グローバル サプライ チェーン構築によるトータルコスト削減ソリューション

高付加価値化が求められる製造流通分野におけるソリューション
Vol.87 No.12
891
グローバル サプライ チェーン構築による
トータルコスト削減ソリューション
― 中国における事例とソリューション ―
Total Cost Reduction by Global Supply Chain
■ 石冨 克也 Katsuya Ishitomi
■ 二ノ宮 滋 Shigeru Ninomiya
■ 傳法谷 智 Satoshi Dempôya
■ 洪 肇彦 Hatsuhiko Kô
■ 宮崎 幸夫 Yukio Miyazaki
■ 西山 茂男 Shigeo Nishiyama
企業間ビジネスメディアサービス“TWX−21”
“ Web-EDI Global”
“ e-sourcing/SC”
フォーキャスト
予約注文
在庫実績
納期回答
在庫情報
生産
出荷指示
取引先
生産
VMI倉庫
海外工場
国内工場
輸
入
入
庫
・
検
査
保
管
加
工
・
仕
分
け
出
庫
JIT
納品
ラ
イ
ン
供
給
生
産
輸
出
K/D
移送
輸
出
輸
入
生
産
出
荷
日立物流グローバル物流統合管理
在庫管理・物流ステータス管理
注:略語説明
VMI
(Vendor Managed Inventory),EDI
(Electronic Data Interchange)
,K/D(Knockdown)
グローバル サプライ チェーン構築に重要な役割を果たす物流基盤と情報共有基盤の概要
市場変化に追従するためには,多地域多拠点との迅速かつ柔軟な連携が必要であり,それに対応できる物流基盤,情報共有基盤が必要不可欠である。
わが国の製造業を取り巻く環境が厳しくなる中で,グ
ローバル市場を対象としたサプライチェーン改革に取り
組む企業が増え,その結果,サプライチェーンは多地域
多拠点で複雑に絡み合ったものへと変ぼうしている。
1
盤により,目指すべき高精度・高品質なサプライ チェー
ン マネジメントが可能となる。
これらのニーズに応えるため,日立グループは,物流
基盤構築のために
「日立物流3PLソリューション」
を,情
その変ぼうに対処するためには,各拠点間を物理的
報共有基盤構築のためには,企業間ビジネスメディア
に結ぶ物流基盤構築が重要であり,物流コストを含めた
サービス
“TWX-21”
をそれぞれ提供している。また,グ
トータルコスト削減を目指した取り組みが必要である。さ
ローバル サプライ チェーン構築に向けた企画立案から
らに,生産,物流,販売の同期化を図るためには,鮮度
システム開発,運用アウトソーシングまで,日立グループ
の高い情報共有基盤の構築が求められる。これらの基
の総合力を生かしたトータルソリューションを提案している。
はじめに
果,高精度・高品質なものはわが国で,量産品はアジア
各国で製造するなど,経営資源が激変している。調達
近年,製造業を取り巻く環境はますます厳しくなって
先も含め,多地域多拠点で複雑に絡み合ったサプライ
きており,競争優位性を得るため,海外生産によるコスト
チェーン構造となってきており,この変化に柔軟にかつ迅
低減を図り,新市場への進出を加速させている。その結
速に対応することが製造業の課題となっている。
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892
Vol.87 No.12
この課題を解決するためには,各拠点間を物理的に
ている。
結ぶ物流基盤の構築が重要であり,製造コストにとどま
日立グループの中国進出拠点は大小約100拠点以上
らず,物流コストも含めたトータルなコスト削減を目指し
あり,日本・中国間の輸送物量も月間3万tを超えている
た取り組みが必要である。さらに,情報共有基盤の構築
ものの,グループごとに進出しているため,各拠点の物
を図るために,調達先や顧客を含めた新規拠点との情
流網構築やロジスティクスの改善努力は個別に行われて
報連携の早期化が重要である。日立グループは,物流
きた
(図1参照)。そのため,今回,日立グループのシナ
基盤と情報共有基盤の両立によって
「情物」一致を図り,
ジー効果を発揮してグループ横断施策を策定し,グルー
高精度・高品質なサプライチェーン マネジメントを目指し
プ全体のコスト削減を図るために,
「中国ロジスティクス改
ている。
