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NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITE
Title
鶴洋丸推進装置の総合運転特性について
Author(s)
西矢, 豊就; 小妻, 勝; 阿部, 茂夫; 荒木, 猛; 古堅, 安孝; 今田, 忠志
Citation
長崎大学水産学部研究報告, v.68, pp.71-80; 1990
Issue Date
1990-10
URL
http://hdl.handle.net/10069/29913
Right
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長崎 大 学 水 産 学部 研 究 報 告
71
第68号(1990)
鶴洋丸推進装置 の総合運転特性 について
西矢
豊 就,小
妻
勝,阿
部
茂夫
荒木
猛,古
堅
安 孝,今
田
忠志
Studies on the Operational
Performance
of Propulsive
Plant
in T/V Kakuyo-Maru
Toyonari
Takeshi
NISHIYA,
ARAKI,
Masaru
Yasutaka
KOZUMA,
FURUKATA
Shigeo
and
ABE
Tadashi
IMADA
Propulsive plant of vessel with controllable pitch propeller (CPP) has generally many
complex variables, which connect each other.
Of them, tow factors of vessel, angular
pitch of propeller blades (Op)and propeller revolution (Np), response against hull resistance of water of the vessel in accordance with weather and sea conditions, resulting in
changes of operating horse power of main engine (Ne) and ship speed (V). This paper
deals with the analyses of variations
of the Ne, V, O and Np, based on the service
performance of Engine Log-Books of T/V Kakuyo-Maru, Faculty of Fisheries, Nagasaki
University, from 1984 to 1989. It is recognized that CPP of our vessel could maintain in
the most suitable condition in running characteristics
of the main engine and propelling
performance, and minimize the consumption of fuel oil of propulsive plant, under the
condition that Opand Ne should be selected in optimum operation modes corresponding
to the weather and sea conditions.
Key words : 機関軸馬力 shaft
horse
燃料消費率 specific
power
of marine
engine
プ ロペ ラ ス リップ率 propeller
;
; 船体速力 ship speed ;
fuel oil consumption
slip
船 舶 の推進 装置 の機 関特 性 お よび推進 性能 は,そ
の運 転 条件 に左右 されて変 化 す る。 そ こで船 舶 の安
言 わ れ る 。イ)
本 船 は1975年 に建 造 さ れ,毎
年4月
と9月
に入渠
全 運航 と運航 能 率 の向上 の ため に は,こ れ ら特性 お
し,船 底 お よ び プ ロペ ラ の 清 掃 と再 塗 装 を 実 施 し て
よび性能 に関与 す る,運 転 諸元 の相 互 間 の相 関 関係
い る 。 ま た,主
機 関 は2年
を把握 す る こ とが必 要で あ る。
一般 に船 舶 は,そ の船底 の汚損 や外板 表 面 の経年
カ バ を 開 放,ピ
ス ト ン を 抜 き出 して 必 要 な保 守 整 備
劣化 に伴 い,摩 擦 抵抗,す なわ ち,船 体 抵 抗が増 加
値 は,当
す る。 この船体 抵抗 の増加 に よる有効 馬力 増加 率 は,
それ ぞれ 変化 してい る。
船 体 が清浄 な場 合 に比 較 す る と,20∼30%に
も達 す
毎 の4月
シ リンダ
を行 っ て い る 。 しか し な が ら,主 機 関 の 運 転 諸 元 の
一方
初 の そ れ ら と比 較 す る と,経 年 劣 化 と共 に,
,練 習 船 の 性 格 は 非 常 に特 殊 で,立
る こ とが あ る。ケ)それ につれ て,主 機 関 の 出力率 は増
年 間 の 運 航 計 画 に 基 づ き,決
加 し,一 般 にシー マー ジ ンは年2∼3%増
定 の 航 海 日数 で 消 化 し,そ
加すると
に,各
案 され た
め ら れ た航 行 区 域 を予
の 間 に所 期 の 実 習 目 的 を
72
西矢,小妻,阿部,荒木,古堅,今田:鶴洋丸推進装置の総合運転特性について
遂行しなければならない。すなわち,船舶の運航経
あるいは研究資料採集等のため,主機関の運転諸元
済性よりも,実習の安全性と確実性が強く要求され
を一定にして長時間航走する日数は少ない。すなわ
る。したがって,機関特性および推進性能は,一般
ち,1984年から,1989年までの約6年間に亘るエン
の商用船舶のそれらと比較すると,かなり異なった
ジンログブックの記録から計算した値の内,航海中
性質を帯びると言える。しかしながら,船舶の運航
の一日の代表値とみなせる資料は,年間約50点位で
費の内,燃料費が占める割合は非常に大きいので,
ある。したがって,主機関の一日の稼働時間が24時
推進装置は省エネルギー的に取扱われる必要がある。
間未満の短時間と言えども,船体および主機関が安
一般に可変ピッチプロペラ船の場合,主機関の燃
定した運転状態にあり,運転諸元に殆ど変化がみら
料消費量を最小にするためには,任意の船体速力に
れない場合は,一日の代表値として,本報告の資料
対して,最適なプロペラのピッチ角度および回転数
とした。
の組合わせが存在する。すなわち,推進装置のオペ
また,各航海は通常約12.5ktの船体速力で計画す
レーションモードの適不適は,主機関の燃料消費量
るので,それに対応したプロペラピッチ角度も,あ
の大小に,非常に大きな影響を与えると言える。
る決まった範囲になる。すなわち,本報告の全資料
船舶の機関撮要日誌(エンジンログブック)は,
の内,プロペラピッチ角度が14.5.以上のものは,約
推進装置運転諸元の値を,4時間単位で計測,計算
86%になる。そこで,本報告では,図表化あるいは
し記録したものである。したがって,多変数推進装
数式化する場合,資料を14.5.∼15.50,15.6.∼16.5.
