新形式の連続アーチ橋の構造特性に関する研究 - 東海大学 工学部 紀要

東海大学紀要工学部
vol.53,No1,2013,pp.49-56
東海大学紀要工学部
Vol. , No. , 20 , pp. -
新形式の連続アーチ橋の構造特性に関する研究
宮地
一裕 *1
俊一 *2
中村
正幸 *3
薄井
A Study on Structural Characteristics of New Continuous Arch Bridges
by
Kazuhiro MIYACHI *1 , Shunichi NAKAMURA *2 and Masayuki USUI
*3
(Received on March 26, 2013 and accepted on July 11, 2013 )
Abstract
Three new types of continuous arch bridges, the continuous steel arch bridge, the bridge with S-shaped arch
ribs, and that with double arch ribs are proposed. First, the member cross sections are determined by the
allowable stress method, and then the structural characteristics are studied considering dead and design live loads.
The S-shaped arch bridge has a larger vertical displacement than the other bridges. The vertical displacement and
bending moment of the arch ribs and the girder of the double arch bridge are smaller than the others. Next, elastic
plastic large deformation analysis is conducted, showing that the lateral buckling is critical in all the models. The
initial imperfection is considered by inclining the arch planes. The non-linear analysis shows that the proposed
bridges have ample safety factors for the design loads.
Keywords: Continuous Arch Bridges, S-shaped Arch Bridges, Double Arch Bridges, Global Buckling
1.はじめに
タイドアーチとして用いられる場合が多いが,これを連
続形式とした形式である.近年,天間川橋梁
我が国においては,鋼製橋梁に関しては画一的な橋梁
川放水路橋梁
4)
2),3)
や太田
など PC 橋での実用化は進められてい
が多数を占めている.さらに,道路建設事業は建設コスト
るが,鋼製橋梁での実績はない.第二の上下 S アーチは
の縮減が求められ,橋梁形式の選定においては経済性評
ドバイで建設計画のあった連続中路アーチ 5) を参考に,
価が大きな決定要因となる.したがって,魅力的な新形式
下路式アーチ橋と吊床版橋を交互に配置した形式である.
橋梁あるいは新技術が誕生しにくい状況にある.一方,国
アーチ・リブの曲線が滑らかに連なり,軽快で優美な印
内外を問わず既存の橋梁には斬新なデザインが数多く存
象を与える形式である.第三のダブルアーチは現存する
在する.特にアーチ橋は,古来よりさまざまな造形美を作
レンズトラス橋を基に,下路式アーチ橋と吊床版橋を上
り出しており,多くの可能性を秘めた形式である.
下に配置した中路式アーチ橋である.レンズトラスはラ
アーチ橋は単独橋として建設される場合が多い.複数
イズ比が小さくスレンダーな形状が特徴的で,19 世紀に
のアーチが連続する場合でも,単純アーチの組み合わせ
英国のロイヤルアルバート橋
となっており,それぞれのアーチ橋は両端で単純支持さ
米で流行し,日本でも南河内橋
れる.本研究では,数少ない既存の連続アーチ橋梁を参
し,これらの連続アーチ橋の構造特性に関する研究は極
考に,連続下路アーチ,上下 S アーチ,ダブルアーチ
めて少ない.
の 3つの新形式の連続アーチ橋梁を提案し,その構造特
1)
6)
に代表されるように欧
7)
が現存している.しか
アーチ橋は,荷重載荷により骨組線の形状変化の影響
(Table. 1).連続アーチ橋では,主桁が
を受けやすく,支間が大きい場合には面外方向への全体
連続しており,中間支点位置では各主桁はひとつの支沓
座屈が生ずる可能性がある.したがって,幾何学的非線
で支持されている.したがって,地震時に落橋する危険
形性および材料弾塑性を考慮した複合非線形構造解析に
性が減るため耐震的に好ましい.また,中間支点位置で
より終局強度を検討することが不可欠である.
性を研究する
伸縮装置が不要なため走行性に優れる.また,これらの
本研究の第 1 段階では,設計荷重レベルにおける 3
付属物が減るため経済的にも有利である.したがって,
つの新形式連続アーチ橋の断面力および変位を比較する.