革活動」
を開始することにした。
ここでは,世界の工場から市場へ向けて注目を集め
2.2 改革施策例
る,中国における日立グループのグローバル サプライ
日立グループのシナジー効果を発揮する中国ロジス
チェーン改革事例と,物流基盤・情報連携基盤を実現す
ティクス改革施策として,
「ボリュームディスカウントによる
る日立グループのソリューションについて述べる。
中国内および航空・海上輸送費低減」
と,
「グループ共同
2
配送センター活用による管理コスト低減」,
「中国内の物
日立グループの中国ロジスティクス
改革事例
流品質向上と均質化」,
「日立グループ中国物流保険プ
ログラム構築による保険料低減」
などを進めている。
2.1 改革の背景とねらい
(1)華東地区でのボリュームディスカウント例
日 立グループは,これまで進めてきているT S C M
まず着手したのは,日立グループの多くの拠点が集
(Total Supply Chain Management)改革を発展させ,
WW(World Wide)-TSCM改革を推進している。この
中する蘇州と上海間を定期往復運行する
「長江シャトル
便」
の設置である
(図2参照)。
WW-TSCM改革の一環として,生産・販売拠点の拡大
この路線周辺の会社の荷物を積み合わせて輸送す
が著しい中国に焦点を当て,中国を中心とした国内外
ることで,約30%のコスト低減を実現している。同図に示
の物流コスト削減をグループをあげて展開中である。
すように,運行車両数は1年で4倍以上に増加しており,
日立グループは,グループ内に株式会社日立物流(以
現在はこの路線を蕪湖まで延長し,さらに便数を増やし
下,日立物流と言う。)
という物流専門会社を持っている
て,いっそうのコスト低減を計画している。また,グループ
ため,この開発・設計・運営能力を活用することで,他社
の共同物流センターの設置や拡大などにより,倉庫運営
に勝る
「中国ロジスティクス改革・物流コスト低減」
を進め
コストの低減も推進している。
哈爾濱
藩陽
北京
◆取り組み課題
大連
(1)グループ合計約100社進出
青島
無錫 蘇州
西安
合肥
武漢
(2)日本・中国の輸送物量:毎月3万t以上
上海
南京
(3)各社個別に物流網を構築
嘉興
福州
長沙
厦門
広州
注:
釧
深圷
(1社)
海口
グループ物流集約の利点を活用
利益直結のロジスティクスコスト低減
日立グループのシナジーを生かす横断的施策
中国における物流コストの大幅削減(輸送費, 在庫管理費, 輸送保険料など)
図1 日立グループの「中国ロジスティクス改革活動」のねらい
日立グループの中国進出状況と物流課題を示す。
18
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長江シャトル便運行車両数とコストの推移
蘇州
上海
運行車両数(指数)
北京
上海港
空港
深釧
圷
外高橋
運賃
100(指数)
5
4
3
1.7
2
1.0
1
0
2004年4月 7月
運賃
70(指数)
4.4
4.0
2.5
10月 2005年1月 4月
グループ共同物流センター設置拡大
華東地区
1万6,500m2
上海港, 外高橋,
虹橋, 浦東, 蘇州ほか
東莞
香港港
空港
日立物流大連事務所
日新運輸大連事務所
海新達大連分公司
大連
北京
日新運輸北京駐在所
大航北京分公司
青島 日立物流青島事務所
日新運輸青島事務所
青島海新達国際運輸服務有限公司
上海 日立物流上海統括事務所
武漢
日新運輸上海事務所
上海遠新国際運輸有限公司
日新運輸武漢事務所
蘇州
日立物流(上海)有限公司
大航国際貨運有限公司
日立物流蘇州事務所
日立物流軟件系統(上海)
蘇州邦達新物流有限公司
大航蘇州分公司
台北 日立物流(香港)台湾分公司
日立物流広州事務所 広州
圷
深釧
深 日禾国際貨運有限公司
圷
釧
華南地区
2万6,000m2
圷 福田,
釧
香港, 深 ,
東莞ほか
香港
日立物流(香港)有限公司
図3 日立物流グループの中国物流サービス拠点
図2 蘇州と上海間を定期往復運行する
「長江シャトル便」の概要
倉庫機能,輸配送機能ともわが国と変わりない物流サービスを提供している。
2004年比で30%のコスト削減を実現している。
現地調達化・調達量増加に伴い,調達先との物流連
(2)日立グループ中国物流保険プログラムの構築例
携が必要となってきている。生産との同期化が求められ
