Research Institute for High -Life - ハイライフ研究所

High-Life Research vol.13 2011
contents
02
Research Institute for High-Life
公益財団法人移行にあたってのご挨拶
よりよい都市生活の創造へ向けて
03 新たな船出にあたって
ー事業展開方針ー
07
平成22年度の研究計画概要
66
ハイライフ研究所の研究活動一覧(刊行物、シンポジウム他)
Report Summary 平成21年度(2009)研究報告書要約 10
都市圏居住の価値を探る - 2009
16
Investigating the value of urban living 2009
24
食の健康と世代別食育支援展開に関する研究 - 2
食生活力が高齢者の生活を変える
34 Study on Healthy Food and Development of Shokuiku Aid by Generation
Good Dietary Practices Change the Lives of the Elderly
46
幼児における
「片づけ」
行動の研究
ー「育児」と「物と人と暮らし」研究のファーストステップとしてー
55
Research on the "Tidying-up" Activities of Infants
ー As the first step in research on "growing children" and "goods and lives of people" ー
表紙デザイン:森裕昌(森デザイン室)
ハイライフ研究13号 ©公益財団法人ハイライフ研究所 2011 禁無断転載
1
Research Institute
for High-Life
よりよい都市生活の創造へ向けて
公益財団法人移行にあたってのご挨拶
ハイライフ研究所はこのたび、平成 22 年 11 月 1 日付で新公益法人としての移行登記を完了し、公益
財団法人ハイライフ研究所として、新定款に則り新たに活動を開始する運びとなりましたことをご報告申
し上げます。
これも、日頃より当財団にお力添えをいただいております皆様のご支援の賜物と深く感謝し、御礼申し
上げる次第です。
さて、当財団は、20 世紀も終わりを迎えようとしていた平成 5(1993)年 5 月に、
『今後志向してい
くべき新しい生活の方向やその具体的な有り様ーー 即ち「ハイライフ」ーー について、主として生活者、
消費者の視点から調査・研究を実施すると共に、その成果の普及、啓蒙や又、これらに関する活動の支援
などを通じて国民生活の向上や発展に寄与すること』を目的として設立され、本年 18 年目を迎えており
ます。この間、環境をはじめとした地球規模での問題や産業社会の成熟化によるさまざまな生活課題の噴
出等々が進行し、ますます新たな価値観に基づいた新しい生活の構築が求められており、当財団の果たす
べき役割も重要性を増していると感じております。
今回の公益法人制度改革に見られますように、社会経済・環境の変化の中で現在、民間団体を中心に進
められる公益の増進に向けた活動の果たす役割が、より一層重要性を増しております。
当財団もこの公益認定を機に、目的である「都市を中心とした生活者のよりよい生活の実現」に向けて、
思いを新たに、より一層邁進する所存でございます。今後とも、さらなるご支援、ご鞭撻を賜りますよう
よろしくお願い申し上げます。
公益財団法人 ハイライフ研究所
代表理事・理事長
中田安則
2. 近年の活動
新たな船出にあたって ーー 事業展開方針 ーー
そして近年、先に挙げた状況はますます進行し
ており、新たな時代認識として「大量生産・大量
■
消費・使い捨て = 消費中心の文明からの脱却」
、
「地
球環境の再生」
、
「人間性復活」を根本に据えた生
活の実現が強く求められています。また、生活者
■
一人ひとりが新しい生活価値観とライフスタイル
■
を模索・実現していくことを支援し、また、生活
者の意識改革に即し、時にはそれを誘導していく
1. ハイライフ研究所の設立目的と活動
当財団は平成 5(1993)年に、
『来るべき 21
世紀に向けて、今後志向していくべき新しい生活
の方向やその具体的な有り様ーー 即ち「ハイライ
フ」ーー について、主として生活者、消費者の視
ための考え方や事例等の提供が重要となっていま
す。ハイライフ研究所では、研究所の目的と社会
の現状をかんがみて、
1. 地球:環境調和・省資源型の社会および暮ら
しの在り方
点から調査・研究を実施すると共にその成果の普
2. 人間:少子高齢化社会の姿と暮らしの在り方
及、啓蒙や又、これらに関する活動の支援等を通
3. 社会:地域社会と暮らしの在り方
じて国民生活の向上や発展に寄与すること』を目
4. 価値:21 世紀の人間の価値観と行動について
的として設立されました。
産業社会の成熟化のもと、地球レベルでは、地
球環境の危機、グローバリゼーションによる世界
という4つの研究・調査領域を設定し、私たちを
取り囲む数多くの問題・課題に対応し、幅広く調
査研究活動を行ってまいりました。
大競争時代と地域文化の喪失、デジタル技術の急
伸による超高度情報化社会の到来等々が進行し、
3. 移行にあたって∼財団活動の見直し∼
日本社会においては、少子高齢化社会の進行、経
1896 年に制定された民法(約 50 条)により
済の低成長化、社会保障システムの脆弱化などさ
定められていた公益法人制度が、2006 年 6 月
まざまな問題が噴出。かかる大きな変化が進行す
の公益法人制度改革関連 3 法(一般法・認定法で
る中、これまでの反省も踏まえ、私たち一人ひと
合わせて 410 条、整備法で 458 条)公布によ
りの生活の在り方から、地域コミュニティ、社会
り大きく見直されることとなりました。今回の公
保障制度などの社会システム、住宅や公共施設と
益法人制度改革の背景には、確かに「公益法人に
いった生活基盤などあらゆる面において抜本的に
ついて指摘される諸問題に適切に対処する観点か
見直し、再構築していかねばならない状況があり、
ら、制度を抜本的に見直す」という点も大きなポ
これらを踏まえて「21 世紀に、われわれはどの
イントとして挙げられていますが、最大のポイン
ような生活を志向していくべきか」
「その実現に
トとしては、
『
「民間が担う公益」を我が国社会・
向けて、積極的に何をしていくべきか」について、
経済システムの中で積極的に位置付け、その活動
体系的に思考し、探索し、さらにはそれを実践的
を促進』することが挙げられました。厳しい経済・
なプログラムとして提示していくことを目指し、
社会環境の中で、第 3 セクターのより積極的な公
活動を行ってまいりました。
益活動の推進が要請されたと言えます。
3
ハイライフ研究 13号
そして、その流れの中で第 3 セクターによる公
趣旨も念頭に目的・活動等の現状とのずれの
益活動推進へ向けて財団自治が大きく認められる
修正を図る。
こととなりましたが、一方で、新たに制定された
・真の公益を念頭に、機関・活動の現状を踏ま
法律に従い、財団としての成立要件を満たし、新
え、より現実的・具体的な活動成果の獲得を
たに新法下での公益法人として認可を受け直す必
目指す。
要が出てきました。
② 課題・問題点
ハイライフ研究所は、設立からまもなく 20 年
・目的では、
「来るべき21世紀に向けて」として
を迎えようとしており、今回の公益法人制度改革
いたが、すでに21世紀は到来している。
は財団の目的・事業・機関・そして活動等に関し
・具体的成果の獲得という点では、対象者およ
て見直し、要請される積極的な公益活動の充実を
び研究領域を生活者・消費者全般、そして、
目指すよい契機となりました。
現在の社会および個人生活の中に現出してい
るすべての問題・課題への対応と広げすぎて
4. 新公益財団としての事業展開の考え方
新公益法人への移行にあたり、新制度の理念に
おり、活動が拡散し成果が収斂しにくいきら
いがある。
合致した公益性の保持と公益活動の成果拡大を目
・少人数の組織であり、活動の幅に限界がある。
指し、まず、以下のような観点から財団活動の見
基本的には研究テーマを開発し、そのテーマ
直しを図りました。
に基づいた委託を中心とした研究展開中心と
① 基本視点
なっている。
・設立から約20年を経ており、今制度改正の
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これらを踏まえ、
図 1 新公益財団法人としての目的・事業
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4
③ 基本方針
あり、活動対象は都市を中心とした生活者に
・活動とその成果の具体性・現実性および拡大
絞る。
へ向け、可能な限り活動対象と研究領域の絞
・設立目的は尊重しつつ、対象絞り込みに伴い、
り込みと明確化を図る。
よりよい都市生活実現へ向けての活動に絞り
・小組織による活動の限界打破へ向けては、外
込む。
部との連携を通し、活動成果の増幅効果が得
・活動成果の増幅、現実的な成果の獲得に向け
られるような仕組み・展開を考える。
ては、生活者視点を前提とし、生活者接点で
・公益活動強化へ向けて、研究のための研究に
の活動を重視すると共に、幅広い団体・個人
陥らず、活動の日常化にも配慮する。
との協働・参加を得た展開を目指す。
という方向性を定め、新公益法人としてのハイラ
・事業に関しては、新法の事業区分の在り方に
イフ研究所の目的・事業を再構成し、事業方針を
則り、調査・研究事業はベースとしつつ、啓蒙
定めました。
・活動の中では生活者接点における外部の方
々との連携を通した具体的な活動も視野に入
5. 事業方針
れたい。
① 目的・事業(図1参照)
② 中長期事業展開方針(図2・3参照)
・基本的には、財団活動の主となる場は都市で
前述①の目的・事業の規定に沿い、
図 2 中長期事業展開方針<考え方>
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■啓蒙・活動
研究成果・外部連携を通した
ダイレクトな生活者接点での
活動の追求
※市民講座/都市開発関与者他
へのセミナーなど
※都市生活者および都市開発
関与者等へのダイレクトな
成果アウトプットおよび協働
■基礎研究
都市生活者自身に関する研究
=その現状(行動・意識)と
ニーズに関する研究
※生活者ベース調査
※時系列による意識・行動・
ニーズ変化の把握
※上記により得られた知見を通した
スポット的課題への対応
※この調査自体の研究化と研究
個別研究テーマ開発
都市生活研究
※生活者の
よりよい都市生活
の実現へ向けての
研究・活動
※都市の価値と都市生活に
おける知恵の創造
■研究
ハードとソフト
※都市サイドと生活者サイド
双方からの都市生活を豊かに
する価値創造の研究
※幅広い視点からの都市自体の
価値(魅力)の増幅
※都市生活を豊かにする生活行動
の知恵の研究
■エクステンション展開
外部連携を通した活動
および成果獲得・提供の
増幅・拡大
5
ハイライフ研究 13号
●研究フレームに関しては、
・生活者の現状(意識・行動)とニーズに関
ⅰ . 研究領域は都市生活研究となり、生活者の
し、変化も含めて把握していく。
よりよい都市生活の実現へ向けての研究・活
・調査結果に関しては、目的を同じくする研
動の推進を図ることとなる。
究者・団体・個人に広く開示し、その成果
ⅱ . 研究テーマに関しては、研究の実効性アッ
の拡大・増幅を目指すと同時に外部連携に
プを図るため都市生活の現状を考慮し、都市
役立てていく。
サイド(ハード視点)と生活者サイド(ソフ
・また主目的としては、調査結果を分析する
ト視点)双方から考える。
ことにより、本研究展開のテーマ開発およ
・生活者サイドからは「都市生活を豊かにす
びバックアップに役立て、成果の増幅を図る。
る生活行動の知恵の研究」
こととする。
・都市サイドからは「都市自体の価値
(魅力)
●研究展開に関しては、
創造研究」
ⅰ. 外部連携などのエクステンション展開の強化
の2つのテーマに沿って研究を進める。
を重視する。
ⅲ . 効率的かつ実効性の高い都市生活研究を進
・小規模財団の活動を高めていく上で重要な
めていく上で、基礎研究として対象とする都
ことは、展開・成果の拡張・増幅作業であ
り、研究展開から成果の提供など幅広い接
市生活者自身に関する研究を行う。
・基本的には生活者調査をベースとして実施。
点での同じ目的を持つ外部団体および活動
図 3 中長期事業展開方針<展開フレーム>
6
する個人との協働・連携を目指す。
・将来は助成事業展開なども検討したい。
平成22年度の研究計画概要
ⅱ. 啓蒙・活動という生活者接点でのダイレクト
(2010.4.1∼2011.3.31)
■
な成果の提供活動を強化する。
・財団活動の最終目的は都市生活者のよりよ
い都市生活の実現であり、その目的達成に
向けては、調査研究などの活動成果の提供
体的支援策を構築し、都市生活者、そして
都市開発関与者やさまざまな活動を行って
いるNPOなどとの接点で提示し、また、そ
れに基づいた活動を行えるかが重要である。
■
会で承認された平成22年度事業計画に基づき、
現在、
下記
の研究が行われています(各研究の成果発表予定は平成23
年3月)。
■
はもとより、その成果に基づいた提言や具
平成22年3月23日、財団法人ハイライフ研究所第34回理事
1
これからの都市生活を考えていくための、
新世代コミュニティの研究
・研究・調査の結果提示だけでなく、いかに
現実的活動として生活者接点で成果を増幅
研究目的
させられるかを考えたい。
都市における生活者の関係性の希薄化につい
・また、年間を通した調査研究のみでなく、
ては、長いこと問題としてあげられてきたが、近
研究テーマに沿った日常的な活動を充実さ
年、さまざまな形でコミュニティの構築を模索す
せると共に、それを幅広い生活者・研究者
る動きが顕著となっている。今研究ではこれらの
に提示していきたい。
都市生活者の新しいコミュニティ活動および、そ
の広がり方を研究し、これからのまちづくりとコ
この中長期的な事業展開方針に則り、具体的活
動を計画し、目的達成に向けて邁進する所存です。
ミュニティの在り方を探ります。
研究内容
本研究では、街を軸に新しいネットワーク型コ
ミュニティが生まれている事例をもとに、次世代
コミュニティの在り方を探ります。
特に、都市に集まる若者の志向や欲求の受け皿
となってきた渋谷などに見られる若者のコミュニ
ティは、常に時代のサブカルチャーを作り街の性
格を形成してきました。そして、その活動の拡大
とともに単に若者だけのコミュニティというにと
どまらず、幅広い層を包含して広がりを見せ始め
ています。
このように活動の広がりを見せる事例を調査
し、その背景・経緯・活動とそのマネージメント
をどのようにしているかを分析し、街の変遷に大
きく関係してきた過去の動きとを比較しながら、
7
ハイライフ研究 13号
これからのまちづくり手法を探ります。
本研究の成果は、次世代の地域行政におけるコ
3
都市生活者意識調査2010
ミュニティ支援、地域活性化、また、地域開発、
企業における商品開発、商業開発、マーケティン
グ、コミュニケーションなどの活動に資する基礎
資料といたします。 研究目的
生活者のよりよい生活の実現に向けて調査研究
を行っていく上での基礎研究として、都市を中心
とした生活者の生活意識やニーズを把握する総合
2
次世代の豊かな都市生活の知恵を探る
市民活動アーカイブ構築の研究
調査を長期的視点で実施。研究者や都市開発・創
造にかかわる幅広い組織・個人等に開示を図り便
宜を図るとともに、今後の研究活動のベースとし
研究目的
ていきます。
「次世代の豊かな都市生活」に資するために、
研究内容
国内外新旧を問わず、次世代の予兆となる様々な
都市生活者の生活意識を幅広くとらえ、その現
市民活動のアーカイブ構築を目指します。
状を把握するとともに、長期にわたる調査として
研究内容
実施することにより時系列化することを通して、
今は、大きな社会変革の時代にあります。
その変化と方向性を把握します。
豊かさという価値観や消費行動、人と人との繋
また、可能であれば、生活に影響を及ぼす社会
がりなどの在り方は模索状態にあり、次の時代の
環境の変化等を見据え、基礎調査項目に別途タ
豊かな都市生活の在り方を予測する上では、これ
イムリーな年間研究テーマを付加し分析を加え、
までにない「発想の転換」が必要であると考えま
ホームページ等を通じて適宜情報提供を行ってい
す。そして、不確実な時代を打破する動きは、社
きます。
会の中の様々な場所で発生しており、これまでも
本年度を 1 年目とし、今後長期にわたり継続し
このような動きをとらえまとめあげていく研究が
て展開を図る予定です。
なされ、その後の社会の有り様に大きく影響を与
【調査概要】
えてきました。
本研究では新しい時代の予兆となるような様々
① 調査地域:東京、大阪
② 調査対象:13 ∼ 74 歳男女
なコミュニティ活動、人々の動き・活動を発見し、
約 1800 サンプル
それを収集し、ヒントとなる事象毎のカテゴリー
③ 調査方法:訪問留め置き
を分類し、そこから新しい時代の“ 知恵 ”を探り
④ 基本調査項目:
出していきます。そして、それらを積み重ねるこ
ⅰ . 生活全般について =
とにより可能となる新しい公共的情報インフラと
生活満足度、生活実感、…
しての都市生活を豊かにするための情報装置(市
ⅱ . 生活意識 = 基本項目 ( 衣・食・住・買い物・
民活動アーカイブ)をその有り様も含め開発して
健康・余暇・…)
いくことを目指し 2 年にわたる研究として取り組
個別項目(仕事・家庭・学問・お金・景気・…)
みます。
ⅲ . 性格 等々
■ 研究成果の発表について 当該の研究成果は、ホームページおよびセミナー、シンポジウムなどで順次発表して参ります。
発表時期につきましては、ホームページでご確認ください。 http://www.hilife.or.jp
8
Report Summary
平成21年度(2009)研究報告書要約
ハイライフ研究 13号 Report Summary
都市圏居住の価値を探るー 2009
Investigating the value of urban living 2009
都市圏居住の
価値を探る - 2009
1. 研究の背景と目的
本研究の目的は、都市生活者が、自分の住んでいるまちの「何に」または「どこに」
、ど
のような「価値」を見出しているのかを明らかにすることにある。
「まちの価値」という観
点では、近年、
「住みたい街ランキング」という類の言葉を謳った書籍が多数出版されて
いるが、それらの算出根拠とされている指標は、地価、家賃などの経済的指標や、人口当
たりの施設数、住宅延べ床面積などのハードの環境を量的に評価する指標であったりする。
これらの指標は定量的に比較可能という点において、ランキング算出に都合がいいもので
