3年

7-1
1
英語コミュニケーション能力の向上について
スピーキングテストにおける生徒の発話能力の比較研究(3年)
○ 研究方法:3年間で実施したスピーキングテストのうち5回の結果を取り上げ、内容を比較する。
○ 対象生徒:スピーキングにおける3レベルの生徒
生徒A:low level
生徒B:intermediate level
生徒C:high level
※3年10月に実施したスピーキングテストの結果を基に抽出した。評価は10点満点
で、内訳は次のとおり。<Clear expression of opinions and ideas(4点)、Active
participation(3点)、Bonus / Active listening, originality, grammar(3点)>
○ 比較項目:(1)発話総語数
(2)発話総時間(複数の人が話している場合は、前の人の発話が終わった時点から、
対象生徒が発話し終わる時点までを測定する。)
(3)発話速度(words / min.)
(4)発話回数(英文の数)
○ スピーキングテストの内容
【1】1年次5月
・英語Ⅰで既習の Lesson の要約。最初にカードを引き、「Ryo と Ted」または「Emily と Yuka」
の関係を説明する。カードに示してある5つのキーワードをすべて用いなければならない。
・要約終了後は、内容に関連して生徒自身のことについて ALT が質問するので、それに答える。
・ALT と1対1。時間は2分間。
【2】1年次10月
・英語Ⅰで既習の Lesson の要約。最初に3枚のカードから1枚を引き、何について説明するか課題
を選択する。(例:「介助犬とはどんな犬のことか、また飼い主のためにどんなことができるのか
ALT に説明しよう。」)10のキーワードがヒントとしてカード上に与えられている。
・ALT と1対1。時間は2分間。
【3】2年次2月
・英語Ⅱで既習の Lesson の要約。シャクルトン隊の南極探検の概要を ALT に説明する。南極周辺の
地図上に、重要な事柄が起こった11の日付と場所が、ヒントとして示されている。
・要約終了後は、内容に関連して ALT が質問するので、それに答える。
・ALT と 1 対1。時間は7分間。
【4】3年次6月 / 【5】3年次10月
・カードを引いて、時事英語の授業で行った3つの Discussion Question から1つを選び、それにつ
いて、4人1グループで意見交換する。
・ディスカッション形式。時間は5分間。
要約:1年5月~2年2月
ディスカッション:
3年6月~3年10月
- 82 -
◆
生徒 A(low level)における考察
(1)発話総語数 (2)発話総時間
(3)発話速度( words / min. )
(4)発話回数(英文の数)
【1】 要約
Lesson1
1年次 (1)25語
5月 (3)25w.p.m.
【2】 要約
Lesson 5
1年次 (1)34語
10月 (3)54w.p.m.
【3】 要約 Lesson 8
2年次 (1)143語
2月 (3)32w.p.m.
考
My Friend
(2)61秒
(4)7回
Life with a Service Dog
(2)38秒
(4)3回
Shackleton
発話がすべて短文に終始している。出だしの部分
では、主語を3人称にするべきところを“I”で
始めている。
発話速度が上がり、and などを用いて前回より長
い文を話している。しかし、発話量が少なく、内
容が不十分で、意味の通らない部分もある。
発話は短文だが、地図を指しつつ、考えながら話
そうとしている。be 動詞と一般動詞を同時に用い
る誤りや、前置詞の誤りが目立つ。
(2)270秒
(4)20回
ディスカッション
【4】 テーマ:Does reading a manga have the
3年次 same value as reading a novel?
6月 (1)30語
(2)15秒
(3)120w.p.m.(4)8回
ディスカッション
【5】
3年次
10月
察
テ ー マ : If you were the principal of
Shinminato High School, what would
you do?
How about you? What type? など、頻繁に質問
し、他とかかわろうとしているが、自分の意見を
しっかりと述べることができていない。ごく短い
文や単語で話している面があるため、w.p.m.の数
値が高く出ている。
文法や語法の誤りはまだ多いが、語彙レベルが向
上している。また、接続詞を用いながら、自分の
意見とその理由を述べることができている。
(1)50語
(2)40秒
(3)75w.p.m. (4)8回
○ 実際の発話内容の一部抜粋(下線部は誤り)
【1】
Uh…school started… two weeks ago. I worried. Yuka dropped a pen. Emily pick up a pen.
is outgoing. They are friends. They…
Yuka
【2】
They are the dogs specially trained. They are, for example, they are open the doors …they can
open the door and take a food for dog. They can also change the…change the clothes.
【3】
Shackleton’s one of (the) most courageous of leader in history. He and his men left South Georgia
Island. Next their ship Endurance is… was stuck in the frozen sea. Endurance was broke up by
the ice. They (were) forced to walk on ice. They walked many days. April the 8th they get
in…get on (the) boat … three ship. They were reached Elephant Island in April 15th. But there is
no safe…They were left Elephant Island in April 24th. They walked… went to South Georgia
Island for help…
【4】
“Ehhhh…So it’s very interesting.” “So I have many manga in my house. How about you?”