置の就航時系列性能を適確に把握するための,最も
および16.6∼17.5.の3グループに分類し,それぞ
有効な情報源と言える。そこで,エンジンログブッ
れ,プロペラピッチ角度15.,16.および17.と呼称し
クの運航実績記録に基づき,推進装置のオペレー
た。
ションモードが,主機関特性および推進性能におよ
本報告は推進装置運転諸元の値のうち,下記(1)
ぼす影響について,解析する試みが数多く行われて
∼⑩の項目についてエンジンログブックを基に,そ
いる。
れぞれ単位当たりの換算と平均値化とをしたものを
前報3”一4)は,気象,海象等が静穏で,本船の航走が
資料とした。
安定した状態において,プロペラピッチ角度を120
(1)プロペラピッチ角度θ,(.)(以下θpと省略)
∼17.の範囲に設定し,本船推進装置の機関特性およ
翼角制御ハンドルの指示値によった。
び推進性能が,いかに経年変化したかについて,海
(2)プロペラ回転数Np(rpm)(以下Npと省略)
上公式試運転の結果を参考に調査したものである。
推進装置軸系の中間軸に装備した近接スイッチに
本船の通常の航海では,気象,海象等の変化に対
よる電気式無接触回転計の指示値によった。
応したオペレーションモードとし,推進装置運転諸
(3)過給機回転数:h(rprn)(以下hと省略)
元の値を調整する。したがって,運転状況を示す諸
排気タービンプロワ側に装備したHSEC型高速
元の値は気象,海象等の影響を,直接,間接に受け
電子式回転計の指示値によった。
たもので,それらのばらつきは大きい。
(4)船体速力V(kt)(以下Vと省略)
そこで本報告では,本船のエンジンログブックか
積算型電磁ログの指示値にようた。
ら得られた,通常の航海状態における運航実績の資
(5)燃料消費量G(㎏/h)(以下Gと省略)
料に基づき,気象,海象等の外的要因の変動が,推
主機関の燃料油配管装置に装備したRO型容積式
進装置運転諸元に与える影響を前報3)と域正し,そ
ルーツ流量計の積算値に基づき,比重および温度に
れらの相互関係を整理,解析した。その結果を報告
よる補正をした換算値によった。
する。
(6)燃料消費率be(g/PS・h)(以下beと省略)
燃料消費量とその時の軸馬力とに基づいた換算値
1.資
料
によった。
(7)軸馬力Ne(PS)(以下Neと省略)
本報告に用いた長崎大学水産学部練習船鶴洋丸の
比重および温度の補正をした燃料消費量に基づく
主たる諸元は前出3)に報告した。
換算値によった。
本船の年間航海日数は約160日になる。しかしなが
(8)排気ガス温度Te(℃)(以下Teと省略)
ら,練習船の性格上,航海,漁労の実習,海洋観測,
主機関の各シリンダ出口管に装備したCA型熱電
73
長崎大学水産学部研究報告 第68号(1990)
対温度計の指示値によった。
るトルク比Rτ(以下Rτと省略)について調べた。
(9)見掛けのスリップ率S(%)(以下Sと省略)
Rτはディーゼル機関の場合次式で示される。
船体速力,プロペラ回転数およびその時のプロペ
Rr = (Ne / Np3) / (Ne. / Npg) ・・””””””’”’ (1)
ラピッチから換算した値によった。
Ne。:定格軸馬力 (2800PS), ,
(1① 排水量△(ton)(以下△と省略)
Np。:定格プロペラ回転数 (265rpm)
燃料,清水,その他の重量物の船内保有量に基づ
式(1)によるRτの経年変化を,横軸に主機関の運
き,吃水およびトリムを計算し,排水量曲線表から
転日数をとりFig.1に示した。 Rτの変動は小さい。
求めた換算値によった。
また,入渠の前後における顕著な変化は認められな
い。Rτの最大値は,0。9365と大きくなる場合もある
2.結果および考察
が,平均値は0.5938である。したがって,プロペラ
θpが15.,16.および17.の範囲にある場合の運転諸
元,Np, G, Te, h, Ne, be, VおよびSの相互
Table 1. Results of official sea trial in 1975
間の関係をFig.1∼9にそれぞれ示した。 Fig.2,5,
Conditions throughout the measure−
ments were:
7の破線は前報3)の値によるものである。Fig.4の破
線は本船の海上公式試運転(Table 1)の値を示す。
また,Fig.8の破線は本報告の範囲における推定の
1) displacement of Kakuyo−Matu, 1350.00
tons;