あるが、言うまでもなく、生活者が魅力的に感じる環境とは、単に量の多少や経済的な評
価だけではなく、気持ちよくその場で過ごすことができるかということ、つまりそこで感
じる質こそが肝要である。
本研究では、そのような問題意識の上に立ち、
「評価グリッド法」を用いた都市居住者へ
の個別インタビューを行い、そのまちの好き / いいと感じる場所、およびその理由につい
て尋ね、住民自身の言葉に基づき地域についての評価構造を明らかにし、住民が住み続け
たいと思うようなまちとして備えるべき物理的環境や要因について提言することを目指す
ものである。
2. 研究体制
本研究は以下の研究体制で行った。
研究企画/コーディネート
添田 昌志 (LLP 人間環境デザイン研究所 グランドプランナー 博士(工学)
)
研究企画/調査企画・設計・実施/分析
若林 直子 (有限会社 生活環境工房あくと 代表取締役 博士(工学)
)
調査実施/分析
陶 真裕 (日本大学大学院文学研究科 博士後期課程)
江田 友祐 (早稲田大学大学院人間科学研究科 修士課程)
10
研究協力
加藤 有美 (有限会社 ピスタチオ社)
榎本 元 (株式会社 読売広告社 都市生活研究所 所長 )
小島 隆矢 (早稲田大学人間科学学術院 准教授 博士(工学)
)
研究幹事
仙洞田 伸一(財団法人 ハイライフ研究所 主任研究員)
3. 研究方法
本研究では、都市居住者個々人が地域・場所に求めている「真のニーズ」を、具体的な
場所・要素に紐付けて構造的に把握できる手法として、
「評価グリッド法」を中心にすえた
個別インタビュー調査を実施した。
「評価グリッド法」は、臨床心理学の分野で開発された
面接手法をベースに改良発展されたインタビュー手法で、環境などに関する様々なニーズ
(要望)を酌み取るためのものとして広く用いられている。この手法の前提となっているの
は、人間は「各人に固有の理解・判断の仕組みである‘ 認知構造 ’を持っており、目や耳な
どを通じて得た外界の情報をこの仕組みによって情報処理することで理解し、とるべき行
動を決定し、その結果を予測しようとしている」とする「パーソナル・コンストラクト理論」
である。ここでいう‘ 認知構造 ’は、
「空が広い - 狭い」
といった具体的な理解の単位を下位に、
「開放感がある - ない」といった感覚的理解を中位に、
「リラックスできる - できない」といっ
たより抽象的な価値判断を上位にもつ「階層的な構造」とされる。評価グリッド法は、各
人の‘ 認知構造 ’のうち調査対象の「評価」に関する部分、すなわち「評価構造」だけを選
択的に取り出すことを狙った手法ということができる。
一般的な評価グリッド法の手順では、まず回答者自身に複数の対象を想起してもらい、
「ど
れが好きか」を判断してもらった上で、その判断基準の理由を尋ねるものであるが、本研
究では、回答者に評価させる対象を、居住地域の中で回答者自身が「いい、好きと思う場所」
とし、
「好き」
「いい」と判断された場所の一つ一つにつき「なぜ好きなのか」
「なぜいいと
思うのか」という理由を尋ねるものとした。その理由は、
「いい、好きと思う場所」を複数
出してもらいたいこと、およびそれらに序列をつけてもらうことが不自然であったためで
ある。また、その場所を日常よく利用するか、目的地になるか、まちを好きな理由の一つ
になっているか等もあわせて尋ねた。
調査対象地域は、居住場所によって評価構造が異なることを想定し、その特性が異なる
と思われる世田谷区三軒茶屋地区 ( 繁華街と住宅街、新しいビルと下町商店街が共存。新
旧の住宅、大小の店舗が混在 ) と港区港南地区 ( 大規模な再開発が行なわれている新しい街。
近年タワーマンションが急増、新住民が多い ) とした。また、ライフステージによる違いも
11
ハイライフ研究 13号 Report Summary
都市圏居住の価値を探るー 2009
Investigating the value of urban living 2009
考慮し、シニア世代や子育て世代などの幅広い年代を調査対象者に含めるものとした。
調査は 2009 年 7 月、9 月に港南地域で、9 月、10 月に三軒茶屋地域で行った。イン
タビュー調査はインタビュアー・記録者各 1 名で行い、回答者 1 人につき 1 時間前後の時
間をかけた。
4. インタビュー内容の考察
4 - 1. 回答者プロフィール
プロフィールに関しては、地域差が顕著であった。この違いは、今回のサンプルの違い
にとどまらず、地域全体としての居住者像の違いが現れたと解釈できる。港南は、リタイ
アした人 ( シニア ) と主婦専業が多く、子育て世代が約 3 割だが、子ども ( 末子 ) はすべて
未就学児であった。三軒茶屋は、フルタイム勤務率が 7 割以上と高く、主婦専業やリタイ
アしている人はいなかった。子育て世代は約半数だが、子どもの年齢は港南より高かった。
4 - 2. 地域選択理由
両地域とも、
「アクセスのよさ ( 都心至近、通勤通学の便、実家等への行きやすさ、活動
のしやすさ等 )」が主な理由であった。また、地域ブランド、地域名に惹かれてこの地域を
選んだという人はほとんどいないことも共通していた。ただし、前述のように、港南は遠
方から引っ越してきた人・シニア層が多く、
「居住地域」を選択したというより、
「都心の
マンション」を選んだということが適当な人が多い。三軒茶屋は近場から引っ越してきた
子育て中の人が多く、
「都心の割に緑が多い」
「近所づきあいの中で子育てをしたい」とい
う理由で三軒茶屋を選択した人が目立った。
4 - 3. 地域の捉え方について
港南と三軒茶屋でもっとも差が大きかった部分である。港南では、地域の範囲としてイ
メージするものは「自分が住むタワーマンション」
「自分が住むマンション + 周辺の徒歩圏
内」
「車で 10 分程度の範囲 ( 豊洲やお台場も含む )」などさまざまであった。一方、三軒
茶屋では、地域の捉え方はパターン化されており、
「太子堂・世田谷線」
「代沢・下北沢」
「三
宿・池尻」のどこかに属しており、それぞれの地域の枠組みがかなり明確であった。
4 - 4. 地域の総合評価
港南と三軒茶屋ともに総合評価はよい。居住地域が
「好き」
で
「愛着がある」
人が大半であっ
た。住む前は「アクセスのよさ」以外あまり期待していなかったが、
居住後に地域を気に入っ
たという人が多いのも両地域に共通している。とくに港南では、むしろ「居住地ではない」
12
「環境が悪い」と悪い印象を持っていた人が多いため、居住後はプラス評価に転じるケース
が多いようであった。
ただし、どのような点が評価されているかについては大きな地域差があり、港南では、
海が近く空が広く「開放的」である点が高く評価されている一方で、買い物等は不便と評
されていた。三軒茶屋では、アクセスのよさはもちろん、買い物等の利便性、経済性が高
く評価され「これ以上住みよいところはない」といった総合評価であった。人間関係につ
いても、港南が都会的、三軒茶屋は下町的と反対の結果であった。
4 - 5. 個人差、地域差の検討
個人属性データ、言葉データ、好きな場所データを用い、対応分析により、個人差や地
域差の検討を行った。個人差については、性別、ライフステージ、子どもの有無、居住年数、
勤務形態などによる差異についての検討を行ったが、
ライフステージにおける“ 子育て世代 ”
や、子どもの“ 未就学児 ”
、
“ 就学児 ”といった年代である程度まとまりがあるものの、シ
ニア世代では個人差が大きく、目立った傾向は見られなかった。また、性別や居住年数な
ど、その他の属性においては、ほとんど差がないという結果になった。地域差についても、
2 地域で重なる言葉や場所が多く認められ、その他、各地域に特徴的な項目が 2 方向に分
散する程度で、大きな差は見られなかった。また、好きな理由や特徴として抽出された言
葉が、
全く分類の異なる場所を説明しているパターンも多く見られた。つまり全体としては、
異なる地域や場所にも共通した魅力や価値が存在することを示唆する結果となった。
5. 評価構造の分析
5 - 1. 全体ネットワーク図の作成
本研究の主の目的は、
「いい」
「好き」
と思う場所に関する評価構造を示すことである。まず、
個別インタビューの結果を、発言内容の階層性に着目し、回答者ごとにネットワーク図と
して整理した。その後、以下の手順に従い、回答者ごとの区分けをとりはらって、全体を
まとめて 1 つのネットワーク図に統合・整理した。
1) 上位概念の抽出
調査関係者で集まり、回答者ごとのネットワーク図を見回して、共通する上位概念を
抽出、整理。
2) カテゴリリストの作成
・1)で抽出された上位概念ごとに、全個人データを分割、再整理。
・上位(人が主語)・中位(まち、場所が主語)・下位(具体的な場所)の項目に振り分けて、
カテゴリリストを作成。
13
ハイライフ研究 13号 Report Summary
都市圏居住の価値を探るー 2009
Investigating the value of urban living 2009
3) 全体ネットワーク図の作成
・カテゴリリストを元に、情報を要約して全体で1枚の「ネットワーク図」を作成。
以上により作成した「全体ネットワーク図 ( 下位項目を省略した簡略版)
」を以下に示す。
このネットワーク図に示す上位概念は「都市居住者が地域に求めている価値・魅力」と
考えることができる。これらが容易に省略することなくまとめられたということは、居住
地域に求められている価値や魅力は、地域・人を超えた共通項が多いといえる。ただし、
このネットワーク図からは、同じ上位概念であっても、そこにぶら下がっている具体的な
場所 (「いい」
「好き」と思う場所 ) は、その様相が異なることが多いことも分かった。
例)
「便利」ー「何でも揃う、コンパクト」
港南ー豊洲(人工的で大規模なショッピングモール)
三軒茶屋ー茶沢通り商店街(下町的な商店街)
14
つまり、地域特性などによりその形 ( 見た目 ) は違っても、居住地域に求められているも
の ( 価値・魅力 ) は地域や人を超えて共通であることが多い、と言うことができよう。
5 - 2 . 都市居住に求められる「5つの場」の提案
最後に、今回の調査結果を分かりやすく伝えるため、全体ネットワーク図の上位概念を
さらに整理・統合し、
‘ 都市居住に求められる「5 つの場」’としてイラスト化したものを
提案した。5 つの場は、①ふらっと・ゆるゆる・集う、②のびのび・ボーっと・リラックス、
③わくわく・発見・楽しい、④アクティブ・自由・あくせくしない、⑤文化・豊か・感じる、
である。これは、
「都市居住者が地域に求めている価値・魅力」をビジュアルにイメージで
きるようイラストによって表現するという試みである。
先に述べたように、同じ上位概念であっても、そこにぶら下がっている具体的な場所 (「い
い」
「好き」と思う場所 ) は、その様相がまったく異なる場合も少なくない。したがって「5
つの場」の各イラストは今回提案したシーンが最適とは言い切れない、という点は注意し
なければならない。しかしながら、
この「5 つの場」は、
都市居住者が地域に求めている「真
のニーズ」をある側面から具象化しているものと言える。従来の住みたい街ランキングな
どに用いられている定量的に測定可能な都市の指標 ( 地価、人口、平均所得、単位面積当
たり施設数など ) に対し、住民の視点で生の言葉として語られた価値キーワードとしての特
徴を持ったものと言える。見回せば、
「5 つの場」の各々と同じような概念・価値・機能を
持っていると感じられる場は、ほかのまちにも見出すことができる。たとえば、これらを
積極的に見つけて収集整理し、ボキャブラリーを増やしていくことにより、この「5 つの場」
を居住者の気持ちを代弁する都市評価ツールとして発展させていける可能性は非常に高い
と考える。
6. 今後の課題と展開の方向性
今後の課題としては、今回提案した「5 つの場」の妥当性をさらに検証していく必要が
あると思われる。様々な都市環境に住む住民を対象にこの「5 つの場」を評価対象とした
アンケート調査を行い、居住地域で当てはまるような場所はあるか、他に「いい」
「好き」
と思う場所はないか等を調べることや、今回対象とした街とは異なる特徴を持つ街、たと
えば「歴史と伝統があるまち」
「下町」などで同様の調査を行う必要などがあると思われる。
そのような検証と同時にそれと同時に、
「5 つの場」について、その提案の背景や手法、意
義を含めてメディアや地方自治体などに広報し、まちづくりや開発に関わる人に対して我々
の取り組みの認知度を高め、都市居住の価値をはかる指標としての存在価値を広げていく
ことができればと考えている。
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ハイライフ研究 13号 Report Summary
都市圏居住の価値を探るー 2009
Investigating the value of urban living 2009
Investigating the
value of urban living 2009
1. Background and purpose of study
The purpose of this study is to determine the types of value urban residents
see in relation to what aspects of their town or where in town they live. In terms
of the value of towns, many books with rankings of towns people want to live in
have been published, but the indices serving as the basis for calculations are
often economic indices, such as land price and rent, or indices that quantitatively
evaluate the environment in terms of equipment and facilities, such as the
number of facilities per unit of population or gross floor area of households.
Needless to say, although these indices are useful for calculating rankings
because they allow for quantitative comparisons, environments that residents
find attractive are not limited to size or economic evaluations, and considerations
of whether they can live comfortably (that is, the quality of town) are important.
While keeping in mind these issues, this study aims to: individually interview
urban residents using an "Evaluation Grid Method" to ask about where in their
towns they like or consider good, and why; clarify the structure of evaluations
of areas based on the opinions of residents; and propose physical environments
or factors that should be provided to create towns that make residents want to
stay.
2. Research team
This study was conducted under the following research system.
Research planning and coordination
Masashi Soeda (LLP Human Environment Design Laboratory, Ground
Planner, PhD (Engineering))
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Research and survey planning, design, and administration and analysis
Naoko Wakabayashi (Living Environment Studio Act Inc., Representative
Director, PhD (Engineering))
Survey administration and analysis
Mayu Sue (Graduate School of Literature and Social Sciences, Nihon
University, Doctoral course)
Yusuke Eda (Graduate School of Human Sciences, Waseda University,
Master's Course)
Research partnership
Yumi Kato (Pistaccio, Inc.)
Hajime Enomoto (YOMIKO Advertising Inc., Urban Life Research Institute,
Director)
Takaya Kojima (Faculty of Human Sciences, Waseda University, Associate
Professor, PhD (Engineering))
Research supervisor
Shinichi Sentoda (Research Institute for High-Life, Senior Researcher)
3. Study method
In this study, we conducted a survey of individual interviews based on the
"Evaluation Grid Method" as a method for structurally understanding the "true
needs" that individual urban residents seek for areas and locations by associating
these needs with specific locations and elements. The "Evaluation Grid Method"
