2011 環境報告書 - 香川大学

2011
環境報告書
E N V I RON M E N TA L R EPORT
ダイジェスト版
香川大学 環境報告書 2011 ダイジェスト版
CO NTENTS
学長挨拶 ・・・・・・・・・・・・・・・・・1
大学概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・2
環境配慮の方針 ・・・・・・・・・・・・・・3
特集 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
浅海生産環境に関する研究
生物生息空間としてのため池管理
タンポポ調査2010
・・・・・・・・・・・10
環境研究活動の紹介
樹木の化学成分に関する研究 鉛フリー圧電材料の開発
環境教育による人材育成
・・・・・・・・・11
環境に関連する授業の紹介
生物多様性とその保全 ・・・・・・・・・・・・11
国際的な環境貢献
インドネシアにおけるファルカタの 植林地におけるアグロフォレストリー
および廃ファルカタ木材の利用
環境負荷の低減活動
・・・・・・・・・・・12
マテリアルバランス
二酸化炭素排出量
編集後記 ・・・・・・・・・・・・・・・・13
WEB
本編は、香川大学ホームページに掲載していますので、そちらをご覧ください。
http://www.kagawa-u.ac.jp/public/report/report/
環境報告書の対象範囲等
[環境報告書対象キャンパス]
全キャンパス
(職員宿舎及び神山団地
(農学部樹林地)
を除く)
[対象期間]
2010年
(平成22年)
4月∼2011年
(平成23年)
3月
[ガイドライン]
・
「環境報告ガイドライン
(2007年版)
」
(平成19年6月 環境省)
・
「事業者の環境パフォーマンス指標ガイドライン
(2002年度版)
」
(平成15年4月 環境省)
・
「環境報告書の記載事項等の手引き
(第2版)
」
(平成19年11月 環境省)
・
「環境報告書の信頼性を高めるための自己評価の手引き」
(平成19年12月環境省)
2
環境報告書 2011
ENVIRONMENTAL REPORT
香川大学長
今年3月に発生した東日本大地震により被害を受けられた皆さまに心よりお見舞
い申し上げます。
未曾有の大震災を目の前に、大学として何ができるのか、何をしなければならな
いのかを私たちは改めて強く考えさせられました。香川大学としても教職員・学生
による義援募金活動や本学附属病院の医療スタッフの派遣等様々な形で支援を
行っています。東日本大震災からの一日も早い復興のため、私たちは引き続き支援
を続けてまいります。
大学の使命は、
「 知」
の創造と伝承であり、教育・研究活動を通しての社会貢献で
す。香川大学は、
「 世界水準の教育研究活動により、創造的で人間性豊かな専門職
業人・研究者を育成し、地域社会をリードするとともに共生社会の実現に貢献する」
を理念としており、
「 知」が価値を持つ時代、21世紀にふさわしい大学になろうとし
学長挨拶
ています。本学は、6学部、8研究科
(2専門職大学院を含む)
を擁し、専門分野のバラ
ンスが良い総合大学に発展しており、それらの機能を活かし、瀬戸内の温暖な気候
と豊かな自然にはぐくまれた地域環境の保全から、グローバルな地球環境保全まで
幅広く貢献していく所存です。
大学は社会に支えられた存在であり、社会のニーズに応えながら発展していかな
ければなりません。地域社会との連携と協力は香川大学の発展に欠かせないもの
です。本学は
「地域に根ざした学生中心の大学」
をめざし、自ら考え、行動できる創造
性豊かな人材の育成や創出した知的成果を通じ、地域の環境保全への貢献及び地
域の文化、産業、医療、生涯教育などの振興に努めております。
香川大学環境報告書2011は、本レポートの報告対象である2010年度が第10
回生物多様性条約締結国会議において名古屋議定書が採択された歴史的な年で
あったことから、生物多様性をテーマとして取り上げました。瀬戸内海の干潟や県内
に多く点在するため池など香川県及び周辺地域の特徴ある環境・生物多様性の保
全に貢献する教育研究活動を特集としてクローズアップしました。また、環境に対す
る意識の高い学生を育成するための教育や、環境保全につながる研究活動、教育
