つくばイノベーションアリーナ - 科学技術・学術政策研究所 (NISTEP)

科 学 技 術 動 向 2010 年 10 月号
科学技術動向研究
国際産学官連携拠点の目指すべき方向性
~「つくばイノベーションアリーナ」の概要と展望~
小笠原 敦
客員研究官
1
はじめに
2008 年 6 月 17 日 に、 国 際 産 学
官ナノテクノロジー連携拠点とし
て、
「つくばイノベーションアリー
ナ 」
(Tsukuba Innovation Arena:
2
発足の背景
2─1
国内における背景と
発足までの経緯
2010 年 6 月 18 日に
「新成長戦略」
が閣議決定され、その工程表であ
る成長戦略実行計画も策定され、
着実な実行が目指されることと
なった。
「新成長戦略」
には、
「強い経済」
、
「強い財政」
、
「強い社会保障」の実
現を目指すとし、1)グリーン・イ
ノベーションによる環境・エネル
ギー大国戦略、2)
ライフ・イノベー
ションによる健康大国戦略、3)ア
ジア経済戦略、4)観光立国・地域
活性化戦略、5)科学・技術・情報
通信立国戦略、6)
雇用・人材戦略、
7)金融戦略、の 7 つの戦略分野が
示されている。この中であらゆる
12
略称 TIA)が発足した。本稿では、 方向性として今後も継続的に必要
この拠点が発足した背景および拠 な議論を採りあげる。
点構想の概要を紹介するとともに、
国際産学官連携拠点の目指すべき
戦略分野のイノベーションプラッ
トフォームとなることが期待され、
また現在も将来も日本が高い国際
競争力を持つと期待されているの
が、科学・技術・情報通信立国戦
略の分野である。この中核となる
施策が、官民合わせて GDP 比 4%
の研究開発投資の促進、リーディ
ング大学院構想等による国際競争
力強化である。
これらとともに、国際産学官連
携拠点として、つくばナノテクア
リーナの発足構想も示された。こ
のような連携拠点構築の背景には、
産 業 構 造ビジョン
(経済産業省、
2010 年 6 月)に記されているよう
な
「世界の主要プレイヤーと市場の
変化に遅れた日本産業の行き詰ま
りを直視し、国と企業の壁、省庁
の壁、国と地方の壁を越え、グロー
バル大競争時代に打ち勝つ戦略の
構築と実施が必須である」
という認
識がある
(図表 1)
。
つくばナノテクアリーナは、正
式名称を
「つくばイノベーションア
リーナ」
(Tsukuba Innovation Arena:
略称 TIA)といい、文部科学省お
よび経済産業省の強力な支援のも
と、筑波大学、独立行政法人物質・
材料研究機構
((独)NIMS)
、独立行
政法人産業技術総合研究所
((独)
AIST)
、および社団法人日本経済
団体連合会
((社)経団連)
の 4 機関が
中 核 と な っ て、2008 年 6 月 17 日
に発足した国際産学官ナノテクノ
ロジー連携拠点構想の実施・運営
機関である。2008 年度以降の補正
予算など、拠点形成に係る大規模
な 予 算 措 置 に よ る 準 備 を 経 て、
2010 年 6 月 30 日 に 約 400 名 が 参
加して経団連会館にて第一回の公
開シンポジウムが行われた。
国際産学官連携拠点の目指すべき方向性
図表 1 産業構造ビジョンの資料より(2010 年 6 月 経済産業省)
2─2
出典:産業構造ビジョン資料(2010 年 6 月)、経済産業省
根幹となる材料・デバイス系の技 分子論等の高度な学問的知識を駆
術については、網羅的に組成を変 使し、さらには大規模なコンピュー
背景となる海外の動向 えて実験を繰り返して緻密に材料 タシミュレーションを行って材料
特性を押さえて行く日本のアプ 研究の手法そのものを大きく変え
上記のような国内の議論の原点 ローチにはかなわないため、この てゆくことだ」
とされた。これに対
には、2001 年度に米国クリントン 材料・デバイス系技術の競争力を 応して、その後、米国 NSF の支援
政権下で、国家ナノテクノロジー 確保しなければやがてシステム系 によって複数大学からなるナノテ
イニシアティブ
(National Nano- 技術においても競争力が失われる クノロジー研究拠点形成
(National
technology Initiative:NNI)が掲げ であろう」
という議論であった。当 Nanotechnology Infrastructure
られて以降、各国でナノテクノロ 時はその後スーパーコンピュータ Network:NNIN)が選定され、さ
ジーに対する大規模な研究開発投 のランキングで 2 年半もの間世界 らにニューヨーク州 Albany に大
