西洋史研究マニュアル

西洋史研究マニュアル(第3版)
序章
研究に必要な前提条件
みなさんの中には、これまで高校で学んだ世界史の授業などを通じ、歴史とは人物や事
件を教科書の記述や先生の解説どおりに「理解」し、それを覚える(ときには丸暗記する)
ものだというイメージをお持ちの方もおられるでしょう。実は、教科書や歴史入門書に記
述された事実や解釈は、広く承認されている通説をまとめたものにすぎないのです。通説
といっても、個々の史料の異なる読みとり、新しい理論・概念・方法の適用、異なる視点
の採用などによって、驚くほど簡単に掘り崩される場合があるのです。大学で歴史を研究
するというのは、教科書等に記された「事実」をたくさん覚えるのではなく、自らがその
掘り崩し作業をすることといっても過言ではありません。
以下、卒業論文に結実するであろう西洋史研究のための第一歩を踏み出す実習内容を紹
介していくことにします。最初に、研究に必要な前提条件をみていきましょう。
1
日本語および外国語の修得
わたしたちが学問をする場合、言語は不可欠な道具です。言語には単に伝達の道具とし
てだけではなく、思考の道具としての性格があります。人間は言語を使うことができるか
ら、ものが考えられるし、言葉が存在していなかったら、思考はありえません。その思考
の道具としての日本語について配慮してほしいのです。着実的確に言葉を使って相手を納
得させる工夫、整然と反論し巧みに論駁する技術などが求められています。自分の言いた
い事柄をはっきり認識し、まとめあげる力や、相手の言い分をよく理解し、もし必要があ
れば問い返したりする力と読み書き能力との関係は、重要視されなければなりません。わ
たしたちは言語の訓練を、伝達の道具だけではなく思考の道具として行わなければなりま
せん。思考の道具としての日本語の修得を怠れば、外国語の修得もむずかしくなります。
外国語を読むことは、西洋史を学ぶ人にとって必要不可欠です。というのは、西洋史を
研究するにあたって重要な文献がいつまでも翻訳されなかったり、翻訳者の能力が不十分
であるために、不正確で難解な翻訳ができあがってしまう場合があるからです。
そこで、外国語を読めるようになるための方法を二点に絞って紹介しましょう。
① 最初は外国語に慣れることが目的なので、内容がわからなくても最後まで読むこと
です。知らない単語にぶつかってもその都度辞書を引いてはいけません。頭の中にある単
語のストックをフルに使って読んで行って、頻出の単語で知らないのがあれば辞書を引く
程度でよいのです。それでも不思議なもので、最後の頁まで辿りついて振返ってみると、
その本が何を言おうとしていたかがボンヤリと浮かび上って来るものです。100 ~ 200 頁
ぐらいの本を、3、4冊読み切れば、必ず洋書に慣れるでしょう(以上の多読と平行して、
演習を通じての精読が必要なのは、言うまでもありません)。
② 必ず左から右へ(頭から)読んでいって、うしろから戻って日本語に訳すようなこ
とをしてはいけません。頭に入りにくければ、何度も左から右へ読み直して下さい(でき
れば声を出して )。外国語を日本語に直して、その日本語を理解するという態度を続ける
限り、外国語で読み、考えたことにはなりません。初めは漠然とした理解しかできないか
もしれませんが、ともかく外国語は外国語のまま理解しようと努力することが大切です。
-1-
2
論文作成に必要な能力
論文作成には、アイデア力、忍耐と持続力、構想力、表現力という四つの能力が必要で
す。これらの能力は、それぞれ別個に自ら育つものではなく、論文作成のための作業の四
段階、すなわち、着想、研究ないし調査、構成、表現、において求められる諸能力であり、
論文を書く過程はこのような諸能力の鍛錬期間となります。
1)着想
まず、テーマを決めるための着想が必要です。その着想のためには、自分の関心や疑問
について何とか解いてみようとする問題意識を持たなければなりません。また、何がなぜ
問題になってきたかというような問いの流れについて知ることも重要です。自分の関心や
疑問が、現在の学問の問いの流れの中でどのような地位にあるかを自分で捉えることが卒
論の課題になります。
2)研究ないし調査
「論文は足で書くもの」といわれるように、資料収集には大変な肉体労働を要します。
また、筆写は自分の頭で吟味する過程であり、ノートを取ることができるのはその内容を
