第31号 - 国際耕種

< 第 31 号 >
2000 年 10 月 1 日
APPROPRIATE AGRICULTURE INTERNATIONAL CO., LT D
AAINews
国際耕種株式会社
〒194-0013 東京都町田市原町田 1-2-3 アーベイン平本 403
TEL/FAX: 042-725-6250
Email: aai@sk9.so-net.ne.jp
シンドバッドの国から∼オマーン人は働き者?∼
去る4月にオマーンのマスカットに赴任してから、早半
7月31日
年が過ぎようとしています 。6月頃の焼け付くような暑
某大臣実弟
さとかわって、朝夕は心地よいほどの気候になってきま
課長補佐
本省課長
した(といっても日中は35∼36度ありますが)。オマ
ーン国は湾岸産油諸国の中では原油埋蔵量の残り少ない
国の一つです。そういった事情もあって、国王のスルタ
ン・カブースも「石油のみに頼っていてはならない」と、
課員 課員
船長
産業の多様化推進には極めて積極的 です。サウジアラビ
アや UAE 等の近隣の産油国と比べて、ナショナルの人口
比率が高く(オマーンナショナル170 万人、外国人6
0万人)かつ国民1人当たりの GDP は約4分の1であり、「ペイが多少悪くとも働かなくてはならない」
との危機感は非常に高いと言えましょう。オマーナイゼーションも「高給の外国人より自国民の雇用を」
という 文脈から、まずお役所から進められており、政府関係機関ではすでに90%以上の職員がナショ
ナルになっているとのことです。一方、民間企業ではオマーナイゼーションは遅々として進まず、せい
ぜい20∼30%程度でしかないとのことです 。一説には、主たる労働者 であるインド人を対象とした
民間企業の給与水準がオマーン人にとっては低すぎるからだ、との指摘もありますが 、当たらずといえ
ども遠からず、であると思います。
枕が長くなりましたが、マスカット周辺のオマーン人はかなり働き者と言えましょう。右の写真は、極
めて暑い真夏の作業風景です。マングローブ の苗畑を手
9月27 日
作業で作っているところです。彼らにしてみれば3Kの
課長補佐代理
仕事なのでしょうが 、どんな仕事もオマーン人がやらね
ば、と考えているようです 。一方、南部のおおきな都市
課員
である ゾファール州のサラーラでは、そんな 仕事はオマ
課員
ディシュダシャー
ーン人がするべき仕事ではない 、というのがいまだ 主流
のようです 。課長補佐がかぶっているのがクンマ(オマ
ーン帽)で、この上にマサルという 巻き布を巻き、ディ
シュダシャーを着れば正装になります。この巻き布がサ
ディシュダシャー
ウジや他のアラブ諸国のように長くなく 短いので、きり
学校前の交通安全おじいさん
っとした印象を受けます。千夜一夜物語で出てくるシンドバッドはスー
ルかソハールだかの出身だそうですが、
船乗りにはだらーんとしたかぶ
り布よりも作業しやすかった事でしょう。
交通安全係のおじいちゃんも
「背に腹はかえられんワイ」とばかりに、炎天下で頑張っています。物
価は思ったより高いとの印象があり、ほぼ UAE と同じか少し高いぐらい
です。恐らく、ものがドバイから運ばれて来る分高くなるのでしょう。
給与は安いわ(お役所では大学新卒で約12万円)、物価は高いわ、で
オマーン人庶民の暮らしは決して楽では無いことでしょう。しかし、全
ての人とは言いませんが、何かを学んでやろうという意識は高く、自腹
でも資格を取って、キャリアアップを図ろうとしているような人間もい
ます。労働も祈りの一部と考えている彼らの姿にはかえって教えられる
こと大の毎日です。ジョーク好きで大らかに 笑っている 彼らに幸多か
ディシュダシャー
れ!
(在オマーン:東海林)
-1-
幸せの青い鳥はどこに∼あなたの欲しかったものは何ですか?