研究活動で発生する環境負荷の低減活動についても広く紹介しています。
今後も、読みやすく充実した内容に改善してまいりますので、多くの方にお読み
いただき、忌憚のないご意見をいただければ幸いです。 ENVIRONMENTAL REPORT
環境報告書 2011
1
大学概要
大学概要
学校名 : 国立大学法人 香川大学
学 長 : 一井 眞比古
教職員・学生数 : 10,610 名
役
員
9名
教
職
員
1,861 名
学
部
生
5,750 名
生
856 名
愛媛大学大学院連合農学研究科
31 名
大
教
学
育
学
部
院
附
属
学
校
園
2,103 名
土地・建物面積 : 土地 950,640.20 ㎡
建物 283,682.77 ㎡
※ 2010 年(平成 22 年)4 月 1 日現在
キャンパスマップ
④ 三木町農学部キャンパス
① 幸町キャンパス
教育学部 / 法学部 / 経済学部
地域マネジメント研究科
香川大学・愛媛大学連合法務研究科
農学部
工学部
⑥ 教育学部
③ 三木町医学部キャンパス
医学部
2
環境報告書 2011
ENVIRONMENTAL REPORT
附属坂出小学校 / 附属坂出中学校
附属幼稚園
⑤ 教育学部
附属高松小学校
附属幼稚園高松園舎
② 林町キャンパス
⑦ 教育学部
附属高松中学校
⑧ 教育学部
附属特別支援学校
⑨ 農学部附属農場
⑩ 庵治マリンステーション
環境配慮方針
[基本理念]
香川大学は大学憲章に基づき、豊かな自然環境を有する瀬戸内圏における知の拠点として、世界水準の教
育・研究活動を通し、環境配慮に関する活動を広く発信します。また、環境活動の面でも中核となり、地域
及び地球全体の環境保全に取り組み、持続的な社会の発展に貢献します。
[基本方針]
1. 環境教育を重視する大学をめざす
2. 環境に関する研究活動を推進する大学をめざす
環境に関する基礎的な知識や技術を有し、
環境に関する先進的な研究及び地域に密着
取り組みを率先できる人材及び環境に関す
した研究を推進し、環境に関する科学の発
る高度な専門性を有する人材を育成します。
展と環境問題の解決に貢献します。
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4. 人にも環境にもやさしい大学をめざす
3. 地域と共に歩む大学をめざす
教育・研究活動において、省エネ、省資源、
環境に関する研究成果や情報を地域に発信
廃棄物の適正管理・削減・再資源化、グリー
し、地域社会との連携をはかるとともに地
ン購入の推進及び化学物質の適正管理等を
域の活性化に貢献します。
実施し、環境負荷の低減に努めるとともに
環境マネジメントシステムを確立し、エコ
キャンパスをめざします。
ENVIRONMENTAL REPORT
環境報告書 2011
3
瀬戸内圏研究センター
一見 和彦 准教授
瀬戸内海は身近に浅海領域が広がり、多く
の島々が点在する多様な環境を持った生産性
の高い豊かな海域です。瀬戸内圏研究センター
では、干潟を含めた浅い海(深さ 30m 程度ま
での海)の研究を行っています。この海域は、
魚介類が産卵し、稚魚が育つ大変大事な場所で
す。
2002 年からは干潟を中心に、食物連鎖の出
発点となる低次生産者(植物プランクトンな
ど)の研究を行っています。海は小さな生物か
ら食物連鎖が始まります。小さな生物が、たく
さん生息していれば、大きな生物もたくさん
調査船「カラヌスⅢ」と
生息できることになります。したがって、海
一見 和彦 准教授 岸本 浩二 技術職員
水温、日射量、栄養物質量などの環境が変化
したとき、この食物連鎖の出発点になってい
る小さな生物がどのように反応するか調査す
ることは大変重要です。
干潟の代表的な生物としてアサリがいます。アサリはこの 20 年位全国的に減少する傾向がみられていま
す。しかし、この原因は正確には分かっていません。そこでまず、人がどの位のアサリを採っていき、干潟
にいるアサリの量がどのように増減するのかを高松市の新川・春日川河口干潟で観察しました。3 年位前ま
では1㎡当り数千個のアサリがいましたが最近は数百個まで減りました。原因の一つに、採り過ぎというこ
とが考えらます。潮干狩りシーズンの 4 月中旬∼6月中旬に人がどのくらい採っていくかを調査しました。