2) smooth sea with starboardbow waves’
and light air (2m/sec)
洗
等速力線を示す。運転諸元のうち,Np, G, Neお
18.5。
よびVの資料の変動の範囲とそれらの平均値とを
P
Table 2に示した。
2097
Np
2.1軸馬力
h×102
本船のオペレーションモードにしたがってθpは
211
168
56.0
90.0
242
265
120.0
135.0
Te
Ne
240
320
370
410
600
1300
1870
2640
の変動は少ない。θ,が160および170にある場合,両者
G
101.1
のNeの差は,非常に小さい。θpを150に設定した運
V
転は,運航計画上よぎなく減速する場合と,気象,
Propeller pitch angle (deg.)
海象環境が著しく悪化した場合とである。この場合
P : Propeller pitch (mm)
変化するが,Table 2に示した通り,それに伴うNe
10.72
183.0
275.0
13.26
14.92
379.3
15.52
Np : Revolution of propeller (rpm)
のNeはθ,が17.のそれに対して,約20%減少する。
h ×102: Revolution of turbo charger (rpm)
本船就航以来の主機関運転諸元の経時変化につい
Te :Exhaust gas temperature of main
ては,既に報告した。5)すなわち,通常の航海状態な
engine (OC)
Ne :Shaft horse power (PS)
ら主機i関の平均負荷率は,60∼70%であった。
G : Fuel oil consumption (kg/h)
そこで本報告においては主機関の定格状態に対す
Table 2.
V :Ship speed (kt)
Range and mean of sampling data of Engine Log−Book from 1984 to 1989
佐
15。
Np
Ne
G
D温e
佐
NNGV
V
16。
17。
Range
Mean
Range
Mean
Range
Mean
240.0∼259.7
250.6
230.0∼260.0
254.4
242。5∼264.0
255.4
1020∼1951
1311
1143∼2002
1617
1212∼2035
1630
180.8∼327.0
227.9
200,5∼330.9
276.3
211.7∼340.0
278.4
9。23∼13.00
11.94
9.91∼14.51
12.93
11.18∼15.23
13.07
: Propeller pitch angle (deg.)
: Revolution of propeller (rpm)
Shaft horse power (PS)
: Fuel oil consumption (kg/h)
: Ship speed (kt)
74
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西矢,小妻,阿部,荒木,古堅,今田:鶴洋丸推進装置の総合運転特性について
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369 12 36 ’9 12 369 12 3 69 12 3 69 12 3 69
MoI邑ヒh
1984 1985 1986 1987 一 1988 1989
Year
Fig. 1. Fluctuations of torque ratio (Rr %) and running hours of main engine from 1984 to 1989.
がかなり軽い状態にあり,主機関は安全範囲で運転
2000
Ne(PS)
NeとNpとの関係は,既に述べたようにNeα:
Np3である。『6)
/
本報告の範囲で各θpにおける,NeとNpとの問
/
1500
た場合,それに対応して,主機関を低負荷運転する
@[email protected],θpが160の場合の実線のNeは,17.の場合の
それより大きくなっている。これは気象,海象環境
が悪化すると,θpを170から160に減少して航走する
500
@/〃〃/
ことが多いためである。
//γ77ノ
1000
象環境がいつも静穏でなく,こられの環境が悪化し
/
/
@ ながら,150および17.においては,実線のNeが破線
///
/ノ/ ^/P
ノ・.
