政策ブリーフ(日本語版)

政策ブリーフ
Tackling Harmful Alcohol Use
Economics and Public Health Policy
Directorate for
Employment,
Labour and Social
Affairs
2015 年 5 月
OECD の新しい基幹報告書では、今日世界中で死亡およ
び障害の第五番目の主要原因である有害な飲酒の経済
そして公衆衛生における側面を分析している。
過去 20 年間で、OECD 諸国のアルコール消費量は、平均
して若干減少したが、世界平均を大きく上回ったまま
である。大量飲酒は、多くの国の若者や女性の間で驚
くほどに増加している。子供はますます若い年齢でア
ルコールと酩酊を経験している。女子は男子に過去 10
年間で追いついた。
大量飲酒は、雇用の確率の低さ、欠勤の多さと低い生
産性と賃金と関係している。有害なアルコール使用に
より失われた生産性の全部の価値は、高·中所得国の
GDP の 1%ほどと推定される。
この報告書は、OECD 諸国とその他の国でのアルコール
消費の傾向と社会格差を詳細に分析している。アルコ
ール関連の害に対処するためのカナダ、チェコ共和
国、ドイツでの重要な政策の医療・健康上、社会また
経済的影響の多岐にわたる評価をし、より幅広い国々
への関連する政策メッセージも含んでいる。
有害なアルコール使用は、特に労働年齢人口で、世界中の死亡および障害の主な原因である。飲
酒は、飲む人自身に有害なだけでなく、飲酒運転、家庭内暴力や反社会的な行動などで、他人を犠牲
にすることがある。有害な飲酒の公衆衛生上の影響は、世界中の政府の主要な関心事である。
酔うとは何か、どれほどで酔っぱらいなのか、誰によってまたはどこでとは、文化、経済、社会
規範などの要因に強く影響されている。多くの OECD 諸国は、アルコール消費量のランキングで上位
に入っている。 OECD の年間平均消費量は純アルコールに換算して 9 リットル以上である(表 1)。
これらの国では 10 人に1人ぐらいは自宅での醸造や違法取引をしているが、これらは公式な統計に
記録さえされていないので、上記の数値には含まれていない。これらを含めると、一年間の合計でワ
イン 100 本またはビール 200 リットル以上の飲酒に達する。
Policy Brief - Tackling Harmful Alcohol Use © OECD May 2015
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ほとんどのアルコールが最も飲酒が多い 20%の人口によって飲まれている(表 2)。OECD 報告
書で分析された国では、もしアルコール摂取量を 1 週間に小さなワイングラス1杯分に相当する1単
位減らすと、大体 5 人中 4 人の飲酒者が全ての原因による死亡リスクを減少するだろう。それ故、飲
酒する人や社会全体の健康と福祉のために幅広い改善の余地がある。また、有害なアルコール使用に
伴うリスクの大きさやそれら有害性に対処する多くの政策選択肢の有効性に関するエビデンスが今日
ほど豊富で詳細にわたることはなかった。
表 1.成人のアルコール消費量、2012 年(または直近年)、純アルコールのリットル数
Estonia
Austria
France
Ireland
Czech Republic
Luxembourg
Hungary
Russian Fed.
Germany
Portugal
United Kingdom
Slovenia
Denmark
Poland
Slovak Republic
Australia
Switzerland
Spain
Finland
Belgium
New Zealand
Netherlands
OECD(34)
Korea
United States
Canada
Greece
Chile
South Africa
Brazil
Sweden
Japan
Norway
Iceland
Italy
China
Mexico
Israel
India
Turkey
Indonesia
0
5
10
15
一人当たりのリットル数(15歳以上)
注釈:イスラエルの統計データは、イスラエル当局の責任の下で当局により供給されている。OECD でのデータ使用は国際法の
条項の下でゴラン高原、東エルサレムとヨルダン川西岸にあるイスラエルの入植地の状況に既得権を侵すことはない。
出典:OECD Health Statistics 2014
表2.