is an interview method that has been improved and developed based on interview
methods developed in the field of clinical psychology and is widely used to
understand a variety of needs (requests) associated with environment, etc. The
premise of this method is the "Personal Construct Theory", which posits that
human beings "each have a unique 'cognitive structure', which is a mechanism
of understanding and judgment, and they try to understand external information
obtained through sight, sound, and other senses by processing information
with this mechanism to determine the actions they should take and predict
outcomes". The "cognitive structure" in this case is a "hierarchical structure"
having specific understandings such as "a spacious or non-spacious skyline" at
the bottom, sensory understandings such as "feels or does not feel liberating" in
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ハイライフ研究 13号 Report Summary
都市圏居住の価値を探るー 2009
Investigating the value of urban living 2009
the middle, and more abstract value judgments such as "able to unable to relax"
at the top. The Evaluation Grid Method can be described as a method aiming to
selectively pick up only certain aspects (i.e., the "evaluation structure") related to
the surveyed "evaluation" within the individual cognitive structure.
In general procedures of the evaluation grid method, respondents are first
asked to think about multiple subjects to determine "which one they like", and
are then asked for the reasons for their judgment criteria. In this study, however,
we set the subjects that the respondents were asked to evaluate as "locations
within their residential areas that they consider good and like" and asked for
reasons such as "why they like it" and "why they consider it good" for each
location determined as being "liked" and "good". This was because we wanted to
have the respondents pick several "locations that they consider good and like"
and it was awkward to have the respondents rank these locations. In addition,
we also asked whether the locations were used in their daily lives, whether they
served as destinations, and whether they were one of the reasons why they liked
their towns.
Assuming that evaluation structures vary between residential areas, we
picked the Sangen-Jaya area in Setagaya ward (a location where commercial and
residential areas, as well as new buildings and traditional downtown shopping
districts, coexist, and there is a mixture of both old and new houses and various
shop sizes) and the Konan area in Minato ward (a new town where large-scale
redevelopment is taking place; the number of high-rise apartments has recently
been increasing and many residents are new to the area) as our surveyed areas
that we believed to have different characteristics. In addition, taking differences
in life stages into consideration, we included various generations, including
seniors and nurturers, among the respondents.
We conducted surveys in the Konan areas in July and September of 2009
and in the Sangen-Jaya area in September and October. The interview survey
was conducted by one interviewer and one note-taker, and we spent about one
hour for each respondent.
18
4. Discussion of contents of interviews
4 - 1. Profile of respondents
Regarding the profiles, there were significant differences between the areas.
We can interpret these differences as indicating not only differences in the
samples used this time but also differences in the resident profiles of the areas
as a whole. In Konan, most of the respondents were already retired (seniors) or
were homemakers. Of the respondents, about 30 percent were nurturers, and
their children (the youngest sibling) were all preschoolers. On the other hand, in
Sangen-Jaya, more than 70 percent of the respondents were full-time workers
and none of them were homemakers or retired. Nurturers accounted for almost
half of the respondents, and the average age of the children was higher than
that in Konan.
4 - 2. Reasons for area selection
The main reasons for selecting both areas were "good accessibility (close to
urban center, convenient transportation to work and school, easy transportation
to parents' homes, easy to move around, etc.)". In addition, a common finding for
both areas was that few people chose the area for the region's "brand name" or
the reputation of the region. As described above, however, many people in Konan
had moved in from far regions or were seniors, and they chose "apartments in
the urban center" rather than "residential areas". On the other hand, many people
in Sangen-Jaya were nurturers who had moved in from neighboring areas, and
there was a noticeable trend in which they chose Sangen-Jaya for the following
reasons: "having a lot of greenery despite its location in the urban center" and
"wanting to raise kids while having neighborly ties".
4 - 3 . Perception of areas
This was the area of greatest difference between Konan and Sangen-Jaya.
The area that people imagined as the extent of the region in Konan varied,
including "the high-rise apartment where I live", "the apartment where I live and
neighboring areas accessible on foot", and "areas accessible within about 10
minutes by car (including Toyosu and Odaiba)". On the other hand, the people's
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ハイライフ研究 13号 Report Summary
都市圏居住の価値を探るー 2009
Investigating the value of urban living 2009
perception of the area in Sangen-Jaya formed a pattern in which respondents
belonged to "Taishido/Setagaya line", "Daizawa/Shimokitazawa" or "Mishuku/
Ikejiri", and the frameworks of each area were considerably distinct.
4 - 4. Comprehensive evaluation of areas
The comprehensive evaluations in both Konan and Sangen-Jaya were good.
The majority of people "liked" their residential areas and stated that they "have
an emotional attachment to the area". It was also common in both areas that
many people did not expect anything more than good accessibility before
moving in but began liking the area once they started living there. Especially in
Konan, many had negative impressions of the area before moving in, including a
perception of the area as "not a residential area" or "having a bad environment",
but we saw many cases where these impressions turned into positive value after
they started living there.
However, the elements people value vary depending on the areas. In Konan,
"feeling liberated" (close to the ocean and has a spacious skyline) was highly
valued, aspects such as shopping were evaluated as "inconvenient". In SangenJaya, along with good accessibility, convenience for shopping and economic
potential were highly valued and the comprehensive evaluation for the area was
that "there is no area that is more comfortable than here". The results regarding
human relationships were opposed as well, indicating an urbanized environment
in Konan and a traditional environment in Sangen-Jaya.
4 - 5. Review of differences between individuals and areas
Using data on individual attributes, words, and locations people liked,
we reviewed the differences between individuals and areas by conducting a
correspondence analysis. For differences between individuals, we reviewed
differences based on gender, life stage, whether they had children, years in
residence, and working style. Although the differences could be organized in
terms of life stages such as the "nurturer generation" and generations with
children that were "preschoolers" or "attending school", the differences between
individuals in the senior generation were great and there were no noticeable
trends. In addition, the results showed that there were no significant differences
in other attributes such as gender or years in residence. As for differences
20
between the areas, common words or locations were found in these two areas,
and other items distinctive to each area only varied in two directions and there
were no significant differences. In addition, we observed many patterns in which
words picked to describe reasons for liking a location or characteristics were
used to describe locations under completely different classifications. That is,
as a whole, the results indicate that common types of attractiveness and value
exist in different areas or locations.