連続アーチ橋は将来的には有望な橋梁形式である.
第 2 段階では,載荷荷重を漸増させ,対象橋梁の崩壊過
第一の連続下路アーチ橋は,一般に下路式アーチ橋は
*1
*2
*3
工学研究科土木工学専攻修士課程
土木工学科教授
株式会社建設技術研究所, 東京本社構造部
程および終局強度あるいは全体座屈強度を把握する.さ
らに,概略の鋼重比較により経済性についても概略検討
する.また,本論文では,連続下路アーチをモデル A,
―
1 ―
− 49
−
新形式の連続アーチ橋の構造特性に関する研究
新形式の連続アーチ橋の構造特性に関する研究
Table.1 Example bridge and analytical model
S-shaped arch :
Sheikh Rashid bin Saeed Crossing
Double arch :
Minamikawachi bridge
5)
7)
Example bridge
Lower girder arch :
Tenmagawa bridge 2)
JSCE
3)
FXFOWLE
Photographed by Masaaki Tsuji
Model B:S-shaped arch
Model C:Double arch
Analytical model
Model A:Lower girder arch
5)
260,000
100,000
80,000
14,000
14,000
17,000
80,000
Model A
Model B
Model C
Fig.1
Fig.2
Side view of the three bridges( unit:mm)
Cross section of Model A and Model B(unit:mm)
Fig.3
Dead and live load cases
上下 S アーチをモデル B,ダブルアーチをモデル C と
呼ぶ(Table.1).なお,本研究の方針決定は著者 3 人が共同
で,計算の実施および結果の整理は第一筆者が,全体の
まとめおよび評価は著者 3 人が共同で実施した.
2.検討橋梁
2.1 構造諸元
検討 対象で あ る新形 式橋 梁 の一般 図を Fig.1 お よ び
Fig.2 に示す.支間割りは 80m+100m+80m とし,橋長は
260m とした.アーチライズは支間の 1/6 で統一し, 側
径 間は 14m,中 央径 間 は 17m とし た.ア ーチ 形 状 は 放
物線とした.道路橋を想定し,横断構成は片側 1 車線ず
つ, 合計 2 車線として全幅員 10.39m とした(Fig.2).床
―
2 ―
− 50 −
宮地一裕・中村俊一・薄井正幸
俊一・薄井
8,000
-2,000
6,000
-1,500
4,000
2,000
0
-2,000
Distance (m)
0
20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 220 240 260
Bending moment (kN・m)
Axial force (kN)
宮地 一裕・中村
-500
0
Model A
20
40
60
80 100 120 140 160 180 200 220 240 260
500
Model B
Model C
Axial force of girder(D+L1)
Fig.5
6,000
-1,500
4,000
-1,000
2,000
Distance (m)
0
Model B
1,500
20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 220 240 260
-4,000
-6,000
Bending moment (kN・m)
Axial force (kN)
Fig.4
-8,000
0
1,000
-6,000
-2,000
Distance (m)
-1,000
-4,000
0
正幸
-500
0
Model A
Model C
Bending moment of girder(D+L1)
Distance (m)
0
20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 220 240 260
500
1,000
1,500
Model A
Fig.6
Model B
Model C
Model A
2,000
Axial force of arch rib(D+L1)
Fig.7
Model B
Model C
Bending moment of arch rib(D+L1)
Displacement δv (mm)
40
Distance (m)
20
0
-20
0
20
40
60
80 100 120 140 160 180 200 220 240 260
-40
-60
-80
-100
Model A
Fig.8
Model B
Model C
Displacement of girder(L1)
には,死荷重と活荷重の合計設計荷重に対して許容応力
800mm とした.また,アーチ・リブと主桁は剛結した.床
組みには縦桁 4 本と横桁を配置し,縦桁の桁高は
600mm,横桁の桁高は 800mm として 6.0m ごとに配置
した.2 面のアーチ・リブ間には 400mm×500mm の鋼製
箱断面を有する横繋ぎ材を配置し,両アーチ・リブを結
合した.アーチ・リブと主桁間には 400mm×400mm の
箱断面を有する鉛直材を配置し,アーチ・リブと主桁を
剛結した.これら断面の部材厚は 20 mm として,静的解
析結果により部材の応力照査を行い,許容応力度以内に
なるように設計した.