最も飲酒が多い 20%の人口によるアルコール消費量(全消費量との比率)
全アルコール消費量との比率
100%
75%
50%
25%
0%
出典: 最新年の各国調査に基づいた OECD 推計。
アルコール消費量は若干減少したが危険な飲酒行為は増加している
OECD 報告書の対象期間(1992 から 2002 年)に、OECD 諸国の一人当たりのアルコール消費量は、
約 2.5%と全体的にわずかに減少しているが、この大きな流れの中で、国々は異なる傾向を経験した
(表 3)。伝統的に非常に消費量の多い幾つかの南欧と中欧諸国(例えば、イタリア、フランス、ド
イツ)は、平均アルコール消費量の劇的な減少を経験した。一方、幾つかの北欧諸国(例えば、エス
トニア、ノルウェー、ポーランド)で消費量は大幅に増加した。インド、中国、ブラジルなどの新興
国も低いレベルからではあるが、アルコール消費量の大幅な相対的増加があった。
しかし、最も憂慮すべきことは、多くの国が特に若者や女性の間で危険な飲酒行為(短時間での
大量飲酒など)の際立った増加を経験したことである。飲酒と酩酊の経験のある子供の数は近年大幅
に増加している。OECD 諸国では、3 人に 2 人以上の子供が 15 歳までに飲酒をしており(表4)、5 人
に 2 人は少なくとも一度は酩酊した。過去 10 年間で女子は男子に追いついた。
これらの傾向は特に憂慮すべきである。なぜなら、若年での大量飲酒は、飲酒者自身に有害な影
響があるだけでなく、交通事故や暴力などに巻き込まれる他人にもしばしば影響を与えるからである。
また、それは有害なアルコールに関連する疾病負担の重要な割合を占めている。若年での大量飲酒は、
急性および慢性疾患のリスク増加と関係している。また以後の人生でアルコール依存症と関係があり、
そして本来なら労働市場で成功するだろう人が長期的キャリアの見通しを危うくすることがある。
教育水準が高く社会経済的地位(SES)が高い人ほどアルコールを飲む可能性が高いが、大量飲
酒は社会層の両極端に集中している。低学歴で SES の低い男性とより教育が高く SES の高い女性が、
危険な飲酒をする可能性が高い。大量飲酒は、雇用、生産性と賃金に影響を与える。有害なアルコー
ル使用による生産性の損失は、ほとんどの国で GDP の 1%ほどと推定される。
Policy Brief - Tackling Harmful Alcohol Use © OECD May 2015
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表3.成人のアルコール消費量の変化、1992-2012年(または直近年)
Russian Federation
Estonia
India
China
Israel
Brazil
Norway
Iceland
Poland
Sweden
Finland
United Kingdom
Ireland
Canada
Australia
Chile
Indonesia
Turkey
Korea
United States
OECD (34)
Czech Republic
New Zealand
Mexico
Netherlands
Denmark
Hungary
South Africa
Austria
Belgium
Japan
Switzerland
Spain
Slovak Republic
Luxembourg
Germany
Portugal
Greece
Slovenia
France
Italy
-60
-40
-20
0
20
40
60
80
%
注釈:イスラエルの統計データは、イスラエル当局の責任の下で当局により供給されている。OECD でのデータ使
用は国際法の条項の下でゴラン高原、東エルサレムとヨルダン川西岸にあるイスラエルの入植地の状況に既得権
を侵すことはない。
出典:OECD
Health Statistics 2014
表4.飲酒経験のある15歳の割合の変化、2002-2010年
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
出典:Health Behaviours in School-aged Children survey, 2001-02 and 2009-10
政府が干渉するための強い論理的根拠
アルコールは、200 以上の病気や傷病の種類に影響を与える。ほとんどの場合に影響は有害で、
幾つかのケースでは有益である。少数だが、主に高齢男性で少量の飲酒をする人では、健康上の利益
はより大きい。全人口レベルでは、世界中全ての国で健康への悪影響が圧倒的に多い。
アルコールは中毒になることもあり、依存するようになった人はアルコールが関連した疾病負担
の大部分を負担する。その他の人にとって、飲酒と有害な飲酒は、個人の選択の結果だが、重要な社
会的影響がある。
交通事故や暴力の被害者や胎児性アルコール・スペクトラム障害を持って生まれた子供を含む飲
酒者自身以外の他人への危害は、社会的影響の中で最も目に見える側面である。医療費、犯罪のコス
トおよび生産性の損失は、さらに重要な側面である。これらは、政府が有害なアルコール使用に対し
て処置を講じるための強力な論理的根拠となる。
政府のための幅広い政策の選択肢
アルコールの有害な使用に対処するためには幅広い政策があり、一部は大量飲酒者対象で、他は
より広範囲にわたる。どのような状況においても最適な手段の組み合わせを選択することは政策の判
断が必要になり、それぞれの国での社会、文化、疫学的特性を鑑みて、各国政府が判断するのが最も
適している。2010 年に世界保健総会で承認されたアルコールの有害な使用を減少させるための WHO グ
ローバル戦略は、国際的合意に基づいた政策選択肢を提供し、OECD が経済分析で評価する政策を特定
する出発点となった。
Policy Brief - Tackling Harmful Alcohol Use © OECD May 2015