/
ノ
@[email protected]かし
/7㌃・
る回帰二線でFig.2に示した。θpが16.の場合, Npに
/ク/
横軸にNpをとりNeとの間の関係を,式(2)によ
が,Vをできるだけ一定の速力に維持しようとする
//ト〃房
Op(170) : Ne=2.6354×10−6Np3’65i‘ ・・・… (2−3)
のそれより小さい。これは通常の航海中,気象,海
ノ
Op(160) : Ne=7.4462×IO−6Np3’‘6‘5 ・・・… (2−2)
/
の関係は,近似的に次式のようになる。
Op(150) : Ne=2.3950×10m6Np3・6405 ・・・… (2−1)
P
−7
/一
されていると言える。
ため,気象,海象環境が比較的良好な,前者のNeよ
り必然的に大きくなったものと思われる。
次に式(2)から,各OpにおけるNeとプロペラの回
転比,(Np/Np。)3との関係は,次式のようになる。
0,(15e) : Ne=1631.1(Np/Np,)3−41.9 ・・・・・・… (3−1)
200
1.’75
200
225
250 265
Np(rptu)
Op(160) : Ne=1888.6(Np/Npo)3−38.3 ’’””’” (3−2)
ep(170) : Ne=1907.3(Np/Np,)3−49.6 ・・・・・・… (3−3)
式(3)から,本報告の範囲における主機関の負荷作
Fig.2. Parametric interrelations of propeller
blade in 3−angular pitches between propel−
動線,すなわちNPに対するNeの傾きは,島が15.
ler revolution (Np rpm) and shaft horse
power (Ne PS).
∼17.において,前報3)のそれより小さい。したがっ
Solid lines, data of Engine Log−Books
て,Npが同じなら,回報3)に比較して本報告のNe
ues in 1983. Circle, 170 of propeller blade
は減少する。
(1984−1989); dotted lines, measured val−
pitch;triangle, 16e; square, 150.
75
長崎大学水産学部研究報告 第68号(1990)
一方,同一のNeに対してNpは増加することを
Fig.3によると, V〈12ktの範囲で,同一のVに
示す。すなわち,本報告の場合,前報3>に比較して,
対してθpを小さくする方がNeは小さい。また,12
それだけ推進効率η,。(以下ηp,と省略)は低下して
kt<Vの範囲では,反対にθ,が小さい場合, Neは大
いると言える。
きい。これはθpが小さい場合,ηp。が低下するため,,
一般に,NeとVとの間にはVc(Npの関係があ
同一のVに対してNeが大きくなることによる。
り6),次式が成りたつ。
一報3)で述べたように,航海中のNeの変動をリア
Ne=KV3 ・・・・・・・・・・・・・・・…一・・・・・・・・・・・・・・…t・・・・・… (4)
ルタイムで知ることができれば,推進装置の安全お
V=船体速急…・…・…………・…… (m/sec)
よび省燃費運転に対して,非常に効果的である。Ne
K:比例常数
とhおよびTeとの問の相関については既に述べ
式(4)のKは船舶が船体抵抗に抗してVで航走する
た。6)そこで,hおよびTeからNeを簡易的に推定
場合,抵抗の大きさを示すパラメータで,船体の浸
した。
水面積S。およびηp。によって変化する。前者は船体
本報告の範囲のNeとhとの間の関係は,近似的
の吃水,すなわち排水量△が変動すると,それにし
に次式のようになる。
たがって変化する。
Ne=2.9562×10一‘hi・658i ・・・・・・・・・・・・・・・・・・… (6)
本報告の範囲で,△のばらつきは1440∼1720ton,
(r =O.9738)
また,その平均値は約1610tonである。したがって,
Neとhとの間の関係を,横軸にhをとり式(6)に
△の変動は小さく,それに伴うS。の変化も小さい。
これがNeの変動に与える影響は軽微と言える。
各θpにおけるNeとVとの間の近似式は次のよう
になる。
0,(150) : Ne=O.1233V3・7007 ・・・・・・・・・・・・・・・… (5−1)
2000
Ne(PS>
Op(160) : N e=O.3434V3’28‘2 ・・・・・・・・・・・・・・・… (5−2)
e,(170) : Ne==O.4015V3・2238 ・・・・・・・・・・・・・・・… (5−3)
本報告の範囲で,NeとVとの間の関係を,横軸に
vをとり式(5)による回帰式線でFig.3に示した。
一般に船舶の推進性能は船体およびプロペラの汚
1500
損と共に低下する。また,気象,海象環境が悪化す
ると,その低下は一層激しくなる。その結果,主機
関のNeを一定にした,定出力運転をするとVは低
下する。一方,Vを一定に維持する,すなわち定速
力運転をすれば,Neは増加する。
θ,が15.∼17.にあるいずれの場合も,前回3)の結果
1000
と比較すると,Vに対するNe、は,それぞれ増加して
いる。すなわち,Vが本船の通常航海速力,12.5kt
にある場合,Neはθpが15。,16。および170で,それぞ
れ5.8,5.0および6.9%増加する。これは,前回3)に
比較し本報告の場合は,船体およびプロペラの汚損
500
と風波:との影響に起因したシーマージンが増加した
ためと言える。一般に前者の影響によるシーマージ
ンの増加は,年10∼20%2)になる。しかしながら,前
述したように,本船は年間2回船体およびプロペラ
200
9
本報告のシーマージンの増加は後者によるものと言
える。
15
V〈kt>
の清掃と再塗装を実施しているので,汚損影響によ
るシーマージンの増加は比較的少ない。したがって,
13
11
Fig. 3.