設計荷重は,死荷重強度(D)および活荷重強度とし
度以内になるよう部材断面を設定した.実際の橋梁設計
た.活荷重強度は道路橋示方書の B 活荷重を用い,全橋
での実績を考慮して,3 橋梁とも主桁およびアーチ・リ
面に固定載荷したケース(L1)および中央径間の左半分
ブにおいて許容応力の 80%から 90%に収まる設計で統一
と右側側径間のみに固定載荷したケース(L2)を想定し
した.
た(Fig.3).
版は RC,主桁およびアーチ・リブは鋼製箱断面,縦桁
および横桁は鋼製 I 桁を用いた.また,Fig.2 はモデルA
とBの断面を示しているが,モデル C のアーチ・リブの
断面はこれより小さく,アーチ・リブおよび主桁ともに
幅 400mm × 高さ 800mm とした.
2.2 部材の断面設計
最初に, 3 形式の橋梁ごとに部材断面を設計する.す
なわち,それぞれの形式ごとに適切な断面を設定し,そ
の上で 3 形式の橋梁の構造特性を比較検討する.具体的
アーチ・リブおよび主桁は鋼製箱断面とし,モデル A
およびモデル B はアーチ・リブ,主桁ともに幅 700mm
× 高 さ 800mm と し , モ デ ル C は 幅 400mm×高 さ
主桁の支点条件は,片側端支点のみ水平方向固定とし,
その他の支点は水平方向可動とした.想定した鋼板の材
質は SM490Y で統一した.
―
3 ―
− 51
−
新形式の連続アーチ橋の構造特性に関する研究
6,000
-2,000
4,000
-1,500
2,000
Distance (m)
0
0
20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 220 240 260
-2,000
Bending moment (kN・m)
Axial force (kN)
新形式の連続アーチ橋の構造特性に関する研究
-500
0
Model A
Fig.9
Model B
Model C
40
60
80 100 120 140 160 180 200 220 240 260
Model A
1,500
Fig.10
Axial force of girder(D+L2)
6,000
Model B
Model C
Bending moment of girder(D+L2)
-1,500
4,000
-1,000
2,000
Distance (m)
0
20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 220 240 260
-4,000
Bending moment (kN・m)
Axial force (kN)
20
1,000
-6,000
-2,000
0
500
-4,000
0
Distance (m)
-1,000
-500
0
Distance (m)
0
20
40
60
80 100 120 140 160 180 200 220 240 260
500
1,000
1,500
-6,000
Model A
-8,000
Fig.11
Model B
Model C
Model A
2,000
Axial force of arch rib(D+L2)
Fig.12
Model B
Model C
Bending moment of arch rib(D+L2)
Displacement δv (mm)
150
100
50
0
Distance (m)
0
20
40
60
80 100 120 140 160 180 200 220 240 260
-50
-100
-150
Model A
Fig.13
Model B
Model C
Fig.14
Displacement of girder(L2)
3.設計荷重レベルにおける検討
本章では,第 1 段階の設計荷重レベルでの検討を述べ
る.すなわち,D+L に対して静的解析により設計断面力
および変位を求め,3 形式橋梁の結果を比較する.
3.1 活荷重全載ケース(L1)
本節では,第 1 段階の設計荷重レベル D+L1 の結果を述
べる.設計荷重により 3 種類の橋に生じる部材断面力を
Fig.4 から Fig.8 に示す.
Fig.4 は,主桁軸力を示す.モデル A およびモデル B
の中央径間はほぼ同一の引張軸力となる. 側径間はモデ
ル A では引張軸力,モデル B が圧縮軸力となるが,その絶
対値は両者でほぼ同じである.一方,モデル C は上下ア
ーチ・リブのアーチ作用が相殺するため主桁に軸力は生
じない.Fig.5 は主桁の曲げモーメントを示す.中央径
間では,モデル C の主桁の曲げモーメントがモデル A お
Stress vs. Strain of steel
よびモデル B よりも小さい.