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シミュレーションモデルに基づいた OECD の分析は、幾つかのアルコール政策は 3 カ国で習慣的
または一時的な大量飲酒とアルコール依存を 5 から 10%減少させる可能性があることを示している。
非伝染性疾病のグローバル・モニタリング・フレームワークの一部として世界保健総会で 2013 年に
採択された 2025 年までに 10%の有害なアルコール使用を削減する自主目標をこれらの国で達成する
には長い道のりがあるだろう。OECD の分析は異なる政策アプローチの長所を組み合わせ、幅広い予防
戦略を設計し実行するための政府の能力が、成功に絶対不可欠であることを示した。ビジネスの利害
関係者が促進する取り組みもあるかもしれないが、それらの措置に関する影響のエビデンスがもっと
必要である。
アルコール政策は最初に大量飲酒者に的を絞る必要があるが、これを効果的に行うためのアプロ
ーチが幾つかある。カナダ、チェコ共和国、ドイツに焦点を当てた OECD の経済分析は、飲酒運転を
罰する現存する規則の警察の取締りが交通事故死傷者の減少のための鍵ではあるが、プライマリ・ケ
ア医も大量飲酒に対処する上で重要な役割が果たせることも示している。しかし、より広範な政策ア
プローチは、単に大量飲酒をする人に絞った政策を補完するために必要になるかもしれない。アルコ
ール価格の引き上げは、国民の健康を向上させることができ、市場で安価な商品で行なうとより効果
的に有害な飲酒に対処する。アルコール飲料の販売促進を規制することは付加的な利益をもたらすか
もしれない。
表5.有害なアルコール使用に対処する総合的政策*による病気と傷病の減少の推計、年間平均
一年間で防げる件数(千件)
カナダ
チェコ共和国
-0.4
-1.5
-13.3
ドイツ
-4.3
-25.6
-37.4
-85.6
-109.7
-138.1
癌と肝硬変
アルコール使用関連の疾患とてんかん
傷害
*この総合的政策はアルコール飲料の価格を10%引き上げることになる増税、販売店舗の営業時間の規制とアルコールのマ
ーケティングと広告の規制を含む。
出典:CDP-アルコール・モデルに基づいた OECD 分析
財政処置と規制の総合的政策は医療分野の介入の一つであるが、規制と医療を兼ね備えた政策は、
カナダで約 37,000 年(おおよそ千人に1人)、チェコ共和国で 23〜29,000 年(おおよそ千人に 2.6
人)、およびドイツでは 119〜137,000 年(おおよそ千人に 1.6 人)の良好な健康状態の生存年数を
それぞれ毎年増加するだろう。これは、有害なアルコール使用に関連した全ての疾病の負担の約 10%
である。幾つかの例を挙げると、医療と規制措置を組み合わせることで、毎年カナダで傷病が約
80,000 以上少なくなり、チェコ共和国でアルコールに起因する精神的健康問題の件数がほぼ 40,000
少なくなり、ドイツで癌の件数が 4,300 少なくなるだろう(表 5)。この政策パッケージを実施する
と、3 カ国で一人当たり 5 から 9 米ドルのコストがかかるが、医療支出の重要な節約を生み出す可能
性がある(表 6)。表 7 に示すように、同様の総合的政策は、国際的に認められた公衆衛生や医療の
基準で費用対効果が大変高い。
表6.
有害なアルコール使用に対処する総合的政策*の医療費と実施コストへの影響、年間平均
*この総合的政策はアルコール飲料の価格を10%引き上げることになる増税、販売店舗の営業時間の規制とアルコールのマ
ーケティングと広告の規制を含む。
出典:CDP-アルコール・モデルに基づいた OECD 分析
表7.有害なアルコール使用に対処する総合的政策の費用対効果
*この総合的政策はアルコール飲料の価格を10%引き上げることになる増税、販売店舗の営業時間の規制とアルコールのマ
ーケティングと広告の規制を含む。
注釈:DALY は障害調整生存年数。50,000 米ドル/DALY の基準は費用対効果のある医療プログラムで あると見なす国際的に認
められたもの。
出典:CDP-アルコール・モデルに基づいた OECD 分析
OECD 諸国で実施されている主な政策
OECD 諸国の政府は、有害なアルコール使用に対処する幅広い政策を取ってきている。実際ほと
んどの国でアルコール飲料を課税している。北欧の国々やオーストラリアと英国ではアルコール税が
最も高く、南欧と中欧の国々では課税が低い。アルコール販売の規制や運転手の血中アルコール濃度
(BAC)の制限は例外なく実施しているが、国により大きなばらつきがある。アルコール購入の年齢
制限はしばしば商品により異なる(アルコール濃度の低い商品では若くて 16 歳の人に販売が可能な
Policy Brief - Tackling Harmful Alcohol Use © OECD May 2015
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こともある)。ヨーロッパ諸国では年齢制限が低い傾向(一般的に 16 から 18 歳)だが、幾つかの北
欧の国々では特定の飲料に対して例外がある。米国、日本、韓国とインドネシアでも、より高い年齢
制限(21 歳まで)が適用されている。逆に、その他の販売制限(例えば、時間や場所に関する)は、
より場当たり的である。例えば、OECD 諸国の半分ほどしかガソリンスタンドでのアルコール販売の制
限を行なっていない。圧倒的多数の国で BAC レベルが 0.05 かそれ以下であるが、多くの場合、運転
を職業とする人や若者にはより低い制限を設定している。中欧と北欧の国々では一般的に BAC レベル
が最も低い。多数の国でアルコール商品の広告制限があるが、その他の販売促進の手法(例えば、ス
ポンサーになることや商品配置)はほとんど制限されていない。国は有害な飲酒に対処する医療での
取組みの向上に最善の努力を行なっているが、大抵は医療介入により利益を得る人のうち少数しか
(OECD 内で大体 10%ほど)治療を受けていない。
主な結果
Source: OECD analysis based on CDP-Alcohol model.
