平成23年度男女共同参画シンポジウム (30.3MB)

Ⅲ. 資料編
1︱平成23年度男女共同参画シンポジウム
「女性研究者の活躍と裾野拡大~大学連携を通して~」
日時:平成23年11月11日(金)13:30~16:30
第1部基調講演:
「科学技術・学術分野における男女共同参画の推進―第3次男女共同参画基本計画の策定を踏まえて―」
講師:笹井 弘之氏(文部科学省 生涯学習政策局 男女共同参画学習課長)
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Ⅰ ワークライフバランスイノベーション
第1部 平成21年~23年度報告書
Ⅱ 活動報告
Ⅲ 資料編
講演要旨
第3次基本計画の特徴として3点紹介します。1点目は、経済社会情勢の変化等に対応して重点
分野を新設したこと、2点目は、実効性のあるアクションプランとするため、それぞれの重点分野
に成果目標を設定したこと、3点目は、社会のあらゆる分野において、2020年までに指導的地位に
女性が占める割合を少なくとも30%程度になるよう期待するという政府の目標に向けて中間目標の
設定や多様なポジティブ・アクションを推進する、ということです。
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平成22年には女性研究者の比率は13.6%になっております。年々割合は増えておりますが、諸外
国と比べるとまだまだ低い状態にあります。機関別にみると国立が13.2%、公立が26.4%、私立が
23.6%です。科学技術・学術分野における女性の参画を拡大するには、まず一つは環境整備です。
二つ目は、指導的な立場にある女性研究者、自然科学系の女子学生、研究職を目指す女性を増やす
ための取組を進めることです。
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Ⅰ ワークライフバランスイノベーション
第1部 平成21年~23年度報告書
Ⅱ 活動報告
Ⅲ 資料編
「大学留保ポスト、教員人件費の10%を学内留保分という形であらかじめとっておき、それを活
用して『女性枠』というのを設定した」という大学がございます。また、
「女性研究者に限定した公
募を実施した」あるいは、
「公募で女性教員を採用した部局に対して、学長管理人件費枠から一定額
を補助した」というような取組があります。また「学長裁量経費によって、女性教員比率を反映し
た経費を配分した」という大学があります。
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「配偶者と同居することが困難な女性研究者に対して手当を新設した事例」、
「支援経費を創設した
事例」、「女性枠研究奨励費を措置した事例」があります。また、「女性教員比率30%を中間計画に
提示している」とか、
「女性教員の採用割合を達成目標として推進している」というような事例があ
ります。ポジティブ・アクションについては実際どういうものを行っていくかは、それぞれの高等
教育機関によって様々であろうかと思います。
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Ⅰ ワークライフバランスイノベーション
第1部 平成21年~23年度報告書
Ⅱ 活動報告
Ⅲ 資料編
女性研究者が少ない理由としては、家庭と仕事の両立が困難ですとか、育児期間後の復帰が困難
という回答が男女とも多くなっています。研究者を辞めたいと思った理由を尋ねますと、
「研究と家
庭生活の両立に困難を感じたから」という回答が、女性は31.0%と非常に多くなっています。働き
やすい環境を作るために必要なこととしまして、勤務時間・勤務形態の弾力化というものが一番多
くなっています。
133
理工学分野専攻の高等教育卒業者に占める女性割合は、我が国は19.7%で、他の国と比べて低く
なっています。一方で、博士課程学生の女性比率は年々増加傾向にあります。各国立大学で女子中
高生の進学に向けて取組がなされています。オープンキャンパス等で、女子小中高生と理系女性研
究者との交流会の実施であるとか、理系女性研究者及び女性大学院生による出前授業の実施、パネ
ル展示の実施、各種セミナーの実施などがあります。
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Ⅰ ワークライフバランスイノベーション
第1部 平成21年~23年度報告書
Ⅱ 活動報告
まとめですが、男女共同参画にはいろいろな取組の方法があります。また、それぞれの高等教育
機関がおかれている状況も様々ですので、各機関におかれましては、今回の「大学コンソーシアム
やまがた」というような組織を活用していただいて、他の機関がどういうようなことを行っている
のかについて情報交換をしていただくとか、国立大学でどういうことをやっているのか等について