5. Analysis of evaluation structure
5 - 1. Creation of overall network diagram
The main purpose of this study is to show the evaluation structure related
to locations that people consider "good" and "like". First, we organized the
results from individual interviews into a network diagram for each respondent
while focusing on the configuration of the hierarchical aspects of their opinions.
Then, according to the procedures described below, we removed the segments
between each respondent and integrated and organized the results into a single
network diagram.
1) Extraction of dominant concepts
Parties involved in the survey were gathered to look at the network diagrams
for each respondent and extract and organize common dominant concepts.
Dominant concepts: Reassurance
Convenience (ease of activities)
Joyful (exciting)
Vigor, energy
Open, Pleasant
Comfortable, relaxing
Heartwarming, relaxation
Rich human relationships
Good for children
Rich in culture
Feel at home
Attachment, familiar
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ハイライフ研究 13号 Report Summary
都市圏居住の価値を探るー 2009
Investigating the value of urban living 2009
2) Creation of category list
・We divided and reorganized all of the individual data based on each of the
dominant concepts selected in step 1.
・We divided the concepts into three groups, including the top (the subject
is a person), middle (the subject is a town or location) and bottom (specific
locations), and created a category list.
3) Creation of overall network diagram
Based on the category list, we summarized the information and created a
single "network diagram" for all of the information.
The dominant concepts described in this network diagram can be considered
"the types of value and attractiveness that urban residents seek for areas". The
fact that we could easily summarize these concepts without any omissions
suggests that the types of value and attractiveness required for residential
areas share many common denominators across areas and people. However,
we also discovered from this network diagram that even for the same dominant
concepts, the related aspects of the specific locations (locations that people
consider "good" and "like") are often different.
Example: "Convenience": "Everything can be obtained, compact"
Konan: Toyosu (artificial and large-scale shopping mall)
Sangen-Jaya: Chazawa Street shopping district (like a traditional downtown
shopping district)
That is, we can say that there are common requirements for residential areas
(value and attractiveness) shared across different areas and people, although
the images of these requirements (how they look) vary depending on the
characteristics of each area.
5 - 2 . Proposal of "5 locations" required for urban living
Finally, we further organized and integrated the dominant concepts of the
overall network diagram in order to easily report the results of the survey we
conducted this time, and we proposed an illustration of "5 locations" required
for urban living. These 5 locations are characterized by the following key words:
① wandering into, hanging out, and gathering; ② free and easy, doing nothing,
and relaxing; ③ exciting, discoveries, and fun; ④ active, free, and easygoing; and
⑤ culture, rich, and feelings. We attempted to describe the "type of value and
22
attractiveness that urban residents seek for areas" through illustrations in order
to visually imagine them.
As mentioned before, even for the same dominant concepts, the related
aspects of the specific locations (locations that people consider "good" and
"like") are often completely different. Therefore, it should be noted that the
scenes we proposed this time are not always appropriate for the illustrations of
each of the "5 locations". However, we can say that the "5 locations" represent
in concrete form the "true needs" that urban residents seek for areas from a
certain point of view. In contrast with the quantitatively measurable urban indices
(land prices, population, average income, number of facilities per unit area, etc.)
used for traditional rankings of areas where people want to live, our concepts
are characterized by the use of key words describing value spoken as actual
opinions obtained through the perspectives of residents. Looking at other towns,
locations that seem to have similar types of concepts, values, and functions for
each of the "5 locations" can be found in other towns. For example, by actively
finding, collecting, and organizing such data and building up a vocabulary, it
is highly possible to develop the "5 locations" as a city evaluation tool that
represents the voice of residents.
6. Further challenges and directions for development
As for future challenges, it is necessary to further verify the validity of the
"5 locations" that we have proposed this time. We believe that it is necessary
to conduct questionnaire surveys on the "5 locations" for residents in various
urban environments to find out whether there are any locations that apply to the
"5 locations" in their residential areas, or whether they have other locations that
they consider "good" or "like", as well as to conduct similar surveys in towns with
different characteristics from those of the towns we targeted this time, including,
for example, "historic and traditional towns" and "traditional downtown areas". In
addition to such verification, we hope to publicize the "5 locations", including the
background and methods of this proposal and the significance of this concept,
to the media and local governments in order to raise awareness of our efforts
among people involved in urban planning and development and to broaden the
use of existence values as indices for measuring the values of urban living.
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ハイライフ研究 13号 Report Summary
食生活力が高齢者の生活を変える
Good Dietary Practices Change the Lives of the Elderly
食の健康と世代別食育支援展開に関する研究 - 2
食生活力が
高齢者の生活を変える
1. 食の健康と世代別食育支援展開に関する研究の目的
2005 年に食育基本法が成立し、国民自らの生涯健康と健全な食生活の習慣化、正しい
食の文化継承や知恵・知識の選択・判断力の醸成を目指した指針が発表された。
21 世紀の日本人の生活革新テーマは「健康」
「安心」
「安全」
「環境保全」に集約されて
いるが、これらの事項は「食育提言」や「メタボリックシンドローム改善」等々の諸策と
して開花している。
しかしながら、国民の健全な食生活・食文化の育成と定着には、具体的食生活改善と文
化の定着化、生活マインドの醸成といった具体的行動の方向性を具現化するためのさまざ
まな課題が多岐にわたり存在している。
この点を踏まえて、本研究では国の食育推進運動を補完すべく、食育展開のより迅速な
浸透と実効性を求めて企図し、2 年にわたる研究として取り組んだ。
食育を推進する上では、
各々の世代により抱える課題は大きく異なる。昨年度行った幼児・
児童を持つ家庭に絞った研究に引き続き、今年度は高齢者に焦点を当て「食生活力が高齢
者の生活を変える」とし、本研究を推進した。
研究報告書構成概略
第1章 高齢者の食育を考える前提と意義
第2章 高齢者の食育とは何か∼これまでの取り組みと指針・提言∼
第3章 高齢者の食育の方向性
第4章 高齢者の食育をとらえる枠組み
第5章 高齢者の食生活の実像
第6章 食生活力でみる高齢者の食育課題とアプローチ
第7章 高齢者の食育推進への提言
別冊 調査報告書
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研究体制
新津 重幸(高千穂大学理事、大学院教授)
丹野 俊明(株式会社 行動科学研究所 代表取締役)
高津 春樹(財団法人 ハイライフ研究所 専務理事)
2. 本調査研究報告書の概要
当研究報告書は、7 章で構成されている。以下はその要約である。 第1章 高齢者の食育を考える前提と意義
本項では、公表されている既存データから日本の高齢化の現状を確認し、高齢者食育の
必然性を明らかにする。そして、研究対象とすべき年齢と視点を規定して、高齢者の食育
研究の意義を明確にする。
本研究は、2008 年度に世代別食育アプローチ研究の第 1 弾として、幼児・児童保有世
帯への食育アプローチの研究を行い、その成果を発表したが、本年度はその第 2 弾として、
今後来るべき本格的高齢化社会を構成する団塊世代を含む 55 ∼ 64 歳まで(次期高齢者)
と 65 ∼ 74 歳まで(現高齢者)を対象に高齢者へ向けての世代別食育アプローチ研究を
推進した。
研究を行うにあたり、客観的に高齢者および次期高齢者に対する食育の現状を眺め考え
てみると、いくつかの視点が浮かんだ。
1. 現高齢者(以下、高齢者と表記)は理想とされる日本型食生活の体現者であり、食育
の必要性は低いのではないか
2. 高齢者には食育より他の課題が大きいのではないか
3. 食育展開で高齢者向けアプローチは少ない
といった点であり、これらを考えた場合、高齢者に対する食育は果たしてこれまでのアプ
ローチでよいのだろうか、という疑問が生ずる。つまり、食の事象のみを対象とするので
はなく、もう少し幅広い視点からアプローチを考える必要があるのではないか、という仮
説が浮かび上がる。
高齢化社会が進行する中で、
「高齢者の食育」を考えることは、ただ単に現在の高齢者へ
の対策を考えることにとどまらない。高齢化社会の進行に合わせて進む世帯構造の変化を
はじめとした、幅広い生活環境変化により生起するさまざまな課題に対する食育アプロー
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ハイライフ研究 13号 Report Summary
食生活力が高齢者の生活を変える
Good Dietary Practices Change the Lives of the Elderly
チを構築することにつながる。
この研究は食育の世代別アプローチの概念と前提に基づくものだが、55 ∼ 64 歳までの
次期高齢者をもターゲットとしたのは、65 ∼ 74 歳までの高齢者をベンチマークとして次
期高齢者の食育推進とアプローチの方向も提案しようとしたからである。そして、今まで
の施策がアウトサイド・インだったのに対し、インサイド・アウトの視点から研究活動を
実施した。
第2章 高齢者の食育とは何か∼これまでの取り組みと指針・提言∼
1978 年に始まった第 1 次国民健康づくり対策から 2007 年の新健康フロンティア戦
略まで、さまざまな施策が国・関連諸団体により提示されてきた。それら既存の健康・食
関連の指針や提言の流れをまとめると、3 つのフェーズに整理できる。
フェーズ1 健康づくり運動
国民の健康づくり運動は、介護・老人医療保険に対する危機感を背景として、健康寿命
の伸長を目的に、生活習慣病の予防に重点が置かれていたと言ってよい。ここでは、
「健康
日本 21」に象徴されるように生活の質(QOL)の向上が最終的な目標とされ、栄養・食生
活が重点事項として位置づけられた。
フェーズ2 最重要事項としての栄養・食生活(食生活指針)
国民の健康づくり運動は、食生活指針としてより具体化された。10 の指針は、栄養・食
生活の在り方を具体的に示すものである。これは、迫る高齢化社会に対する 1 次予防に重
点的に取り組むための、健康な食生活の提言と位置づけることができる。
フェーズ3 良好な食生活を実現するための個人の行動変容支援
食生活指針は、その後、成長期・女性・高齢者という対象特性ごとに提示されるようになり、
さらには、
「健康な食生活」を送ることが「健康な生活」につながるという考えのもとで、
個人の行動変容を支援するという視点から食育法が制定されている。しかし、その中では