その結果、この2ヶ月間で約 4,000 人が干潟を訪れ、1 人平均4kg ほどのアサリを採っていくので、潮干
狩りによって 16t ほどのアサリが採られたことが分かりました。一方で、アサリは成長が速い生物で、大き
なアサリがたくさん採られても稚貝がたくさん残っていれば、次の年には
前年の生息数まで復活することもわかりました。しかし現在、干潟で稚貝
が育たなくなっています。アサリの減少原因については、今後、継続して
調査していく必要があります。
これまで、生物の多様性を色々な干潟で観察してきました。有明浜(観
音寺市)の干潟は、非常にきれいな遠浅の干潟です。きれいな干潟には生
物があまりいません。また、汚すぎる干潟にも生物は住めません。適度に
汚れた干潟に生物はたくさんいるのです。つまり、生物量と種の多様性を
考えると、きれいなところには少なく、適度に汚れると生物量、多様性と
もに増え、汚くなるとふたたび減少するという傾向がみられます。
4
環境報告書 2011
ENVIRONMENTAL REPORT
香川県下の様々な干潟でも生物量と多様性を調べてみると、ある程度汚い方
が色々な生物がいることがわかります。アサリは比較的汚い干潟にいる生物な
ので、干潟の汚染度の指標になります。 今回観察を行った新川・春日川河口干潟にはアサリを含めたくさんの生物が
います。干潟をどのような状態にすることが、種の多様性が一番上がるのか、
その指標になる観測結果を得ることで、生物多様性の研究に貢献できればと考
えています。
昔、公害で汚染された瀬戸内海も現在はとてもきれいな海になりました。し
かし、魚が捕れなくなりました。なぜそのようなことが起こっているのか、様々
な要因が考えられます。1つは捕り過ぎの問題。また、干潟や藻場のような浅
場の面積が少なくなってきたため、稚魚が育つ場所が減少してきたこともあげ
上から カニの幼生
られます。また、南方系の魚、プランクトンが瀬戸内でも見られるようになり、
海洋プランクトン
ビドゥルフィア
環境が大きく変わってきています。このようなことから、瀬戸内海の魚の減少
に何が影響しているのかを今後も調査していきたいと考えています。
干潟ウォッチング
2010 年 7 月 18 日、小中学生とその保護者(30 名程度)を対象に「干潟ウォッチング」を開催しました。
(香川県と共催)
午前中、新川・春日川河口干潟にて生物の採取、
観察などを行いました。その後、高松港から本学の調査船「カ
ラヌスⅢ」に乗船し、干潟沖でプランクトンの採取、船上観察を行いました。午後からは、庵治マリンステー
ションにて、
「瀬戸内圏の干潟生物ハンドブック」を利用して採取した生物を観察したり、アサリやアナジャ
コを使った実験を行いました。
干潟ウォッチングには研究室の学生も参加し子どもたちのサポートをしています。自分の研究を分かりや
すく説明するのは難しいことで、学生にとってもいい勉強になっています。
水産教室
2010 年 7 月 9 日、直島小学校 5 年生 31 名と教師 4 名が参加
する「水産教室(環境教室)」に講師として参加しました。(香川
県水産課が主催)
直島町琴反地海岸で干潟観察、生物採取を行った後、
小学校の理科室で生物の観察や実験、15 分のミニ授業
を行いました。子どもたちもとても楽しそうに参加し、
干潟生物の観察
干潟の生物の多様性について学びました。
瀬戸内圏の干潟生物ハンドブック
2011 年 2 月に「瀬戸内圏の干潟生物ハンドブック」が刊行されました。
干潟や、干潟で一般的に観察できる生物について写真入りで分かりやすく解
説しています。構成としては、食物連鎖を意識して顕微鏡サイズの小さな生
物から魚・鳥類まで順番に掲載してあります。また、干潟生物を使って出来
る実験方法なども掲載しているので、干潟観察だけでなく、授業や、夏休み
の宿題にも活用することができます。
(香川大学瀬戸内圏研究センター
庵治マリンステーション 編集)
ENVIRONMENTAL REPORT
環境報告書 2011
5
工学部 安全システム建設工学科
角道 弘文 准教授
香川県にはため池がたくさん存在します。それは、香川県の年間降水量が少ないこと、河 床 勾配が急な
ため川の保水量が少ないことにあり、古来より地域の水源確保のためにため池が作られてきました。
ため池は、農業用水はもちろん防火用水として活用されるばかりではなく、天然の湖沼の少ない瀬戸内圏