Parametric interrelations of propeller
blade in 3−angular pitches between ship
speed (V kt) and shaft horse power (Ne
PS). Simboles are the same in Fig. 2.
76
西矢,小妻,阿部,荒木,古堅,今田:鶴洋丸推進装置の総合運転特性について
よる回帰画線でFig.4に示した。同一のNeに対し,
するNeの応答は,非常に敏感と言える。
式(6)によるhは破線のそれより若干高くなる。主機
2.2燃料消費量および燃料消費率
関は経年劣化し機関性能が低下する。その結果,Ne
Table 2に示した通り,Opに対するGの変動はNe
に対応するGが増加し,Teが高くなるためhは高
のそれに追従した傾向を示す。
くなる。
一般にGはV,△,船体およびプロペラの汚損,
一方,NeとTeとの間の近似式は次のようにな
風波等の影響を受けて変動する。通常の航海状態で
る。
は,これらのうち,Vと△とが大きく影響する。
Ne==8.6011 Te−1609 ・・・・・・・・・…’””・・・・… (7)
主機関のGとNeとの問の関係は,既に述べたよ
うに理論的にG・cNeとなる。6)したがって,式(4)か
(r =O.9746)
式(6),(7)の相関係数rの値から判断すると,Neの
ら次式の関係が成りたつ。
推定値は,それぞれ実用に十分耐える。
G=KoV3 ’””””’””””””’”””””…””” (9)
本報告の範囲で,Neに関与する運転諸元の多重
V :船体速力 (m/sec)
回帰式をもとめると次式のようになる。
K。 :比例定数
Ne =29.7325 Np十131.4340 Op−1.1353V
ここにK。は式(4)のKと同質のものであるが,△の
r7.9623×103 ””””’””’”””””’” (8)
大きさに左右される比例定数7>である。
(rm.it = O . 7548)
本報告の範囲で,各OpにおけるGとVとの間の関
Neに対するNp,θpおよびVの寄与率は,それぞ
係は,近似的に次式のようになる。
れ(+)77,(+)22および(一)1%となる。(十),(一)
0,(150) : G=15.2281 VLO789 ・・・・・・・・・… (10−1)
は回帰係数の符号を示す。これから,Npの変動に対
0,(160) : G = 6.6641 Vi・4455 ・・・・・・・・・… (10−2)
0,(170) : G= O.3156 V2・63i5 ・・・・・・・・・… (10−3) 一
式(9)によるVのべキ指数は3であるが,式⑩のそ
れはいずれも小さい。これは,主機関のbeの対負荷
.3000
Ne(PS)
変動が,低負荷率の運転範囲で非常に大きく,その
200e
結果,Vのべキ指数が小さくなるためである。8)この
傾向はθpが小さい程急激である。そのため,式⑩に
9
TOOO
おいて,θpが17.∼15.へと小さくなるにつれて,負荷
ノ
’
’
’
ノ∠
●
率が低下し,Vのべキ指数は小さくなっている。
本報告におけるGとVとの間の関係を,横軸にV
500
をとって式(1①による回帰二線でFig.5に示した。 G
は気象,海象環境に左右され,Neに連動した変動を
する。θpが15.∼17.において,V〈13.5ktでは実線が
破線より大きい。したがって,この範囲における気
象,海象環境は,前報3)のそれに比較して悪化してい
100
たと言える。
一方,13.5kt<Vでは,実線が破線より小さくな
る。
2.1で述べたように,同一のVに対してθpが小
さいと,プロペラのピッチレシオが小さくなり,プ
ロペラ効率η。は低下する。その結果,ηpcも低下す
20
O.5
5
1
10
20
hxlO3(rpm)
る。本報告の場合,気象,海象環境は前之3)のそれに
比較して悪く,あを小さくして航走することが多い。
Fig. 4. lnterrelation between turbo charger revo−
したがって,それにつれてGは増加している。また,
lution (h rpm) and shaft horse power (Ne
12kt<Vの範囲でθpの小さい方がGは減少する傾
PS). Solid lines, data of Engine Log−
Books (1984−1989);dotted lines, mea−
sured Values of official sea trial in 1975.
