平方根に逆比例:n(x = 0) ∝ 1/ Dt
磁場のないプラズマ中の古典輸送
• 粒子運動的取扱い
1
(衝突周波数:ν )
ν
◦ 空間ステップ:∆x = v ∆t
◦ 温度 T のプラズマにおける拡散係数
v2
T
(∆x)2
=
=
D=
2 ∆t
2ν
mν
◦ 電子とイオンの比較(Te ∼ Ti の場合)
◦ 時間ステップ:∆t =
νe
νi
mi
me
1/2
=⇒
De mi νi
=
Di me νe
mi
me
1/2
1
• 流体的取扱い
◦ 圧力勾配と摩擦力との釣り合い:
−∇p − νnmu = 0
◦ 温度一定の場合:粒子束
T
∇n = −D∇n
nu = −
mν
=⇒
∂n
= −∇(nu) = ∇D∇n
∂t
両極性拡散
• 両極性電界 (bipolar electric field)
◦ 電子は速く拡散するが,残されたイオンとの間に電界が生じ,引き戻される.
• 電界が増大し続けないためには,電子とイオンの粒子束が一致
◦ 電子とイオンの粒子束(µ :移動度)
nue = −nµeE − De∇n
nui =
nµiE − Di∇n
◦ nue = nui より,
D e − Di
∇n
µe + µi
µeDi + µiDe
∇n = −Dbp∇n
nue = nui = −
µe + µi
E=−
• 両極性拡散係数:
( De
µi)
µeDi + µiDe
Dbp =
Di
µe + µi
◦ 動きにくいイオンの拡散係数で輸送が決まる
Di, µe
静磁場中のプラズマの古典輸送 (1)
• 静磁場中のプラズマ
◦ 磁力線方向:磁場のない場合と同じ
2
T
(∆x)2 v
=
∼
D =
2 ∆t
2ν
mν
◦ 磁力線に垂直な方向:空間ステップ=サイクロトロン半径
2
v⊥
rc2
T ν2
D⊥ = ν = 2 ν ∼
2
2ωc
mν ωc2
◦ 磁場閉じ込めプラズマ:ν
ωc
D⊥ ν 2
= 2
D
ωc
◦ 電子とイオンの比較:
D⊥e
D⊥i
me
mi
1
1/2
1
静磁場中のプラズマの古典輸送 (2)
• 流体的取扱い
◦ オームの法則:E + u × B = ηj
◦ 力の釣り合い:j × B = ∇p
◦ 平均流速
u⊥ =
E×B
∇⊥ p
−
η
⊥
B2
B2
◦ 連続の方程式(静電界がない場合)
η⊥
∂
n = −∇⊥ · (nu⊥) = ∇⊥n 2 ∇⊥p = ∇⊥D∇⊥n
∂t
B
◦ 拡散係数(温度一定の場合)
η⊥
mν T
T ν2
2
D = n 2T = n 2 2 =
=
ρ
ν
2
B
ne B
mν ωc
新古典輸送
• 新古典輸送:磁場の不均一性による輸送の増大
• 衝突周波数に依存して3つのパラメータ領域
◦ バナナ領域 (Banana):
(高温低密度領域)
衝突が少なく,捕捉粒子がバナナ軌道を描くことができる領域
◦ プラトー領域 (Plateau):
衝突周波数に依存しない中間領域
◦ Pfirsh-Schl¨
(低温高密度領域)
uter 領域:
衝突が多く,バナナ軌道を一周する前に衝突を受ける領域
トカマク中の粒子運動 (1)
• トロイダル磁場の不均一性:ミラー捕捉
R0
R0
Bφ = Bφ0
= Bφ0
R
R0 + r cos θ
• 弱磁場側に捕捉される条件 (v 0 = v |B=Bmin , v⊥0 = v⊥|B=Bmin )
v0
v⊥0
• トカマク中の粒子軌道
2
<
2r
Bmax
R0 + r
−1=
−1=
Bmin
R0 − r
R0 − r
トカマク中の粒子運動 (2)
• ポロイダル断面に射影された粒子軌道
通過粒子
捕捉粒子
• 捕捉粒子割合
v0
f=
=
v0
v 20
v 20
+
2
v⊥0
1/2
=
2r
R0 + r
1/2
√
2
バナナ領域の輸送
• 捕捉粒子
√
v /v⊥ < 2
=⇒
捕捉粒子割合: ftr =
• 実効衝突周波数:捕捉粒子の速度が変化する周波数
ν
νeff =
• バナナ軌道を一周するために必要な時間
τb = qR/v ∼ qR/
• バナナ領域であるための条件
vT ≡ 1/ωb
3/2
vT
qR
ν<
• バナナ軌道幅:ρ ≡ v⊥/ωc
∆r =
• 拡散係数
D=
1/2
1/2
q
1/2
ρ
ρ
q2 2
(qρ/ 1/2)2
= 3/2 ρ ν
/ν
1/2
新古典抵抗率と Ware ピンチ
• 新古典抵抗率:捕捉粒子はトロイダル電流を運べない.