資と拠点形成が行われ、この分野 トップの座に君臨した
「地球シミュ 規模なナノテクノロジー研究開発
で競争優位にあった以前の日本の レータ」が開発された時期でもあ 拠点が設置された。
ポジションが徐々に脅かされつつ り、ナノテクノロジー分野での日 この Albany のナノテクノロジー
あるという認識がある。
本に対する競争力強化は急務でも 研究開発拠点は、ニューヨーク州、
米国は NNI 発足時にナノテクノ あった。
ニューヨーク州立大学、SEMATEC
ロジー分野での競争力評価を行っ その結果、日本に対する米国の (Semiconductor Manufacturing
たが、その際には日本が材料研究 戦略は、
米国競争力委員会(Council Technology の略で、国防総省と民
および電子デバイス研究等で高い on Competitiveness)のヒアリング 間 14 社の出資により設立された半
競争力を持っていると評価され、 資料によれば、
「緻密な実験の繰り 導体コンソーシアム、1998 年から
それに対して米国はどのような戦 返しによる材料研究では日本には は民間出資のみによるコンソーシ
略をとるかという議論がなされた。 かなわない。米国が競争力を得る アム)
、および IBM 社によって設
「システム系の技術については米国 ためにはナノレベルでの現象を物 置され、研究開発投資金額が日本
に優位性があるが、その競争力の 理的に十分に把握し、量子力学や 円で約 4000 億円以上
(うち約 1000
Science & Technology Trends October 2010
13
科 学 技 術 動 向 2010 年 10 月号
億円は公的投資)にもおよび、250
社以上の民間企業も参加する非常
に大規模な拠点となっている。
一方、欧州では、米国 NNI が発
足した時期とほぼ同時期の 2001
年に、フランス・グルノーブルで、
原子力庁電子情報研究所
(CEALETI)
、仏国立科学研究センター
(CNRS)などの国立研究所と、グ
ルノーブル工科大学
(INPG)
および
イゼール地方政府投資局
(AEPI)
が
中心となった、MINATEC(Micro
and Nanotechnology Center)と
いう産学官ナノテクノロジー研究
セ ン タ ー が 設 立 さ れ て い る。
MINATEC は中央政府の対仏投資
庁と地方政府の投資局である
AEPI の両支援を受けて、2006 年
度に産学官連携の象徴的な存在と
なるセンタービルディングを建設
し、日本円で年間約 360 億円規模
の研究予算で運営を行っている。
特に半導体デバイス研究では
MINATEC センター自身が最先端
の 300mm ウェハを使用したプロセ
スラインを有しているほか、半導
体企業である ST- Microelectronics
3
社、米国 Motorola 社
(当時、現在 た。現在では年間予算約 300 億円
は Free scale Semiconductor 社 に (うち公的資金は約 50 億円)
、参加
変わっている)
、Texas Instrument 企業約 600 社という大型研究開発
社が連携して約 3000 億円を投資 拠点となっている。
した大規模な 300mm 開発ライン これらの欧米のナノテクノロ
を設置した。そのほかにも、このグ ジー研究開発拠点の急速な整備・
ルノーブル周辺には 250 社以上の 拡大に伴い、現在の日本のナノテ
民間企業が集積し、現在では大き クノロジー分野における競争力は
な研究開発クラスターを構築して 相対的にその優位性を失いつつあ
いる。
ると認識されているわけである。
また、ベルギーの IMEC(Inter- 欧米でオープン・イノベーション
u n i v e r s i t y M i c r o e l e c t r o n i c s を前提とした組織・制度設計や民
Center:フランダース州とルーベ 間企業を誘致する各種のインセン
ン大学により 1984 年に設立された ティブや各種施策により大規模な
研究開発 NPO 法人)も大きく発展 研究集積と大規模投資が行われて
した。IMEC は、EU フレームワー いるのに対し、日本は個別の企業
クプログラムの将来ビジョンや基 や公的研究機関あるいは大学は高
づいた研究開発プログラムや産業 い研究水準を有するものの、大規
界ニーズの分析により導出された 模な連携拠点を持たない。そこで、
研究開発プログラムを提示し、参 日本が競争優位を維持・確保する
加企業を募る形態のコンソーシア ための拠点設置を求める提言が、
ム型研究モデル