中国における事業の拡大に対応し,物流リスクマネジ
ているものの,調達先単独での努力には限度があり,欠
メントの改善と保険料削減を目的として,中国日立グ
品・在庫過多となるおそれが発生する。日立物流は部材
ループ企業の輸送・保管中リスクを総合的にカバーする
ベンダー各社へのミルクラン
(定期配送・集荷)
を行ってい
「日立グループ中国包括輸送保険」
プログラムを開発した。
るため,近隣倉庫での部材管理と生産ライン別24時間
これもグループシナジーによるコスト面での利点の追求
対応のJIT(Just in Time)供給を行うことができる。こ
を目指したもので,これにより,保険料低減や保険条件
れにより,生産への集中と工場内部品倉庫の撤廃が可
の改善・均質化などを図ることができる。
能となり,早期サプライチェーン構築に寄与できると考える。
このプログラム適用対象会社数のうち約60%が半年
以内にすでに加入し,グループ保険料の大幅低減を実
現している。
(2)中国工場から完成品・部品を混載調達
複数の調達先の部品と,自社工場の完成品を集荷,
在庫管理し,日本国内の仕向け別に混載を行い,効率
的な少ロット調達と在庫適正化を実現する。
3
中国物流3PLソリューション
グローバル物流事業に取り組んでいる日立物流は,
また,ウェブを利用して在庫情報を開示し,情報の可
視化による適正発注,迅速な納期回答を実現している
(図4参照)。
特に中国を重点地域として,物流ネットワークの拡充や
(3)部品を中国で保管し,納入リードタイムの短縮を実現
物流サービスの向上に努めている。1986年に進出して
中国での保税倉庫や一般倉庫を活用した保守部品
以来,中国国内に36拠点を置き,2003年には上海航空
の現地在庫化を図り,中国顧客への納入リードタイムの
傘下の「大航国際貨運有限公司」
に資本参加し,3PL
短縮を実現している。中国内部品拠点を集約し,保税
(Third Party Logistics)
の一環として,日中一貫海
区などを活用した中国在庫品の一元管理を図り,在庫
上・航空輸送と倉庫事業を強化し,日本国内と変わりな
データや出荷実績データなどの物流データをタイムリーに
いトータル物流を提供している
(図3参照)。
提供しており,税関システムと連動したスムーズな申請手
さらに,
「ドアツードア」
のグローバル一貫物流を実現
続きが可能である。
し,中国工場からわが国の消費地(工場・販売拠点)へ
また,貨物が「物流園区」内に搬入されたときに輸出
の物流ネットワークを構築し,在庫の圧縮とコスト削減を
と見なされる新制度を活用し,増値税還付の迅速化や,
明確化する。
非居住者在庫による納入リードタイムの削減,香港経由
輸送廃止による輸送コスト削減などの効率化を図ること
3.1 SCMに寄与する中国ロジスティクスモデル
が可能となる
(図5参照)。
(1)ミルクラン・JIT納品
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顧客
在庫管理システム(ウェブ)
◆発注
現地
企業間ビジネスメディアサービス
“TWX-21”
では,メン
洋上 在庫情報 国内
中国側
製造メーカー
◆入出庫実績
◆入出庫実績
物流センター
入出庫
入出庫
現地港
日本港
納品先
量販店
• 路線
納品先
• ルート
配送
• 貸し切
り便
量販店
自家混載
集荷
が国最大規模の企業間電子取引サービスを提供してい
る。TWX-21では顧客やサプライヤー,物流会社など関
在庫管理
在庫管理
ベンダー
バー企業2万9,300社(2005年10月現在)が利用するわ
日本側
物流センター
検品
4
グローバルな企業間連携を支援する
“TWX-21”
連する企業と情報・業務を共有する環境を提供し,販売
から生産・調達,さらに支払いまでの一連の企業間活動
を支援し,SCM構築には不可欠なサービスとなっている。
グローバル展開としては,1999年から,国際標準“EDIFACT”
をベースに,受発注などのデータ交換を中心に
提供してきた。しかし,最近のインターネットの高速化に
日立物流グループの一元管理体制
伴い,2005年からはウェブベースの情報・業務共有型
サービスへと刷新しており,中国語と英語のサポートとと
図4 混載調達のモデル例
もに,アジア地域へ強力に展開中である。
混載することでコスト低減を図ることができる。