j = σsp(1 −
1/2 2
) E + jbs
◦ 捕捉粒子効果によって,
導電率 σ は減少,抵抗率 η = 1/σ は増大.
◦ 実験的に検証されている.
• Ware ピンチ:トロイダル電界により生じる内向きの粒子束
◦ 捕捉粒子に対するトロイダル方向の力の釣り合い
Eφ + (v × B)φ = Eφ + vr Bθ = 0
◦ 平均流速
Eφ
Bθ
◦ 通過粒子に対しては,トロイダル電界による力と摩擦力が釣り合う.
◦ Ware ピンチ粒子束
1/2 Eφ
nvr = − n
Bθ
vr = −
自発電流
• Bootstrap 電流:圧力勾配によって生じるトロイダル電流
◦ 捕捉粒子が運ぶ電流:バナナ軌道幅のために捕捉粒子数に差
dn
jT = − e f v trapped wb = − e
dr
1/2 1/2
1/2
dn
dn
v wb
= −q
T
dr
B
dr
◦ 捕捉粒子は電子電子衝突 νee によって通過粒子に運動量を与え,通過粒子は
電子イオン衝突 νei によってイオンに運動量を与えて,釣り合う.
νee
jT
νei jbs ∼
• Bootstrap 電流密度
1/2
νee q T dn
dn
∼
−
jbs ∼ −
T
νei 1/2 B dr
Bθ dr
◦ 磁気軸付近では jbs ∝ r1/2
◦ 圧力分布の形状に敏感
典型的な輸送係数
• プラズマの密度・温度・電流の時間発展を記述する方程式
1∂
∂nj
粒子輸送方程式:
=−
rΓj + Sj
∂t
r ∂r
熱輸送方程式:
1∂
∂3
n j Tj = −
rqj + Pj
∂t 2
r ∂r
∂
∂Bθ
1 ∂
= η
rBθ − jBS − jCD
磁場拡散方程式:
∂t
∂r
µ0r ∂r
∂nj
− Vj nj
粒子束:
Γj = −Dj
∂r
熱流束:
• 輸送係数
3
∂Tj 3
− Γj Tj
qj = − χ h n j
2
∂r
2
実験値
χe ∼ 1 m2/s
熱拡散係数:
χi ∼ 1 m2/s
粒子拡散係数:
D ∼ 0.25 m2/s
粒子ピンチ速度: V ∼ 1 m/s
新古典理論値
χe ∼ 0.01 m2/s
χi ∼ 0.3 m2/s
D ∼ 0.01 m2/s
プラズマ乱流
• プラズマ乱流の複雑さ
◦ 中性流体乱流:十分複雑
◦ 電磁流体乱流:電磁力
◦ 運動論的プラズマ乱流:波ー粒子相互作用
• 非平衡開放系としての閉じ込めプラズマ
◦ 熱平衡状態に近い系
— 線形応答理論:流束∝勾配
— 古典/新古典的衝突輸送理論
◦ 熱平衡状態から離れた系
— 非線形応答:流束∝ (勾配)α (α > 1)
— 励起された揺動による輸送の増大
熱流束の温度勾配依存性
(JET トカマク)
乱流輸送 (I)
• 輸送機構
◦ プラズマ中の圧力勾配や電流密度勾配によって励起される微視的揺動
◦ 非線形減衰機構による揺動振幅の飽和
◦ 電磁場揺動による半径方向流れの誘起
• 揺動電界による輸送
i kδφk
δE⊥
=
B
B
◦ 揺動電界により誘起される粒子束
◦ 揺動電界によるドリフト:δv⊥ =
Γ = δv⊥ δn
◦ 拡散係数(弱い乱流)
D=
k
(δrk )2
=
τk
k
k⊥δφk
B
◦ 拡散係数(強い乱流)
D∝
k
δφk
B
2
τk ∝
k
δφk
B
2
乱流輸送 (II)
• 揺動磁界による輸送
◦ 揺動磁界による磁気面の破壊
◦ 径方向磁界成分による粒子束
Γ=
n
δv δBr
B
◦ 磁力線の拡散係数
DM =
k
粒子の拡散係数
(δrk )2
=
Lk
k
δBr
B
(δr)2 DMλ
