動揺するマノ メータ指示値の読み取り精度

416
生 産 研 究
動揺するマノメータ指示値の読み取り精度
石原智男・井田富夫
1. 緒 言
して読み取る方法, (B)マノメータの導管の途中を絞
液柱マノメータ,ブルドソ管圧力計,あるいは動力計
って変動を小さくしてその平均値を読み取る方法,(C)
のトルク測定用はかり等のように,機械工学上の計測に
任意の時刻に水位の動きをとめてその指示値を採用する
は大なり小なり指示に変動を伴うものが多い.時にはそ
方法,(D)平均値付近に動きをとめてその指示値を採
の変動の振幅が平均値の5∼10%,あるいはそれ以上に
用する方法,(E)なんらかの装置を用いて水位変動の
もおよび,変動の模様もきわめて不規則でその指示値の
時聞的変化を記録する方法等がある.マノメータの指示
読み取りにかなり困難を感ずることがある.かような場
の変動が小さい時はどの方法で読み取っても大差ないか
合その変動の平均値らしき笹を,感じで判断して読み取
ら,マノメータの数,装置全体の定常状態維持の難易に
って測定値としているのが普通であり,したがって得ら
よって(A)または(C)の方法を採用している.しか
れた値が真の平均値にどれほど近ずいているかという点
るに水圧管内の流速測定の際のマノメータ指示の変動は
については疑問がある.
きわめて不規則で,その最大値と最小値との差が100mm
このような問題が最も顕著に表われる例に水車水圧管
を越すことも珍らしくないが,このような場合(A),
内の流速測定の場合がある.水力発電所における流量測
(D)の方法では平均値の判定がきわめて困難である.
定には現在種々の方法が用いられているが,水圧管内の
一方(C)の方法は動きをとめた際の指示値が必ずしも
流速をピトー管で測定して流量を算出するいわゆるピト
測定中の平均値に近いとは限らぬから,普通これを5∼
ー管法がわが国では最も広く採用されている.しかるに
10回くり返してその算術平均値を採用しているが,そ
水圧管内の流れは一般にきわめて複雑で流速の不規則な
の回数の決定については実験的な裏づけがないようであ
変動を伴うことが多い.このおもな原因は流速測定位置
る.(B)の方法は読み取りが容易となるが,絞りの程
の前後にある曲りの影響といわれる.管路の曲りの下流
度によっては指示に時間的遅れが生じて,その平均値が
および上流のある区聞では,流れは旋回流を伴い,しかも
真の平均値に常に一致するかどうかの疑問が残る.(E)
きわめて複雑な変動を示す.この曲りの影響する範囲は
の方法で得た変動記録を積分してその平均値を得るのが
大約その下流側に50D,上流側に20D(Dけ管の内径)
最も妥当であるが,マノメータの数の多い場合には解析
といわれる.(1)しかるに水圧管は地形上数ケ所に曲りの
に大きな労力と時間とを必要とするし,測定中に直ちに
部分があるのが普通であり,しかも直管部の長さが70
その値を知ることができにくいので普通は行われていな
D以上ある場合はほとんどなく,従って管内の流速測定
い.
には,曲りの影響が残っている場所にピト・・一・一管をそう入
これら各種の読み取り方法の精度を調べるには,同一
することを余ぎなくされる.なおこのほかにも上水そう
の変動状態を示すマノメータをそれぞれの方法で数多く
の水位の変動や送電系統の電力動揺等のために流速や水
読み取り,その誤差の度数分布曲線を求めなくてはなら
圧が変化し,このためピトー管の指示(マノメータ水位)
ない.またこの度数分布はマノメt−一タ指示の変動の振幅
に変動を免れることができない.この変動が大きいとき
や周期が異なれば当然異なるはずのものである.しかし
は指示の読み取りがきわめて困難であるが(マノメータ
ながら各読み取り方法の精度の順位は変動の状態にょっ
導管を絞って変動をおさえることはごみ・砂等のために
て余り変化するとは思えぬので,ここでは実際の計測k
マノメータがつまりやすいことから余り行われていな
おこりうる変動のなかでは,最も不規則で振幅も大きい
い).このような場合のマノメータの読み取りにどのよ
と思われる水圧管内流速測定の際のマノメータ指示,お
うな方法が実用上最もすぐれているか,また各読み取り
よび最も規則的な場合に属すると思われる実験室内で入
方法の精度いかんという点についての検討はこれまでな
為的におこした水位変動との:つの場合について各種読
されていなかったようである.