において、天然湖沼の代わりに多様な動植物を育む貴重な空間でもあります。
この 5 年ほど年 1 回、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定されている三本松高校の理数科の
2 年生に、高校近くのため池(安鹿下池)においてため池の役割について指導を行っています。
このため池は浅場(なだらかな傾斜の水際)が存
在する独特なため池です。浅場を持つということは、
水を放流すると水位が下がり、雨が降ると水位が上
がるというように、人が行う管理の影響を非常に受
けやすいということでもあります。浅場が存在する
ため池には色々なタイプの植生が生育するため、環
境が豊かになります。しかし、このような多様な生
物を
物を支え
支えるだ
るだけの
けの環境
環境の基
の基盤が
盤がある
あるため
ため池が
池がどん
どんど
ど
物を支えるだけの環境の基盤があるため池がどんど
ん減ってきているのが現状です。
ん減
減ってきているのが現状
現状です。
6
環境報告書 2011
ENVIRONMENTAL REPORT
浅場にいる生物の中で肉食のヤゴがどれくらい採れるか
は、ため池全体の多様性を測る物差しの一つです。肉食の生
物がたくさんいるということは、それを支える生物がたくさ
んいるということになるからです。
SSH では、ため池で遊んだこともなく、ため池について詳
しく知らない現代っ子の高校生たち 1 人 1 人がゴム製の胴
長を身につけ、タモ網を持ってため池に入りヤゴなどを採集
します。採集した生物は高校に持ち帰り、図鑑などを利用し
て種名などを調べます。この実習を通じて、ため池の環境が
角道 弘文 准教授
いかに多様な生物を支えているかを学習してもらいたいと考
えています。
ため池は農業用水として使われることが多いため、基本的に農家の人たちによって管理されています。堤
防の草刈り、池干しや池さらいなどです。人の手によって適度に管理されることで、 ため池の環境はよい状
態に維持されていると考えられています。しかし農家が減少していく今、ため池の環境を保全するためには
一般住民にも支えてもらう必要があるのではないでしょうか。それには、ため池の多面的機能が住民に理解
されることが重要です。
ため池が管理されなくなり放置されると、土砂が入り、枯死した水草などが除去されないままに堆積し・
・・
これを繰り返し、長い年月が経過するとため池は湿地化してしまうといわれています。おそらく,ため池に
比べて単調な環境になってしまうのではないでしょうか。
これからは、ため池の管理をどの程度、どんな方法で行なっていくことで、地域の多様な生物を支えるこ
とが可能になるかを明らかにしていく必要があると考えています。
深場
浅場
水位変動
ENVIRONMENTAL REPORT
環境報告書 2011
7
教育学部 理科領域
末廣 喜代一 教授
「タンポポ調査・西日本 2010」は身近な花である
タンポポの分布を調べることで、調査に参加した方々
が身の回りの自然環境に関心を持ち、その変化に目を
向けていくことを目的とし、西日本一帯で行なわれて
います。香川県では教育学部生物学教室内に「タンポ
ポ調査・西日本 2010 香川県実行委員会」の事務局を
置き、教育学部生物学教室の 4 年生 2 人と「香川植物
の会」のメンバーが中心になり調査を行いました。
1980 年と 1981 年、その 10 年後の 1990 年には
カンサイタンポポ
高松市でタンポポ調査を行っていましたが、今回は香
川県全体を対象としました。20 年間で高松市内でのタ
ンポポ分布がどのように変化したか、県全体では外来種がどの程度分布しているのか興味がありました。
香川県では他県に比べて在来種の種類が少なく、カンサイタンポポとシロバナタンポポくらいです。そこ
で、在来種のタンポポ(カンサイタンポポ、シロバナタンポポ)と外来種のタンポポ(セイヨウタンポポ、
アカミタンポポなど)がどのように分布していて、以前の調査からどのように変化したかを主に調査するこ
ととしました。
「タンポポ調査・西日本 2010」調査用紙(図1)に、タンポポのあった場所、頭花の形などを記入し、
花と一緒に事務局へ送っていただきます。今回の調査では 8,376 ものサンプルが集まりました。実際に花