D=
=
= DM v
τc
τc
2
Lk
微視的不安定
• イオンのサイクロトロン半径程度以下の波長をもつ不安定性
• 励起源:圧力勾配
• 代表的なモード
◦ 電子ドリフト波:静電的,電子ドリフト周波数
◦ イオン温度勾配モード:イオン音波と結合,静電的,イオンドリフト周波数
◦ 高 n バルーニングモード:アルヴェン波と結合,電磁的,周波数0
• 配位
ky = m/r, s = (r/q)(dq/dr), Ls = qR/s
◦ スラブ配位:磁気シアなし:磁場強度勾配なし,k 一定
ky
m − nq
◦ スラブ配位:磁気シアあり:磁場強度勾配なし,k =
=− x
qR
Ls
◦ トーラス配位:磁気シアあり,磁場強度勾配あり
ドリフト波 I
• 不均一プラズマ中の波
• 電子ドリフト波
◦ 1次元平板プラズマモデル:
— 静磁場:B = (0, 0, B)
— 密度勾配:ne = n(x)
— 静磁場と密度勾配の両方に垂直な方向
に伝播する波:
n
˜ e, n
˜ i, φ˜ ∼ exp(− i ωt + i ky y + i k z)
— 密度揺動
⇒ 電界の生成
⇒ E × B ドリフト
⇒ 密度揺動の −y 方向への伝播
ドリフト波 II
• 電子の密度揺動
◦ 電子の磁力線方向の力の釣り合い:
neeE˜ + ∇ p˜e = 0
◦ 静電近似(E˜ = −∇ φ˜)と等温近似(p˜e = n
˜ e Te )
n
˜ e eφ˜
=
n e Te
(ボルツマン分布)
◦ −y 方向にも電界が発生
∂ φ˜
˜
Ey = −
∂y
◦ −x 方向の E × B ドリフト
1 ∂ φ˜
v˜ex = −
B ∂y
◦ 密度揺動が −y 方向に伝わる.
ドリフト波 III
• イオンの密度摂動
◦ 連続の方程式(ni∇ · v˜ i ∼ ni∇ v˜ )
dni
∂n
˜i
= −∇ · (niv˜ i) = −
v˜ix − ni∇ v˜
∂t
dx
◦ E × B ドリフト
ky ˜
1 ∂ φ˜
= −i φ
v˜ix = −
B ∂y
B
◦ 磁力線方向の運動方程式
◦ イオン密度摂動
d˜
v
e
= E˜
dt
mi
e k ˜
v˜ =
φ
mi ω
2
e k ˜
ky dni ˜
n
˜i
φ
φ+
=−
2
ni
ωniB dx
mi ω
ドリフト波 IV
• 準中性条件
◦ 中性条件(1価のイオンの場合)
ne = ni
◦ 摂動成分に対するポワッソン方程式
2˜
−∇ φ =
e
(˜
ni − n
˜ e)
0
◦ ボルツマン分布を用いると
n
˜e − n
˜i =
2 0 Te
k
nee2
n
˜ e = (kλD)2 n
˜e
デバイ長:λ2D = T 0/nee2
◦ デバイ長に比べて波長が十分長い場合:kλD
1
n
˜e = n
˜i
— ただし,電界を作る程度の電子とイオンの密度差は残る.
ドリフト波 V
• 準中性条件 n
˜e = n
˜ i より
2
ky dni ˜
eφ˜
e k ˜
=−
φ
φ+
2
Te
ωB dx
mi ω
• ドリフト波の分散関係
ω
電子ドリフト波
ω 2 − ω∗eω − k 2c2s = 0
• 電子ドリフト周波数
ky Te dni
ω∗e = −
eBn dx
• 音速
c2s = Te/mi
ω = k||cs
ω e
*
0
k||
バルーニングモード
–ω e
*
ω = – k||cs
ドリフト波不安定
• ドリフト波は様々な原因で不安定になる
◦ イオンの有限サイクロトロン半径効果
— イオンはサイクロトロン軌道に沿って平均された電界を感じる.