み取り方法の精度を調べ,なおこの結果から,現在水圧
運転状態を一定にしておいてもマノメータ指示の変動
管内の流速測定に用いられている二種のピトー管の測定
が大きい場合,測定値としては変動の時間的な平均値を
精度の比較を行った.マノメt−一一タの指示の変動は水面の
採用するのが普通でありまた妥当であろう.このような
上下振動であり,たとえばブルドソ管圧力計は目盛板の
場合の測定には, (A)変動のままでその平均値を判定
中心に軸を持つ指針の旋回捷動であるから,これを同一一
6
第8巻 第12号
417
tに論ずることはできないが,マノメータの読み取りに限
ソクを水平にした
Nlooo
200
らずいろいろな場合の変動する指示の読み取り精度につ
’・L・て,ここに得られた結果は参考になる点が多いものと
ときのマノS−一タ
2αH。≒95mm
T≒5sec
思われる.
150
2. かなり規則的な変動を呈する指示の読取り精度
(a),(b),(c)の
1GO
ようになった.実
して吊り,小水槽の上下運動によりマノメー一タの水位に
\
測回数はA1は88
50
回,Cloは188回,
7 ’
の指示を前節に
述べた各種の方
法で読み取り,
これを数多く繰
D1は180回であ
一〇AO−O.08−〔}〔}6−〔LO4−O.D2 0 0.02 0.040.06 0.080.10
(a)A1法の誤差の度数分布
40G
変動の周:期丁お
30D
T≒5sec
aHo,ただしHo
は平均値の読
これらの度数分
布は正確にはいわ
100
クの回転速度お
ゆる正規分布とや
よび長さを変え
は,マノメPtタ導管の途中にあるコヅクを,クラyクや
マノメータの全く見えぬ場所で操作することにより行り
や異なるものもあ
一〇.5−〔).4−O.3−0.2−0ゴ O O.1 02 0.5 0.4 05
(b;)Clo法の誤差の度数分布
Niooo
500
た.読取り,クラソクの回転,コックの操作等に個入的
なかたよりとか,癖のはいらぬようにこれらを数入で交
1
200
を求めるのは,労
T≒5sec
力の大きい割に意
味がないと考えら
:径約5m,導管は長さ約1.5m,内径約7mmのビニ
れるので,ここで
lOD
ール管,小水槽の容量は約400c.c・で,これらの水柱の
はすべて正規分布
U字管振動の周期ほ約3秒であった.この装置で得られ
合成されたもので,これに多少回転速度のむらが加わっ
て,いわゆる単弦振動とやや異なる変動を呈するが,実
際の測定に見られる変動に比較すればかなり規則的であ
るということができろ.
2・2実験結果 前述の装置を用いて,水位変動の周
期T≒5sec.クラソクの長さ(≒振幅aH。)=47mmの
場合について.(A1)動揺のままでその平均値を読み取
る方法,(Clo)任意時刻に導管のコヅクを閉じて水位の
動きをとめて得た指示値10ケの算術平均値を採用する
方法,(D1)水位が変動の平均と判断される値に停止する
ようにコヅクを操作して水位の動きをとめて得た指示値
を採用する方法(この場合水位の上昇中と下降中の読み
をそれぞれ1ケに数えた),の各方法で得た測定値の誤
差x・=(hi−Ho)/2aHo(h,=測定値, Ho=平均直≒クラ
れに厳密に適合す
2αHo≒95柵m
@し
槽の.h下運動から誘起される水柱の動揺にU字管振動が
るが,測定回数が
割合少ないからこ
る度数密度かん数
代して行っている.使用したVノメータのガラス管は内
たマノメータ水位の変動け,クラyクの回転によう小水
る.測定聞隔Tノ
た.