(IIAP)と、 メ ン 産業競争力懇談会
(Council on Comバーに加わることで IMEC の知財 petitiveness-Nippon:COCN)
および
および IMEC と契約している企業 (社)経団連よりなされ、
「つくばイ
との共同成果についても使用でき ノベーションアリーナ」
が構想され
るような独特の知財モデルによっ るに至った。
て、急激に参加企業数を増大させ
つくばイノベーションアリーナの概要
以下に、つくばイノベーション 立的な学識経験者を加えた 5 名に
アリーナの基本理念、組織設計、 より構成される運営最高会議
(議
研究領域、インフラの概要を示す。 長:岸輝雄)
を設置している。
また運営最高会議での重要事項
1)5 つの基本理念
の審議・方針決定のほか、
運営会議、
図表 2 に、つくばイノベーショ 事務局会議も設け、拠点運営のオ
ンアリーナにおける 5 つの基本理 ペレーションは運営会議が行い、
念を示す。
事務局が総合調整を行っている。
事務局機能は中核 3 機関が連携
2)組織運営
して行い、さらに各コア研究領域・
図表 3 に、つくばイノベーショ インフラ等の運営等のために、有
ンアリーナの組織構造を示す。
識者を含むメンバーによる 8 つの
つくばイノベーションアリーナ ワーキンググループを設置し、研
は、(独)AIST・(独)NIMS・筑波 究戦略の検討や知財ポリシー、人
大学が運営の中核を担っている。 材育成戦略の検討等を行っている。
最高意思決定組織として、この中
核 3 機関の長に産業界の代表と中
14
3)コア研究領域とコアインフラ
図表 4 に、つくばイノベーショ
ンアリーナの研究の概要を示す。
つくばイノベーションアリーナ
では、我が国の産学官のナノテク
領域での競争力、つくば学園都市
における先端研究設備および人材
蓄積を勘案して、6 つのコア研究
領域にフォーカスし、産学官の資
金・人材を集約して拠点研究運営
を推進する。また、その運営を支
えるインフラとして 3 つのコアイ
ンフラの構築を行い、イノベーショ
ンの上流である教育・人材育成か
ら、下流に位置する試作・評価機
能まで、一貫した機能の提供を目
指す。
国際産学官連携拠点の目指すべき方向性
図表 2 つくばイノベーションアリーナの5つの基本理念
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出典:「つくばイノベーションアリーナ」パンフレットより
図表 3 つくばイノベーションアリーナの組織構造
運営最高会議
議長:岸輝雄
事務局
事務局長:渡邉政嘉
築波ᄢቇ
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出典:「つくばイノベーションアリーナ」パンフレットより
4)各コア研究領域とそのコアイ
ンフラ
ⅰ)パワーエレクトロニクス
「新成長戦略」にもグリーン・イ
ノベーションが大きな柱として掲
げられており、環境負荷の低減や
エネルギー効率の高効率化が強く
求められている。
電力関連においては、各機器内
における低消費電力化は進展が著
しいものの、電力変換ロスの低減
に関する技術開発は意外に進んで
いない。例えば、PC や家電など内
部回路が 3.3V・5V・12V の直流で
動 作 す る 機 器 の 場 合 に は、 交 流
100V か ら 直 流 へ の 変 換 ロ ス は
20%にも達する。このロスを低減
するためには、高耐圧で低オン抵
抗のスイッチングデバイスやイン
バータ等が必要である。従来のシ
リコンデバイスではこれらの達成
が難しいため、シリコンカーバイ
ド
(SiC)や窒化ガリウム
(GaN)等の
化合物半導体材料の研究開発が必
要である。
つくばイノベーションアリーナ
では、このようなパワーエレクト
ロニクスの研究領域で、早い段階
で の 実 用 化 が 期 待 さ れ る SiC パ
ワー半導体
(図表 5)にフォーカス
し、拡大された次世代パワーエレ
クトロニクス研究開発機構
(FUPET)
という技術研究組合や新
たに発足した
「SiC アライアンス」
の活用により、大学や公的研究機
関を中心とした基礎基盤研究と産
業界による実用化研究および開発・
試作をシームレスに繋ぐイノベー
ションハブを構築する試みを行っ
ている。
ⅱ)ナノエレクトロニクス
ナノエレクトロニクス研究には、
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科 学 技 術 動 向 2010 年 10 月号
図表 4 つくばイノベーションアリーナのコア研究領域とコアインフラ