•
OECD 諸国の(記録された)平均年間消費量は一人当たり純アルコールで 9.1 リットル、ワインで 100 本以上
または平均度数のビールで 200 リットル以上と同等である。記録されていない消費の推定値を追加すると合
計で 10.3 リットルとなり、世界平均の 6.2 リットルを大きく上回る。
•
•
13 の分析した全ての国では、アルコールの大部分は最も多く飲酒する 20%の人口が飲んでいる。しかし、約
5 人に 4 人の飲酒者は 1 週間に 1 単位アルコール摂取を控えることにより、死亡のリスクを減少させるだろ
う。アルコールの有害な消費は世界中の死亡および障害の第五番目に主要な原因である。
OECD 諸国では、消費量は過去 20 年間で若干減少したが、習慣的または一時的な大量飲酒は、多くの国で若
者と特に女性の間で増加した。2010 年には、男子の 43%と女子の 41%が酩酊を経験しており、2002 年のそ
れぞれ 30%と 26%から増加した。
•
アルコール政策は、最初に大量飲酒者に的を絞る必要があるが、これらのアプローチは少なく、比較的高価
である。プライマリ・ケア医は、大量飲酒に対処する上で重要であり、警察の取締りは、飲酒運転による交
通事故死傷者の減少の鍵である(例えば、交通事故による傷害は毎年ドイツで 54,000 件、カナダで 41,000
件防ぐことができる)。
•
より広範な政策アプローチは、単に大量飲酒者を対象としたものを補完するために必要になることがある。
価格の引き上げは国民の健康を向上することができ、安価なアルコールでは有害な飲酒をより良く標的とす
る可能性がある。アルコール飲料の販売促進の規制は付加的な利益をもたらすかもしれない。
•
財政処置と規制の総合的政策は医療分野の介入の一つであるが、医療と規制を兼ね合わせた戦略は、カナダ
で約 37,000 年、チェコ共和国で 23〜29,000 年、およびドイツでは 119〜137,000 年の良好な健康状態の生存
Contacts
Useful links
年数をそれぞれ毎年増加するだろう。これは、有害なアルコール使用に関連した全ての疾病の負担の約
10%
である。
•
Media Relations
Read the report online, access the press release, country
Spencer Wilson – Media Relations Officer
notes, data viz and a video at:
多くのアルコール政策は、医療費の減少により簡単に元が取れるが、分析した
3 カ国では、最も高価なアル
+33-1-4524 8118
http://www.oecd.org/health/health-systems/tackling spencer.wi[email protected]
harmful-alcohol-use-9789264181069-en.htm
コール政策でさえ医療において非常に有利な費用対効果の分析結果であった。
OECD Health Division
Franco Sassi – Senior Health Economist
+33-1-4524 9239
[email protected]
Marion Devaux – Health Policy Analyst
+33-1-4524 8261
[email protected]
Michele Cecchini – Health Policy Analyst
+33-1-4524 7857
[email protected]
Annalisa Belloni – Health Policy Analyst
+33-1-4524 1354
[email protected]
Read the report online, access the press release, country
notes, data viz and a video at:
http://www.oecd.org/health/health-systems/tacklingharmful-alcohol-use-9789264181069-en.htm
OECD Economics of Prevention project:
http://www.oecd.org/health/economics-of-prevention.htm
OECD Health: www.oecd.org/health