◦ 電子の散逸効果
— 衝突のために電子の磁力線方向の運動が妨げられる.
◦ 捕捉電子効果
— 磁気ミラーに捕捉された電子は磁力線方向の運動が妨げられる.
• 不安定によって励起された揺動は,非線形効果によって飽和
◦ 揺動電場による電子の拡散:散逸の増大による不安定化
◦ 揺動電場によるイオンの拡散:安定化
◦ 揺動電場による熱の拡散:安定化
• 飽和した揺動による乱流輸送
イオン温度勾配不安定性 I
• イオンの密度摂動
◦ 連続の方程式より(ni∇ · v˜ i ∼ ni∇ v˜ )
dni
∂n
˜i
= −∇ · (niv˜ i) = −
v˜ix − ni∇ v˜
∂t
dx
◦ E × B ドリフト
1 ∂ φ˜
v˜ix = −
B ∂y
• イオンの圧力摂動
◦ 状態方程式より
dpi γpi dni
=
= −γpi ∇ · v i
dt
ni dt
∂ p˜i dpi
+
v˜ix = −γpi ∇ v˜
∂t
dx
ky dp ˜ γpi
k v˜
p˜i = −
φ+
ωB dx
ω
イオン温度勾配不安定性 II
• イオンの速度摂動
◦ 磁力線方向の運動方程式より
d˜
v
= −Ze∇ φ˜ − ∇ p˜i
mi
dt
Zek
1
ω∗pi ˜
φ
v˜ =
1−
miω 1 + γk 2Ti/miω 2
ω
ky dpi
, = ω∗i(1 + ηi)
ω∗pi =
ZeBni dx
Te
ω∗i = − ω∗e,
Ti
d ln Ti
ηi =
d ln ni
• 準中性条件を用いると,分散関係
ω 2 − ω∗eω − k 2c2s 1 −
ω∗pi
=0
ω
イオン温度勾配不安定性 III
• スラブ ITG モード
ω ∼ (k 2c2s|ω∗pi|)1/3
√
1
3
− +i
2
2
• トロイダル ITG モード
ω 2 − ω∗eω − k 2c2s 1 −
◦ 曲率ドリフト周波数
ωDi
ω∗pi
2 2
ρi −
+ ω 2 k⊥
ω
ω
ω∗piωDi
2
ω ∼ −
2 2
1 + k⊥
ρi
ωDi
◦ トーラス外側で不安定
k θ Ti
cos θ
= −2
ZeBR
• 正確な解析には,ジャイロ運動論的解析が必要
1−
ω∗pi
=0
ω
イオン温度勾配不安定性 IV
• ジャイロ運動論的解析
v ∂
∂
˜=
+
+ i ωD h
∂t qR ∂θ
1
ωD =
ωc
◦ 不安定条件
∂
eφ˜
+ i ω∗T
J0(k⊥ρi) FM
∂t
Ti
2
v⊥
+ v 2 k⊥ · (b × ∇ ln B)
2
4 Ln
η > ηc =
3 R
Te
1+
Ti
2 2
ρi
1 + k⊥
• 乱流輸送
◦ ジャイロ流体シミュレーション(IFS-PPPL モデル)
◦ ジャイロ粒子シミュレーション(GLF23 モデル)
バルーニング不安定性 (I)
• バルーニング不安定性:空間的に局在した不安定性
• 磁場揺動を伴う電磁的不安定性
◦ 圧力勾配による不安定化
— トーラス外側では不安定
— トーラス内側では安定
◦ 磁力線の曲がりによる安定化
• 磁気シア s と圧力勾配 α に依存
r dq
q dr
2µ0Rq 2
◦ 規格化された圧力勾配:α = −
dpdr
B2
— 圧力勾配による不安定化
— 磁気軸の変位による安定化(トーラス外側における局所磁気シアの減少)
◦ 磁気面平均された磁気シア:s =
バルーニング不安定性 (II)
• 安定領域と臨界分布:第2安定領域の存在
• 散逸機構
◦ 理想バルーニング不安定性
◦ 抵抗性バルーニング不安定性:不安定性領域広がる.成長率小さい
◦ 電流拡散性バルーニング不安定性:乱流拡散による不安定化
◦ 運動論的バルーニング不安定性:粒子のドリフト運動を含む.短波長
プラズマ中に形成される輸送障壁
• 形成される位置
◦ 周辺部輸送障壁(Edge Transport Barrier)
— セパラトリクスのわずかに内側(0.9 r/a 1.0)
◦ 内部輸送障壁(Internal Transport Barrier)
— プラズマ内部(0.2
r/a
0.8)
• 類似点
◦ 強いプラズマ加熱の結果
◦ 硬い遷移とヒステリシス
◦ 密度分布および温度分布の急峻な勾配
◦ 径方向電界の負のピーク
◦ プラズマ回転の変化
• 相違点
◦ 周辺部輸送障壁は位置が固定され,周期的あるいは一時的な崩壊.