出典:「つくばイノベーションアリーナ」パンフレットより
図表 5 SiC パワー半導体のロードマップ
出典:経済産業省 技術戦略マップ 2010 より
従来から技術開発が進められてき
たシリコン CMOS における微細化
(スケーリング)を追求する More
Moore と呼ばれる領域と、技術の
融合や組合せ等によって新たな価
値創造を行う More than Moore と
呼ばれる領域、さらには全く新し
い原理や材料を用いて新規のデバ
イスを創造する Beyond CMOS と
呼ばれる領域がある。
CMOS のスケーリングに関する
技術開発については、(独)NEDO
のプロジェクトである
「半導体
MIRAI プロジェクト」と民間企業
16
の共同出資による(株)半導体先端テ
クノロジーズ
(Selete)で過去 10 年
間行われてきた。つくばイノベー
ションアリーナでは、この二つの
プロジェクトで蓄積された CMOS
に関わる基盤技術と、筑波大学・
(独)
NIMS・(独)AIST で研究開発され
てきたナノ材料技術・ナノ計測技
術・ナノ製造技術等を融合させて、
新たな価値創造を行うことを試み
ている。
一方、内閣府による最先端研究
開発支援プログラムに採択された
中心研究者による各プログラム、
「フォトエレクトロニクス融合
(東
京大学 荒川泰彦教授)
」
、
「省エネ
ルギー・スピントロニクス論理集
積回路
(東北大学 大野英男教授)
」
、
「グリーン・ナノエレクトロニクス
((株)富士通研究所 横山直樹フェ
ロー)
」にも協力をあおぎ、さらに
は経済産業省委託の
「低炭素社会を
実現する超低電圧デバイスプロ
ジェクト」や技術研究組合である
Low-power Electronics Association
& Project(LEAP)も 加 え て、100
名以上の研究者が集結する大規模
な枠組みを形成する。この枠組み
からは、More than Moore や Beyond
CMOS にあたるようなナノエレク
トロニクス領域での新たなコンセ
プトが生まれてくることを期待し
ている
(図表 6)
。
ⅲ)N-MEMS
MEMS デバイスとは、半導体製
造技術を基本とし、アクチュエー
タ機能
(可動機能)を組み込んだデ
バイスである。代表的な製品は可
動ミラーデバイス
(DMD)
で、プロ
ジェクター等に使用されている。
もう一つの代表的な製品は加速度
センサで、自動車のエアバッグシ
ステム・カーナビのほか、最近で
はゲーム機にも多用されている。
MEMS デバイスは様々なセンサ技
術と組み合わせたり、高度な処理
機能を持つ高集積な CMOS デバイ
スと組み合わせたりすることに
よって、さらに大きな発展が期待
されている。
このうち、つくばイノベーショ
ンアリーナでは N-MEMS に注目す
る。N-MEMS とは、ナノレベルの
微細加工技術を駆使して、ネット
ワーク化された微小な機械・セン
サ・パワー源などを製作する技術
である。省エネルギー化や国民生
活の質の向上に貢献できるような
小型・省電力・高性能なデバイス、
例えば健康モニタリングデバイス・
五感の補助・消費エネルギー可視
化デバイス・バイオ分析機器等の
研究開発が進められている。
国際産学官連携拠点の目指すべき方向性
つくばイノベーションアリーナ
の研究プロジェクトとしては、最
先端研究開発プログラム
「マイクロ
システム融合研究開発」
プロジェク
ト
(東北大学 江刺正喜教授と共
同)
、NEDO プロジェクトの
「高機
能センサネットシステムと低環境
負荷プロセスの開発」
プロジェクト
(技術研究組合 BEANS 研究所と共
同)
で進めている。
ⅳ)カーボンナノチューブ
カーボンナノチューブ
(CNT)
は、日本において遠藤守信教授や
飯島澄男教授らにより発見され解
析も進められた、非常に将来が期
待される材料である。
特につくばイノベーションアリー
ナにおける CNT に関わる研究開発
は、単層 CNT の高品質化と部材
化を図ることを目標とし、世界最
高水準にある単層 CNT 合成・分
離・成型加工技術と民間企業の持
つプランと開発技術力や応用製品
開発技術を有機的に組織し、製品
開発の基盤となる融合基盤技術と
しようとするものである。それを
実現するため、2009 年度の補正予
算事業で単層 CNT 量産実証プラ
ントが建設され、経済産業省委託
事業の
「低炭素社会を実現する超軽
量・高強度融合材料プロジェクト」
(2010 ~ 2014 年度)がつくばイノ
ベーションアリーナで実施される。
ⅴ)ナノグリーン
ナノグリーン領域とは、特に(独)
NIMS が長年にわたり蓄積してき
た環境技術や材料技術を核として、