200
それぞれクラソ
画転させ,また水位を任意の時刻に瞬聞的に停止するに
換算して描いてあ
=31「b−5Tい(…友)つ
み)の変更は,
ることによって行った.なおクラソクは直接入力により
なろようにいずれ
する度数N・000に
2αHo≒95禰m
よび振!幅(≒
つたが,比較に便
も総数1,000ζ・こ女寸
NiODO
り返した.水位
第1図 実験装置
振幅,)の度数分布
はそれぞれ第2図
2・1実験装置ならびに方式 第1図のようにマノメ
ー一 ^に連結した小水槽を回転するクラソクから滑車を介
動揺を与え,こ
の指示値,aHo=
をなすと見なして
一〇.2
一〇.1
0
0コ 0.2
その度数密度かん
(c)D1法の誤差の度i数分布
数φを求めた・
第2図
すなわち
A1の方法;φ41 =14.44 e−65s・5x2
(1)
Cloの方法;φcio == 2.88 e−26・lx2
(2)
φ.1==5.08e−81・1(x+o。0337)2
(3)
D1の方法;
これを図示したのが第3図である.第2図中の曲線はこ
れらの式から求めた実度数分布曲線で,実際の度数分布
にほぼ一致している.なお第3図の中には,Cloをもと
にして計算した同じ方法の20回の平均値の誤差の度数
密度かん数φC20をも示した.φC10からφC20を求めるに
は,ある測定値1ケの誤差の度数分布が正規分布をな
すときF,すなわちこの測定値の誤差の度数密庭かん数
φが
φ一⊥』L,一(1/’)(x2/の (4)
σ /2π
7
生 産 研 究
418
Nloo。
NtO。o
400
40D
300
2αトlo≒95mm’
2αHo =95
300 T==/5seD.
T≒10
200
[
100
04 、−O.5 −02 −O.1 0 0.1 0.2 e.5 04
一〇・08−°・°4
第3図 各種読取方法の誤差の度数密度かん数
であるとき(xは誤差,oは標準誤差すなわち誤差の2
乗平均の平方根),この測定値Sケの算術平均値の誤差
[email protected]°4°・°8
(a)A・法の誤差の度数
分布(T=10sec)
第
(b) A,法の誤差の度数
分布(T−15sec)
Niooo
験は測定回数が少なか
の度数密度函数φ、は理論的に,
1 1 −(s/2)(x2/c2)
森=。/〆了/デ
5 図
ったのでここでは省略
400
(5)
するが,普通のマノメ
ータの場含と異なり誤
であることを利用して算出した(2).すなわち
C20の方法;φc20=4.07 e−・ 52.2x2
一〇.08 −0.04 0 0.04 0.0&
500
差xを,振幅を基準
ー
(6)
にとって定i義している
また水位変動の周期T=15secの場合におけろD1の
から,第4図の関係は
200
方法による度数密度かん数φD、(T=15)も比較のために
ー
変化しないと考えて
第3図に描いてある.
Z)・(T−・5)の方法;φD、(T−・5)−9・53−284x2(7)
良い.