達成目標としての個別施策が重視された展開が図られるようになった。
健康づくり運動が「生活の質(QOL)
」を追求するものである一方で、その主要施策とし
ての食生活指針や食育の具体的活動は、適正な栄養摂取を主としたものにとどまっている。
いわば、食事のみにシュリンクしている状態と言わざるをえない。健康で健全な食事・食
生活、ひいてはそれを通した生活の質の向上は、
「何をどれだけ、
(どのように)食べたら
よいのか」だけで達成されるものではない。高齢者の食育は、高齢者の生活総体からとら
え直す必要がある。
26
第3章 高齢者の食育の方向性
本項では、高齢者と次期高齢者の栄養特性と運動時間やストレスについて、他の年代と
比較することにより、この世代がどれだけ健全な状態にあるのかを見る。これによって、
高齢者の食育の方向がどうあるべきかを見極めていく。
既存データからは、次のように整理することができる。
1. 高齢者の食育とは、「健康な食生活」を考えることである。「健康な食生活」とは、食
を起点とした健康な生活の実現であり、その最終的なゴールは、生活満足の向上であ
る。
2.「健康な食生活」を実現するために、加齢による衰えを補うことや食を規定する生活要
因への対策が求められる。
3. 栄養バランスのよい食事はもとより、「健康な食生活」を後押しする肉体的な健康状
態や人・社会とのつながりまで含めて考えていかなければならない。
第4章 高齢者の食育をとらえる枠組み
現代の食は、そのとらえ方が拡大し、複雑化している状態にあると言えよう。その要点は、
次のようになる。
1. 食のとらえ方が拡大し、ニーズが多岐にわたるようになってきた。
2. 食が複雑化し、判断基準が複雑化してきた。
氾濫する情報の中で生活者の情報への依存度が高まり、情報取得能力が豊かさを左右す
るようになってきたといっても過言ではない。食のニーズが拡大、複雑化した現代におい
ては、高齢者の食育の対応は食そのものだけでなく、生活環境要因との関係の中でとらえ
ていかなければならない。生活環境要因には、家族形態の変化や情報化などが挙げられる。
高齢者の食をよりよいものにしていくためには、これらの生活環境要因に適応し、健康で
豊かな食生活を実現していく力、すなわち「食生活力」が問われているのである。
「食生活力」は、食べることだけでなく、食にかかわる一連の行動をポジティブに実践す
る力であり、
「生活環境要因の影響に対して、どのように適応させていくか、という力」と
規定した。
食生活の主要な要素から代表的に考えられるものを食生活力 10 の指標として整理した。
① 情報力 ② 買い物力 ③ 献立力 ④ 調理力 ⑤ 演出力
⑥ 飲食力 ⑦ 外食力 ⑧ 共食力 ⑨ 保管力 ⑩ 片づけ力
27
ハイライフ研究 13号 Report Summary
食生活力が高齢者の生活を変える
Good Dietary Practices Change the Lives of the Elderly
以上の「食生活力」10の指標は、食行動サイクルとして回っていくものであり、この食行
動サイクルが回ることによって、より食生活力が高まっていくと考えられる。
また、
「食生活力」が高いか低いかという差(力量)をもたらす要因には、創意工夫の能
力と加齢による衰えの 2 つが考えられる。 現代の食生活に求められる創意工夫の能力は、
次の 3 つである。
① 問題解決能力 ② 創造性 ③ 自己実現能力
さらに、加齢による衰えの中から食生活に求められる力は、次の 4 つである。
① 体力 ② 気力 ③ 知力 ④ 社会力(周りの人との協調力)
以上、3つの能力と4つの力は、人によって差異が生じていることは言うまでもない。また
4つの力は、加齢による衰えの中で、どれだけ維持されているかが焦点になる。
高齢者の生活満足には、
「健康な食生活」が大きく影響すると考えられる。そしてこの「健
康な食生活」のためには、
「心・食・体」の豊かさが必要とされる。
本研究が目指す高齢者の食育アプローチは、高齢者の食生活の実態をとらえ、健康な食
生活を実現するための「食生活力」における課題を明らかにし、その対応策を検討してい
くことである。以下に、高齢者の食育をとらえる枠組みの全体像を示す。
生活満足
健康な食生活
心 食 体
(満足度)
(満足度)
(満足度)
食生活力
10 の指標
創意工夫の能力 28
加齢による衰え
第5章 高齢者の食生活の実像
本章では、高齢者および次期高齢者を対象に、食を含めた生活に関する調査を実施し、
以下を明らかにする。
1. 高齢者の「食生活力」
、
「健康な食生活」(心・食・体の満足度)と「生活満足」の実態。
2. 高齢者の食生活の意識と実態。
3. 食生活力を支える3つの能力と4つの力を把握する。また、加齢による4つの力の衰え。
4. その上で、食生活力の高い人と低い人の間で、食生活の意識と実態、生活行動におい
て異なる点。
また、調査対象者を年代と世帯構造で分類し、食生活を中心とした意識と実態を把握し、
以下の課題を明らかにしていく。
1. 世帯構造(暮らし方)から見えてくる課題
2. 高齢者(65歳以上)の食文化・食習慣と課題
3. 次期高齢者(55歳∼64歳)の食と課題
■ 調査概要
調査対象:首都圏在住の、満55∼74歳男女
調査方法:留置法(対象者自記式)、日記式併用
調査対象者選出法:エリアサンプリング法
標本数(有効回収数):440名
〔属性別内訳〕
満55∼64歳 満65∼74歳
(次期高齢者) 男性 (現高齢者) 女性 男性 女性 計
単身世帯 30 30 30 30 120
夫婦のみ世帯 40 40 40 40 160
2・3世代世帯 40 40 40 40 160
計 110 110 110 110 440
調査実施内容:調査は次の2本立てで実施。
1. 食生活などに関する意識・実態などのアンケートを自記式で記入
2. 日曜日、および平日の本人の食事の状況を日記式で記入
調査実施時期:2009年6月19日(金)∼ 29日(月)
29
ハイライフ研究 13号 Report Summary
食生活力が高齢者の生活を変える
Good Dietary Practices Change the Lives of the Elderly
第6章 食生活力でみる高齢者の食育課題とアプローチ
調査結果から食生活力が高い高齢者の意識・実態が、次の 7 つに集約された。
1. 子ども時代の食生活習慣(親からの伝承)
2. 日本型食生活を体験して育った世代
3. 夫婦のみ世帯で時間的・精神的束縛がない、ストレスがない
4. 運動、外出、旅行、趣味など活動的な生活
5. 規則正しい生活
6. 栄養バランスのよい食事
7. 食を楽しんでいる
また、食生活力への影響要因として次の 5 つが考えられる。この視点を基に食生活力を
とらえることにより、食生活力向上の課題を明らかにしていく。
1. 性・年代と食生活力
2. 加齢による衰えと食生活力
3. 生活環境要因と食生活力
4. 生活行動と食生活力
5. 食生活の実態と食生活力
上記 5 つの影響要因から課題を整理すると、意識と行動の 2 つの側面に分けられ、次の
ように集約される。
<意識面>
・食を楽しむことの浸透、または醸成(高齢者:65∼74歳男性)
・食行動への関わりの推進(次期高齢者:55∼64歳男性)
・食や健康への関心を高める
・栄養バランスのよい食事への心掛け
<行動面>
・「日常の運動」や「人と一緒の活動」の推進
・社会参加を促進
・皆で食べる機会や外食機会を増やす
上記課題に対して、高齢者の食生活力向上を推進する枠組みは、31 頁の図のようになる。
高齢者が楽しく健康な食生活を実践するためには、自分の生活を見直し、自分の目標を立
てて、
積極的に活動していくことが重要となる。健康な高齢者に対する周囲や社会の支援は、
30
モノの支援よりも、高齢者が参加するコトを提案していくことにあるだろう。
<自分自身> 趣味を持つ
積極的に参加する
目標をつくり、
行動する
<周囲や社会の支援>
社会とつながる
コミュニティや趣味、
サークルなどを提案
行動(活動)する
自分への問いかけ
食事を楽しむ
規則正しい生活
栄養バランスに配慮
栄養バランスのよい食事
買い物、運動、
趣味の促進
意識喚起 「栄養バランスの
よい食事」の啓蒙
モノよりコトで推進
第7章 高齢者の食育推進への提言
高齢者の栄養特性や運動時間、ストレスなどを見る限り決定的な問題は見当たらないが、
高齢化で避けて通れないのは、加齢による衰えと生活環境変化である。高齢者の食育を考
える場合、栄養バランスのよい食事に留まることなく、加齢と生活環境要因まで含めて考
えることが肝要で、高齢者の食生活にかかわる行動をよりよいものに変えていく推進活動
と言える。この考え方に基づき、以下の観点で提言を考える。
1. 食を起点とした健康な食生活を実現し、生活満足を向上させる
2.「健康な食生活」の実現のための、加齢による衰えと生活環境要因への対策
3.「健康な食生活」を後押しする肉体的な健康状態や人・社会とのつながりまで含めて
考える
「食生活力」という指標を提示したが、食生活力向上のために求められることは大きく 2
つある。
31
ハイライフ研究 13号 Report Summary
食生活力が高齢者の生活を変える
Good Dietary Practices Change the Lives of the Elderly
第1は、高齢者および次期高齢者自らが生活課題としている「自己実現」の方向性を認識
し、特に社会参画・コミュニティ参画行動への提言が必須となる。高齢者には、自らが参画
する活動の中で“ 食べるコト ”が喚起される状態が求められる。この過程の中で“ 食生活力 ”
10 の指標と創意工夫の 3 つの能力により、食を楽しもうとする「創造性」と「問題解決
能力」が醸成され、高齢化で衰えるであろう 4 つの力の中でも食卓や外食を演出する「社
会力」が醸成されることにつながる。
一方、次期高齢者に求められることは、“ 食生活力 ”10 の指標の適応力強化に向けて、
将来の高齢化に備えて今から食行動に積極的にかかわり、気力の醸成と刺激の継続が求め
られる。
第 2 は、社会やコミュニティの支援である。高齢者および次期高齢者は、国や行政のみ
ならずさまざまな社会やコミュニティでの支援を知れば、体験・参画することになると想
定される。従って、高齢者を取り巻くさまざまな社会やコミュニティは、高齢者自らがそ
れらの活動内容を実感・体感・継続参画できる環境づくりを行い、食を起点とした生活の
中で、食生活力を向上させる提言をせねばならない。
また、食生活力に影響を与えるものとして 7 つの生活領域が考えられる。
1.「個の生活領域」… “ ひとりでいる時 ”あるいは“ ひとりで○○したい ”といった自
閉的な生活領域
2.「家族・夫婦の生活領域」… 一般的な家族体系の生活
3.「仕事・職域・社会参画での生活領域」… 時間を拘束され、規範を求められる生活
4.「ヒトとの縁の生活領域」… 古くからの友人や知人、趣味やサークル活動で得た知人
との生活
5.「近隣・地域での生活領域」… 近所や地域のヒトや機関とのかかわりの中での生活
6.「都市・街での生活領域」… ハレの場面や街に出かけたりする都市空間での生活
7.「自然・旅行などでの生活領域」… 自然とのふれあいや旅行で地方の文化に接触する
生活
これら 7 つの生活領域拡大への高齢者の積極性と参画意欲を醸成していくことが、高齢
者の食生活力を向上させることにつながると考えられる。食は各生活領域の中で必然的に
存在し、意味や価値を持っており、生活領域が拡大すれば、食生活力も向上する。高齢者
の生活領域の拡大と関与は、
食を楽しむことにつながり、
食の「問題解決能力」
「創造性」
「自
己実現能力」を高めることになる。同時に、
「体力」
「気力」
「知力」
「社会力」の 4 つの力
を醸成することにもつながる。従って、高齢者の生活領域の拡大を優先し、それぞれの生
活領域の中で“ 食べるコト ”を提言していくことが重要だと考えられる。
32
高齢者の生活領域の拡大に向けての提言は、高齢者の社会とのつながりの醸成であり、
これがひいては高齢者の食育の最終的なゴールである「生活満足の向上」にもつながる。
生活領域拡大のためには、高齢者自身が「時間消費の在り方」を認識し、より充実した時
間構成を考慮する必要がある。
また“ 食べるコト ”の提言とは、
栄養バランスやそれぞれの生活領域での規則正しい生活、
あるいは、これらの生活領域に向けての参画と楽しみ方の提言であり、そこに食の意味と
意義、さらに楽しむコトの意義を実感・体感させていくことである。
さらに、
「時間消費の在り方」とは、誰と食べるか、一人で何をどう楽しく食べるか、旬
は何か、購入場所や調理方法をどこで知ればよいか、どんな食の演出をするか、誰と共有
するか、片づけをどうするか、余ったモノの保存はどうするかなどについて、生活領域ご
とに計画を立てることである。
高齢者と次期高齢者が「時間消費の在り方」を認識した上で、それを考え、実行し、参画、
実感・体感する試みが確立できれば、食生活力の向上へとつながるだろう。
33
ハイライフ研究 13号 Report Summary
食生活力が高齢者の生活を変える
Good Dietary Practices Change the Lives of the Elderly
Good Dietary Practices
Change the Lives
of the Elderly
Study on Healthy Food and Development of Shokuiku Aid by Generation
RE: Shokuiku is a Japanese word, meaning "education of appetite" or "education about having
a good diet". Since it has no appropriate word translated into English, we call it, "Shokuiku".
1. Purpose of the Study on Healthy Food and Development
of Generation-specific Shokuiku Aid
The Basic Act on Shokuiku was enacted in 2005, providing guidelines with
objectives such as enabling citizens to achieve lifetime well-being and practice
healthy eating habits, maintaining a proper food culture, and developing the
ability to make judgments and adapt wisdom and knowledge on food.
The focus of lifestyle reform in Japan in the 21st century is on "well-being",
"safety", "security" and "environment conservation", and these issues have been
successfully incorporated into policies such as "Proposals for Shokuiku" and
"Improvement of Metabolic Syndrome".
However, efforts to help citizens to develop and adopt healthy eating habits
and a healthy food culture have faced a wide range of challenges in providing
specific directions for improving dietary habits, spreading food culture, and
developing a focus on lifestyle.
Against this background, we planned and conducted a two-year study
designed to facilitate the development of more timely and effective Shokuiku in
order to support the national program to promote Shokuiku.
In promoting Shokuiku, there are significant differences in the issues faced
by different generations. Last year, we conducted a study on households with
infants or small children. This year, we continued our studies with a focus on
the elderly based on the slogan, "Good dietary practices change the lives of the
elderly".
34
Table of Contents of the Research Report
Chapter 1: Premises and Meaning of Discussions on Shokuiku for the Elderly
Chapter 2: What is Shokuiku for the Elderly? Current Efforts, Guidelines and Proposals
Chapter 3: Directions in Shokuiku for the Elderly
Chapter 4: The Framework for Understanding Shokuiku for the Elderly
Chapter 5: Current Dietary Habits of the Elderly
Chapter 6: Challenges and Approaches in Shokuiku for the Elderly from the Perspective of Good Dietary Practices
Chapter 7: Proposals for Promoting Shokuiku for the Elderly
Attachment: Survey Report
Research Team
Shigeyuki Niitsu (Director and Graduate School Professor, Takachiho University)
Toshiaki Tanno (Executive Director, Behavioral Science Institute)
Haruki Takatsu (Senior Director, Research Institute for High-Life)
2. Overview of this Survey Report
This survey report consists of 7 chapters. The following is a summary of the
report.