◦ 内部輸送障壁は時間とともに位置が変化する場合が多い.
◦ 内部輸送障壁は崩壊すると復旧しない場合が多い.
閉じ込め改善と輸送障壁
• 周辺輸送障壁:Hモード(ASDEX, 1982)
• 内部輸送障壁:高 βp モード,負磁気シア配位,ペレット入射,電流駆動
輸送障壁形成に伴う揺動振幅低下と径方向電界
• 揺動振幅
• 径方向電界
乱流抑制の物理機構
• 磁気シア
◦ 磁気シアが弱くなると,トーラス外側での局所磁気シアが負の大きな値とな
り,バルーニング的性質をもつモードが安定化される.
◦ 輸送障壁の形成に伴って,自発電流が増大し,磁気シアはさらに減少する.
• 磁気軸シフト
◦ 圧力勾配の増大に伴って磁気軸シフトが大きくなると,トーラス外側での局
所磁気シアが負の大きな値となり,バルーニング的性質をもつモードが安定
化される.
◦ 輸送障壁の形成に伴って,圧力勾配が増大し,磁気軸シフトはさらに減少す
る.
• トロイダル回転速度シア
◦ トロイダル速度シアの増大によって,ドリフト波の安定性が変化する.
◦ 輸送障壁においてトロイダル粘性も減少すると,トロイダル回転速度がより
大きくなり,速度シアも増大する.
• ポロイダル回転速度シア(電界駆動)
◦ 反磁性ドリフトは粒子のドリフトを伴わない.
◦ E × B ドリフトによる回転速度シアは,粒子の感じる電界の相関を変化さ
せ,安定化に寄与する.
◦ 輸送障壁が形成されると,径方向電界が大きくなり,ポロイダル回転速度シ
アを増大させる,
• ポロイダル回転速度シア(非線形駆動)
◦ 揺動電界の非線形相互作用により,ポロイダル方向の流れ(帯状流)が誘起
される.
◦ 帯状流が誘起されると,乱流が安定化される.
(シミュレーション)
輸送障壁形成の物理機構
• 乱流輸送抑制
◦ 回転速度シアの増加による輸送係数の低下
◦ 負または弱い磁気シアによる輸送係数の低下
• 正帰還ループ
トロイダル回転速度シアの増大
トロイダル回転
強い圧力勾配
径方向電界
E x B 回転速度シアの増大
ブートストラップ電流
Shafranov シフト
非軸上電流駆動
非軸上電流
電流立ち上げ
局所磁気シアの減少
乱流輸送係数の減少
乱流輸送モデル
• 満たすべき条件
◦ プラズマ全体に蓄えられたエネルギーに対する閉じ込め時間比例則の再現
◦ 温度勾配依存性が強い非線形熱流束(q ∝ (∇T )α )
◦ 径方向分布データベースとの比較(ITER 設計活動 物理研究)
◦ 観測される揺動との比較
◦ 輸送障壁の再現
• 主な輸送モデル
◦ Rebut-Lallia-Watkins Model(半経験的)
◦ Mixed Bohm Model:Culham, UK(経験的)
◦ ドリフト波乱流:Waltz, USA(理論)
◦ 複合モデル(各種ドリフト波,抵抗性バルーニングモード)
:Bateman, USA
◦ イオン温度勾配モード乱流:GLF23, USA(理論+シミュレーション)
◦ 電流拡散性バルーニングモード乱流:Itoh et al., Japan(理論)
イオン温度勾配モード乱流モデル (I)
• GLF23 輸送モデル:GA グループ(Waltz, Kinsey)開発
◦ 20 モードのジャイロ流体的線形安定性解析
◦ 線形成長率から拡散係数評価(準線形 Mixing Length Rule)
γ − γE γdγ
χ∝
,
γE : E × B shear rate, γd : n = 0 damping rate
k2 ω2 + γ 2