様性というものが男女共同参画の中身ということですので、多様な視点、多様な発想で教育や研究
を進めていただくというのが非常に重要なことです。
冒頭に申し上げましたように、
「女性にとっても男性にとっても生きやすい社会を作る」というの
が、男女共同参画社会ということですので、男性にとっても育児や介護等を考えますと男女共同参
画が実現されている社会というのは、男性にとっても生きやすい社会であるということです。
国際的にも評価をされるような我が国の男女共同参画社会が実現できますように、それぞれの機
関でもお取組をいただきたいと思っているところです。経費の問題ですとか、難しい点もあろうか
と思いますが、それぞれの機関で叡知を生かしていただき、この取組を進めていただければと考え
ておりまして、今日はそういったことをご紹介させていただきました。ご静聴いただきましてあり
がとうございました。
135
Ⅲ 資料編
情報を得て、それぞれの機関で取り組まれるところは取り組んでいただきたいということです。多
取組報告:「山形大学における取組からみえてきた成果と課題
―アンケート調査にみる経年変化―」
発表者:坂無 淳(山形大学男女共同参画推進室 サブコーディネーター)
文部科学省 科学技術人材育成費補助金 女性研究者研究活動支援事業(女性研究者支援モデル育成)
山形ワークライフバランス・イノベーション
山形大学における取組から見えてきた成果と課題
アンケートの経年変化から
山形大学男女共同参画推進室
坂無 淳(さかなしじゅん) 1、調査目的
• ワークライフバランスや男女共同参画に
関する実態と意識を量的に捉える。
• 3年間の事業の実施前後の経年変化を捉
える。どこが変化(改善)したのか。
[email protected]
目次 1、調査目的
2、アンケート調査の方法
3、経年変化 ①働きやすさ ②意識
4、周知度
5、大学教員の生活面
6、まとめと課題
• 山形大学の全教職員・院生に調査票を配
ること自体が意識改革につながる。
4回の調査:実施年・調査対象・回収率
2、アンケート調査の方法
・調査票調査 (WEB調査ではない)
結果
3、経年変化 ①働きやすさ
• 「次のようなことを感じたことがありますか。」
• よくある ときどきあるの合計 あまりない 全くない
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3
年間
・調査項目は若干変えつつ4回とも同じ
①仕事・就学について
②意識・周知度
③基礎項目と家族構成・育児
調査票(A4 両面印刷 8ページ)
25項目程度
事業
・各部局総務係の協力(配付・回収)
・多くの部局では手渡し・回収ポスト
・無記名 記入後は封筒
②意識
•
「次にあげることについて、あなたの考えに近い番号を選んで下さい。」
• そう思う まあそう思うの合計 あまり思わない 全く思わない 参考:内閣府調査(平
成21年)
賛成・どちらかという
と賛成の合計 女性 37・3% 男性 45・9% Ⅰ ワークライフバランスイノベーション
第1部 平成21年~23年度報告書
Ⅱ 活動報告
4、周知度
• 「以下の法律や本学の取り組みをご存知ですか。」
• 知っている 知らない 第4回の結果
5、大学教員の生活面 家事・育児・介護を担う時間
育児や介護の必要な家
族がいる人のみ(第3回)
家事育児は女性が長い
傾向。介護は平日でもあ
り、男女とも長くはない。
事業目標の一
つ
言葉の周知度
60% →達成
Ⅲ 資料編
職種(大学教員のみ、そ
の他の職員)や、共働き
か専業主婦カップルか分
けても大きな差は見られ
ない。
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配偶者等との別居
配偶者等の職種
大学教員は
別居婚が多い?
大学教員は
研究者カップル
が多い?
参考:岩手大学(2010)
女性33.3%、男性17.6%
参考:大阪大学(2010)
パートナーが就業して
いる人
大阪大学(2010)
女性23.6%、男性5.4%
雇用者全体
(労働政策研究・研修機構
2011)
単身世帯(雇用者総数で
有配偶単身世帯数を割っ
た値) 女性0.7%、男性
2.2% 配偶者等のいる
大学教員 第3回
(参考)大学教員
以外の職員 第3回
13
男性研究者の妻:
23.6%が大学研究者 3.4%が企業研究者
女性研究者の夫:56.5%
が大学研究者
6.5%が企業研究者
大学教員
配偶者等がいて、収入の伴う仕事を
している人 第3回
14
137
6、まとめと課題
• 働きやすさ:男女どちらも忙しい。女性の方がス
トレス大? → 改善・男女差が減る。
• 意識:固定的な性別役割分業を支持する人は
少ない。少しずつ女性が働きやすい・育休を取
りやすい大学に。男性の育休は・・・
• 周知度:目標の達成。
• 大学教員の生活面:家事育児は女性に負担。
別居婚・研究者カップルが多い(特に女性)。
→地域連携の可能性? 公募情報等の共有で
山形or東北地方に研究者を呼び込み定着?