100
3. きわめて不規則
さて以上のようにして得られた度数密度かん数を積分
な変動指示の読
tnU 0β
一〇.2 −O.1
oZ
0.1
o’2 み取り精度
o,5
3・1実験方法東
第6図D1法の誤差の度数
0.4
分布(T=15) 京電力駒橋発電所の流
02
量測定試験(昭和31年3月13日∼17日)に双孔式ピトPt
巳
管を用いて水圧管内の流速分布の測定が行われたが,こ
第4図測定誤差の確率
の時マノメータに表われたきわめて複雑な水位の変動
することにより,それぞれの測定方法が任意の誤差範囲
を16mm撮影機で記録すると同時に,現場技術者や見
に収まる確率を知ることができる.第4図は横軸に±x
学者等約8名でその平均値を判定して読み取り,これを
の値をとり,誤差が一κ∼十Xの範囲にはいる確率P
を縦軸に描いたものであり,これからT≒5sec,2aHo
くり返して各測定時問中の撮影記録から得た平均値に対
する測定値の誤差の度数分布を求めた.水車の負荷およ
≒95mmの場合,精度の最も高いのはAiの力法で,
びピトー管の衝撃孔(動圧管)の位置は主として水位変
以下D、,C20, Cloの順であることがわかる.水位変動
動の最も大きく表われる点に維持した・マノメータの水
の周期Tが大きくなるとA1およびD・の方法は精度
位変動の大きさは平均流速(1.9∼2.2m/s)の±10%
が高まることが予想される(ただし測定所要時間すなわ
程度(マノメータの目盛の長さで約±50 mm)であり・
ち変動の観察時聞がTより大きい場合).T=10,15:sec
周期は一般にきわめて不規則であった.水位変動の撮影
のA1の力法およびT=15 secのD2の方法の誤差の
記録の1例を第7図(a)に示してある.なお時刻の記
度数分布Ni oooをそれぞれ第5図(a),(b)および
録を正確にするために秒時計をマノメーダと共に撮影し
第6図に掲げた.第5図の場台は測定回数が少ないので
てその値を横軸に採っている.
これをもとにして度数密度かん数を求めるのは無理てあ
任意時刻にマノメー一一 jgの湛管を閉じてその時の指示を
るが,第2図(c)と比較してTの増加による精鹿向
読み取る前節Cloの方法は現地では行わず,撮影記録
上を察知できる.第6図から求めセφD、(T.=15)の確率
から得られた水位変動曲線をもとにして読み取りを行っ
は第4図に描いてあり,同図中のφ1)、(T_5)と比較し
た.撮影時間は30∼100秒であるから図kで適当な時
間間隔(ここでは実際の測定所要時間を考慮して30秒
て精度が高いことがわかる.なお振幅を変えた場合の実
8
419
第8巻 第12号
2Atr
一〆論瀞知一樋、 ≠戦凶・凶鯨
ゴ
2.3
&2
3・2実験結果 変動するマノメータ
の指示の平均値(hm)は,撮影したフィ
ルムから読み取った水位の時聞的変化を
積分して求めた.この値を基準にとり前
2て
節と同じように,(A1)変動のままでそ
100 110 120 150 140 i50 16σ
2,0
の平均値を読み取る方法,(Bi)マノメ
t(5ec>
・(a)
マノメータ水位変動記録(水圧管内の軸対称の2点の流速指示)
e−一
_導管を絞って変動を小さくおさえて
(振幅は五1の約↓旬A1と同様に読み取
る方法, (C1)任意の時刻に水位の動き
をとめて読み取る方法(以上各1ケの読
み取り),(C5)C1の方法で30秒ごとに得
た読み取りの5ケの算術平均値を採用す
(b) 絞りによる水位変動の変化
る方法のそれぞれの読み取り方法によワ
第 7 図
て,得られた数多くの測定値(h,)の誤
之した)の水位の瞬時値を5∼10ケ得るには短かすぎ
差y={(hi−lam)/hm}×100〔%〕の度数分布をそれぞれ第
るわけであるが,撮影時間中と全く同じ変動が撮影後も
8図(a),(b).(c)および(d)に示した.なお実測回
くり返されているものとして読み取り値を得た.
数は,・41は96回,B,は24回, C1は169回, C5は88
回であるが,いずれも測定回数1,000
1Nloco
4GO
に対する度数1V・o・oに換算して描いて
Niσoo
oo
ある.測定回数が比較的少ないから前
節と同じように近似的に正規分布とみ
T20σ
なして度数密度かん数φを求めると.