低炭素社会に貢献する研究を行お
うとする領域である。(独)NIMS・
(独)AIST・筑波大学と産業界とが
連携してナノテクノロジーを活用
し、高効率・低コストで資源制約
の少ない革新的太陽光発電材料、
高性能なエネルギー変換・貯蔵材
料
(例えば、燃料電池・熱電変換材
料・二次電池・超伝導材料)
、光触
媒を利用した低環境負荷型の環境
再生材料など、革新的環境技術の
創出に関する研究開発を行う。
図表 6 ナノエレクトロニクス領域での新たなコンセプト創出のための研究プログラム
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出典:「つくばイノベーションアリーナ」パンフレットより
図表 7 N-MEMS の概要とその応用
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出典:「つくばイノベーションアリーナ」パンフレットより
図表 8 単層カーボンナノチューブと期待される応用範囲
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出典:「つくばイノベーションアリーナ」パンフレットより
ⅵ)ナノ材料の安全評価
ナノ材料はそのナノレベルのサ
イズ、あるいは形状の多様性
(球状・
針状等)
から、細胞レベルでの生体
影響などの点で安全性が懸念され
ている。ナノテクノロジーの研究
開発を促進するためには、この懸
念を払拭することが重要であり、
新たな材料や製造方法を検討する
際に十分な検討を行っておくこと
が要求される。ナノ材料の安全評
価 に 関 し て は、2006 ~ 2007 年 度
Science & Technology Trends October 2010
17
科 学 技 術 動 向 2010 年 10 月号
図表 9 ナノグリーン技術の概要と期待される応用範囲
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出典:物質・材料研究機構
4
科学技術振興調整費
「ナノテクノロ
ジーの社会受容促進に関する調査
研究」
、2007 ~ 2009 年度内閣府の
連携施策群
「ナノテクノロジーの研
究開発推進と社会受容」などによ
り、産業技術総合研究所および物
質材料研究機構が、ナノテクノロ
ジー研究の初期段階からの安全評
価および社会受容までの検討を
行ってきており、世界に先駆けて
ナノ材料のリスク評価手法の確立
および標準化への取り組みを行っ
ている。
これらの実績をもとに、つくば
イノベーションアリーナにおいて
も、ナノ材料の安全評価をコア研
究領域のひとつと定め、積極的な
展開を図る。
今後の課題と論点
以上のように、つくばイノベー
ションアリーナがスタートしてい
るが、まだ今後もワーキンググルー
プ等で議論を進めなければいけな
い点は残されている。以下にそれ
らの論点をまとめる。
織での連携や株式会社組織での連
携が行われてきたが、任意団体で
は契約主体となれないため知的財
産権の保有者とはなることができ
ず、また株式会社組織にすると研
究開発のエフォートにかかわらず
出資比率によって成果配分がなさ
1)戦略の明確化
れてしまうことから、参加者にイ
つくばイノベーションアリーナ
ンセンティブが十分に感じられな
は
「新成長戦略」にも具体的に記載
い制度となっていることが多かっ
されている。したがって、日本の
た。
経済成長の原動力、科学・技術・
米国ではコンソーシアムにおい
情報通信立国戦略の鍵を握ると期
ては LLC(合同会社)制度の適用
待されており、またイノベーショ
が一般的となっている。日本でも
ン政策の二本の柱であるグリーン・
2005 年度より LLC 制度が導入さ
イノベーション、ライフ・イノベー
れていたが、米国版の LLC 制度と
ションの中核技術を担うことにお
は異なるもので、米国の LLP(有
いても期待されている拠点である。
限事業責任組合)と LLC の中間的
しかし一方で、米国の Albany・ 2)組織設計・制度設計
な制度となっていて、コンソーシ
フランスの MINATEC・ベルギー プロジェクトの推進にあたって アム型の研究では LLC を採用する
の IMEC のような欧米の大規模な は、組織設計・制度設計も重要な メ リ ッ ト が 無 か っ た。 し か し、
オープン・イノベーション拠点と ポイントとなる。特につくばイノ 2009 年度に鉱工業技術研究組合法
比較した場合に、つくばイノベー ベーションアリーナでは、技術研 が技術研究組合法に改正され、米