4.1 グローバルな企業間連携・情報共有サービス
製造業では,中国などアジア地域への生産拠点が急
展開する中で,需要の変動に対応するため,バイヤー
企業とサプライヤー企業間でフォーキャスト
(予測),オー
ダー,在庫,納期情報などを共有することが求められて
物流園区(外国扱い)
物流園区利用
1次加工工場
いる。また,リードタイムの短縮と在庫の最小化,タイム
発注
(1)
輸出通関
TWX-21では,中国などアジア地域に展開している日
系バイヤー企業に対し,調達の分野で,サプライヤー企
2次加工工場
(2)
リーな製品の市場投入が急務となっている。
業とインターネット上でフォーキャスト・オーダー・納入予定
輸入通関
海外調達拠点
国内販売 発注
ほかに,「非居住者在庫」,「バイヤー
ズコンソリデーション」,「中継三国間
輸送」など
輸出
図5 物流園区を利用した輸出見なし物流モデル
“ HIGLOS”
カーゴトレース システム
G-WMS
物流園区を利用することで,効率的なサプライチェーンが構築できる。
配車管理システム
3.2 グローバル物流情報の可視化
物流情報の一元管理を実現し,顧客の各種システム
にリンクし,グローバルベースの物流可視化へのニーズ
に応えている
(図6参照)。
日立物流は,G-WMS(Global Warehouse Management System),カーゴトレース,ドキュメント管理,
配車管理システムなどによってシームレスな物流情報を管
理しており,サプライチェーン構築を実現するうえで必要
となる情報を,顧客へタイムリーに提供できる。さらに,
HIGLOSフォワーディングシステム
G
S
L
G
(船積み, ドキュメント,
カーゴセンター, EDI)
顧客
インターネット
GSLGをプラットフォームとした顧客物流情報の集約とインターネットによる情報開示
注:略語説明ほか
GSLG(Global Synchronous Logistics Gateway;全世界・各シス
テムのデータを集約させるためのプラットフォーム)
ポイント
G-WMS(Global Warehouse Management System;入出庫・在庫
管理システム, 鮮度管理, ロケーション管理機能装備)
マルチランゲージ(日本語, 英語, 中国語)対応
配車管理システム(配車支援・送り状発行, 運賃計算機能
装備, 国内輸送トレースの実施)
集約サーバによる全拠点データ一元管理
カーゴトレース システム(国際輸送・国内輸送トレースの実施)
HIGLOS(Hitachi Global Logistics Operation System)フォワーディングシステム
(船積み指示, ドキュメント発行, 収計管理などの実施)
貨物トレース, 在庫情報の開示
EDI(Electronic Data Interchange)
物流業務と情報・物流を組み合わせ,
「情物」
を一致させ
た3PLソリューションが提供でき,顧客のグローバル サプ
ライチェーンの早期実現を支援している。
20
2005.12
図6 グローバル物流情報可視化システムの概要
IT(Information Technology)
を駆使することで,
「情物」
を一致させた3PL
ソリューションを提供できる。
グローバル サプライ チェーン構築によるトータルコスト削減ソリューション
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895
などを情報共有する環境として,以下の二つのサービス
を提供している。
バイヤー生産拠点(中国)
“TWX−21/Web−EDI Global”
サプライヤー(香港)
(1)
“Web-EDI Global”
海外のサプライヤーに対し,EDI( Electronic Data
Interchange)
データによる見積もり・発注・出荷指示・納
品請求などの業務環境をインターネット上で提供する。
(2)
“e-sourcing/SC”
バイヤーのフォーキャスト・在庫・オーダー情報などを共
有し,インターネット上で納期調整業務を行う環境を提供
CSV
英語
中国語 日本語
受け入れ部門
TSV フ
ァ
イ
ル
イ
ウン
バイヤー調達拠点(香港) ェ タ
ブフ
イェ
ンー
タス
フ
ェ
ー
ス
物流会社(香港)
注文書
全業務 •インボイス
新着・検索・印刷機能
ダウンロード機能
アップロード機能
所要計画
見積もり
注文
納期回答