向にある。
オペレーションモードがGの変動におよぼす影響
77
長崎大学水産学部研究報告 第68号(1990)
は,非常に複雑なため,まだ不明な点が多く存在す
本報告の範囲で,Neに対するGおよびbeとの間
る。今後更に詳細な研究が必要である。
の関係を,横軸にNeをとって,式(11)および(12)による
本報告の範囲で,各thにおけるGとNeとの間の
回帰式線で,それぞれFig.6に示した。
近似式を求めた。
Fig.6によると, Neが大きくなるにつれて, Gは
Op(150) : G=O.5597 NeO−8372 ・・・・・・・・・・・・… (11−1)
増加し,また,同一のNeに対し,θpを大きくすれば
Op(160) : G =O.5487 NeO’842’ ・・・・・・・・・・・・… (11−2)
Gは増加する。θpに対するGは,Ne<1710PSでは,
o,(17e) : G==O.6291 NeO・8238 ・・・・・・・・・・・・… (11−3)
16.の方が17。のそれより小さい。1710PS<Neでは,
式(11)から,θpがいずれにあっても,Neの変化に対
反対に16.の場合のGが大きくなる傾向にある。これ
して,Gはほぼ同一傾向の応答をしながら増減する
は2.1で述べたように,航海中の気象,海象環境の
と言える。
悪化に対し,θpを170から16.に小さくして航走する
また,Neとbeとの間の関係は,近似的に次式の
が,Vは一定に維持しようとするオペレーション
モードを選択する傾向があるためである。
ようになる。
Op(150) : be=5.8515×102NeffO”69’ ・・・… (12−1)
前報3∼4)で述べたように,設定したVに対し,θ,を
Op(16e) :be=5.4751×102Ne−O”576 ・・・… (12−2)
大きくして運転をする場合のbeは,θpが小さい場合
Op(17e) :be=6.2973×102Ne−O・i763 ・・…t (12−3)
のそれよりも小さくなる。Fig.6のbe−Neマップに
ノ4
ノ∠.
450
G〈kg/h)
350
200
be(g/PSIh)
175
15C
350
9
ク
50
300
ノク
150
7
/
250
G(kg/h)
250
200
’ft 一1
13
1一 50
i’s 1’6
V(kt)
1000
1Jr o o
2000
Ne(PS>
Fig.5. Parametric interrelations of propeller
blade in 3−angular pitches between ship
speed (V kt) and fuel oil consuniption (G
kg/h). Solid lines, data of Engine Log−
Books (1984−1989);dotted lines, mea−
sured values in 1983. Simboles are the
same in Fig. 2.
Fig.6. Parametric interrelations of propeller
blade in 3−angular pitches between sbaft
horse power (Ne PS) and fuel oil con−
sumption (G kg/h) or specific fuel oil
consumption (be g/PS/h)., Simboles are
the same in Fig. 2.
78
西矢,小妻,阿部,荒木,古堅,今田:鶴洋丸推進装置の総合運転特性について
よると,θpが17.および16.の場合,両者のbeの差は
0,(170) :V==1.61×10−2Np十8.9169 … (14−3)
平均0.8175g/PS・hと非常に小さく,互いに接近す
VとNpとの問の関係を,横軸にNpをとり式(14)
る。一方,θpが17.および15.の場合,両者のbeの差
による回帰式線でFig.7に示した。
は平均3.5901g/PS・hと大幅に増加する。すなわ
Fig.7によるとθ,が15.の場合,実線のvは破線の
ち,17.に対し15.の場合,beは約1/4.4に減少する。
それに比較して,平均0.54kt低下する。θpが16.の場
ディーゼル機関の正味熱効率は,beの逆数に比例
合,実線と破線はほぼ一致する。また,θpが17.の場
する。本報告の範囲で,主機関の総合的な性能はOp
合,実線は破線より小さい。これは前歯3>に比較して
が160および170に対し,15。の方が良好と言える。しか
気象,海象環境が悪く,その結果Vが小さくなった
しながら,θpが15.の場合と,16.および170の場合とで
ためである。θpが15.∼16.に比較し17.の場合,Npに
は,気象,海象,船体状態等が相違し,このことが
対するVの傾きは小さい。すなわち,Npの変化によ
beに大きく関与したためと思われる。
るVの変動は小さく,安定した航走であったことを
前述したように,1710PS〈Neの範囲でθpが16.の
示している。
場合のGは,17.の場合のそれより大きい。それに伴
また,式(14によると,本船の通常航海速力,12.5
い同一のNeに対して, beは17.の場合より16.の方
が大きくなる傾向にある。したがって,be値を最少
にするには,任意のVにたいして,最適なθpおよび
14
V(kt)
Npの組合わせが存在する。
’
1
ノ
そこで,本報告の範囲のbe値を考察するため,こ
れと特に関係の深い推進装置運転諸元との問の多重
/
回帰式を求めた。式(4)からVは3乗として計算した。
/ x
Z /
I L
be= O.OOIIV3−O.0088Ne−O.0183Np
z
13
z
z /Z
−O.57310,十〇.116S十1.953×102 ・・・・・・・・・… (13)
z/Z
// 1 !薗
(rm.it=O.9559)
1’ .7 !