アーチ・リブに作用する軸力を Fig.6 に示す.モデル A
およびモデル B の中央径間はほぼ同一の圧縮軸力となる.
しかし,側径間はモデル A では圧縮軸力,モデル B が引
張軸力となるが,その絶対値は両者でほぼ同じである.一
方,モデル C はモデル A およびモデル B のおよそ半分
となっている.Fig.7 にアーチ・リブの曲げモーメントを
示すが,中央径間において,モデル C がモデル A および
モデル B よりも小さい.
Fig.8 に主桁の活荷重 L1 によるたわみを示す.モデル
A とモデル B のたわみはほぼ同じであるものの,支間
中央部ではモデル B の方が 3mm 程度大きな値となっ
ている.いずれのモデルにおいても主桁およびアーチ・
リブは中間支点上で剛結されており,両部材は一体的に
挙動する.モデル A では側径間と中央径間ともにアー
チ・リブには圧縮軸力が,主桁には引張軸力が作用する
(Fig.4, Fig.6).一方,モデル B では側径間のアーチ・
リブには引張軸力,中央径間のアーチ・リブには圧縮軸
力が作用する.逆に,側径間の主桁には圧縮軸力,中央
―
4 ―
− 52 −
宮地一裕・中村俊一・薄井正幸
宮地 一裕・中村
俊一・薄井
正幸
3
k
2
1
0
0
100
200
300
δh (mm)
400
500
Fig.15 Lateral displacement of Model A
k(D+L1)
Fig.18
Side and top view of final deformation of Model A,2.50(D+L1)
3
k
2
1
0
0
100
200
300
δh (mm)
400
500
Fig.16 Lateral displacement of Model B
k(D+L1)
Fig.19
Side and top view of final deformation of Model B,2.50(D+L1)
Fig.20
Side and top view of final deformation of Model C,2.40(D+L1)
3
k
2
1
0
0
50
100
150
δh (mm)
200
250
Fig.17 Lateral displacement of Model C
k(D+L1)
径間の主桁には引張軸力が作用する(Fig.4, Fig.6).し
たがって,モデル A ではアーチ・リブの圧縮軸力が中間
支点で相殺し,よりアーチ効果が発揮され主桁のたわみ
が抑えられる.モデル B では,アーチ・リブ軸力が中間
支点で相乗する方向に作用する.そのため,アーチ効果
が発揮されにくく,主桁が若干たわみやすい構造である
と言える.また,モデル C の主桁たわみはモデル A お
よびモデル B よりも小さく,ダブルアーチの補剛効果
が明らかである.
また,活荷重による最大鉛直変位は 84mm であり,
活荷重たわみ許容値 500mm (L2 /20,000, L:スパン長) 以
内である.したがって,使用性においては十分安全であ
る.
3.2 活荷重半載ケース(L2)
本節では,活荷重半載した設計荷重レベル D+L2 の結
果を述べる.この設計荷重により 3 種類の橋に生じる部
材断面力を Fig.9 から Fig.13 に示す.
Fig.9 は主桁軸力を示す.モデル A およびモデル B
の中央径間はほぼ同一の引張軸力となる. その値は
D+L1 の約 7 割程度である.側径間ではモデル A と B
では正負が反転するものの, 絶対値比較でほぼ同一の値
となった.なお,モデル C は上下アーチ・リブのアーチ
作用が相殺するため主桁に軸力は生じない.Fig.10 は主
桁の曲げモーメントを示すが,中央径間においてモデル
C の 正の 曲げ モー メン トが モデ ル A お よび モ デ ル B
より約 30%低下していることが分かる.ただし,負の曲
げモーメントは大差ない.