A1の方法;φAl−0.458・e−o・・657y2
(8)
1GO
B,の方法;φβ1
=0.670e−1・412(y−o・208)2
(9)
、
0
2 4 6 8 10 12
C1の方法;φcFO.136e−o.0578y2
」=⊥一 __」
│10−8−6−4−2
@ 穿(°ん)
(c)C1法の誤差の度数分布
(10)
C5の方法;φcs == O. 215 e−O. 145s・2
N1σOD
(11)
またこれからA,すなわちA,の方法
の2回の平均値およびC・・,C20すな
40
(a)Ai法の誤差の変動分布
わちC1の方法のそれぞれ10回およ
35
び20回の算術平均値を採用する読み
取り方法の誤差の度数密度かん数を求
Niooo
300
†350
めうと(φC10,φC20を求める0)にここ
ではφc5を用いた.これはφciから求
めるより実際の誤差の分布に近いと考
ろ00
P
2 50
⊥
⊥
えられるからである),
250
A,の方法;φ君2二〇.647 e−1. 315y2
⊥
2σ0
!。
L
2/°
(12)
Cloの方法;φclo=0.304 e−o. 290y2
一
(13)
C20の方法;φc2FO.4296−o・579ッ2
(14)
上
“
150
上
00
⊥
100
上
50
ユ
一7−6−5−4−3
一2−1
0
1 2
5
4 5 6 7
一2
一1
0
1
2
これらの値を図示したのが第9図であ
る.また第8図の各曲線はこれらの式
から計算した実度数分布曲線を表わし
ている.φを積分して任意の誤差範囲
3(%)
宴(%)
にはいる確率Pを調べたのが第10図
(b)B・法の誤差の度数分布
(d)C5法の誤差の度数分布
である.この図から,このような複雑
な変動を示すマノメータの読み取りに
第8図
9
420
生 産 研 究
となった.±50mmの大きな範囲(平均纏の土10%)
にわたって不規則な変動をしているマノメータの指示:
を,30∼100秒間も眼で追いながらその平均値を判定す
α5
`ゑ
ることはなかなか困難なことではあるが,その測定値の
74%は誤差yが±1%以内に収まる(第10図)とい
うように予想外に精度が高く,人聞の感じというものが
かなり正確であることが判明した.この読み取りにあk
った人々はこのように振幅が大きく複雑な変動を行うマ
ノメ・一一タの計測に熟練していないことを考えれば,指示二
一5 −2 −1
シ(%)
第9図 各種読取方法の誤差の度数密度かん数
1.O
O.8
0.6
に
O.4
0.2
0 士1 ±2 ‡5 ±4
の平均値の±10%程度の大きな不規則変動が存在する
場合にも,よくその動揺の模様を観察していれば測定時
間中の平均値の読み取りを,=1%の誤差範囲に収める
ことは困難ではないということができよう.
水位の変動の模様が異なれば各読み取り方法の精度も
変化することは当然予想される.そこでマノメータの指゜
示が平均値の上下に比較的規則正しい変動をしている腸
合と,きわめて不規則な変動を呈する場合とで,Al,
7(%)
C・o等の方法の精度がそれぞれどのようにi変化するかを
第10図測定誤差の確率
A・の方法では測定総数の約7%が誤差±1%以内に
前節までの結果から調べてみよう.第2節のxと第3
節のyとは定義が異なっているが,yをXと同様に最
収まるのに反し,Csの力法では41%, Cloの方法でも55
大値と最小値との差を基準にとることに変更すれば近似
%に過ぎず,C20すなわちC・の方法を20回繰返して
的に比較することができる.この差は第4節の場合平均1
得た算術平均値がやっとA1の方法による測定値に比肩
値の約20%に相当しているから(ただしB1を除く),
しうる精度を持つということがわかる.なおB1の方法で
第10図の横軸y〔%〕を5倍して直接第4図と比較す
は,真の平均値より大き目に読み取ることが多く,第8図
ればよい(なおどちらも変動の最大値と最小値との差は
(b)の曲線の中心が右(十側)にずれているが,これは測定
80∼100mmであった).これからA1の方法は不規則1
回数が少ないための偶然の結果であろう.しかしその精
変動の場合より規則的な変動の場合の方が精度が高いこ
度がA1より高いことは当然予想されるところである.