ションアリーナがいかにして競争 究組合制度の活用を推進している。 国版 LLC に近い制度となった。ま
優位を獲得するか、その戦略の明 従来、日本でコンソーシアム型 た、従来は技術研究組合員として
確化が求められている。
の研究を行う場合には任意団体組 参加できなかった、大学や試験研
18
例 え ば、Albany・MINATEC・
IMEC はそれぞれ 350 社、250 社、
600 社以上の企業パートナーを持
ち、その累計投資額はいずれも数
千億円を超えており、参加企業も
自国にとどまらず多数の外国企業
が加わっているのが特徴である。
つくばイノベーションアリーナ
を成功に導くには、5 つの理念に
記載されているように、日本の強
みを活かして産業界との Win-Win
な関係の構築を構築すること、す
なわち産学官のセクター間の壁や
ディシプリン
(学問領域)間の壁を
壊し、
「Under-one-roof(一つ屋根
の下)
」の関係でプロジェクトを推
進する必要があるであろう。
国際産学官連携拠点の目指すべき方向性
究独立行政法人も参加資格を得た。
さらに民間企業においては、技術
研究組合での研究開発費は賦課金
としての処理が可能となり、税制
面でも優遇措置が取られた。これ
らによって、日本でも産学官連携
研究組織のインセンティブが形成
されることになった。
なお、ベルギー IMEC において
は NPO 法人 ( 特定非営利法人 ) の
組織形態が選択されているが、時
限的な組織を前提とした LLC や技
術研究組合とも異なるものであり、
IMEC では永続的な組織を前提と
した知財蓄積モデルが組まれてい
ると言える。
その企業がさらに成果を挙げた場
合には、その知財も加えられてい
くのである。その結果、参加企業
数が多ければ多いほど知財集積が
進み、後に参加する企業の参加モ
チベーションを加速することにな
る。
た だ し、Albany・MINATEC・
IMEC の知財に関する契約は包括
的ではなく、全てバイ・ラテラル
であり、必ずしも
「誰もがそこで生
まれた知財を自由に使えるという
訳ではない」
ということに留意して
おく必要がある。
「誰もが使える知
財」
は
「公知である」
ということと等
価であり、そこからは競争優位は
生まれない。
戦略の実行が求められている。
5)オープン・イノベーション
オープン・イノベーションの解
釈にも、欧米と日本の間に差異が
ある。日本でオープン・イノベー
ションというと、誰でもその連携
研究の枠組みに参加ができて、そ
の枠組みに入れば誰もがそこで生
まれた知財を使用できるシステム
であると思われていることが多い。
しかし、欧米の解釈はそうでは
ない。オープン・イノベーション
の第一人者である UCB(カリフォ
ルニア大学バークレー校)
のチェス
ブロー教授の定義によれば、オー
プン・イノベーションとは
「研究実
3)知的資産の蓄積モデル
施者の組織において、研究開発の
一般にプロセス技術では、明文 4)システム・インテグレーショ リソースを内部リソースと外部リ
ン
的に著される特許等の形式知だけ
ソースの分け隔てなく活用してイ
ではなく、ノウハウ等の暗黙知と 産学官連携を促進する要因は必 ノベーションを創出すること」
を指
ともに知的資産が形成される。こ ずしも高い技術力や研究シーズだ す。そのため、
その実践においては、
の暗黙知的な知的資産
(無形資産) け で は な い。Albany に し て も、 例えば企業の研究開発の組織の一
は、一般的に設備等が存在する施 MINATEC にしても、IMEC にし 部を公的研究機関の内部に置いた
設に蓄積されるので、長期的な組 ても、必ずしも全ての研究内容が り、逆に公的研究機関の研究開発
織体を持つことが重要になる。例 最先端技術であるわけではない。 の一部に企業が入ったりといった、
えば、半導体産業において製造を むしろローテクノロジーと思える スタイルを採る。Albany が 250 社
請け負うファウンドリー企業が、 技術やすでにジェネリックである 以 上、MINATEC も 250 社 以 上、
単なる下請けではなく、非常に強 技術も含めて、
「トータルで、なお IMEC が 600 社以上と、非常に多
い競争優位を獲得してゆけるのは、 かつワンストップで、ニーズに即 くの企業の参加を得ているのは、
この無形資産を複数の委託企業分 したシステム・インテグレーショ その組織論的な意味でのオープン・
も含めて獲得および蓄積してゆく ンができる」
ということに特徴があ イノベーションが実践されている
ことができるからである。
る。
からにほかならない。例えば、米