アーチ・リブに作用する軸力を Fig.11 に示す.モデル
A およびモデル B の中央径間はほぼ同一の圧縮軸力と
なる. その値は D+L1 の約 7 割程度である.側径間では
モデル A と B では正負が反転するものの, 絶対値比
較でほぼ同一の値となった.一方,モデル C はモデル A
およびモデル B のおよそ半分となっていることが分か
る.Fig.12 はアーチ・リブの曲げモーメントを示すが,
中央径間においてモデル C のアーチ・リブの曲げモ ー
メントがモデル A およびモデル B よりも小さいこと
が分かる.
活荷重 L2 による主桁たわみを Fig.13 に示す.中央径
間の左右で逆方向にたわむ.モデル A およびモデル B
のたわみはほぼ同じであり,最大値は D+L1 の約 1.5 倍
である.また,モデル C の主桁たわみはモデル A およ
びモデル B よりも最大で 10 mm 程度小さい値となっ
ていて,ダブルアーチの補剛効果が明らかである.
―
5 ―
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−
新形式の連続アーチ橋の構造特性に関する研究
新形式の連続アーチ橋の構造特性に関する研究
3
k
2
1
0
0
100
200
300
δh (mm)
400
500
Fig.21 Lateral displacement of Model A
k(D+L2)
3
Fig.24
Side and top view of final deformation of Model A,2.55(D+L2)
Fig.25
Side and top view of final deformation of Model B,2.54(D+L2)
k
2
1
0
0
200
400
δh (mm)
600
800
Fig.22 Lateral displacement of Model B
k(D+L2)
3
k
2
1
0
0
50
δh (mm)
100
150
Fig.23 Lateral displacement of Model C
k(D+L2)
Fig.26
Side and top view of final deformation of Model C,2.44(D+L2)
4.弾塑性大変形解析
4.1 解析手法
本節では,第 2 段階の崩壊解析結果を示す.すなわち,
大変形弾塑性解析を用い,荷重を漸増させ,対象橋梁が
どのように塑性化が進行し,最終的に崩壊するかを求め
る.部材断面は,ファイバー要素に分割したが,その分
割数は,主桁およびアーチ・リブ共に 10 分割とした.ま
た,鋼板の構成則はバイリニアとした(Fig.14).なお,
鋼箱断面には十分な補剛材を配置し,局部座屈は生じな
いと想定した.
解析の手順は,橋梁が崩壊するまで死荷重と活荷重を
徐々に増加載荷する方法である.すなわち,載荷荷重は
P = k (D + L) と表すことができ,k は活荷重載荷係数で
ある.増分ピッチは,変形の増大に伴って変化させたが,
最小ピッチは 0.01 である.各増分ステップで,大変形
弾塑性解析を実施し,3 橋梁の崩壊過程や最終耐力およ
び最終変形状態の比較をした.なお,使用した解析プロ
グラムは,汎用構造解析プログラムの Engineer's Studio
(FORUM8)である.
4.2 活荷重全載ケース(L1)の終局強度
本節では,活荷重全載ケース(L1)において 3 種類
の橋梁の弾塑性大変形解析結果を示す(Fig.15, 16, 17).
なお,これらはアーチ面を鉛直面から H/500(H:アーチ
ライズ)だけ傾斜させた初期不整を考慮した結果である.
初期不整に関しては後述する.
モデル A は,k = 2.50 の時にアーチ・リブが発散的に
増大し終局に至る(Fig.15).すなわち,面外座屈が崩壊
の直接原因である.最終の変形図を Fig.18 に示す.
モデル B は,k = 2.50 の時にアーチ・リブが発散的に
増大し終局に至る(Fig.16).すなわち,面外座屈が崩壊
の直接原因である.最終の変形図を Fig.19 に示す.
モデル C は,k = 2.40 の時にアーチ・リブが発散的に
増大し終局に至る(Fig.17).すなわち,面外座屈が崩壊
の直接原因である.最終の変形図を Fig.20 に示す.
4.3
活荷重全載ケース(L2)の終局強度
本節では,活荷重半載ケース(L2)において 3 種類
の橋梁の弾塑性大変形解析結果を示す(Fig.21, 22, 23).
モデル A は,k = 2.55 の時にアーチ・リブが発散的に
増大し終局に至る(Fig.21).すなわち,面外座屈が崩壊
の直接原因である.最終の変形図を Fig.24 に示す.