を観察し、総苞外片の形からタンポポの種類(在来種、外来種、雑種)を分別します。これで判別できない
ものについては、花粉の状態を観察します。在来種は花粉の大きさが均一なのに対して、外来種は大きさが
バラバラという違いがあります。
1980 年から 1990 年の調査でも高松市街地に外来種が拡がってきていることが分かっていましたが、今
回の調査でさらに外来種の分布が拡大していることが確認できました。(図2)最近は市街地が広がり、住
宅地と農地が混在しているため、タンポポも在来種と外来種が混在しています。外来種の拡大の様子は、市
街地の拡大を追いかけるように拡がっていくことが分かりました。
8
環境報告書 2011
ENVIRONMENTAL REPORT
外来種タンポポの分布拡大と都市化に関する議論は 1970 年代か
ら行なわれています。土壌条件からみると、在来種のカンサイタン
ポポは弱酸性の土壌、外来種のセイヨウタンポポは弱アルカリ性の
土壌に分布しています。また、カンサイタンポポは湿った土地を、
セイヨウタンポポは乾燥し、有機物量の少ない土地を好みます。都
市化によって外来種が好む環境が拡がったことが、外来種の分布拡
大につながったと考えられます。
末廣 喜代一 教授
末廣
喜代
教授
また、タンポポそのものの散布力の違いもあります。外来
種の種は、在来種の種よりゆっくり落ちるため、風に乗って
遠くまで飛んでいくことができます。発芽率でみると、在来
種は周りの背の高い植物が枯れる秋に発芽し、春に開花する
のに対し、外来種は春以外にも発芽し、開花します。このこ
とも外来種の分布が拡大する要因になります。
今後も 5 年毎にタンポポ調査を継続的に行っていくことで、
外来生物の状況把握につながっていくと思います。香川県の
タンポポは種類が少ないため、一般の方でも在来種、外来種
の区別をつけることが容易です。ぜひ、調査に参加していた
だき、一般の方にも生物多様性について意識してもらえたら
セイヨウタンポポ
と思います。
図 2 外来タンポポの割合メッシュ
図 1 「タンポポ調査・西日本 2010」
調査用紙
ENVIRONMENTAL REPORT
環境報告書 2011
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環境研究活動の紹介
樹木の化学成分に関する研究
農学部 応用生物科学科 生物資源利用学 鈴木 利貞 准教授
地球上の総バイオマスの約 90%は樹木などに由来する
森林バイオマスです。これらには、再生可能、リサイクル
可能、クリーンであるという特徴があります。今後、私た
ちが豊かな生活を持続していくためには、森林による環境
保全機能を維持しながら、森林バイオマスを持続的に有効
利用していくことが必要です。私たちの研究室では、樹
コルク樹皮から調製した発泡体
鈴木 利貞 准教授
木の化学的利用法を研究しています。
∼ダイズさやのリグニン成分とリグナンの存在∼
∼バイオディーゼル燃料用植物ジャトロファの
有効成分の探索∼
ダイズのさやにおいて、収穫する前に種子が成熟し、
バイオディーゼル燃料として注目されている生産原
さやがはじけて中の種を蒔いてしまうタイプと、はじ
料の一つにジャトロファ(Jatropha curcas )があり
けないタイプがあります。さやの堅さに関与している
ます。この種子の搾りかすの活用方法として、毒性成
と考えられるリグニン、リグナンを調べ、さやのはじ
分を活用し、害虫防除や抗菌剤に使えないかというこ
けやすいタイプ、はじけにくいタイプの化学構造の違
とを研究しています。
いを調べています。
農学研究科 1 年 柏原 弘実 さん
農学研究科 1 年 江藤 恭子 さん
鉛フリー圧電材料の開発
工学部 材料創造工学科 馮 旗 教授
圧電材料とは、力を加えると、変形するとともに、物質がプラスとマイナスと
分極して電気が発生する物質です。逆に電気(電圧)をかけると、物質が変形し、
力が発生します。この特性は、圧力センサー、車の加速度センサー、超音波発生器、
ロボットのアクチュエータなどに広く利用されています。
現在実用化されている圧電材料は、人体有害の鉛が 60%以上含まれている
PZT(Pb(Zr,Ti)O3) ※1という物質が使われており、環境にやさしい鉛フリー圧電
材料の開発が急務となっています。
圧電材料の仕組み