Chapter 1: Premises and Meaning of Discussions on Shokuiku for the Elderly
This chapter describes the current situation in Japan as an aging society
based on currently published data and clearly states the need for Shokuiku for
the elderly. The targeted age group and focus of the study are specified, and the
meaning of research on Shokuiku for the elderly is clearly explained.
In 2008, the Research Institute for High-Life conducted and published the
results of a study focusing on households with infants or small children, the first
in a series of studies on generation-specific approaches in Shokuiku. This year,
the Institute continued with the second part of its generation-specific research,
targeting the age groups of 55 to 64 year olds (the elderly-to-be; this group
includes the baby boomer generation that will comprise the real aging society in
35
ハイライフ研究 13号 Report Summary
食生活力が高齢者の生活を変える
Good Dietary Practices Change the Lives of the Elderly
the future) and 65 to 74 year olds (the elderly).
In conducting the study, an objective review on current Shokuiku targeting
the elderly and elderly-to-be led to these observations:
(1) Currently, the elderly practice ideal, traditional Japanese eating habits, and
there does not seem to be a great need for Shokuiku;
(2) The elderly seem to face greater issues in areas other than Shokuiku;
(3) The development of Shokuiku includes few approaches targeting the elderly.
These observations raised the question as to whether the current approach in
Shokuiku for the elderly is appropriate. This led to the hypothesis that we need
to consider and approach Shokuiku not simply as eating activities but from a
wider perspective.
As society in Japan ages, considerations of "Shokuiku for the elderly" will
go beyond discussions of actions targeting the elderly. This will lead to the
establishment of approaches in Shokuiku that tackle various issues caused
by a range of changes in lifestyle. Examples include the changes in household
structure caused by the continuously aging society.
Although based on the concept and premise of generation-specific
approaches in Shokuiku, this study also targeted the age group of 55 to 64
year olds (the elderly-to-be). This is because we aim to provide proposals for the
promotion of and directions for Shokuiku for this group using the elderly group
of 65 to 74 year olds as a benchmark. We took an inside-out perspective in our
research activity rather than the outside-in perspective traditionally used for
formulating policy.
Chapter 2: What is Shokuiku for the Elderly?
Current Efforts, Guidelines and Proposals
The government and relevant organizations have proposed a number of
policies ranging from the first well-being program for Japanese citizens (started
in 1978) to new well-being frontier strategies in 2007. Current health and foodrelated guidelines and proposals by the government and relevant organizations
can be divided into 3 phases:
Phase 1: The well-being program
Against the background of concerns over nursing care and health insurance
36
for the elderly, the well-being program for Japanese citizens is designed to
help citizens stay healthy for longer and focuses on the prevention of lifestyle
diseases. The ultimate objective is to improve quality of life (QOL), as indicated
in "Well-being Japan 21", and nutrition and dietary habits are set as priorities.
Phase 2: Nutrition and dietary habits as top priorities (guidelines for dietary habits)
The well-being program for Japanese citizens was presented as more specific
guidelines for dietary habits. There are 10 guidelines specifying ideal nutritional
and dietary habits. These guidelines are considered proposals for healthy dietary
habits for prioritizing first-line prevention in preparation for the coming aging
society.
Phase 3: Support for personal behavioral changes for developing good dietary habits
The guidelines for dietary habits were later revised so that specific guidelines
were set according to subject characteristics, such as growing children, females,
and the elderly. Based on the assumption that developing "healthy dietary
habits" leads to "healthy lifestyle", the Shokuiku Act was enacted to support
personal behavioral changes. However, in these efforts, individual policies to be
accomplished were prioritized.
While the well-being program pursues QOL, the focus of the major policies
of the program, including guidelines for dietary habits and specific activities in
Shokuiku, is limited to adequate nutritional intake. In other words, the program
focuses narrowly on diet. Healthy diet and dietary habits and subsequent
improvements in QOL cannot be achieved simply through guidance on "what
should be eaten and how much (and how)". Shokuiku for the elderly requires a
review of the overall lifestyles of the elderly.
Chapter 3: Directions in Shokuiku for the Elderly
This chapter compares characteristics related to food and nutrition, time
spent on exercise, and stress among both the elderly and elderly-to-be compared
to other generations to find out the state of health of the former. Based on
these findings, we will determine the ideal directions for Shokuiku for the elderly.
Based on the existing data, the characteristics related to food and nutrition,
time spent on exercise, and stress among the elderly can be summarized as follows:
37
ハイライフ研究 13号 Report Summary
食生活力が高齢者の生活を変える
Good Dietary Practices Change the Lives of the Elderly
(1) Shokuiku for the elderly concerns "healthy dietary habits". "Healthy dietary habits" means building a healthy lifestyle around one's diet, and the ultimate
goal is to boost satisfaction in life;
(2) In order to practice "healthy dietary habits", actions need to be taken against
declines in ability due to aging and lifestyle factors that determine one's diet;
(3) Discussions must cover not only nutritional balance but also factors that support "healthy dietary habits", such as physical health and connections with
people and society.
Chapter 4: The Framework for Understanding
Shokuiku for the Elderly
Currently, the issue of diet seems to be understood in a number of ways and
the concept has become complex. In summary:
(1) Understanding of diet has expanded to include various needs;
(2) The issue of diet and criteria for judgment have both become complex.
As people live in an abundance of information and are increasingly dependent
on information, the ability to collect information affects well-being. In modern
society, where dietary needs are growing and becoming complex, we must take
actions for Shokuiku for the elderly by not only considering the issue of diet
itself but also by understanding diet in the context of lifestyle and environmental
factors. Lifestyle and environmental factors include changes in family structure
and informatization. Improvements in the diets of the elderly require good
dietary practices, or the ability to develop healthy, high-quality dietary habits in
accordance with these lifestyle and environmental factors.
Good dietary practices require having the ability to positively execute a series
of diet-related behaviors and are defined as "the ability to adjust to the impacts
of lifestyle and environmental factors".
The following 10 main elements of dietary habits are indicators of good
dietary practices:
① ability to collect information ② ability to shop ③ ability to create menus
④ ability to cook
⑤ ability to be creative
⑥ ability to eat and drink ⑦ ability to eat outside ⑧ ability to share food ⑨ ability to store ⑩ ability to clean up
38
These 10 indicators are part of a cycle of dietary behavior, and the operation of
this cycle seems to improve good dietary practices.
In addition, ingenuity and diminishing ability due to aging are factors that are
believed to lead to good or poor dietary habits. Modern dietary habits require
ingenuity with the following 3 elements:
① ability to solve problems ② creativity ③ self-accomplishment
Also, the 4 following abilities are required to compensate for diminishing
abilities due to aging and develop good dietary habits:
① physical ability ② mental ability ③ knowledge ④ social skills (ability to cooperate with others)
Obviously, there are differences related to these 3 abilities and 4 elements
between individuals. The issue is the extent to which the 4 abilities are
maintained despite diminishing abilities due to aging.
Healthy dietary habits seem to have a great impact on satisfaction with life
among the elderly. Healthy dietary habits require a healthy mind, diet, and body.
According to this study, the ideal way to approach Shokuiku for the elderly
is to understand the current dietary habits of the elderly, to determine the
Satisfaction in life
Healthy eating habits
Mind Food
Body
(satisfaction level) (satisfaction level) (satisfaction level)
Good dietary practices
10 indicators
Ingenuity Diminishing abilities
39
ハイライフ研究 13号 Report Summary
食生活力が高齢者の生活を変える
Good Dietary Practices Change the Lives of the Elderly
challenges related to good dietary practices for developing healthy dietary
habits, and to discuss the actions to be taken. The following is the overall
framework employed for understanding Shokuiku for the elderly.
Chapter 5: Current Dietary Habits of the Elderly
This chapter determines the following through surveys on dietary habits and
lifestyle targeting the elderly and elderly-to-be:
(1) Current "good dietary practices", "healthy dietary habits" (satisfaction in mind,
diet, and body) and "satisfaction in life";
(2) Current dietary habits and awareness among the elderly;
(3) Understanding of 3 abilities and 4 elements supporting good dietary habits,
as well as 4 diminishing abilities due to aging;
(4) Differences in current dietary habits, awareness, and daily activities between
people with good dietary practices and people with poor dietary practices.
The survey participants are sorted by age group and household structure
to understand current conditions and awareness related to dietary habits and
determine the following issues:
(1) Issues related to household structure (living arrangements)
(2) Food culture and dietary habits and issues for the elderly (65 years old and over)
(3) Diet and issues for the elderly-to-be (55 to 64 years old)
■ Overview of survey
Participants: Males and females aged between 55 and 74 living in
the Tokyo metropolitan area
Survey method: Forms (including a diary format) were filled by the participants.
Subject sampling method: Area sampling method
Sample size (number of valid responses): 440 persons
<Breakdown according to attributes>
55 to 64 years old 65 to 74 years old
(elderly-to-be) (elderly) Male Female Male Female Total
Living alone 30 30 30 30 120
Couple 40 40 40 40 160
2 or 3 generations 40 40 40 40 160
Total 110 110 110 110 440
40
Details of survey implementation:
The survey was conducted using 2 formats:
(1) Participants filled in a questionnaire concerning current dietary habits and awareness.
(2) Participants described their diet on Sundays and weekdays in a diary format.
Survey period: June 19th (Fri.) to 29th (Mon.), 2009
Chapter 6: Challenges and Approaches in Shokuiku for the Elderly
from the Perspective of Good Dietary Practices
The survey uncovered the following 7 characteristics among the elderly
subjects with good dietary practices:
(1) Dietary habits since childhood (passed on by parents);
(2) Generation growing up with traditional Japanese dietary habits;
(3) Households consisting of a couple and having no time constraints or mental
constraints or stress;
(4) Active lifestyle consisting of exercise, going out, travelling, and hobbies;
(5) Orderly lifestyle;
(6) Balanced diet;
(7) Enjoy eating.
The following 5 factors are believed to have affected good dietary practices.
We will determine the challenges for the development of good dietary practices
by understanding the practices from these perspectives:
(1) Gender/age and good dietary practices;
(2) Diminishing abilities due to aging and good dietary practices;
(3) Lifestyle and environmental factors and good dietary practices;
(4) Daily activities and good dietary practices;
(5) Current dietary habits and good dietary practices.
These 5 factors are summarized as challenges in the 2 areas of awareness
and behavior:
<<Awareness>>
• Promote and develop the idea of enjoying one's diet (elderly: 65- to 74-year-old males)
• Encourage involvement in dietary behavior (elderly-to-be: 55- to 64-year-old males)
• Boost interest in diet and health
41
ハイライフ研究 13号 Report Summary
食生活力が高齢者の生活を変える
Good Dietary Practices Change the Lives of the Elderly
• Encourage balanced, nutritious diet
<<Behavior>>
• Promote "daily exercise" and "social activities"
• Engagement with society
• Create more opportunities to share food or eat out
For these challenges, the following framework has been created to promote
improvements in good dietary practices among the elderly. It is important for
the elderly to review their own lifestyles, create goals, and stay active in order
to enjoy healthy dietary habits. Other people and society at large can support
the health of the elderly not through the provision of items but by proposing
activities for the elderly to engage in.
<<Elderly>>
<<Support from others and society>>
Actively participate
Connect
with society
Propose community
or hobby group
Set goals and
engage in activity
Engage in activity
Encourage shopping,
exercise and hobbies
Questioning oneself
Enjoy eating
Changes in perspective
Orderly lifestyle
Considerations of
nutritional balance
Nutritionally balanced diet
Encourage
"nutritionally
balanced diet"
Have a hobby
Promoting activities rather than objects
42
Chapter 7: Proposals for Promoting Shokuiku for the Elderly
While the characteristics related to food and nutrition, time spent on exercise,
and stress do not present significant issues for the elderly, the aging population
must face the issues of diminishing abilities due to aging and changes in
lifestyle. Discussions on Shokuiku for the elderly go beyond nutritionally
balanced diets, and it is important to cover aging and lifestyle and environmental
elements. These are the efforts needed to improve the dietary behavior of the
elderly. Based on this idea, we make the following proposals:
(1) Build healthy dietary habits around one's diet and improve satisfaction in life;
(2) Take actions against diminishing abilities due to aging and lifestyle factors in
order to build healthy dietary habits;
(3) Discuss factors that support healthy dietary habits, such as physical health
and connections with others and society.
The indicators for good dietary habits have been presented above, but there
are 2 requirements for the development of good dietary habits.
Firstly, we need to make proposals to promote the engagement of the elderly
in society and communities by recognizing trends in "self-accomplishment", which
is one of the challenges in the lives of the elderly and elderly-to-be. The elderly
need a trigger for encouraging eating when they participate in an activity. In this
process, 10 indicators for good dietary practices and 3 elements of ingenuity
can help develop "creativity" and the "ability to solve problems", which are the
elements that allow the elderly to enjoy their diets, as well as "social skills" to
be creative in their meals at home and outside, one of the 4 diminishing abilities
due to aging.