本当にわかった人だけです。わかったと思うことをなるべく多様な形式なり図式なりの多
様な表現手段でもって表します。論文ひとつ読んでも、自分なりの言い回しとか自分なり
に工夫した別の体系なり何なりで表します。そうやって見ると、自然に不思議と穴が見え
てくるとか「こんなことへも発展させられる」ということが出てきます。
3)構成
論文を構成するには、論理の必然性が必要です。しかし注意すべきは、連想型の論理に
陥らないことです。あることをなんとなくある言葉で表現すると、言葉というものの連想
力のために、連想される概念のほうにいつの間にか移行していき、あたかも推論が進んで
いるかのような言い回しになってしまいがちです。この点の弱さを鍛えなければなりませ
ん。
4)表現
文章化する上でまず大切なことは、相手に誤解されないような正確さです。そして“plain
language”で考えていくことも大切です。普通の人なら何をどう考え、何が問題になるか
ということを想定し、普通の言葉で言い表してみます。それを基にしながら、論理を表現
で積み上げていきます。
3
批判的姿勢
これから歴史を学ぼうとする者にとって重要なことは、研究史が論争の歴史であり、こ
れまでの通説・歴史像・時代像は常に必然的に仮説の地位にあるため、それらは積極的に
挑戦され、あらゆるところから批判されるべきである、と認識することです。
批判は、通説が選択した史料の解釈にはもちろん、選択されなかった史料の取り扱いに
も向けられ、また、史料に依拠して構成された歴史像・時代像とともに、通説が依拠する
概念・理論・方法にも向けられます。さらに、通説・歴史像・時代像の奥にあってそれを
窮極的に支えている価値意識そのものに及びます。
とりわけ現代からの問いかけによる批判的姿勢が必要かつ有用なのですが、それは歴史
認識の出発点は現在にあることに深く関わっているからです。過去の固有の特徴を発見し
-2-
ようとすることと、現在の問題関心を強く意識することは、決して無関係ではありません。
歴史家は自らの価値意識(それも時代および社会のそれと深く結びついた)にしたがって、
史料を選択・解釈し、叙述を行わなければならないのです。
第1章
歴史文献を調べる
歴史文献を調べるとき通常、書物だと情報が遅れがちです。研究は絶えず続けられてお
り、その最新の成果は論文という形で公表されるのが一般的であり、文献数は書物を凌駕
しています。その上、各論文の冒頭部分には、しばしば研究史(後述)があり、ときには
研究史や研究動向だけの紹介論文もあります。
歴史文献を調べるには、学術雑誌に載るような論文を最初に探すことです。ただし、探
す文献は「学術的」でなければなりません。端的には、文献に注が付されているか否かが目
安となります。注とは論述する根拠を示すものであり、その根拠を追確認して初めてその
論述の真偽が確定するのです。
その論文をいきなり図書館で探すことはできません。論文名だけがわかっても掲載雑誌
名と巻号数(あるいは刊行年月)がわからなければなりません。論文を書誌データも含め
て主題から検索するのに、CiNii(サイニイ)が最も役立ちます。
1 Ci ii と Webcat Plus
CiNii は、以前あった MAGAZINEPLUS を模様替えしたもので、九州大学附属図書館の
ホームページから簡単に入ることができます。
例えば、西洋史のテーマで「宗教改革」について調べる場合(2008 年末時点; 以下も同
様)、キーワードの部分に「宗教改革」と入力して検索すると、590 件ヒットしました。け
れども、590 件すべてに目を通すのは大変です。そのときは「ルター」や「プロテスタン
ト」を加えたり、また刊行年月を指定して絞り込むことができます。指定していない場合
は新しい順に検索結果が表示されますので、最新の研究動向から知ることができます。ま
た一部ではありますが、本文へリンクされている論文もあり、実際に論文を閲覧・印刷す
ることもできます。さらに大学のパソコンから検索すると、より詳細な情報(文献書誌・
引用情報など)も閲覧できます。
CiNii で興味のあるテーマの論文を見つけたならば、誌名、巻号数などを記録して OPAC
で検索し、実際に手にとってみましょう。そして雑誌論文に挙げられている参考文献に目