引用文献 報告書等のURL省略
独立行政法人労働政策研究・研修機構, 2011, 『ユースフル労働統計ー労働
統計加工指標集ー(2011年版)』,独立行政法人労働政策研究・研修機構.
岩手大学男女共同参画推進室, 2010, 『岩手大学男女共同参画に係るアン
ケート(平成21年11月)〜結果概要〜」,岩手大学男女共同参画推進室.
内閣府, 2009, 『男女共同参画社会に関する世論調査』(平成21年10月),
内閣府大臣官房政府広報室.
大阪大学多様な人材活用推進委員会・女性研究者キャリア・デザインラボ,2010,
『平成21年度大阪大学の常勤教員の実態と意識に関するアンケートー
大阪大学のワークライフバランスをめざしてー調査報告書」,大阪大学女 性
研究者キャリアデザインラボ.
山形大学男女共同参画推進室(2011)「山形ワークライフバランス・イノベーショ
ン第2部平成22年度男女共同参画に係るアンケート結果報告書」,
山形大学男女共同参画推進室.
(山形大学の各回のアンケート結果報告書は山形大学男女共同参画推進室
HPで、pdfが閲覧・ダウンロードできます。)
16
報告要旨
男女差がはっきり出たものとして、「出勤・通学したくない」「今の仕事・就学を辞めたい」があり、
女性の方が多くなっています。「会議等で発言しにくい」というのも男女差がありますが、女性で「発
言しにくい」という人が減ってきていることがわかりました。
「本学は女性が働きやすい環境が整っていると思いますか」について、男女ともに「そう思う」と
言う人が着実に増えています。同様に、
「本学は女性が育児休業を取得しやすい雰囲気があるか」と
いうことに関して、半分程度ではありますが、着実に男女ともに「そう思う」が増えてきています。
一方、「男性が育児休業を取得しやすい雰囲気があるか」ということに関しては、一割程度です。
「男女共同参画社会」という言葉の周知度は9割以上で、事業目標の一つである「周知度を60%
にしよう」というのは達成したことがわかりました。
家事・育児時間をみると、女性が男性の2~3倍程度、家事や育児を担っています。大学教員は
別居婚が多いと言われますが、山形大学でも結婚している大学教員の別居はかなり多いことがわか
りました。男性も多いのですが、女性の教員はさらに多いようです。また、研究者カップルが多く、
女性の場合、夫が研究職だという人が4割弱となっています。
まとめますと、
「働きやすさ」に関しては、男女どちらとも「忙しい」と感じているようです。さ
らに女性の方がストレスと言いますか働きにくさを感じている傾向があります。ただ、それが着実
に改善しつつあるし、男女差が減る傾向にあることがわかりました。意識面に関しては、大学外の
社会と比べて固定的な性別役割分業を支持する人は少なく、少しずつ女性が働きやすい大学、たと
えば育休を取りやすい大学になってきているようです。男性の育児休業に関しては、まだあまり変
化がありません。また、周知度に関しては目標を達成することができました。
教員に関して言えば、研究者カップルが女性教員に多く、別居婚が多く、家事・育児の負担が女
性にかかる傾向があることがわかりました。そこで、地域連携を活用して、公募情報を近くの大学
同士で共有することで、カップルの就職先を見つけやすくするサービスがあってもいいのかなと思
います。昨年のシンポジウムにお越しいただいた方の大学であるカリフォルニア大学バークレー校
では、研究者カップルのパートナーへの公募情報の提供や求人リストへのアクセス等の情報提供を