いろいろな配位のプラズマに対して線形安定性を比較し,係数を較正
• 理論:ジャイロ運動論的線形安定性解析:GKS
◦ いろいろな配位のプラズマに対して線形安定性を比較し,係数を較正
イオン温度勾配モード乱流モデル (II)
• シミュレーション:ジャイロ運動論的非線形シミュレーション:GYRO
◦ 線形成長率と拡散係数との関係を較正
• 実験をかなりよく再現
電流拡散性バルーニングモード乱流モデル (I)
• 従来の乱流飽和:線形成長
⇐⇒ 非線形減衰
• 自己維持乱流: 線形成長+非線形成長
⇐⇒
非線形減衰
◦ 駆動源 α が臨界値 αc を越えると,モードが成長
◦ 振幅の増加とともに,電流拡散係数 λ が増加
非線形励起
+ 非線形減衰
高輸送係数
揺動振幅 |φ|2
輸送係数 D
2
成長率 γ
◦ λ の増加は成長を加速
◦ 振幅がさらに大きくなると,粘性 µ と熱拡散 χ が安定化
◦ 一旦モードが励起されると,α < αc となっても,有限振幅を維持
γL
非線形減衰
D*
不安定解
0
D1
揺動振幅 |φ|2
輸送係数 D
D2
0
低輸送係数
0
α*
駆動源 α
αc
電流拡散性バルーニングモード乱流モデル (II)
• 簡約 MHD 方程式 (非線形項 v E · ∇ を繰り込み)
運動方程式
2r cos θ
n0mi 4
∂ n0mi 2
∇⊥φ = B0 ∇ j + ∇p × ∇
· zˆ + µ
∇⊥φ
∂t B0
R0
B0
∂
A = − ∇ φ − η j + λ∇2⊥j
オームの法則
∂t
with
1
∂
p + ∇φ × ∇p0 · zˆ = χ⊥∇2 p
熱輸送方程式
∂t
B0
• 輸送係数
µ : イオン粘性率
λ : 電流拡散率
η : 抵抗率
χ : 熱拡散率
◦ 乱流輸送係数 µ, λ, χ は |φ|2 に比例
◦ 与えられた µ, λ, χ に対して成長率を計算できる.
1 2
j = − ∇⊥A
µ0
電流拡散性バルーニングモード乱流モデル (III)
• バルーニング方程式 (規格化,m : ポロイダルモード番号)
f2
d
d
dξ γ + ηm2f 2 + λm4f 4 dξ
γ + ωE1
d
+ χm2f 2 φ
dξ
+ α [κ + cos ξ + (sξ − α sin ξ) sin ξ] φ
d
d
2 2
2
− γ + ωE1 + µm f f γ + ωE1 + χm2f 2 φ = 0
dξ
dξ
• 磁気シア
s≡
r dq
q dr
q = rB0/RBθ
dβ
• 圧力勾配
α≡ −q R
dr
r
• 平均磁気曲率 κ ≡ − (1 − 1/q 2)
R
τApr d Er
• 回転シア
ωE1 ≡
s dr rB
2
β = 2µ0p0/B02
f 2 = 1 + (sξ − α sin ξ)2
電流拡散性バルーニングモード乱流モデル (IV)
• CDBM 自己維持乱流輸送モデルから
求められた熱拡散係数
χTB = F (s, α, κ, ωE1) α
磁気シア
3/2
• F (s, α, κ, ωE1) の s − α 依存性
2.5
c2 vA
2 qR
ωpe
ω E1=0.1
1.5
F
r dq
s≡
q dr
ω E1=0
2.0
ω E1=0.2
1.0
dβ
圧力勾配
α≡ −q R
dr
1
r
1− 2
磁気曲率
κ≡ −
R
q
qR dE
E × B 回転シア ωE1 ≡
svABθ dr
2
• 負磁気シアは輸送を減少させる.
• E × B 回転シアは輸送を減少させる.