を通してみましょう。そこから芋づる式に有益な資料が見つかるかもしれません。
また、西洋史学研究室にある『史学雑誌』の各号末の文献目録には日本における最新の
論文名が掲載されていますし、毎年 5 月の特集号(「回顧と展望」)では前年の日本におけ
る歴史学の研究成果・動向が紹介されています。
次に、本や雑誌を検索するには、Webcat Plus もしくは Webcat が便利です。本の検索
と同時にその本がどこの大学図書館に所蔵されているかもわかり、たいていの本は附属図
書館を通じて図書館相互貸借制度によって送料負担で一定期間取り寄せることができま
す。
-3-
2 Google と Google Scholar
Google は、一般検索エンジンとしてよく知られていますが、西洋史研究にも役立ちま
す。情報量が多いことと、玉石混淆であることが問題ですが、ヒット頻度の高い順に並べ
てある各ファイルを上位から最低数十件は根気よく開いてみることです。また、情報表示
の仕方が、一つの代表的な情報を掲げ、その他の同じような内容の情報は副次的に 3 文字
下げて掲げられ、内容が重なる情報が一つのブロックとして見やすく表示されています。
これによって、調べる際の手間がいくぶん省けます。
例えば、「百年戦争」と入れてみると、約 360,000 件ヒットします。しかし、これでは
量が多すぎるので、絞り込んでいく必要があります。「論文」を加えると、約 41,500 件に
減り、さらに「歴史」を加えると、約 33,300 件になります。また「エドワード 3 世」と
入れると約 3,750 件に絞り込まれます。そして、さらに「フランドル」を入れると、約 358
件に絞り込まれます。似たようなページは自動的に表示されないので、実際には 202 件が
表示されています。この時点で一つずつ見ていきます。ただし、 CiNii などと違い、学術
文献だけが検索されるのではないので、関係のないものも多数出てきます。用語の意味を
調べるときなどに使えることもありますが、必ずしも信頼できる情報とは限らないことに
注意して利用しましょう。
他方、学術論文だけを検索できるのが Google Scholar です。学術論文のみの検索なので、
Google よりも有効でより確実といえるでしょう。Google Scholar は分野や出版社を問わず、
学術雑誌、論文、書籍、要約、記事などの学術研究資料を検索できます。 Google のホー
ムページから 、「サービス一覧」をクリックすると様々な検索機能が出てきます。その中
から Scholar を選んでクリックすると Google Scholar の検索画面が現れます。
例えば、「百年戦争」と入力すると約 59 件ヒットしました。さらに絞り込むためには
Google 同様、「エドワード 3 世」や「フランドル」を加えるとよいでしょう。論文のタイ
トル横に Full [email protected]大学附属図書館学術
情報リンク「きゅうと LinQ」からの本文閲覧が可能になります。
タイトル横に何もなかった場合、論文が見つかったなら、そのタイトルをクリックしま
す。国内の論文の場合、CiNii の検索画面にリンクしているので、そこから Webcat Plus で
論文掲載雑誌などの図書館所蔵を調べることができ、また一部ではありますが、本文へリ
ンクされている論文もあるので、実際に論文を閲覧・印刷することもできます。さらに大
学のパソコンから検索すると、より詳細な情報(文献書誌・引用情報など)も閲覧できま
す。また、外国の学術論文に関しては、そのタイトルをクリックすると、その国の学術論
文検索サイトにリンクしています。一部は国内のものと同様に、本文に直接リンクしてお
り、実際に論文を見ることも可能です。
なお、Google に匹敵する情報量を有している検索エンジンに Yahoo!があります。Google
と重なる情報が多いもののときには異なる情報があるので、検索を試みたほうがよいでし
ょう。
3 外国語版の AllTheWeb、Google、Yahoo! など
AllTheWeb は 36 の言語に対応し、英語以外の特殊文字を持つ欧米諸語に強いと評価さ
れ、日本語でも検索できます。「百年戦争」で検索すると 2,300 件でした。それに対して英
語で “hundred years war” と入力してみると、約 208 万件ヒットし、フランス語で “guerre de