ただBiの方法で問題となることは,導管を絞.,て抵抗
とがわかる.すなわち誤差xが±0.05以内である確
率は規則的な変動の場合約93%であるに反L,不規則,
を与え変動をおさえた場合,限られた測定時間中の指示
変動の場合は74%に過ぎない.これは規則的な変動の
の平均値が真の平均値に厳密に一致するかどうかという
方が平均値の判定を行いやすいことから当然のことであ
点である.これが常にほとんど一致するものなら,変動
ろう.なおCloの方法はAlとは逆に不規則変動の場一
が大きいときは絞りさえすればどの方法で読み取っても
合の方が精度が高くなっているが,これは試験にあらわ・
大差ないわけであるが,絞りの程度によっては指示が変
れた不規則変動は,水位の瞬時値と平均値との差の2乗
動に追随しなくなる恐れがある.この点についての検討
の時間的平均値が,規則的な変動の場合より小さい(換,
はぜひ必要であるが,今回は主として変動しているマノ
言すれば変動の模様が最大値や最小値の付近でやせてと
メータの読み取り精度について調べており,絞りの影響
がった曲線をなしていてそのあたりを占める時間が少な
について結論を出せろほど資料を得ていない.したがっ
い)ことによるものと考えられる.
てここでは第7図(b)にその1例を示すにとどめる.
ここではほぼ同一の最大振幅を持つかなり規則的な変
第7図(b)は導管を外から押しつぶしてその動きをつ
動と,全く不規則な変動との二っの場合について調べて
ぶさぬ時の約半分にした場合とこれを開いた場合とを交
いる.振幅がこれと異なっても規則的な変動の場合に一
互に行いながら撮影した記録で,絞りのため変動の起伏
は,第4図がほぼそのまま適用できることは前に述べー
がなだらかになっていることがわかる.
た.実測上最も問題となる不規則変動の読み取りにおい
4. 実験結果の検討
ては,C1したがってまたClo, C20の読み取り方法は,
以上の実験結果からマノメータの指示が変動している
変動の最大振幅が上例より大きくとも,平均値よりの偏
場含の読み取りには,変動の’ままでその平均値を判定し
差の2乗平均値が小さければ,精度は第10図より向上
て値を得る方法が,普通行?)れていろ読み取りの中では
する.しかしこの場合には一般に変動のままで平均磧を
(測定回数が等しい場含)最も精度の高いことが明らか
判定することも容易となり,Al法の精度もまた向上す
10
421
第8巻 第12号
るから,第10図のお互いの関係に大きな変化は生じな
式の方がすぐれているということができよう.
い.しかも不規則現象の出現の任意性から,偏差の2乗
変動する水位を適当な時間間隔で瞬間的にその動きを
停止し,これをくり返してその算術平均値を測定値に採
用する前述のC・o等の方法は,その測定時聞間隔Tノと,
平均値と最大振幅との比が,今回の実験の場合と大幅に
異なる確率は小さいと考えられるから,第10図の横軸
を最大値と最小値との差を基準に採った誤差に書き換え
た図は,変動の大きさが異なっても不規則変動である限
り近似的に適用できるものと考えられる(最大値と最小
値との差を基準に採ることは厳密には疑問であろうが,
実際に変動曲線を記録しない限り実用上やむを得ない).
なおこれについては,さらに異なる水圧管等で実験をく
水位変動の周期Tとの関係によっては大きな誤差を生
ずる恐れがある.この点を水位の変動が単弦振動をする
場合について検討した結果を次に述べる.マノメータの
水位h(のが
k(t) 一一 H,。{1+8sin(2πt/T)}
なる変動をなすとき(Hoは指示の平均値の読み, aは
振幅),m回水位の動きをとめて得た測定値の算術平均
り返して検計を行うことが望ましい.