/ /7 /
式(13)によると,beに対するV, Ne, Np,θpおよ
ノ 1
// /1/
びSの寄与率は,それぞれ(+)7,(一)43,(一)15,
(一)30および(+)5%となる。beに対する変動要素
それぞれの寄与率は,前報3)の場合と,ほぼ同一の傾
12
向を示す。Neおよびθp要素のbeにおよぼす影響は
ノ / 1
非常に大きい。また,主機関の負荷率が50%以下の
/ノ 1/ 11
部分負荷では,燃焼状態が悪化し,NeがGの変動に
// 一/ //
追従しなくなり,そのためbeが大きくなると言え
る。そこで,推進装置には任意のVに対し,beを最
/ / /
// ./Y //
ノ! 1!
11
少にするようなオペレーションモードの選択機能が
// !/
要求される所以である。
1/
2.3船体速力
/
1
Table 2に示す通り,本報告の範囲で,θ,が160およ
@/!
び17.の場合,Vの平均値は,ほぼ一致する。その理
由は既に述べた。また,θpが15.の場合のVの平均値
は,17.のそれに対し,約1kt低下する。しかしなが
10!
200
240
220
260
Np(rpm>
ら,θpの変化に伴うVの変動は非常に小さい。
VとNpとの問の関係については,既に述べた。本
Fig.7. Parametric interrelations of propeller
blade in 3−angular pitches between propel−
報告のVとNpとは,各θpにおいて,それらが比例
ler revolution (Np rpm) and ship speed (V
する範囲で,次のような近似式関係にある。
kt).
o,(lse) :V=4.88×10−2Np−O.2732 … (14−1)
o,(160) :v=4.09×10ff2Np十2.s320 … (14−2)
Solid lines, data of Engine Log−Books
(1984−1989), dotted lines, measured values
in 1983. Simboles are the same in Fig. 2.
79
長崎大学水産学部研究報告 第68号(1990)
ktにおけるNpは, Opが15。∼170において,それぞれ
で,前報3)の結果と非常に良く一致する。
261.8,243.8および223.Orpmになる。したがって,
したがって,Vに対する寄与率の値から推定する
θpを大きくするとNpが小さくなり,その結果,ηp。
と,θp要素の影響の方がNpのそれよりやや大きい。
は高くなると言える。
ゆえに,Vの変化に対しηp,に与える影響は,θpに比
Fig。8はFig.2に示したNe−Npマップの上に,島
較するとNpの方が少ないと言える。
をパラメータとするV−Np特性曲線を重ね合わせ
2.4見掛けのスりップ率
たものである。本報告の範囲で,θ,が17.のNe−Np特
船舶のSは次式9)で示される。
性曲線は,θpが15.∼16.の範囲に含まれるので,Fig.
S= {1一(30.87V)/(PeNp)}×100 ・・・… (16)
8の等速力線のVはθpが15.および160について,式⑭
P:プロペラピッチ (m)
から計算した。前報3)に比較すと,破線Vの傾斜が大
式㈹で,Pはθpの大きさで決まる値である。θpが
きく,そのため同一のVに対してNeは増加すると
同一で,VがNpに比例する範囲なら, Sはほぼ一定
冨える。
になる。しかしながら,前報3)で述べたように,Np
Vと密接な関係にあるNp, Sおよびθpとの総合
の増加に対しVが追従しない高速域では,船体の造
的な相関を考察するため,本報告の範囲についての
波抵抗が急増するため,プロペラスピードに対し,
多重回帰式を求めた。
実際のVは減少する。その結果Sが大きくなる。す
V =: O . 8469 0, 一〇 . 1532S 十〇 . 0506Np一 11 . 5595
なわち,推進性能は低下する。
........・・・・・・・… (15)
本報告の範囲で,Sが増加し20%以上になる場合,
(r..it=O.9991)
また,反対にSが減少し(一)の値になる場合は,全
式(15)によるVは,Npの変化につれて前門3)と同一
資料のうち,それぞれ9.6および4.3%である。すな
傾向で変動する。また,Np,θ,およびSのVに対す
わち,Sの約85%は0∼20%の範囲にある。しかし
る寄与率は,それぞれ(+)45,(+)48および(一)8%
ながら,前報3)におけるSのばらつきは4∼16%で
あった。したがって,本報告の場合,水没船体外板
の表面粗度,あるいは気象,海象等の影響を受け,
2000
Ne(PS)
Sが大きく変動したと言える。
SとNpとの間の関係を,横軸にNpをとり各θp
ヤ
ン
ノ
9/
陽
Z 7
,へ,蔑/
’甥
’
’
1000
@’膨 1
k窪,
へ’
1500
における回帰式線でFig.9に示した。
〆
/
θ,が16.および17.の場合,前報3>の結果とほぼ同一
の傾向を示す。同一のピッチレシオに対し,Npの増
加に従い,前進係数が減少し,Sは大きくなってい
2e
s(%〉
170
ノ
..r一一 一
500
160
.t.5
1sO
0
175
200
225
250 265
Np(rpm)
10
Fig.8. Parametric interrelations of propeller
230
240
250
260 265
Np(叩rn)
blade in 3−angular pitches between propel−
Ier revolution (Np rpm) and shaft horse
power (Ne PS).