cent ans” と入力すると約 93 万件ヒットしました。日本語検索と比較すると、本場の文献
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・歴史情報の多さがわかります。そのほか Google や Yahoo UK & Ireland や Yahoo France
で検索しても同じようにその差を実感できます。このことからも、現地の言語を習得する
ことが大切だということがわかります。
4
Amazon.com
洋書の検索には、Amazon.com という書籍販売のサイトが大変便利です。アメリカ、カ
ナダ、イングランド、ドイツ、フランス、中国、日本など各国毎のサイトがありますが、
現時点で最もサービスが充実しているのは、アメリカのサイトです。
Amazon アメリカ・サイトで、“hundred years war” と入力すると、Books カテゴリーで
11,379 件ヒットします。そこでカテゴリーを絞って History カテゴリーで検索すると、5,668
件ヒットします。さらに Historical Study カテゴリーで検索すると、487 件ヒットします。
その中から自分に必要な文献を見極めなければなりません。アメリカ・サイトでは、近年、
掲載許可を得られた本に限りますが、本の目次や索引、要約、入力した語を含むページの
抜粋に目を通すことができるようになってきており、その件数は著しく増えています。そ
れらに目を通すことによって、必要な内容かどうか、また学術的であるかどうかを判断す
ることができ、洋書選択に役立ちます。
第2章
情報整理の方法
第1章では文献収集の方法をみてきました。ここでは集めた情報を活用するための整理
法についてみていきます。せっかく集めた情報もそのままで放置していては、いざ必要な
ときに必要な情報が見当たらないという事態を招きかねません。自ら思考する時間を確保
するためにも情報にアクセスする時間はなるべく節約したいものです。第2版までは梅棹
忠夫『知的生産の技術』(岩波書店、1969)をもとにカードを中心とした情報整理法を学
んできましたが、第3版からはパソコンによる情報整理法に全面的に切り替えて説明を試
みることにします。
1
読書について
本を読むときなんと言っても重要なのは、ともかく一度は全巻を通読することです。そ
れは通読が著者の考えを正確に理解するための基本的条件のひとつであるからです。なぜ
なら著者は全体としてひとつの構想のもとに本をまとめており、その構想は全部読むこと
によってはじめて理解できる性質のものだからです。そして、読むときはこつこつ読むよ
り一気に読んだほうが理解という点では確実さが高いでしょう。それは一気に読んだほう
が前の内容もよく覚えていて、構築されたひとつの世界が鮮明な像を結びやすいからです。
また、後で読み返したときすばやく内容を把握できるように、重要な箇所とか書き抜いて
おきたい箇所などに心覚えの傍線を引いたり、欄外にちょっとしたメモや見出し、感想な
どを書き入れておくのがよいでしょう。書き抜きをしたりするのは通読し終わった後にし
ないと、本を一気に読めず十分な理解ができません。借りた本の場合には付箋などをつけ
ておくとよいでしょう。
さて、通読後一冊の本を確かに読んだことを自分自身のために確認しておくという作業
は、読書経験を定着させるためにとても有効です。具体的作業として、(1)読み終えた
ことをその本のどこかに記入(日付など )、(2)読書データのパソコンへの入力(著者
名、書名、発行年、出版社、ページ数など書誌データを記入)といったことです。これを
行っておけば、借りて読んだ本でも読書データは残るので、必要な場合には、書誌データ
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を頼りにすぐ検索することができます。また、読書データを入力する際は、Excel を利用
することをお勧めします。Excel であれば、入力した読書データの一覧を一目で確認する
ことができますし、他の利用も容易になります。
読んだ本の内容を、論文を書くときなどに役立てようと思ったとき、読んだ曖昧な記憶
のままでそれを利用することはできません。そこで、読書後、 Word(や一太郎など)で