例えば研究開発の受託組織であ 大規模な研究拠点には、シーズ 国 Albany の拠点では IBM 社の研
る IMEC は、同様の理由により多 からのリニアモデルではない、シ 究開発組織が非常に深く入り込み、
数の企業の無形資産獲得を行い、 ステム・インテグレーションに適 ま た 仏 MINATEC の 拠 点 も STさらに非常に巧みな知財制度で有 した組織・制度設計が求められる。 Microelectronics 社 が 深 く 入 り 込
形資産の拡大にも成功している。 産学官連携モデルの変化に対して んでいる。また、一見独立組織と
一般に IMEC モデルとして知られ は、つくばイノベーションアリー 見えるベルギー IMEC も設立当初
る知財モデルは、各企業との契約 ナでは、8 つのワーキンググルー から Philips 社が深く入り込み、最
は基本的にバイ・ラテラルである プを設置し、知財や組織制度につ 近では Intel 社がベルギー 5 大学と
が、共同で得られた成果について いても検討を行うことになってい の連携でプロセッサのアーキテク
は共有される条項を盛り込み、見 る。組織内外のリソースを最大限 チャに関わる産学連携のラボを設
かけ上 IMEC の知財が拡大してい に活かして研究開発を行い、知財 置すると発表している。これらは
く様に見えることが特徴である。 に関しては要素技術的なプリコン まさにチェスブロー教授の定義に
後に新たな企業が研究開発プログ ペティティブな領域では協調しつ 基づくオープン・イノベーション
ラムに参加した時には、その拡大 つ、システム・インテグレーショ の実践である。
した知財を使用できる。そして、 ンの領域で差異化を図る、という
Science & Technology Trends October 2010
19
科 学 技 術 動 向 2010 年 10 月号
5
おわりに
4 章に挙げたような課題を意識
して、つくばイノベーションアリー
ナでは、例えばパワーエレクトロ
ニクスの領域で、大学・公的研究
機関、材料・デバイスメーカー、
自動車メーカーなどを含む、海外
のどの拠点にもないような大規模
な垂直連携型の研究開発モデルを
構築しようとしている。
トップレベルの水準の研究成果
を挙げることはもちろんのことで
はあるが、今後このような研究開
発マネジメントを意識した拠点形
成が重要となりつつある。
新産業創造の中核となる
「オープ
ンイノベーションハブ」
としての機
能を有した産学官連携拠点として、
つくばイノベーションアリーナの
今後の進展は注目される。
参考文献
1)
つくばイノベーションアリーナホームページ http://tia-nano.jp/
2)
新成長戦略 http://www.kantei.go.jp/jp/sinseichousenryaku/sinseichou01.pdf
3)
産業構造審議会産業競争力部会ホームページ
http://www.meti.go.jp/committee/summary/0004660/index.html
4)
産業競争力懇談会(COCN:Council on Competitiveness-Nippon) ホームページ
http://www.cocn.jp/
5)
経団連ホームページ http://www.keidanren.or.jp/indexj.html
6)
「フランスの科学技術・イノベーション政策動向」, 小笠原敦 , 科学技術動向(2002)
http://www.nistep.go.jp/achiev/ftx/jpn/stfc/stt012j/feature5.html
7)
第 2 回コーディネータネットワーク筑波会議講演資料 , 筑波研究学園都市交流協議会 , 2010 年 1 月 27 日
http://www.tsukuba-network.jp/sangakukan/No2coordinatornetwork_shiryo.htm
8)
「イノベーション創出の方法論」
、工業調査会、2007 年 4 月
執筆者プロフィール
小笠原 敦
客員研究官
独立行政法人産業技術総合研究所イノベーション推進本部 総括主幹
http://www.aist.go.jp/
atsushi-ogasawara@aist.go.jp
ソニー株式会社超 LSI 研究所、本社 R&D 戦略部、立命館大学大学院教授を経て現職。
専門は半導体デバイス、研究開発マネジメント、イノベーションシステム、ロードマップ。
研究・技術計画学会評議員、国際ナノテクノロジー会議(INC7)日本委員会事務局長。
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