行っているということです。
138
取組報告:「山形大学における取組からみえてきた成果と課題
―聞き取り調査から―」
発表者:幅崎麻紀子(山形大学男女共同参画推進室 サブコーディネーター)
Ⅰ ワークライフバランスイノベーション
第1部 平成21年~23年度報告書
Ⅱ 活動報告
Ⅲ 資料編
139
報告要旨
「大変だ」と感じている事柄で意外だったのは、「出産・子育て等に関する大変さ」というのはも
ちろんありますが、「着任したばかりの時に大変だ」という訴えが多かったことです。次に、「将来
的に不安だ」と感じている事柄については、一番多かったのが「出産・子育て」そして「研究やキャ
リアの形成について」が続きます。
140
Ⅰ ワークライフバランスイノベーション
第1部 平成21年~23年度報告書
不安は、出産・子育てに対して非常に多かったです。また、研究キャリア形成についての不安、
られました。 こういった問題点と同時に多かったのが、
「楽しい、うれしい、幸せだ」というキーワードです。「実
験している時が一番楽しい。学生と一緒に実験して結果が出るとうれしい。ようやく自分の力だけ
Ⅱ 活動報告
結婚・家庭についての不安、自分の身体についての不安、介護についての不安というものも多くみ
でちょっと道が拓けてきた。楽しくなってきた。働いていた方が元気。仕事が好き。集中している
時が幸せだ」と研究・仕事にやりがい、楽しさを感じているという40代の方の語りです。
最後に、
「望まれる支援」についてですが、まとめますと、
「相談できる方がほしい」「精神的なサ
ポートと研究の助言」「普通に話を聞いてくれる人」、そして「研究を支援する人」、これは、山形大
学でも研究継続支援というものを22年度から行っていますが、その話も語りの中に出てきています。
「研究継続支援に助かっています。研究継続支援員制度を申請する前はどうかなと思っていたのです
が、利用してみるとありがたいです」という語りがみられました。その他に「大学内託児施設、病
児保育施設、学童保育」などの声が多かったことです。そして、「子育て・妊娠時に役立つような情
報がほしい。人材バンクのような、何かあった時に頼めるシステムがほしい」という言葉も多々み
られました。
ただ、着任したばかりの女性研究者は、大学のシステムに慣れず相談する相手もなく、困難に直面
しています。学生の指導についても困難に直面しますが、男性と異なり同性の相談相手が身近にい
ません。つまり、「相談相手の確保」というものがまず必要になってくるのではないでしょうか。
さらに子育て・介護中の女性教員の場合は、「研究が進んでいない」という語りが多くみられまし
た。つまり、研究を継続するための支援、たとえば代替要員の確保、研究継続支援、情報提供等に
力を入れていくという必要があるのではないか、と考えています。そして、最後に、結婚・子育て
を考えている教員は、
「とにかく不安だ」という声が多かったです。つまり、これに関しましては、
「大
丈夫だよ」というメッセージの発信ということが必要なのではないでしょうか。そのためには、各
種の支援があるということ、身近なロールモデルというのが最大のエンパワーメントになるのでは
ないかと考えています。以上です。ご静聴ありがとうございました。
141
Ⅲ 資料編
まとめですが、女性研究者というのは、仕事に非常にやりがい、楽しさを感じている人たちです。
第2部パネルトーク:「女子高校生☆夢に向かって!