出荷
請求
買い掛け
受注管理
出荷残管理
請求管理
案件ステータス管理
ウ 生産・出荷部門(タイ)
ェ
ブ
イ
納品書
ン
タ
フ 出荷業務 パッキング
ェ
ー
リスト
ス
する。
各サービスの概要と利用事例について以下に述べる。
受け入れ
輸出手続き
出荷情報
ヘルプデスク
(北京語, 広東語, 英語)
2次サプライヤー(中国)
バイヤー(日本)
EIAJ−EDI連携
4.2 サプライヤーとの電子商取引の業務環境を
提供する
“Web-EDI Global”
EIAJ
注文書
(金額非表示)
EDIサービス
中国では一部の企業では個別ウェブサイトを展開して
いるものの,電子商取引は今後展開される状況にある。
しかし,わが国同様,中国でも,需要変動に対応する
ため,生産方式を月次生産計画から週次や日次計画
へと変更せざるをえない状況にあり,サプライヤーとの情
報交換量は,従来の4倍以上に増加すると予測されてい
注:略語説明 CSV(Comma Separated Value),TSV(Tab Separated Value)
EIAJ(Electronic Industries Association of Japan)
図7 “Web-EDI Global”の概要と事例
複数国・複数企業にまたがる分業生産・納品に対応した情報共有環境を提供
している。
る。サプライヤーは,毎月数百から数千件の短納期注文
に対し,例えば海外の生産拠点へ速やかに生産手配や
種の情報をバイヤーとサプライヤー企業間でリアルタイム
出荷指示,輸出入などの納品手続きを行う必要がある。
に共有し,納期調整業務の効率化と問題案件の早期
そのため,生産部門や2次サプライヤー,出荷委託先
把握,可視化が不可欠である。バイヤー企業ではサプラ
(物流会社)
などと情報を共有し,リードタイムの短縮と業
イヤーの納入予定を早期に把握し,生産計画へフィード
務の精度向上,効率化を図ることが求められる。また,
バックし,需給調整を行うことが重要となる。
バイヤー企業は,サプライヤーからの納品受け付けや保
e-sourcing/SCでは,バイヤーからの3段階発注(所要
税倉庫,輸出入業務を物流会社に委託している場合も
計画・予約・確定注残)情報と在庫(最新在庫・消費計
多く,サプライヤーからの出荷情報をリアルタイムに物流
画)
・納期変更依頼情報などを基にして作成された在庫
会社や生産管理部門に提供し,次工程の業務を効率
受け払い計画表画面をサプライヤーに開示し,サプライ
化し,リードタイムの短縮を図る必要がある。
ヤーは同一画面を基に納期回答をシミュレーションしなが
このため,
“Web-EDI Global”
では,利用者権限(サ
ら納入予定調整をインターネット上で行うことができる。さ
プライヤー営業用,2次サプライヤー用,生産管理部門
らに,在庫不足が発生する問題部品の案件管理も自動
用,バイヤー用,物流会社用など11種類)
により,利用
的に管理し,情報共有できるため,バイヤー,サプライ
する企業や部門に,情報共有できるデータの種類や更
ヤー,生産管理部門,2次サプライヤーなど,関連する
新権限,単価の表示制御など,きめ細かなアクセス管理
部門で同一の画面を参照しながら問題案件の調整や先
を提供している。また,複数国・複数企業にまたがる分
手対処ができる。これにより,納期調整業務の削減と需
業生産・納品に対応した情報共有環境も提供している。
要変動に対応した調達が可能になる。日立グループの
画面では,中国語,英語,日本語が選択でき,インボ
情報機器を製造する事業所では,国内サプライヤー,海
イス,パッキングリストや国ごとに異なる税計算対応など,
外商社・メーカーとの情報共有とサプライヤーからの回答
海外実務に適応した見積もり・発注・出荷指示・納品請
納期を生産計画にフィードバックし,需給調整を行ってお
求などの電子商取引環境を提供している
(図7参照)。
り,納期調整業務を70%縮減し,棚卸し回転率3倍を実
現している
(図8参照)。
4.3 サプライヤーとの納期調整業務を支援する
“e-sourcing/SC”
また,コンサインメント取引対応の情報共有機能も提
供している。この機能では,バイヤー主導で在庫管理を
需要の変動に対応するためには,最新のフォーキャス
行う預託取引として高額部品や長納期部品などを対象
ト,予約注文,確定注文,在庫情報・消費計画など各
としており,バイヤーからのコンサインメント在庫品の消費