当研究グループは、鉛フリーの BaTiO3 ※ 2 などを高性能圧電材
料に利用する研究を進めてきました。ナノサイズの結晶を同じ方
向に並べる技術を開発し、高性能を実現できることを確認しまし
た。
※1 PZT(Pb(Zr
:チタン酸ジルコン酸鉛
x, Ti1-x)O3)
x= 0.525 近傍の組成において最も大きな圧電特性を示す。
※2 BaTiO3:チタン酸バリウム 極めて高い比誘電率を持つことからセラミック積層コンデン
サなどの誘電体材料として広く使用されている、電子材料の
1 つである。
10
環境報告書 2011
ENVIRONMENTAL REPORT
研究室メンバー
前列右から2番目:馮 旗 教授
環境教育による人材育成
環境に関連する授業の紹介
[生物多様性とその保全 ]
教育学部 理科領域 末廣 喜代一 教授
地球上には多くの種類の生きものが生存していることによって、私たち人間は多くの恩恵を受けています。
例えば、私たちが毎日食べる食べ物はすべて生きものです。私たちは、数多くの種類の生きものを食べ物と
していることによって、生活を豊かなものにしています。それにもかかわらず、人間の活動の増大により野
生生物の生息環境が大幅に改変されることによって、多くの生きものが絶滅の危機にさらされるようになっ
てきています。また、いっぽうシカやイノシシなどの特定の野生動物が増加して農業被害を与えることが多
くなっています。
この授業では、地球上の生物多様性が長い歴史の中で育まれてきたこと、近年になって多くの生きものが
絶滅の危機にさらされるようになってきたこと、生物多様性の保全に対するさまざまな取り組みが行われて
いることなどを紹介するとともに、生物資源の枯渇、野生生物による被害、外来生物の侵入などの野生生物
問題など、生物多様性に関わるさまざまな問題を取り上げました。
国際的な環境貢献
インドネシアにおけるファルカタの植林地におけるア
グロフォレストリーおよび廃ファルカタ木材の利用
農学部 応用生物科学科 生物資源利用学 片山 健至 教授
香川大学農学部では工学部とともに、インドネシアの東ジャワペンナングナンナショナルベテラン大学
(スラバヤ)およびボゴール農業大学(ボゴール)との国際共同研究で、インドネシアにおけるファルカタ
(Albizzia falcataria )の植林、アグロフォレストリーおよび廃材利用に関する研究を進めています。
ファルカタは短い期間(7∼8年)で驚異的に成長して木材として利用可能になります。ファルカタの
成長期間中は、樹木の間で農作物を栽培できるようにしたいと考えています。これをアグロフォレストリー
といいます。これにより、環境保全に留意しながら木材生産することと植林地の地域住民の経済を両立さ
せるということが可能となります。
ファルカタを製材する際にでる廃材または木くずは化学
処理し、加熱することで液化させ、型枠に入れ冷やすこと
でプラスチックのように生まれ変わることができます。ま
た、廃材や樹皮からのバイオエタノール製造やペレット生
産にも取り組んでいます。
このような樹木の植林、アグロフォレストリー、木材の
有効利用により、地球温暖化を抑制し、エコロジーとエコ
ノミーを調和させて、植林地の発展途上国の住民に福利を
もたらすような持続的発展を目指したいと考えています。
インドネシアにおけるファルカタのアグロフォレ
ストリー研究協議会による植林地の視察
前列一番右:片山 健至 教授
ENVIRONMENTAL REPORT
環境報告書 2011
11
環境負荷の低減活動
マテリアルバランス
2010 年度(平成 22 年度)のエネルギー使用量、二酸化炭素排出量など、香川大学の教育・研究活動に
伴う環境負荷の状況は次の通りです。また、学内においてリユース・リサイクルも実施しています。
電力
34,293 千 kWh
ガス
590 千 m3
ガソリン
16.6kL
灯油
15.8kL
軽油
20.4kL
重油
1,151kL
水
241 千m3
紙
101t
INPUT
教育・研究活動
学内で
リユース・リサイクル
循環水
37 千 m3
OUTPUT
廃棄物
1,503t
二酸化炭素 CO
18,584t-CO2
2
総排水量
180 千m3
二酸化炭素排出量
香川大学の二酸化炭素排出量は以下のとおりです。
都市ガス(天然ガス)
プロパンガス(LP ガス)
灯油