値の,Hoに対する誤差scは
ここで第10図の結果を用いて,水圧管内の流速分布の
一繕・i・2πσ写+t°) (・5)
測定に現在主として用いられている双孔式ピ1・・一一管(二
っの衝撃孔を動かして管断面の各位置の流速を測定する
で表わされる.ここにtoは測定開始時刻である. to/T
もの)と,多孔式ピトー管(11∼21ケの衝撃孔が固定さ
=o,n十(1/4), n十(1/8), n十(1/12)(nは整数)の時
れていて各位置の流速を同時に測定しうる
10
もの)とを,読み取り精度の点から比較して
みょう.多孔式では衝撃孔の数だけマノメ
ータを必要とするから,前記A1の読み取
り方法を行うにはその数だけ測定者が必要
となり現地では困難なので普通cloの方法,
すなわち任意の時刻に同時に,すべてのマ
O.5
LN
/)ll
X/aO
一〇.
ノメー一・一タの水位の動きをとめて読み取った
α7¢σ8一クaミ11の所
一一一一
−一一一一一
値の10回の算術平均値を採用する方法を行
一1.0
狽潤^丁=n
狽潤^T=η.+if
一t〆「;ntde
っている,一方双孔式では普通1測点にっ
第11図 Clo法の測定間隔による誤差の変化(sine curve変動)
いてAlの方法で2回読み取っているから
前述のA2の読み取りにあたる・したがって第10図の結
のx/aの変化の有様を示したのが第11図で,図はm
果から明らかに1測点の流速測定におけるマノメー一’一タの
== 10の場合である.この図から測定周期Tノが水位変
読み取りには双孔式の方がすぐれてV・る・ただしこの場
動の周期Tに近ずくと,測定開始時刻toにょっては
合管断面にわたる流速分布の測定所要時間は,双孔式は
誤差が急に増大する場合のあることがわかる.
多孔式の2倍以上必要である.なお両者の読み取り精度
5. 結 語
がほぼ等しくなるような読み取り,すなわち1測点につ
以上マノメータの指示に動揺がある場合に,その平均
値を実用上どのような方法で読み取るのが最も精度が高
いかを実験的に調べた結果を述べた.普通行われている
き多孔式ではC20の方法を,双孔式でex/Aiの方法を用
いる時には,一断面の測定時間は逆に多孔式の方がよけ
いかかる.ただし管内の流速分布の形状が変化しても全
体として流量の時間的な変化がないような場含には・流
量の測定という点で多孔式の方がすぐれており,また同
一時刻の流速分布が得られる大きな長所を持っているか
ら,写真撮影等の方法で水位の時間的変化を記録するな
らば,双孔式では求めることのできぬ資料が得られ,ま
たこれから得た測定値の精度も高し・.しかし現地で短時
変動のままでその平均値を判定する読み取り方法が,予
想以上に精度の高いことを知ることができた点は大きな
収穫であろう.これらの結果から,現在水車水圧管内の
流速分布の測定に使用されている2種のピトー管の測定
精度を読み取り方法の上から比較した.
この報告申,東京電力駒橋発電所における実験には東
電川崎主任技師その他の関係者のご援助を受け,また動
揺するマノメータの読み取りに,春日屋(中央大学),
間のうちに測定値が得られぬのは不便であり,また解析
鈴木(電力中央研究所),川崎,佐野(以上東京電力),
に多くの時聞と労力を必要とするから現地試験には向か
要な入員,準備の難易,故障のおそれの多少,およびこ
石井(東京芝浦電気)の諸氏のご協力があったことを記
し厚く感謝の意を表わす.なお実験および整理には藤
木,古屋両君の助力を受けた. (1956.10.15)
れに対する処置の難易等,現地試験として重要な要素を
文 献
考慮しなくてはならないが,1測点のマノメータ指示の
(1) 伊藤英覚,東北犬学速研報告 12,23,『(昭30)
読み取りのみについていえば,ここで得た結果から双孔
(2) 水野善右衛門,測定値整理法 38,(昭24)
ないと思われる.両者の比較にはこのほかにも測定に必
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