2005.12 21
896
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してのノウハウ提供から企画立案,設計,開発,運用ま
で一貫したソリューションを提供し,顧客改革の早期実
在庫情報を開示し納期管理を
サプライヤーに委託
バイヤー
サプライヤー
“ e−sourcing/SC”
在庫・納期調整機能
事務所
(納期調整担当)
在庫 シミュレーション
機能
納期
在庫不足
計画・予約
注残
検査
各業務情報を集約し
在庫受け払い計画画
面をリアルタイム表示
計画, 在庫,
注残, 検査情報
部品納入の
日本国内
前倒しを検討 サプライヤー
現を支援していく考えである。
参考文献
納期回答
1) 二ノ宮,外:日立グループにおけるトータル サプライチェーン マネジメント
(TSCM)
改革,日立評論,84,12,729∼732
(2002.12)
1W 2W 3W 4W 5W
入庫 200 300 400 100 0
出庫 100 500 200 200 400
日本国内
倉庫管理者
在庫 300 100 300 200 −200
在庫
消費
執筆者紹介
→業務管理コスト削減
各業務情報
連携
コンサインメント取引機能(オプション)
生産 システム
納期回答など
管理
システム
海外向け機能英語画面(オプション)
海外
サプライヤー
石冨 克也
インターネット
社内システム
コンサインメント在庫
TWX−21 EDI/Web EDIサービス(別サービス)
国内サプライヤー
図8 “e-sourcing/SC”の概要
バイヤー・サプライヤーはインターネット上で同一画面を参照し,納入予調整
を行う。
1996年日立製作所入社,
トータルソリューション事業部 産
業・流通システム本部 産業システム部 所属
現在,電機・精密分野におけるトータルシステム企画取りま
とめ業務に従事
E-mail:[email protected]
二ノ宮 滋
1973年日立製作所入社,モノづくり技術事業部 トータル
SCM推進センタ 所属
現在,日立グループのTSCM改革推進業務に従事
E-mail:[email protected]
予定や払い出し実績などを開示している。また,サプラ
イヤーには在庫シミュレーションなどを使い,サプライヤー
側の補充計画を入力し,バイヤー・サプライヤー間で納
期調整業務を行える環境を提供している。これにより,
バイヤー側ではタイムリーかつ最新単価による部品の調
傳法谷 智
1993年日立製作所入社,情報・通信グループ Eソリュー
ション推進本部 ECシステム本部 TWX-21サービス部 所属
現在,TWX-21の設計開発・運用業務に従事
E-mail:satoshi.dempoya.ff@.hitachi.com
達が,サプライヤー側では物流管理コストの低減がそれ
ぞれ可能になり,双方の原価低減も実現している。
5
おわりに
洪 肇彦
2001年日立製作所入社,情報・通信グループ Eソリュー
ション推進本部 ECシステム本部 TWX-21サービス部 所属
現在,TWX-21の企画・拡販業務に従事
E-mail:hatsuhiko.ko.dk@.hitachi.com
ここでは,グローバル サプライチェーンの実現に向け
て重要な物流基盤・情報連携基盤における日立グルー
プのサプライチェーンソリューションについて述べた。
ビジネスのグローバル化に伴い,製造業がいかに迅速
かつ柔軟にサプライチェーンの改革に取り組むかが大き
宮崎 幸夫
1964年株式会社日立物流入社,グローバル事業統括本
部 中国事業開発本部 所属
現在,中国物流分野における営業・企画・取りまとめ業務に
従事
E-mail:[email protected]
な課題となっている。日立グループは,グローバル市場に
進出する顧客のパートナーとして,
「日立物流3PLソ
リューション」,
「企業間ビジネスメディアサービス
“TWX21”」
および日中英の多言語対応の新生産管理システム
“GEMPLANET・WEBSKY”
をはじめとするグローバル
サプライチェーンソリューションを拡充しており,製造業と
22
2005.12
西山 茂男
1974年株式会社日立物流入社,大航国際貨運有限公司
(日立物流グループ)
所属
現在,中国物流業務全般の取りまとめ業務に従事
E-mail:[email protected]