“What type?” “Novel.” “Ehhh… Harry Potter.” “Me too. It’s (a) very big story.”
【5】
“Yes, I agree because Shinko school festival was very exciting, so I think it (should be) held every
year.” “It benefits … it affects junior high school students. Shinminato High School is
exciting…and the local area is very exciting to held every year. It’s my opinion.” “Me too.”
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◆
生徒 B(intermediate level)における考察
(1)発話総語数 (2)発話総時間
(3)発話速度( words / min. )
(4)発話回数(英文の数)
【1】 要約
Lesson1
1年次 (1)48語
5月 (3)48w.p.m.
【2】 要約
Lesson 5
1年次 (1)41語
10月 (3)42w.p.m.
考
My Friend
(2)60秒
(4)8回
Life with a Service Dog
(2)58秒
(4)3回
要約 Lesson 8 Shackleton
(2)278秒
【3】 (1)321語
(3)69w.p.m.
(4)27回
2年次
2月
ディスカッション
【4】 テーマ:Should children learn a second
3年次 language in their early years?
6月 (1)29語
(2)29秒
(3)60w.p.m. (4)1回
ディスカッション
【5】
3年次
10月
テ ー マ : If you were the principal of
Shinminato High School, what would
you do?
(1)63語
(2)42秒
(3)90w.p.m. (4)9回
察
when を用いて長く話そうとしているが、単語の
並べ方などに誤りが多い。よどみなく話してい
る。
発話速度はやや遅くなったが、when、though、
until という接続詞を積極的に使い、前回よりも
間違いが少なくなっている。
物語の要約に自分の感想を加えながら、詳しく説
明している。接続詞や関係代名詞を用い、一文が
ひじょうに長くなった。使用する語彙のレベルも
大きく向上している。しかし paraphrase するの
ではなく、教科書の表現をそのまま暗記して使っ
ている部分が多い。
5分間のテストの間に 1 回しか発言していない。
その場で考えて発言したというよりは、最初から
準備してきた文を言っただけである。他のメンバ
ーの発言をよく聞いて反応しているが、間違うこ
とをおそれているのかもしれない。
前回に比べ、発話の回数や速度が大きく向上し
た。I agree with you because…などの定番表現
を使っている。しかし、使用する文や語彙はごく
簡単なものがほとんどである。前回より多く発言
しているが、正確さを追求するためか、事前に暗
記したものに頼っている様子がまだ見られる。
○ 実際の発話内容の一部抜粋(下線部は誤り)
【1】
Emily was…Emily is too shy. She…she was worried when (she) started to school two weeks ago.
Emily next to… girl, the girl dropped (a) pen. Emily picked up it (for) her. Her name is Yuka. She
is outgoing. Emily and Yuka are good friends. Emily is excited.
【2】
Yoshitomo Kimura has broke his leg…he was…when he was 27. Though he…he could return to
work by using a computer at home, he…he had a lot of trouble. He…he…he have to lie on the
floor until his wife came to back.
【3】
...Shackleton chose his men, chose five men, and after 16 days they arrived at South Georgia
Island and Shackleton decided to make the final try. It was to go to the whaling camp over icy
mountains. About 35 kilometers from there. The three men who were left behind waited for help
or death. Shackleton… when Shackleton continued to walk for two days and when Shackleon
arrived at the whaling camp, Shackleton was ready to collapse. The next day a rescue team took a
boat to rescue the three men…
【4】
“I …I agree to learn other languages in early years because when I read a book, the writer said
from 8 to 13 is (the) best (time) to learn other languages.”
【5】
“I agree with you because I don’t like (to run a) marathon…and we have Sports Festival and
Ballgame Festival, so I don’t want to do sports anymore.” “How about you B-san?”
“I would make a freeway outside the 3rd floor and 4th floor because it’s inconvenient now.”
“I don’t think so. I think this uniform is cute.”
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◆
生徒 C(high level)における考察
(1)発話総語数 (2)発話総時間
(3)発話速度( words / min. )
(4)発話回数(英文の数)
【1】 要約
Lesson1
1年次 (1)51語
5月 (3)77w.p.m.
【2】 要約
Lesson 5
1年次 (1)54語
10月 (3)95w.p.m.
考
My Friend
(2)40秒
(4)6回
Life with a Service Dog
(2)32秒
(4)5回
【3】 要約 Lesson 8 Shackleton
2年次 (1)201語
(2)143秒
2月 (3)84w.p.m. (4)20回
ディスカッション
【4】 テーマ:What should we do to help solve
3年次 the food problem?
6月 (1)79語
(2)59秒
(3)80w.p.m. (4)13回
ディスカッション
【5】
3年次
10月
テ ー マ : If you were the principal of
Shinminato High School, what would
you do?