For improvements in the ability to adjust the 10 indicators for "good dietary
practices", the elderly-to-be are expected to start to actively engage themselves
in dietary behavior, develop mental ability, and continue to receive stimulation in
preparation for their future phases of aging.
Secondly, the elderly need support from society and their communities.
Knowing that the support is available from society and various communities
as well as the government and authorities, the elderly and elderly-to-be may be
43
ハイライフ研究 13号 Report Summary
食生活力が高齢者の生活を変える
Good Dietary Practices Change the Lives of the Elderly
encouraged to participate. Therefore, society and the communities around the
elderly must create environments that enable the elderly to emotionally and
physically experience or continue to be engaged in activities and must make
proposals for the improvement of good dietary practices in lives evolving around
diet.
In addition, the following 7 aspects of life are believed to affect good dietary
practices:
(1) "Life as an individual" ‒ Closed aspect of life where someone is "alone" or wants
to "do something alone";
(2) "Life as a family or couple" ‒ Life in a typical family structure;
(3) "Life in work or society" ‒ Life that requires time constraints and order;
(4) "Life connected with others" ‒ Life that is connected with old friends or friends
with the same hobbies or from the same activity groups;
(5) "Life in neighborhood/community" ‒ Life that is engaged with neighbors, other
community members and organizations;
(6) "Life in urban setting" ‒ Life in urban areas where people have opportunities
to participate in events and go out;
(7) "Life in nature or on journeys" ‒ Life with opportunities to experience nature or
regional cultures while travelling.
Encouraging the elderly to actively participate in these aspects of life may
lead to the development of good dietary practices by the elderly. The issue
of diet is always present in these aspects of life and has meaning and value.
Participating in wider aspects of life helps to improve good dietary practices.
Such participation and engagement can help the elderly to enjoy their diet and
enhance their "ability to solve problems", "creativity" and "self-accomplishment
skills" in relation to their diets. At the same time, the 4 abilities of "physical
ability", "mental ability", "knowledge", and "social skills" are also developed.
Therefore, it is believed to be important to prioritize the participation of the
elderly in wider aspects of life and promote the idea of "eating" in each aspect.
Such participation based on these proposals leads to the development of
connections with society, leading to improvements in satisfaction in life, the
ultimate goal in Shokuiku for the elderly. For this, the elderly must understand
44
how to spend their time and consider better, fruitful arrangements for spending
their time.
To promote the idea of "eating" is to make proposals for balanced diets and
routines in each of the aspects of life, or proposals for ways of participating in
and enjoying these aspects, to help the elderly to find the meaning of "eating"
and "enjoying". The question of how to spend one's time involves planning for
each aspect of life, such as with whom to share food, how to enjoy meals alone,
what kinds of food are in season, how to find places to shop or ways to cook,
how to be creative with food, how to clean up, and how to store leftovers.
If successful, efforts to help the elderly and elderly-to-be to understand
and consider how they spend their time, execute plans, and participate in and
experience the aspects of life will lead to the development of good dietary
practices.
45
ハイライフ研究 13号 Report Summary
幼児における「片づけ」行動の研究
Research on the "Tidying-up" Activities of Infants
幼児における
「片づけ」行動の研究
ー「育児」と「物と人と暮らし」研究のファーストステップとしてー
1-1. 研究の動機
本研究は、こども環境学会正会員である辰巳渚と木村歩美の共同研究である。
辰巳は文筆と教育の仕事の実践者であり、
「豊かな暮らしとはなにか」と「家庭・家事の
意義とはなにか」をテーマに活動してきた。木村は小学校・幼稚園の教諭・保育園の職員
を経験してきた実践者であり、同時に子どもの育ちを研究し続けてきた。
暮らしを形づくる「物」とその「物」と人との関係性への関心をもつ辰巳と、子どもが
育つ環境としての保育園や幼稚園、そしてそこでの保育や遊びの質の保障について関心を
持つ木村が、それぞれの関心において「片づけ」というテーマに出合い、その重要性に気
づいたことから、本共同研究の企画がはじまった。
それぞれ大学に講師としての籍は置くが、学究の徒というよりは実践者である両者が、
目の前にあるホットな研究領域として「片づけ」というテーマを発見したことの意味を、
我々
は大きいと自覚している。
以下、研究の目的について触れる前に、我々の動機について述べておきたい。
1-1-1 研究の動機(辰巳)
我々人間にとって、物とはなんなのだろう。これが、辰巳の追いかけている大きなテー
マである。
現在、世の中は収納法ブーム (*) である。ビジネスとして、個人宅を片づける・収納の仕
組みを作るサービスも出てきて 、確実なマーケットを確保している。それは、従来の掃除
サービスとは、一見同じに見えるけれど、需要としてはまったく異なるものだ。
生活の主体者(生活者)にとって、自分の家の中に持ち込んだ/持ち込まれた物をどのよ
うに取り扱うかが、大きな問題(困難)となっているのである。
(*)同時に、思考管理や情報管理としての整理法もまた、ブームである。インターネット
などの情報が過多な時代だから、というだけでなく、個々人もまた常に情報の発信者であ
りつづけるなかで、情報の取捨選択能力が問われ、また必要な情報へのアクセス回路の管
46
理も含めて情報ストックをどのように有用なものにするかが問われている。
一言でいえば、現代の日本人は「物 (= 道具、消費財……)」とのじょうずなつきあい方
を見つけられずに、つねにもやもやしている生活を強いられているといえよう。
「現代は物
が多すぎるからだ」という言説はよく耳にするが、じっさいには市場社会の物の多さ ( 量だ
けでなく多様性も含めて ) が問題なのではなく、私たちが自分の使う物を自分で選択でき
るようになり、また自分の住む家を自分で作れるようになったために、物を取り扱う基準
を自分で 1 から作り上げなければならなくなった点が、問題なのだと思う。
生活を形成する「物」は、単なる物質ではない 。個々人の暮らしのなかで、
「物 = 生活の
道具」であり、つまり生活そのものといえる。そして同時に、多種多様な商品を選択可能
な現代社会においては、
「私が選んだ物 = 私の生きる価値観」
、すなわち生き方の顕れなの
である。
辰巳は、現代に生きる個々人が満足して生きるためには、物との関係性を、自らの生き
る価値観 ( それを哲学と呼んでもよい ) の顕れとして築き上げる能力が必要なのだと痛感し
ている。
その意味で、
「片づけ」が、現代的かつ根源的なテーマとして浮上してくる。
片づけとは、
(1) そもそも、
「私」が何を家 = 私の暮らす場に持ち込むか、という選択の結果であると
同時に、持ち込んだ物を私は有効に使っているか(持ち込んだのは正解だったか ) と常に自
分に問いつづけている追認の作業
(2)「私」の生きる価値観の顕れ(保育の場であるなら、
「我々が目指す保育の理念の顕れ」
)
という深い意味をもつ「物」を、
生活の「場」においてどう配置するかという秩序(システム)
の構築作業
(3) そして時間の流れとともにどう物を扱うかという循環(ルール)の構築作業
(4) また、
家庭や教育施設などの共同体においては、
その活動内容(システム)と活動(ルー
ル)の構築・維持作業であり、そこに共同体の一員としての責任(モラル・マナー)も関わっ
てくる。
という定義づけができるように思う。
しかしながら、
「片づけ」というテーマは、単なるブームや生活上の一側面、しかもどち
らかというとつまらない、主婦や現場で働く人の困りごとといった ( いわば糠味噌くさい、
といった感じ ) 認識や対応にとどまっている。
「個々人が日々の生活でどのように物を持つ
か」そして「個々人が日々の生活という秩序と循環を、どのように形成するか」の検討 ( も
しくは知恵 ) は、なされない。もちろん、これらのことについての研究事例もほとんどない。
すでに経済学、社会学のジャンルにおいては「消費の目的」という視点で「人と物との
関わり」を研究する事例がある。代表的なものは、
ヴェブレンの「見せびらかし」であり、
ボー
47
ハイライフ研究 13号 Report Summary
幼児における「片づけ」行動の研究
Research on the "Tidying-up" Activities of Infants
ドリヤールの「差異の記号」という見方だろう。が、あくまでも消費財 ( マテリアル ) とい
う観点であり、生活の形成や生きる価値観の顕れという観点は弱い。これは「消費」の研
究が欧米で進んでいることと関係があると思われる。
辰巳は、
「人間にとって、物とはなにか」という根源的なテーマが、現代では「なぜそれ
を獲得したいのか / 所有したいのか」というプラスのベクトル ( 欲求といってもいい ) への
問いではなく、
「なぜそれがあると困るのか」というマイナスのベクトルへの問いとして顕
れていることを、ほんとうにおもしろいと思う。
本年は、片づけにアプローチする基礎研究であるが、この基礎研究からいくつかの仮説
または課題を整理し、次のステップとしていきたい。
1-1-2 研究の動機 (木村)
“ モッタイナイ ”や“ エコ ”などという言葉がやや氾濫気味な現代であるが、この高度消
費社会において、人と物のよりよい関係を維持しながら生きていくことは、これらの言葉
が叫ばれずとも、とても重要なことである。
古代からこの数十年前までの人々の暮らしは、物を今まで以上に上手に活用してきてい
る。例えば、弥生時代の住居や田んぼ跡からは、廃材を活用した、いわゆるリサイクル材
がよく出土する。食べ物についても、捨てることなく、ほぼすべての部位を使うよう知恵
を絞ってきた。物を上手に使いながら、人々は暮らしてきた。しかし、この数十年間は、
その人と物の歴史を、ある意味捨ててしまった時代と言えるかもしれない。もちろん、そ
の流れに対しノーと訴える人は多く、様々な試みが続けられている。
このような大人社会での出来事は、当然、子どもたちの社会においても起きている。自
分の持ち物への執着がなくなったと言われて久しいが、これは一つ一つの物と自分との関
係性の希薄化が原因だろう。そして、地域とのつながりの希薄化、家族構成の変化、個人
社会への移行は、みんなで秩序を維持していく、ルールを作り守っていくことへの必要性
をあまり感じさせなくしている。このことは、保育を日々進めて行くにあたり、多くの問
題を生み出しているのではないだろうか。その問題が生み出す最たる問題に「おかたづけ」
があるのではないだろうか。
保育現場における「おかたづけ」についての問題は、古くから指摘されているものの、
ではどうしたらよいのか、その知恵はなかなかと広がっていない。文献や研究論文の数は
散見されるが、この調査研究に携わる辰巳が指摘しているような、個々人が日々の生活の
中で秩序と循環をどう形成していくかなどという視点での研究は私たちの調べる限りでは
見つかっていない。保育における環境という面から考えると、保育者と子ども、保護者に
よって織りなす心理的な環境がどう影響しているか、子どもの持つ特性と物の配置の関係
性、収納についての意識について、保育形態と「おかたづけ」の関係性なども含め、まだ
48
まだ追究をしていく必要のある部分がほとんどではないだろうか。
今回、
保育現場における幼児の「おかたづけ」行動の観察や調査・分析、
ヒアリングを通し、
「物と人の暮らし」という大きなテーマに向かってのファーストステップとして、現状の把
握および仮説の構築を目指した。
1- 2 . 研究の目的と手法
1- 2 -1 研究の目的
本質的で原初的な人間行動や、場の力学が見やすい場として、
「幼児の保育施設」を取り
上げ、
幼児の「片づけ」行動の観察・調査やヒアリングを行う。それにより、
人間の「片づけ」
行動の本質を探る。
そして、その調査・分析により、
「物と人と暮らし」や「子どもの育ち」というテーマに
アプローチする基礎研究とする。
1- 2 -2 研究の対象
保育施設における幼児(3 歳児∼ 5 歳児を中心とする)
(1)幼児を対象とした理由
片づけ行動を人間的行動とみなしたうえで、ではどのような「人」を対象に調査すべき
かを考えた。
もっともシンプルなのは、大人の生活を調査することだろう。大人からはヒアリングも
しやすく、調査への協力も得やすい。
しかし、我々は大人では、以下のような問題があると考えた。
①「片づいている状態」のイメージができあがっている。
②「片づけること」は「よいこと」であるとの信念ができあがっている(逆に、「片づけら