~女性研究者が疑問にお答えします~」
パネリスト:石島 智子氏(東京大学大学院農学生命
科学研究科特任助教)
テーマ:「私の仕事・研究・家庭」
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Ⅰ ワークライフバランスイノベーション
第1部 平成21年~23年度報告書
Ⅱ 活動報告
Ⅲ 資料編
講演要旨
私は中学の時、スポーツ観戦が大好きで、スポーツに関わる仕事がしたい、スポーツ選手の食事
のサポートをする栄養士になりたいと思っていました。高校に進みまして、3年間ずっとブラスバ
ンドを頑張っている日々でした。大学進学にあたり、自分は何をやりたいかを考え、食べることが
大好きなのと人が生きていく上で食は大事なのではないか、それに関わる仕事がしたいと思い、栄
143
養士に、その中でも管理栄養士というスペシャリストになりたいと思い、東京農業大学に進学しま
した。
私が思う仕事、研究の魅力の1番目は、自分の好きな食とか栄養学に関する研究が仕事であると
いうことです。これはとても恵まれていると思います。
2番目は実験の魅力です。明らかにされていない事象を明らかにするために、綿密な計画を練っ
てやってみて、実際、大きな結果が出たということもあるのですが、あんまり変わらなかったとい
うこともありまして、本当に地道な作業の繰り返しなのですが、その大きなテーマに向かって徐々
に徐々に、いろんなことが明らかになっていくというのが実験や研究の魅力だと思っています。
3番目は、同じテーマについて議論することです。学生さんの卒論とか修論とかD論とかについ
て議論するのですが、「結果が出たね」とか、「いいこと、おもしろいことが分かったね」というこ
とを共感できるというのが、おもしろいと思っています。
家庭について少し話しますと、私は夫と2歳の娘がいまして、夫は静岡のお茶の研究所に勤めて
いて1人で生活しています。週末に私が住んでいる松戸に来ます。私の回りの研究者の人に伺って
みると、夫婦で研究者という方が結構多く、週末婚、単身赴任、共働きが多いです。このせいもあっ
てか共働きの大変さとか、女性研究者の大変さを理解してくれる男性が多いです。実験をしに企業
の方も結構、来られるのですが、「お子さんどうですか」とかいろいろ話をしてくれます。
子育てについてですが、私の場合、夫が一緒に住んでいませんので、保育園の送り迎えなど、自
分が全部やらなくてはいけません。私の妹が一緒に住んでいるのですが、妹とか母など、家族の協
力がなくては成り立たちません。子どもが生まれる前は、夜10時ぐらいまで研究室に普通にいたの
ですが、子どもが生まれてからは、もう5時になったらすっ飛んで帰るという感じで、本当、決め
られた時間の中で集中して効率よく仕事をこなすことを考える生活になりました。しょっちゅうバ
タバタしていますので、学生さんは「何が起きているんだ」と感じていると思います。
上司の先生には「仕事と家庭に対する頭の切り替えが大事」、「女性はそういうのが得意なのよ」
と言われてしまったのでやらざるを得ないという感じですが、子育て中だということで、上司の先
生方にはご理解、ご協力をいただいておりまして、とても感謝しています。
自分の回りで女性研究者の方を見回してみると、結構、子育てをしている人とか、経験している
という人が多くいました。これは意外だったのですが、女性自体は少ないのですが、研究している
人は子育てもちゃんとしているのです。女性研究者がまだあまりいなかった時代に、女性として仕
事と家庭を両立されてきた方が道を開いてくださった、頑張って実績をつくってこられた、子ども
がいても研究ができるのだと周りを納得させてくれた、ということがあって今の状況があるのだと
思っています。ですから子どもがいるからできないということも言えず、とりあえず今、一生懸命
がんばっています。
また、理解し支援してくださった男性も多かったと思うのです。女性研究者の実績の増加が、支
援してくれる男性の増加に繋がっていくので、今後、私たちがまた頑張ることによって応援してく
れる人も増え、どんどん裾野が広がっていくのではないかと思っております。以上で私の話を終わ
ります。ご清聴ありがとうございました。
144
第2部パネルトーク:「女子高校生☆夢に向かって!