ノート代わりに文書ファイルをつくるとよいでしょう。書く内容は何でもかまいません。
全体の要約でも、感想や批評でもよいのです。書く内容は、最初読んだときに印をつけた
ところにもう一度目を通し、なぜそこに印をつけたかを改めて考え、その結果本当にノー
トしておく価値があると思われたところだけをノートに取っていけばよいでしょう。
以上のように、パソコンへ入力した読書データや本のノートは、いつでも確認できるよ
うにファイル名を揃えるとかしてフォルダ毎に整理しておくとよいでしょう。一方で、
Excel や Word に入力した文章は、念のためにメモ帳などテキストファイルでも保存して
おくことをお勧めします。テキストファイルで保存しておけば、Excel や Word のバージ
ョンが新しくなっても、内容を確認することが困難になることはありません。
読書において大事なのは、著者の思想を正確に理解するとともに、それによって自分の
思想を開発し、育成することです。著者の文脈をたどってノートを取るだけでは、結局そ
の本一冊をそっくりノートに取ることになり、むだなことです。自分にとって大事なとこ
ろ、自分が役立たせたいと思うところを是非ノートに取るとよいでしょう。
2 素材蓄積法としてのパソコンによる内容要約レジュメの作成とその使用法
以前は、手書きのカードによる情報整理の仕方を紹介していましたが、膨大な量の情報
を整理するには、パソコンの方が優れています。また、パソコンを使って整理した情報は、
手書きのものに比べて、削除・追加・組み替えの作業が簡単かつ自由に行えます。その中
でとくに重要なのは組み替えないしドッキング作業です。出来上がったいくつかのレジュ
メを段落や節毎に組み替えていくことによって、一見なんの関係もないようにみえる段落
と段落の間に、思いもかけぬ関連が存在することを発見できます。それこそがパソコン作
成のレジュメ利用の最大の意義です。それでは具体的に紹介しましょう。
1)レジュメの書き方
① 文章をそのまま入力する:まず、自分が大切だと思った箇所をそのまま Word で入
力します。一文入力する毎に改行し、一字下げて次の文を入力します。そして段落の最後
に著者名、発行年、ページを典拠データとして付けます(例:[梅棹忠夫(1969) , 54])。
段落の変わるところで一行あけ、次の段落に移ります。
② 記号を付す:各文章の関係をわかりやすくするために、文と文とのつなぎとして記
号を付します。例えば 、「→」は上の文の順接ないし発展を示し 、「←→」は逆接を示し
ます。そのほか「=」や「∵」などが使えますが、あまり学術的でない記号は避けた方が
よいでしょう。
レジュメを作るとき、長い文をそのまま入力したり、多く事項を入力しすぎるとレジュ
メが長くなり、結局何が大事だったのかわからなくなってしまいます。文を選択したり、
途中を「……」の記号を付して省略したりして、簡潔にまとめることがコツです。また、
出来上がったレジュメは全体的に見直し、自分に必要な情報がきちんとまとまっているか
を確かめましょう。
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2)ファイル整理
① データ入力したファイルに付けるファイル名は、第一次ファイルという意味で「梅
棹忠夫(1969)」、「UmesaoT( 1969)」のように著者名と発行年が望ましく、著者名のアイウ
エオ順またはアルファベット順に累積版として集約しておくと、あとあとの利用にも役立
ちます。
② 場合によっては、それらのファイルから項目毎に取捨選択した第二次ファイルを作
成し、キーワード(ときにはサブ・キーワードを加える)をファイル名として、キーワー
ド(サブ・キーワード)毎にファイル整理をします。
3)データ集約(ドッキング作業)
研究テーマの近い著者たちのファイルまたは或る共通のキーワードのファイルの中か
ら、データ集約のためのドッキング作業を次に紹介します。
① どのようなデータの集約がいま求められているのかを意識しながら、ドッキング作
業の対象となる各ファイルを予め見直し、不要なデータを削り、ファイル名も末尾を変え
てドッキング用のファイルを作成します。ここで大事なのは、ドッキング作業を容易にす
るために、極力枝葉を削ぎ落として幹だけにすることです。削りすぎたとあとから気づい