20,000
ガソリン
18,584
17,712
17,154
17,559
軽油
CO2 排出量(t-CO2)
16,275
重油
電力
15,000
2010 年度排出係数
10,000
50,000
0
2006
年度
12
環境報告書 2011
2007
年度
2008
年度
ENVIRONMENTAL REPORT
2009
年度
2010
年度
電力
0.407 t-CO2/ 千 kWh
重油
0.0189 tC/GJ
軽油
0.0187 tC/GJ
ガソリン
0.0183 tC/GJ
灯油
0.0185 tC/GJ
プロパンガス(LP ガス)
0.0161 tC/GJ
都市ガス(天然ガス)
0.0136 tC/GJ
編集後記
今年は 3 月 11 日の東日本大震災という未曾有の災害とそれに伴う原子力発電所の事故の影響により、電力需要バラ
ンスが東日本だけでなく全国的に崩れ、
日本全体がエネルギー問題について考える年となっています。香川大学としても、
省エネルギー、節電についてより真剣に取り組んでまいりました。
香川大学では、
「香川大学省エネルギー対策に関する規程」「エネルギー管理に関する基本計画」を定め、エネルギー
削減目標達成に向けて活動を行っております。2011 年 3 月には「エネルギーの使用の合理化及び温室効果ガス排出削
減に関する改善方針」を策定し、さらなるエネルギー使用量及び温室効果ガス排出削減を目指しています。
「香川大学環境報告書 2011」(以下、報告書 2011)では、香川大学の環境活動の PDCA サイクルが有効に機能し、
継続的に改善する仕組みが確認できる内容といたしました。今後も、省エネルギーをはじめとする環境負荷低減活動を
着実に推進したいと考えております。
また、報告書 2011 の対象年度である 2010 年度は、第 10 回生物多様性条約締結国会議が日本で開催され、生物多
様性が非常に注目を浴びた年でありました。報告書 2011 では、本学で行われている数多くの生物多様性に関する環境
研究・環境教育活動、および地域への貢献活動を多数掲載いたしました。
最後に、報告書 2011 の作成・公表に当たりましては、多くの教職員・学生の方々、そしてエコレポート委員の方々
にご協力、ご尽力いただきありがとうございました。
今後とも、香川大学での環境に関する取り組みを持続・発展させるために、学内外の皆様方のより一層のご理解とご
協力をお願い申し上げますとともに、ここに厚く御礼申し上げます。なお、より詳しくは報告書 2011 をご覧ください。
2011 年(平成 23 年)9 月
エコレポート委員会委員長
教育改革・計画担当理事 伊藤 寛
●
表紙について
近年、身近にみられた野生生物が絶滅の危機
にさらされています。
香川県レッドデータブックに掲載されている
生物を表紙にとりあげ、生物多様性を考えるきっ
かけとしました。
◆ エコレポート委員 ◆
宮﨑 英一 教育学部教授
岸野 薫 法学部准教授
①
③
⑧
②
④
⑨
⑥
⑩
⑤
⑦
古川 尚幸 経済学部教授
平尾 智広 医学部教授
清水 秀明 工学部教授
鈴木 利貞 農学部准教授
⑥
小掠 静夫 環境部長
⑪
環境報告書に関するお問い合わせ
香川大学
①八チョウトンボ
⑦カワセミ
②ハヤブサ
⑧ゲンゴロウ
③アゲハチョウ
⑨ニホンイタチ
④タンポポ
⑩タガメ
TEL:087-832-1122 FAX:087-832-1136
⑤カラスアゲハ
⑪シオマネキ
E-Mail:sisetuki@jim.ao.kagawa-u.ac.jp
⑥ニッポンバラタナゴ
環境管理室 エコレポートチーム
ENVIRONMENTAL REPORT
環境報告書 2011
13
香川大学キャラクター
細い線で「K」をモチーフにした動物(人)を描
いています。
「夢・個性」の発見に向けて、人一
倍の「嗅覚(アンテナ)」を磨き生かし、知識、
探求、思考、発想、実行を重ねながら、筋肉を
身につけて魅力的な人となり社会に巣立つこ
とをイメージしております。
香川大学 エコレポート委員会
〒760-8521 香川県高松市幸町1番1号
TEL087-832-1122 / FAX 087-832-1136
http://www.kagawa-u.ac.jp/public/report/report/
この冊子は再生紙及び大豆インキを使用しています