~女性研究者が疑問にお答えします~」
パネリスト:はやのん氏(理系漫画家)
テーマ:「漫画で理系女性を応援する」
(制作:はやのん)
Ⅰ ワークライフバランスイノベーション
第1部 平成21年~23年度報告書
Ⅱ 活動報告
講演要旨
おられることと思います。今日は、「理系漫画家って何だ?」、「理系女子を応援するってどうする
の?」、「漫画で理系を応援するというのはどうしているの?」というお話をしたいと思います。
私は元々文系だったのですが、高校生2年の頃、たまたま出会った物理がおもしろいと思い、苦
手な理系分野を一生懸命勉強して、大学は地元の琉球大学の理学部・物理学科に入学しました。大
学卒業時は1998年、就職氷河期ど真ん中という時代でした。得意だったイラストの仕事をしたらど
うかと思い、
「子供の科学」という雑誌の編集部に作品を持ち込みました。そこで「私は物理学科出
身でイラストレーターです」と、ちょっと気軽に言ったところとてもびっくりされました。理系の
話題を理解しながら絵が描けるということで、仕事をもらえることになり、2002年4月号から
「GOGO!ミルボ」という、子ども向けの科学漫画の連載がはじまりました。以後2005年の世界物
理年、物理チャレンジ、応用物理学会75周年と科学分野の仕事を増やし、2008年には日刊工業新
145
Ⅲ 資料編
このようなシンポジウムに漫画家が来る、一体どういうことなのだろうと皆さん不思議に思って
聞で「キラリ研究開発」という漫画の連載を始めました。
理系女性を応援する仕事は、自分自身が理系に進んでよかったと思っているので大切なことだと
思っています。
「え?何で理系女性を応援しないといけないの?」、
「私は応援なんかされなくてもちゃ
んとやっています」、「男性の応援もお願いします」とおっしゃる方もいると思います。どうして女
性を応援しないといけないかというと、やはり理系に女性が少ないからなのかなと思います。
物理は女子が1割しかいないというのが定説ですが、ある大学ではもう1割もいなくって「うち
は4%だよ」とおっしゃる先生もいて、本当に少ないのだなと改めて感じました。
どうしてそんなことが起こるのか。元日本女子大学教授の小舘香椎子先生がおっしゃるには、小学
校の頃は男女を問わず「理科って楽しいね」と言っているのですが、中学生ぐらいになると「私は女
の子だから理系は弱いんだ」と、何かネガティブなイメージを持つようになり、高校生ぐらいになる
と今度は周囲と同じようにしなければならない雰囲気や、その後の就職、縁談などを意識して、
「両
親から就職は女らしいところにしなさいって言われた」とか、そんな感じで理系の道から女子がだん
だん減っていってしまい、研究の道へ進む女子学生はほんのひと握りしか残らないということです。
しかも研究者になったあとも、さらに男性中心の社会でうまく仕事を進めていくことが大変だ、とい
うことでした。その困難をいかに乗り越えるか。それは、今、活躍しているかっこいい理系の女性た
ちがいるということを知る…「ロールモデル」を持ち、自分の行く先をイメージしていくのが大事な
のではないかと私は思っています。私の漫画では魅力ある女性研究者を積極的に紹介しています。
東芝で3Dディスプレイを開発している福島理恵子さんは、日経ウーマンのウーマン・オブ・ザ・
イヤーに選ばれました。パナソニックの先端技術研究所では、家庭用ロボットの開発に女性のチー
ムがあるということで、京都まで行ってきました。子どもを育てながらの研究が大変で、どうかし
たいという気持ちが便利な物を生みだそうというモチベーションに繋がっているというお話を聞き、
なるほどと思いました。青山学院大学の長谷川美貴教授は、新しい元素が見つかった時に名前を決
める会議の日本代表として活躍されています。インタビューに行くと、どの方も楽しくお話をして
くれるのですが、研究はすごく真面目で、女性としての魅力と研究者としてしっかりしたところと
両方あって素敵だなと思いました。そんな姿を知ってもらいたいと思い作品を送り出しています。
こういうふうに活躍している人がいるのだったら、私もがんばろうと思うところが大事だと思います。
漫画で理系を応援するために、「子供の科学」や「日刊工業新聞」の連載記事が基本なのですが、
大学や研究所の冊子に漫画を描いたり、研究者の発表そのものをお手伝いしたりする仕事もしてい
ます。プレスリリースの説明図や市民向けの研究内容を紹介するポスターも描いています。どうい
うことが研究の現場では必要になっているか、というようなアドバイスを実際の研究者から受けな
がら、理系の漫画、イラストなどに取り組んでいます。
描かねばならない科学の漫画はありすぎて困るくらいで、何人で取りかかっても減ることはあり
ません。私がやっても、やっても減りません。ですので、いろんな作家の人が出てきて理系の漫画
をたくさん描いてくれるようになったらいいなと思っています。理系漫画制作室という組織を作り、
若手の理系イラストレーター・漫画家の育成を始めました。自分自身も理系漫画家としてのロール
モデルとなれるよう、楽しい活動、魅力のある活動に取り組んでいきたいと思っています。
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第2部パネルトーク:「女子高校生☆夢に向かって!