モデル B は,k = 2.54 の時にアーチ・リブが発散的に
増大し終局に至る(Fig.22).すなわち,面外座屈が崩壊
の直接原因である.最終の変形図を Fig.25 に示す.
―
6 ―
− 54 −
モデル C は,k = 2.44 の時にアーチ・リブが発散的に
宮地一裕・中村俊一・薄井正幸
宮地 一裕・薄井
Table.2
正幸・中村
3
Initial imperfection of arch rib
2
Case1 : H/500
1
Case2 : H/1,000
0
Case3 : H/2,000
3
3
2
2
Fig.28
200
300
δh (mm)
400
Table.3
Steel type
Steel weight
(kN)
Total (kN)
500
400
500
Lateral displacement of Model A
H/500
H/1,000
H/2,000
0
50
Fig.29
Lateral displacement of Model B
Bridge type
200
300
δh (mm)
1
0
100
100
k
k
H/500
H/1,000
H/2,000
0
0
Fig.27
H:Height of arch rise
0
H/500
H/1,000
H/2,000
k
Initial imperfection of arch rib
1
俊一
100
150
δh (mm)
200
250
Lateral displacement of Model C
Steel weight of three bridges
Model A
Model B
Model C
Girder
2,402
Arch rib
2,589
Others
3,543
Girder
2,402
Arch rib
2,589
Others
3,543
Girder
1,762
Arch rib
3,798
Others
6,302
(0.202)
(0.218)
(0.299)
(0.202)
(0.218)
(0.299)
(0.149)
(0.320)
(0.531)
8,534 (0.719)
8,534 (0.719)
11,862 (1.000)
Note1 : Value in ( ) is the ratio, when the steel weight of Model C is set at 1.0.
増大し終局に至る(Fig.23).すなわち,面外座屈が崩壊
リブが発散的に増大し面外座屈により終局に至る
の直接原因である.最終の変形図を Fig.26 に示す.
(Fig.28).
モデル C において,Case-1 は k = 2.40 の時に,Case-2
4.4
は k = 2.43 の時に,Case-3 は k = 2.45 の時に,アーチ・
初期不整の影響の検討
本節では,初期不整の影響を検討する.前節までの検
討結果により,本形式ではアーチ・リブの面外座屈が卓
リブが発散的に増大し面外座屈により終局に至る
( Fig. 29).
越することが明らかである.初期不整が座屈に影響を及
以上より,H/2,000 (Case-3),H/1,000 (Case-2),H/500
ぼすことは知られているが,本橋の場合アーチ・リブ面
(Case-1) と 初期不整の傾斜角が大きくなるにつれて
が製作誤差により鉛直面から傾斜していると座屈しやす
面外変位は大きくなり,終局強度そのものも若干小
さくなった.
くなると推定される.そこで,L1 においてアーチ・リ
ブが H/500,H/1000,H/2000 (H:アーチライズ高)の 3
また,道路橋示方書では終局強度が 1.70 (D + L) を上
種類の初期不整を与えたケース(Case-1, 2, 3)を対象に
回ることが規定されているが,3 ケースともこれを満足
した(Table.2).すなわち,道路橋示方書
8)
に規定され
しており,本形式は全体座屈に対して安全である.
る最大の許容製作誤差を考慮し,アーチ・リブが鉛直面
5.鋼重の比較
から若干傾いている影響を把握することを意図した.
モデル A において,Case-1 は k = 2.50 の時に,Case-2
は k = 2.50 の時に,Case-3 は k = 2.55 の時に,アーチ・
リブが発散的に増大し面外座屈により終局に至る
(Fig.27).