た箇所は、最終確認などの際に元のファイルから復元すればよいのです。
② パソコン画面中央に罫線を引き、二分割した画面の左側に、ドッキング用ファイル
のうち通常核となるファイルを選んでコピー&ペーストで貼り付けます。右側には、それ
に準ずるものや一つ目のファイルに接合しやすいファイルなど選んで同様に貼り付けま
す。
③ 関連のある項目同士は、同じ行に揃え、容易に左右を比較照合しやすくした上で、
必要な項目を左側に集約していき、右側の残りは削除します。ここで注意すべきは、各段
落末尾に付されていた典拠データを忘れずに一緒に移動することです(段落の一部だけを
移動する場合は、新たに段落末尾の典拠データをコピーして加えます)。なお、右側のフ
ァイルだけを色塗りしておけば、左側への移動箇所が分かりやすかったり、また作業を途
中でやり直す場合に色塗り箇所だけを右側に戻しやすくなったりします。
④ ドッキングし終わった左側の色塗り箇所を元の黒に戻し、念のためにファイル名を
変えて保存した上で、右側に三つ目のファイルをコピー&ペーストして、同様の作業を繰
り返します。
⑤ 作業を繰り返していくと、左側のデータが長くなりますので、切れ目のある箇所で
ドッキング用データ1、2、3とかに分けて、さらに作業を続けていけばよいでしょう。
うまくいくと、それらが第1章、第2章、第3章とかにまとめられていきます。あるいは、
データがあまりにも多く全体が見えにくくなりデータの集約がダイレクトにはしにくい場
合は、[梅棹忠夫(1969), 202-206] にある「こざね法」を応用して、さらに圧縮したドッ
キング用データを作成し、データ編集し、あるいは、ほぼ章節名ないしそれに類するキー
ワードだけで構成を練り、その上で全体の集約をはかるとよいでしょう。
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第3章
研究史をおさえる
歴史を知るには、「歴史の歴史」を知ることが不可欠です。一般的に言って、どの歴史
のテーマであれ、これまで多くの歴史家によって当該テーマに関する研究の積み重ねがあ
るわけで、その歴史研究の歴史(研究史)もしくは史学史を学ぶことが、本格的に歴史研
究を始めるに際して是非とも必要となります。
毎年ヨーロッパ史実習 I の最終段階で、実習生は三つのグループに分かれ、それぞれ
が選択した西洋史の基本テーマに関する文献・史料(主として邦語)の検索・収集・講読
という一連の基本的訓練を行い、その際とくに研究史をおさえることの重要性を認識しま
す。その学習内容は個別的であるので、今回は本マニュアルに盛り込まないことにし、こ
こでひとまず西洋史研究マニュアル(第3版)を結ぶことにします。
参考文献
丸谷才一「考えるための道具としての日本語」
『朝日新聞』2002 年 7 月 31 日号(夕刊)
[以下の手順でインターネットから入手できます:九大附属図書館ホームページ →
Research → 調べもの・新聞記事 → 聞蔵 II ビジュアル(朝日新聞の記事索引データベー
ス)].
清水幾太郎『本はどう読むか』講談社[現代新書]、1972 年.
斉藤孝「〈 付録〉学生のための論文作法 」、斉藤孝・佐野眞・甲斐静子『文献を探すた
めの本』日本エディタースクール出版部、1989 年.
佐伯胖「若手研究者の力量形成について」『UP』115 号、1982 年5月.
梅棹忠夫『知的生産の技術』岩波書店[新書]、1969 年.
望田幸男・芝井敬司・末川清『新しい史学概論』昭和堂、2002 年.
作成者
(2003 年度ヨーロッパ史実習 I 受講生)安部真代、柘植祐二、藤吉香奈、丸山結香子、
向原宣臣、宮崎洋平、八木しのぶ
(2004 年度ヨーロッパ史実習 I 受講生)尾崎健一、浦加奈子、窪田麻弥、佐藤佳子、菅
田富士、杉崎愛、瀬戸正吾、辻田幸四郎、東智紗土、吉見麻衣
(ティーチング・アシスタント)岡部直樹、安部恵里香
(指導教員)山内昭人
改訂第 2 版
(2006 年度ヨーロッパ史実習 I 受講生)上田奈美子、酒井沙織、師村沙希
改訂第 3 版
(2008 年度ヨーロッパ史実習 I 受講生)久間壮泰、陣内力、竹之内理沙、堤真奈美、久
富菜実子
(ティーチング・アシスタント)福永衣里
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