~女性研究者が疑問にお答えします~」
パネリスト:渡辺絵理子氏(山形大学基盤教育院准教授・
前機能性ペプチド研究所研究員)
テーマ:「ラ・フランス、サクランボから化粧品を開発」
Ⅰ ワークライフバランスイノベーション
第1部 平成21年~23年度報告書
Ⅱ 活動報告
Ⅲ 資料編
147
講演要旨
「実際に研究ってどんなことしているの?」、さらに「首都圏ではなく山形県でもこんな研究がで
きるよ」という話を聞いてください。
皆さん、日東ベストさん、ソーセージだとか冷凍食品だとかお菓子だとか作っている会社をご存
じだと思います。寒河江に本社のある会社なのですが、そこが今度、化粧品を作ることになりました。
山形県産天然素材へのこだわりと環境に優しい化粧品です。実はラ・フランスの枝からとったエキ
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スを材料とした化粧品です。私はラ・フランスの枝のエキスが、皮膚にどんないい影響を与えるか
というのを調べました。
皮膚の細胞から見た化粧品の機能ってなんだろうとみますと、例えば、美白というのは細胞の視
点から見ると、色素細胞がメラニンをつくりすぎなければいいのではないか、新陳代謝、増殖をよ
くしてやればしみが消えるのではないか、真皮がコラーゲンやエラスチンをよくつくってくれたり
すれば、しわやハリが少し改善するのではないか、こんなふうに考えることができます。
実際にどうやって研究するかといいますと、こういう小さな穴がたくさんあいたプラスチックの
Ⅰ ワークライフバランスイノベーション
第1部 平成21年~23年度報告書
入れ物で細胞をかいます。底に細胞を貼り付けて、上に細胞の栄養が入っている培地というものを
入れてやります。これを37℃ぐらいに温めておくと細胞が増えてきます。この培地の中に、例え
ばラ・フランスの枝のエキスのようなサンプルを入れて、毒性はないか、細胞の増殖に変化がないか、
細胞のつくる物質に変化がないか、を調べていきます。
クルすることによって、県内の農家さんの要らない物をさらに付加価値をつけて有意義に使ってい
こうというわけです。
なぜこれが化粧品に使えるのかというと、アルブチンを含むからです。アルブチンは、メラニン
Ⅱ 活動報告
何でラ・フランスの枝なのかと言いますと、剪定された枝つまり廃棄物として捨てる物をリサイ
産生を抑える物質で美白に効くということが知られています。色素細胞を使って実際にメラニンを
作らないようになるか調べてみました。そうしたら確かに、ラ・フランスの枝エキスを入れると、
メラニンの産生が抑えられました。次に、メラニンはつくらないけど角化細胞が死んでしまったと
かいうと問題になるので、毒性がないかを調べてみました。そうしたら、角化細胞がよく増えてく
れました。枝のエキスの代わりにアルブチンを入れてもやはり角化細胞は増えてくれました。とい
うことは、アルブチンには角化細胞を増やす効果があるのではないか。アルブチンのこの効果は今
まで報告されていないものです。ラ・フランスの枝エキスはとても化粧品に向いている材料だとい
うことで、特許の申請をしまして化粧品が開発されました。日本経済新聞さんが紹介してください
ました。来年、山形県内の温泉旅館やホテルなどの観光施設のほか、ドラッグストアなどで売り出
す計画をしております。
も行いました。潰れたりして使えなくなった、普通に売れなくなった物をリサイクルして、もう1
回使おうとしたものです。角化細胞にサクランボエキスを添加すると、細胞間物質の遺伝子発現が
増加する。ということは保湿とか、バリア機能の向上などに効く。これもやはり今まで誰も見つけ
ていなかったことなので特許の申請をしまして、これは山形新聞さんで紹介していただきました。
山形発の新しい化粧品の材料として使えるのではないかと今、考えております。
どんな研究も同じだと思うのですが、結構、面倒でした。何回もちゃんと確定できるかやってき
ました。でも、身近なものに思いがけない価値があったり、思ったことと何か違う結果があったり、
こういうことがどんどん出てきます。やはり、トータル的には研究というのはおもしろい。それは
山形にいてもできます。今、女子高校生の方で、「やってみたいな」ということを考えている方がい
たら、進んでみていただいてもいいのではないかと思います。ありがとうございました。
149
Ⅲ 資料編
山形県内の農産物をさらに付加価値を高めようということで、もうひとつ、サクランボに関して