ω E1=0.3
0.5
0.0
-0.5
• 近似式
⎧
1
⎪
⎪
⎪
2
⎪
1 + G1 ωE1
⎪
⎪
⎪
⎨
FBM =
⎪
⎪
⎪
⎪
⎪
⎪
⎪
⎩
0.0
0.5
1.0
s-α
1
2(1 − 2s )(1 − 2s + 3s 2 )
for s = s − α < 0
√
1 + 9 2s 5/2
1
√
2
1 + G1 ωE1
2(1 − 2s + 3s 2 + 2s 3)
for s = s − α > 0
熱輸送シミュレーション
• 磁気面平均:小半径方向の1次元解析
◦ 不純物,中性粒子,鋸歯状振動の影響は取り入れていない.
◦ 密度分布固定: ne(r) ∝ (1 − r2/a2)1/2
◦ 熱拡散係数 (実験結果と合わせるパラメータ C = 12)
χe = CχTB + χNC,e
χi = CχTB + χNC,i
• 輸送方程式
1 ∂
∂ 3
∂Te
n e Te = −
r ne χe
+ POH + Pie + PHe
∂t 2
r ∂r
∂r
1 ∂
∂ 3
∂Ti
n i Ti = −
r ni χi
− Pie + PHi
∂t 2
r ∂r
∂r
∂
∂
1 1 ∂
Bθ =
ηNC
rBθ − JBS − JLH
∂t
∂r
µ0 r ∂r
• プラズマの標準パラメータ
R = 3 m Bt = 3 T 楕円度 = 1.5
a = 1 m Ip = 3 MA ne0 = 5 × 1019 m−3
高ポロイダルベータモード
電流の時間発展
密度の径方向分布
28>8
2:;
*+2*
2<=
*+,
*+-
.+/
8 497
.+0
/+*
*+,*
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1 3456
178
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; 3<6
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2:
1
/
,
-
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@
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0+*
電流密度の径方向分布
*
*+*
13
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*+0
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*+-
9 5:8
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.+0
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*+.
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0+*
*
*+*
*+,
*+-
23
01
0*
1
3AB
1*+0
*+*
9
,*
[email protected]?
23 56789:
12
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*+2
3 56789:;
1 5678
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.+0
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*+*+,
*+*
*+,
熱拡散係数の径方向分布
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蓄積エネルギーの時間発展
;
0
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*+**
19:
3=>3?
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0,
26
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加熱パワーの時間発展
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0
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3 567879:;<
*+*
温度と安全係数の分布
2 45678
2 4567
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2>[email protected]
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0+*
負磁気シア配位
電流の時間発展
密度の径方向分布
1787
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.+,
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3 5678
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1 3456
0
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*
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8
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*
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7 386
熱拡散係数の径方向分布
/
1:
*
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0+,
1 3456789
19
.
*+-
電流密度の径方向分布
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蓄積エネルギーの時間発展
/
9
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0
:
1;
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39:9
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:
7 3=6
1 34567
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*+-
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1;<;
12 456789
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15
/
加熱パワーの時間発展
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1
0
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温度と安全係数の分布
19:
2 4567689:;
1 3456
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,+,+,
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12
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*
1=>?
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*+,
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: *+.
*+/
0+*
負磁気シア配位の維持
p LH
T [keV]
TD
Te
TD
j LH
j BS
j OH
j BS
Te
TD
j LH
j BS
j EC
q
q
q
q
q
p IC
j tot
j LH
q
r [m]
p LH
j tot
j [MA/m2]
j [MA/m2]
j tot
j [MA/m2]
T [keV]
Te
p EC
p [MW/m3]
p IC
p IC
T [keV]
p LH
完全電流駆動
完全電流駆動+軸上電流駆動
(H 1.6)
PLH/PIC/PEC
PLH/PIC = 12/10.8 MW
= 12/10.8/0.2 MW
p [MW/m3]
p [MW/m3]
非軸上電流駆動
(H 1.2)
PLH/PIC = 12/2 MW
r [m]
r [m]
まとめ
• プラズマにおける磁場を横切る輸送は単なる拡散過程ではな
い.
• 強いプラズマ加熱に伴って揺動抑制状態への遷移が生じ,輸
送障壁が形成される.
• 揺動抑制には,磁気シア,磁気軸シフト,速度シアが寄与し
ていると考えられている.
• 輸送障壁形成は,正帰還を伴う構造形成である.
• 負のあるいは弱い磁気シアと強い圧力勾配による輸送係数減
少を取り入れた輸送シミュレーションは実験結果をかなりよ
く再現する.
• 輸送障壁形成の物理機構の研究によって,プラズマ中の乱流
輸送現象の解明が大きく進展しつつある.