Fig.9. Parametric interrelations of propeller
Simboles are the same in Fig.2. Dotted
lines across them show isograde lines on
various ship speeds.
blade in 3−angular pitches between propel−
ler revolution (Np rpm) and propeller slip
(so/.).
80
西矢,小妻,阿部,荒木,古堅,今田:鶴洋丸推進装置の総合運転特性について
く。すなわち,Npの増加につれてSは大きくなる。
すると言える。 ・
本報告のNpの範囲で,θ,が15.の場合, Sの変動率
3.VへのNp,θ,およびSの寄与率は,それぞれ
は非常に小さく,約12.3%となる。また,θpが15.,
(+)45,(+)48および(一)8%であった。すなわ
160および17.の場合,それぞれの平均回転数におけ
ち,Npおよびe.の変化がVに与える影響は,ほぼ
るSは,Fig.9から12。3,14.5および17.2%になる。
同じ程度と言える。
対し,16.および17.のそれは,それぞれ17.3および
4.Sのばらつきは,その約85%が0∼20%の範囲
に存在しており,OpおよびNpがSにおよぼす影
39.1%だけ大きくなる。θpを大きくするとVが増加
響の大きさは,ほぼ同じ程度であった。また,θ,お
したがって,オペレーションモード,θp=15.のSに
するので,前進係数も大きくなるが,ピッチレシオ
よびNpが増加すると,それにつれてSは増加す
の増加割合が小さく,そのためSは大きくなる。す
る。
なわち,θpが大きくなるとSは大きくなる。
5.通常航海の計画速力12.5ktに対するθpは,その
本報告の範囲で,Sに関与する運転諸元の多重回
帰式を求めると次式のようになる。
約86%が14.5.以上であった。その範囲の機関性能
および推進性能等の現状は,十分明らかにするこ
S=5.52010,一6.5051V十〇.3291Np−75.2406
とができた。しかしながら,オペレーションモー
....・・・・・・・・・… (17)
ドがGの変動におよぼす影響が,非常に複雑なた
(rmuit = O . 9989)
め,省燃費運転モードについては,今後更に検討
式(17)によると,Sに対するθp, VおよびNpの寄
すべき点もある。
文
与率は,それぞれ(+)35,(一)32および(+)33%と
献
なる。したがって,Sは各要素の影響をそれぞれ等
分に受けて変動する。金子の報告10)によるとSとV
およびNpとの間の相関は低いが,本船の場合のそ
1)沢 隆司(1978):日本舶用機関学会誌,13−9,
れは高い。船舶の種類,運行形態,気象および海象
18.
の環境,船体状態等々の相違によるものと思われる。
2)松井利幸(1984):マリンエンジニア,444,34.
3)西矢豊就・他2名(1984):本誌,56,33−42.
ま と め
4)西矢豊就・他2名(1986):本誌,59,11−22.
5)西矢豊就・他3名(1988):本誌,63,71.
本船推進プラントの時系列記録から,ランダムに
6)日笠純扶・西矢豊就(1974):水産大研報,
抽出した資料に基づく本報告は,要約すると次のよ
23−1, 31−46.
うである。
7)広田 実・永野重隆(1984):日本航海学会論文
1.主機関の任意の運転状態におけるNeは, hおよ
集,70,168.
びTeの計測値を,上述の実験式に代入すると,十
8)広田 実・永野重隆(1984):日本航海学会論文
分な精度で推定することができる。
集,70,178.
2.NeへのNp,θpおよびVの寄与率は,それぞれ
9)関東造機i研究会二二委員会(1968):推進軸素謡
(+)77,(+)22および(一)1%であった。すなわ
準,151,成山堂,東京.
ち,NeはNpの増減に影響を受けて,大きく変動
10)金子仁(1984):マリンエンジニア,444,40.