第 1 回:
はじめに
∼「どうして、青い鳥が欲しいの?」、とチルチルが聞きました。
「幸せになるためだよ。青い鳥を見つければ、必ず幸せになれるんだ。
」
、と魔法使いが答えました。∼
このページでは、2 年前の 10 月から「自然と人間の共生∼21 世紀への道」を 6 回シリーズで、1 年前から
は「ODA と NGO の連携∼より効果的な国際協力を目指して」というシリーズを連載した。2 つのシリー
ズは一見無関係のように見えるが、実は「我々はいったい何をめざして生きているのか」あるいは「持続
可能な開発とは何か」という点でつながっているテーマである。今回のシリーズ「幸せの青い鳥はどこに」
は、まさに今、我々がめざしているものを探る「旅」になる、そんな予感を持ってこの新しいシリーズを
始めようとしている。これら三シリーズはたまたま「三部作」になろうとしているが、それはどこかでそ
うなる「必然性」があったのかもしれない・・・・・
さて、このシリーズの中では、
「豊かさ」とか「夢」が重要なキーワードになるだろう。さらに本シリーズ
では、日本や日本人の現在と将来、こどもの未来、教育、ということも重要なテーマとなるだろう。我々、
国際耕種のメンバーは国際協力の仕事に携わっているので、日本と途上国両方を体験する機会を与えられ
ているが、現在の日本を見ているといろいろなことを考えさせられる。たとえば、経済的にあるいは物質
的に豊かになることは、それと引き換えに「心の豊かさ」を失うことなのか?、それが「幸せになること」
の実態なのか? (そしてそれは途上国でも同じなのか?)。だとすれば、我々は何のために「豊かさ」を
求めているのか?、我々はわざわざ不幸になるためにこれまで努力してきたのか? 等々・・・・・
ところで、
「豊かさ」とは何か? 逆に「貧しさ」とは何だろうか? 「貧しさ」を表す尺度としてドナー側
は「貧困指標」という指数を使うことがある。それは、家計収入、カロリー消費量、病院や学校の数、農
村電化率、トイレの普及率、識字率、等々であるが、実は「貧しさ」は物質的な尺度では測れないのでは
ないか? 我々がイキイキと豊かに生きていくためには「夢」を持つことが必要である。始めから夢や希望
を持たない人はいないだろう。しかし、その夢を持ち続ける
ことができなくなった時、あるいは夢を現実にするステップ
が見つけられない時、人は絶望のフチに立たされるのではな
いか。そういう意味から、「貧しさ」とは生きることの夢や
希望を持つことが難かしい状態である、と言える。
そして、そんな時に必要なのは、自分(庶民)に無関係な、
遠大で抽象的な「将来の計画」ではなく、とりあえず到達可
能な目標と、それを実現するための「自助努力と支援」であ
ろう。まず、具体的な目標が持てて、その目標に向かって自
ら努力してよりよく生きようとする行動が始められること、
そして、そんなふうにがんばっている人たちに対する、正し
い、適確な支援がまわりからされる時に、人は生きる希望の
光を見い出すことができるのではないか?また、「支援」が
永遠に続くのではなく、いずれは将来に向けて「自立」する
こと、を念頭においた支援であるべきだろう。
さて、その「夢」とか「希望」の実態は何なのか?
このシ
リーズは、そんな夢探しの旅へのいざないである・・・・・
∼
「この国には何でもある。だが希望だけがない。
」
(希望の国のエクソダス・村上龍) ∼
-1-
シリアにおける農業普及ならびに普及員訓練
第1回:
今、なぜ農業普及が大切か?
「人づくり、国造り、心のふれあい」とは、技術協力の目的を端的に示したキャッチフレーズであり、
この言葉どおり開発途上国の国造りの主体となる人材の養成が技術協力事業の基本となっている 。専門
家派遣 やプロ技といったタイプの技術協力では、これまで当該国に定着可能な技術の開発と政府職員へ
の技術移転に多大なる時間とエネルギーを注いできた。ところが、こうした協力はその成果が目に見え
にくく 、途上国サイドからも 「より目に見える成果」を期待される場面が増えている。したがって、途
上国の自立支援を目的とした 「人づくり 」と、技術協力の成果を生産現場にまで普及し「目に見える成
果」を生み出すための活動を両立させるために 、普及活動の重要性が高まっていると 考えられる。さら
に、開発調査における近年の案件のソフト化という 流れの中で、農業普及ならびに農民支援分野 を担当
する専門家の役割が益々重要なものになってきている。これは 、農業農村開発計画の策定に当たって基
本となる零細農民の所得向上という目標を達成するには、彼等に適切な技術・情報・知識を伝達するた
めの農業普及活動が極めて重要な役割を果たすことになるからである。
次に農業普及活動 を実施する普及員の役割に着目すると、わが国における農業普及の歴史を見ても明ら
かなように、従来の技術指導を中心とした役割から近年では農民の組織化 による村おこしの推進役とい
った役割の重要性 が増している。こうした活動においては、農業生産性の向上、生活環境の整備、指導
者の育成等を総合的かつ計画的に展開する必要があり、そのためには 地域の実態に即して普及員 が指導
チーム を編成してその任に当る場面も増えている。こうした動きに、技術協力分野における参加型開発
の浸透も加わり、普及員が参加型手法を身につけることの重要性も増しつつある。さらに、技術移転を
実施する専門技術員としての役割や、農民の組織化 におけるコーディネーターとしての役割も期待され
ており、こうした幅の広い人材を育成するために人的資源開発関連活動も益々重要になりつつある。