モデル B において,Case-1 は k = 2.50 の時に,Case-2
は k = 2.50 の時に,Case-3 は k = 2.53 の時に,アーチ・
検討した 3 橋梁の鋼重比較を Table.3 に示す.モデル A,
B の鋼重は同じであるが,いずれもモデル C よりも 15%
小さい.これは,モデル C では上下にアーチ・リブが付
加されているためである.よって,全体コストに関して
は,モデル C がモデル A,B よりも高くなると考えられ
る.しかし,モデル C の主桁およびアーチ・リブの断面
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新形式の連続アーチ橋の構造特性に関する研究
新形式の連続アーチ橋の提案および構造検討
はモデル A,B よりも小さく,ひとつひとつの部材のハ
ンドリングはし易く,架設面では好ましいとも考えられ
る.また,景観的にも個性的とも言える.したがって,
一概にモデル C がモデル A,B より劣っているとは言え
ない.
本研究では,新形式の 3 つの連続アーチ橋梁を提案し,
2 段階の荷重レベルにおいて検討した.第 1 段階は,設
計荷重レベル(死荷重および活荷重)における 3 形式の
橋梁の断面および変位を比較した.第 2 段階は,載荷す
る荷重を増加させ,対象橋梁の崩壊過程および終局強度
および全体座屈を把握した.得られた主な知見を以下に
示す.
1) モデル B はモデル A およびモデル C に比べると
中央径間のアーチ効果が発揮されにくい構造であり, 全
体的にたわみやすく,アーチ・リブおよび主桁の曲げモ
ーメントも増加する傾向にある.
モデル C はダブルアーチの補剛効果によりモデル
A,B よりもたわみにくい構造である.
3)
モデル A,B,C ともにアーチ・リブの軸力は載荷
径間および無載荷径間共に生じる.また,モデル C の
主桁には軸力が生じない.アーチ・リブの曲げモーメン
トは一般的な連続梁と同様に中間支点で負の曲げモーメ
ントが生じる.
4)
面外変位および主桁の変位に着目すると,面外変位
の大きさが主桁たわみの大きさに比例している.これは,
アーチ・リブおよび主桁間を剛結している鉛直材が機能
しているためである.
5)
今後,限界適用スパンの検討,耐震性能の検討,建設費
用の把握などに取り組む予定である.
謝辞
6.まとめ
2)
本研究により,提案した新しい3つの連続アーチ橋は十
分な耐力を有し,実現可能性は高いことを明らかにした.
大変形弾塑性解析による全体座屈強度を検討した結
果,3 形式ともに面外座屈により終局となるが,その耐
力は十分に安全であることを見出した.
6) 製作誤差を考慮し,アーチ面を鉛直面から傾斜させ
た初期不整の影響を検討した.初期不整の傾斜角が大き
くなるにつれて面外変位は大きくなり,終局強度そのも
のも若干小さい.
本研究で得られた結果の妥当性の検証において,鋼橋
技術研究会,新橋梁形式研究部会(部会長:中村俊一,
副部会長:中村一史)の中村一史氏および部会員の諸氏,
および技術委員会委員各位から貴重な意見をいただいた.
ここに謝意を表する.
参考文献
1) 中村俊一,薄井正幸,清水織恵,樋口耕平,松井勲:
新形式の連続アーチ橋の提案・検討,土木学会年次学術
講演会,2011.
2) 大庭光商,松本浩一,津吉毅,東海林直人,佐藤茂美
石橋忠良:3 径間連続アーチ橋(天間川橋梁)の設計と
施工,橋梁と基礎,Vol40,pp.5-14,2006.
3) 土 木 学 会 デ ザ イ ン 賞 2008 , 天 間 川 橋 梁 ,
http://www.jsce.or.jp/committee/lsd/prize/2008/works/2008n
1.html,2013.5.23.
4) 椛木洋子,渡邊康人:広島南道路太田川放水路橋梁デ
ザイン提案競技における報告,土木学会年次学術講演会,
2010.
5) FXFOWLE , Sheikh Rashid bin Saeed Crossing ,
http://www.fxfowle.com/projects/35/sheikh-rashid-bin-saeed
-crossing/,2013.5.23.
6) David J Brown,加藤久人・綿引透 共訳:世界の橋,
pp.68-69
7) 北九州市,南河内橋,
http://www.city.kitakyushu.lg.jp/shimin/02100287.html,
2013.5.23.
8) 日本道路協会:道路橋示方書・同解説,鋼橋編,2002.
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