(1)97語
(2)63秒
(3)94w.p.m. (4)19回
察
文法や語法の誤りが少しあるものの、よどみなく
話している。and を用いたりして長い文を話して
いる。発音も良い。
文法や語法の誤りが少しあるものの、よどみなく
話している。発話速度が速くなっている。
教科書の文を端的に paraphrase しており、内容
もポイントを整理し、聞き手に伝わりやすいよう
に工夫している。文法や語法の誤りが少ない。要
約後の ALT の質問にも、長い文で答えている。
暗記してきた自分の意見を述べた後は、考えなが
ら話しているため、やや発話速度は遅くなった。
I think we should…/ I understand…but…とい
う定番表現を使い、自分の意見をはっきり述べる
ことができている。
文法の誤りがほとんどなく、accuracy、fluency
ともに優れ、自分の意見を簡潔かつ的確に表現し
ている。積極的に意見を出して、グループ全体の
流れをリードする様子が見られる。事前に暗記し
た意見を言うだけでなく、会話の流れに応じて、
会話を続けることができている。
○ 実際の発話内容の一部抜粋(下線部は誤り)
【1】
Ted and Ryo are good friends. They go to classes, play basketball and repair motorcycles together.
When Ryo does these things with Ted, he is very happy. Ted listens to (him) quietly. Ryo
complain(s) to… Ryo complain(s) to Ted at…at his classmates and other thing. Ryo (is) thankful to
Ted for this.
【2】
There are few service dog(s) in Japan. They are the dog(s) that specially trained to (help) people
with disabilities. For example, they can open the refrigerator and drink… and take drink(s) or
foods to their owners. They can also to help their owners change clothes. They help their owners
be more independent from other people.
【3】
… On January 18th 1915, they (were) stuck in the Weddell Sea. While they were stuck in the ice, it
had moved their ship. On October 27th, 1915, the ice broke their ship, and then they were trapped
on the ice. They were forced to go to the Elephant Island because the ice broke up. This was very
dangerous. On April 15th, 1916, they reached Elephant Island but this place is an uninhabited
island, so Shackleton and five men decided to go to South Georgia Island…
【4】
“I think we should give money to poor people.” “I understand it’s difficult because we are high
school students and we can’t use money freely.” “There are many people who eat a lot of food but
(do) not (feel) happy. I think it’s bad. ”
【5】
“Yes. I agree with him. If we use cell phones in class, there will be less communication with human
friends. Don’t you think so?” “Oh, I see.” “Ah…I have a bad point about cell phones. The school
is a place to study. We should make a place where everyone can feel good. If everyone use cell
phones, we lose concentration.”
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○ 外部模試偏差値との比較
外部模試ではリスニング、文法・語法、長文読解、表現力が出題されており、スピーキングテストで
計ることができる以外の分野の英語の総合力を見ることができるのではないかと考えた。英語の発話速
度と、外部模試偏差値との相関関係を見てみたい。
下のグラフより、両者に必ずしも相関関係があるとは言い切れないが、生徒 B については、3年間を
とおして、両者とも向上している。特に要約のテストでは、2年2月のように課題が難しくなっても、
着実に発話速度が伸びている。しっかりとした文法の基礎力がある生徒であり、難しい課題であっても、
複雑な文を混乱せずに使いこなすことができるためと言えるかもしれない。
●各スピーキン
グテストに対応
して、グラフに
使用した外部模
試は次のとおり。
・1年5月
→1年7月
進研記述模試
・1年10月
→1年1月
進研記述模試
・2年2月
→2年2月
進研マーク模試
・3年6月
→3年9月
進研マーク模試
・3年10月
→センター試験
要約:1年5月~2年2月
ディスカッション:
3年6月~3年10月
○ 全体的な考察
ディスカッションでは、相手の意見を聞いて反応したり、考えながら話したりする必要があり、発話
速度が落ちるのではないかと考えていたが、実際は、3年間を通して、発話速度はおおむね伸びている。
特に、1年5月から1年10月、3年6月から3年10月にかけての伸びが大きい。このことから、授
業で同じ活動を継続して行うことで、生徒の発話能力は向上したと言える。
生徒 B については、1年5月から1年10月にかけて発話速度がやや落ちたものの、逆に2年2月ま
での期間に大きく発話速度を伸ばしている。文法や語彙の基礎力が身に付いているためか、3年間を通
して最も伸びが大きい。一方、生徒 C の発話はシンプル・明快で間違いが少なく、ディスカッションで
も柔軟に発話ができている点で際立っているが、外部模試ではあまり結果がよくない。passive
grammar(vocabulary) と active grammar(vocabulary)の差が小さく、スピーキングにおける運用能力
が高いという面では良い例ではあるが、文法や語彙の力を上げることで、さらなる向上が期待できる。
スピーキングに対する意欲や、使用する表現や文のレベル、他との interaction の仕方については、
どの生徒も3年間で大きく向上している。
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