我々はこれまで、パキスタン、ラオス、ブラジル等で実施された開発調査での経験を通して、途上国に
おける 様々な農業普及活動の現状を学んできた。各国に共通した農業普及上の問題点 としては、組織上
の問題点や普及員の能力の問題が挙げられる。また、
「普及活動に必要な施設が不十分である 」
、
「 普及機
関と試験研究機関との連携が不十分である」
、あるいは「効率的な普及活動に必要な基礎情報が普及所レ
ベルで整備されていない 」といったことが多くの途上国で指摘されてきた。こうした中で、我が社は中
東のシリアにおける農業普及改善計画に長期専門家を派遣し、現在も普及員の教育・訓練計画に対して
引き続き専門家を派遣している。そこで 本シリーズでは、農業普及ならびに普及員訓練に関わる我々の
これまでの経験を紹介すると共に、今後の課題についても検討していきたいと思う。
Ministry of
Agriculture
RESEARCH NEEDS
Various Departments
Concerned
RESEARCH
Data Compilation
and Analysis
TRAINING
Local
Office
Basic
Information
TECHNOLOGY
Mass Media
Training Courses
District
Office
COOPERATIVE
EXTENSION
Demonstration
Training Courses
PRODUCTION
Producers
Village Chief
Model Farmer
Contact Farmer
Data Collection Flow
シリアにおける農業普及の概念
Extension Activity Flow
ラオスで提案した普及 の流れ
-1-
ミニ・シリーズ:
その1:
パーマカルチャー要素技術(1)
全体を視野に入れて設計する
パーマカルチャー とは、植物や動物の固有の資質と建造物やその場所の自然的特徴を活かし、最小限の
土地を活用して、田舎ではもちろん 都市部においてさえも、生命を支えていけるシステムをつくり出し
ていくことである。AAINews 第 21 号で、ジンバブエにおけるその一例を紹介したが、今回からミニシ
リーズ としてパーマカルチャーの要素技術について紹介する。まず、個々の技術に入る前に、全体をつ
かんでおくことが 必要となる 。それは、個々の構成要素(家、道路、池、畑、森等)が独立して存在し
ているわけではなく、各要素 がお互いにどのような関係にあるかが大切になってくるからである 。いか
なる気候やどんな場所においても適応しうるパーマカルチャーデザインに共通した基本原則があり、そ
れをおさえた上で、全体の用地設計に移ることが大事なポイントとなる。
基本原則
内容
各構成要素の相互関連的位置
づけ
各構成要素を相互に助け合う位置関係に置くことで、互いに効率よく機能する。
各構成要素がもつ多数の機能
の発揮
各構成要素の適切な選択と適材適所が必要。
各構成要素の機能の相互補完
各構成要素の機能は、
(特に水、食物、エネルギー等の需要について)互いに補完しあう。
例えば、太陽熱温水器のある家は、温湯器付きの薪ストーブを備えることで日照がない時
でも温水を供給できる。
効率的な活動エネルギー計画
外部から流入してくる風や日差し等のエネルギーを効率よく取り込み、利用する。
例えば、家の周りの風除けは風は遮るが冬の日差しは妨げないような位置に設ける。
例えば、池が灌漑、家畜の飲み水、防火、養魚場等、多数の機能を発揮できるように配置
する。
化石燃料資源よりも生物資源を利用する。例えば、化学窒素肥料を使う代わりに窒素を地
中に固定するマメ科の植物を植える。
生物学的資源の利用を重視
外からの自然エネルギー(水、太陽、風等)を用い、再利用によりエネルギーを循環させ
る。
例えば、貯水池を高台に置き、水槽や発電装置等の利用点を沢山作ることで水を効率的に
利用する。
エネルギーのリサイクル
土地の大部分を効率的に利用し管理する。
例えば、様々な種類の植物を階層的に組合わせた森をつくることで管理も省力化できる。
小規模集約システム
自然の遷移に逆らわず、既存のものを利用したり、育ちやすいものを植える。例えば、除
草や耕起するばかりでなく刈払うことでマルチングの効果を生む。
植物の自然遷移の活用と加速
単一作物ではなく多種作物栽培を行い、多様な有益種の植物を用いることで、耐病虫害性
が増す。
生物学的多様性
生物学的多様性の優れる接縁部において自然の地形を最大限活用する。例えば、池の形や
深さを変えることで違う種類の植物が、浅瀬と池底では違う種類の魚を飼うことができ
る。
接縁(二つの環境条件の接触
面)効果
次に、用地設計をする際に、全体の計画をしっかり練ることが重要な作業である。そのポ
イントは次の通り。
1)その土地の資源や立地条件からくる制約を確認するために観察と調査を行う。
これは、基幹構造物(通路、家屋、柵等)の位置を決定する際の情報ともなる。
2)無理に手を加えるのではなく、自然の地形や生態系を最大限活用する。
3)地勢・地形を読み、太陽光や風・空気の流れをつかむ。
海や湖のような大規模な水や植生(植物の蒸散作用や防風・緑陰等)
を利用し、土壌の改善(植物の利
用、家畜のコントロール、
機械による改良、有機物の
投入)を考える。
4)水資源を集中・分散、貯留
することにより有効に活用
する。
5)火災、地震、洪水等の災害
による損害や損失を少なくす
るために防風・防火林の設置を考える。
水
-1-
エネルギーの流 れ
太陽光
風