れない」のは「よくないこと」「恥ずかしいこと」であるという信念でもある)
③ 上記2点を含め、片づけ行動をとるときに、どの他者からの評価(目の前の家族や、そこ
にいない「誰か」、あるいは自分を評価する自分の目など)が関係しているのか、複雑すぎ
て判別しにくいと考えられる。
*とくに、片づけ行動は、③のような「人からの評価」の要素が大きい。じっさいに
フィールド調査中、閉じられた棚を開けて中を見せてもらうたびに、保育者の多くが
とっさに「すみません」と我々に謝るシーンが多々あった。また、「片づいていない
部屋を見られるのは恥ずかしいから、人を家に呼ばない」というコメントも、珍しい
49
ハイライフ研究 13号 Report Summary
幼児における「片づけ」行動の研究
Research on the "Tidying-up" Activities of Infants
ものではない(しかも、部屋はそれなりに片づき、清潔なのである)。
そのため、他者からの評価に大人ほどには影響を受けていない幼児を対象にすることで、
片づけ行動の根源的な様相が見られることを期待した。
また、どの年齢(クラス)を観察するべきかも検討した。
片づけ行動自体は、自分で動ける 1 歳児からすでに観察できる(絵本を元に戻してね、
と指示されれば、元に戻せる )。しかし、物を個人または共有の物と理解し、
「片づけ」と
いう概念を理解し、その行動が個人だけに関わるのではなく場の維持(ルールやモラル)に
関わることを理解したうえで、片づけ行動を選択できる、という基準で見ると、少なくと
も 3 歳児以上、できれば 4 歳児∼ 5 歳児が妥当であると判断した。
この判断には、発達に関する一般的な見解も参考にしている。
①3歳児:自己制御ができるようになってくる
(自己主張・自己実現、自分の意思や願望・
感情の抑制)
②4歳児:「心の理論」によれば、「∼したい」だけの状態から、「∼と考えている」とい
う信念に言及できるようになる。つまり、欲求と信念を考慮できる段階に入り、同時に、
的確に他者の行為を予測できるようになる。
(以上、内田信子『発達心理学キーワード』有斐閣)
保育所では、ゼロ歳児∼ 2 歳児までは年齢別、3 歳児∼ 5 歳児までは縦割り ( 異年齢の
混合 ) クラスという構成をとる園がある。明確な縦割り保育でないにしても、長時間の生活
をしていくなかで、自然と 3 歳児∼ 5 歳児がかかわっていくことも多く、その関係性も踏
まえ、今回、観察は 3 歳児∼ 5 歳児クラスとすることとした。
(2)保育施設を場とした理由
保育所(保育園)は、いうまでもなく幼児の生活の場である。そしてまた、幼児が親から
離れ、保育者に見守られながら生活を営む場である。
本研究で「片づけ」として取り扱うのは、人がその人の生活全体にわたって関わる物と
の関係性の築き方・維持の仕方である。学校や公共施設では、その人にとっての生活の一
部でしかないため、対象とする場としてははずした。
一方で、自宅を場とすることも考えられる。
しかし、幼児にとって、自宅は親の影響が大きい場である。汐見稔幸は、人の存在する
環境を、
「外的環境」と「内的環境」に分け、
「外的環境」を「物理環境」
「期待環境(まなざ
50
し)
」
「仲間環境」に分けて捉えた(汐見「環境とは何かー原理から考えるー」こども環境学
研究 Vol.1 No.1 2005.4)が、とくに核家族、しかも母子密着度の高い現代の家庭では、
子どもの外的・内的環境は、親 ( 主に母親 ) の完全な管理下に置かれていると言ってもいい。
子どもが親のまなざしを離れ、いろいろな欲求を持つ仲間とともに、
「生活」をする場で
ある保育施設が、片づけ行動のもっともシンプルな顕れを見られる場であると期待した。
1- 2 -3 研究の手法
手法としては、ていねいなフィールド調査が基礎となると考えた。
「片づけがうまくいっ
ている/うまくいかない」という現象を構成している要素を見極めるためである。
フィールドとして、幼児の保育施設 6 園を抽出した(詳しい概要は、当研究報告書の 2
章を参照)
。
・K 保育園 熊本県球磨郡
・O 保育園 埼玉県入間市
・F 保育園 神奈川県茅ケ崎市
・H 保育園 東京都練馬区
・T 幼稚園 北海道札幌市
・W 保育園 千葉県富津市
(1)手法の決定
研究の企画段階では、最初から幼児の片づけ行動を観察することを主眼に予定していた。
しかし、2009 年 6 月 15 日に、試験的に訪れた K 保育園で、いきなり片づけ行動を観察
しても、
「片づけ」の要素を見極めることは難しいと判断した。
大きな理由は、片づけ行動には環境要因が大きく働いており、幼児の行動を観察しても、
それが幼児(人間)の自然な(内発的な)行動なのか、環境が求める要因なのかの見極めが
つかないという点である。
検討の結果、まずは環境要因について緻密に調べ、今後、その分析を踏まえたうえで、
仮説をもって行動観察を行うこととした。具体的には、各園へのアンケート調査(主に人的
環境)
、収納状況の記録(物的環境)と保育者へのヒアリング(人的環境)である。
(2)調査園の選定
調査園は、子どもの成育環境に偏りがないように配慮した。具体的には、都市部のみに
ならないようにする、関東など一部の地域に偏らないようにすることである。
また、主たる調査園は、保育所設置基準を満たした認可保育所とした。また、比較対象
園として都道府県から認可を受けた幼稚園を選定した。片づけ(物の状況 ) は、生活の場の
51
ハイライフ研究 13号 Report Summary
幼児における「片づけ」行動の研究
Research on the "Tidying-up" Activities of Infants
面積と深く関係しており、一般的に生活環境としての必要な面積を確保できているとはい
いがたい保育施設は、今回は対象としないほうがよいと判断した。
さらに、調査先は過去に木村が調査に訪れた園であったり、辰巳が関わっていたりする
園である。片づけは、
「できていないと恥ずかしい」という心理的な抑圧の高いジャンルで
あり、いわばすでに「気心の知れた」関係が築けているところが、日常ありのままの姿を
観察できると考えた(じっさいに、調査した結果、そのような感触を得た)
。
訪れた 6 園は、以下のように区別している。
・主たる調査対象園:K 保育園、O 保育園、F 保育園、
H 保育園
・比較対象園:T 幼稚園、W 保育園
前者は、すべて認可保育所である。H 保育園のみ公立(公設民営)で、ほかの 3 園は社
会福祉法人の運営
(民設民営)
である。それぞれ、
理念をもって経営されている園ではあるが、
同時に一般的な保育所と位置づけた。それぞれ、
独立した建屋と園庭とを持つ保育所である。
後者は、
「一般的な保育所」と比較するためのフィールドとして選定したが、いずれも認
可を受けている幼稚園・保育所である。
T 幼稚園は、一般の認可基準を満たした上でさらに北海道から求められた独自基準をも
満たした自然体験型特認幼稚園であるが、設置基準等においても、一般の幼稚園と変わり
はない。一方、保育の方針において、
「命の誕生、生きる、死等の意味を探求する人間の教
育(など)
」を掲げ、
「親(大人)の背を見て子(人生の後輩)は育つ」を具現化することに
努めており、片づけについても子どもに強要せず、
「保育者が姿を見せる」ことで子どもが
主体的に選ぶことを理想としているなどの点で、
「片づけ」が保育に組み込まれている「一
般的」な園とは対照的である。よって、保育園ではなく幼稚園ではあるが比較対象園とし
て選定した。
W 保育園は、当研究報告書の 3 章で先行研究として取り上げたように、
「片づけ」につ
いて独自の取り組みをつづけてきた先駆的実践園である。その点で比較対象とした。
1- 2 - 4 研究体制
本研究は、以下の体制で進めた。
調査分析担当
辰巳 渚(文筆家、こども環境学会正会員、共立女子大学非常勤講師)
木村 歩美(篠原学園専門学校専任講師、こども環境学会理事、前白梅学園大学・和
泉短期大学非常勤講師)
52
研究幹事
仙洞田 伸一(財団法人 ハイライフ研究所 主任研究員)
1- 3 . 研究の結果・結論
本研究によって、ひじょうに素朴ではあるが、保育施設において「片づけ」が大きな問
題となっていることが確認できた。
ひとつには、
「子どもが片づけられること」について。遊びを保障しつつ、どのように片
づけに向かわせるか。そもそも「片づけ」という(自発的には起こりにくい)行動をどのよ
うに誘発するか、という問題である。
もうひとつには、
「環境として片づけること」
について。保育者が、
子どもの生活の場であり、
自らの保育の実践の場でもある保育園の物的環境を、
「片づいた」状態にすることの困難で
ある。そこには、建築設計的な問題も関わってくる場合もあって、問題は複雑であった。
さらに、
これから先に研究を深めていくいくつかの視点(アプローチ)が発見・整理できた。
(1)「物的環境」の状態と、保育
(生活)
の質には相関があるのか
片づけは生活で使う物の秩序と循環である。それが「うまくいっていない」という感覚と、
そこで行われている保育が「うまくいっていない / いっている」という感覚とは、
相関があっ
ても不思議ではない。(4) の「片づけ指標」の試みと併せて評価していく手法を開発したい。
また、物的環境が、幼児にどのような片づけ行動をアフォードするのか、といったテー
マも浮かび上がってきた。(3) の「子どもの育ちと片づけ」とも関わるが、
「並べるのが好き」
など子どもが秩序を好む傾向が、そのまま片づけへとつながるのかどうかも、検証しなけ
ればならない。
(2)「片づけ」とはなにかの検討が必要である
通常、
「片づけ」とは自明の行為として、そもそも何をすることか、といった疑問は持た
れない。フィールド調査でも、その行為がどのようになされているか、その行為にどのよ
うな困難があるか等の言及にいきなり入っている。
しかし一方で、子どもは、
「片づける」という発想は持たないように見えた。人間の原初
的な行動に、片づけは組み込まれていないのだろうか。それならば、なぜ、大人は、片づ
けは大切なことだ、片づいていないのは恥ずかしいと感じるのか。
「片づいている状態」とはどのような状態なのか、のヒアリング調査から切りこんでいく
とよさそうである。
53
ハイライフ研究 13号 Report Summary
幼児における「片づけ」行動の研究
Research on the "Tidying-up" Activities of Infants
(3)子どもの育ちと片づけの関係はどのようなものか
子どもの発達にとって「片づけ」とはどのような意味を持つのか。
「背中を見せる」こと
で片づけの感覚が備わるのか、文化として大人から伝えなければその感覚は備わらないのか。
継続的な観察を重ねていくことしかなく、それが、もっとも有効な検証作業であると思う。
(4)「片づけ指標」の試み
今回のフィールド調査で、ある場が「片づいている」かの評価は主観的なものであると
の理解ができた。ここに客観的な指標(
「片づけ指標」
)を導入したい。今回は暫定的な指標
を作成した。
この指標を使った調査を継続し、片づけがうまくいっている空間(場)
、片づけがうまく
できる人(能力)を評価できる精度の高い指標としていきたい。客観的な「片づけ指標」が
あることで、
「片づけがうまくいく公共空間の設計」
「片づけがうまくいく組織内の役割分担」
など、システム・メカニズム・制度などの評価に広く適用が可能であろう。
54
Research on the
"Tidying-up"
Activities of Infants
ー As the first step in research on "growing children"
and "goods and lives of people" ー
1-1. Motive for research
This is a joint research project conducted by Nagisa Tatsumi and Ayumi
Kimura, both official members of the Association for Children's Environment.
As a professional writer and educator, Tatsumi has been working on the
theses, "What is an affluent life?" and "What do household and household chores
mean?" Kimura has worked as an educator in an elementary school, preschool
and childcare center while continuing his research on the development of
children.
Tatsumi is interested in both "goods" as part of one's lifestyle and the
relation between "goods" and people, while Kimura is interested in both childcare
centers and preschools as an environment for the development of children and
guaranteed quality childcare and play, resulting in the formation of a thesis on
"tidying-up" and its importance, in their respective fields of interest. This has lead
to the planning of this joint research project.
While registered as university lecturers, Tatsumi and Kimura are more
practitioners than researchers. For both, finding such a thesis in this popular
research field has a significant meaning.
Each explains their motives for their research below before mentioning the
purpose of this research project.
1-1-1 Motive for research (Tatsumi)
What are goods to people? This is a significant thesis that Tatsumi has been
pursuing.
55
ハイライフ研究 13号 Report Summary
幼児における「片づけ」行動の研究
Research on the "Tidying-up" Activities of Infants
Recently, people's interest in storage skills has increased(*). A new business
offering clean-up services and storage solutions to consumers has emerged and
started securing customers. Although similar to conventional clean-up services,
these services are different in terms of demand.
Members of households (or consumers) now face a significant issue (or
challenge) of how to deal with the goods that they themselves have brought into
their household or that have been brought in by others.
(*) Moreover, a current increase in interest can be seen in organizing skills
as idea and information management skills. Not only is an abundance of
information available from the Internet and other sources, but individuals
also continue to be the providers of information. This requires skill in
selecting information and utilizing the pool of information through, for
instance, the control of access routes to necessary information.
In a nutshell, Japanese living in modern times appear unable to find an efficient
way to deal with "goods (e.g. means and materials)" and are forced to live their
daily lives in frustration. A common opinion that "In modern times, people are
spoiled by goods" is often heard, but this abundance (and variety) of goods in
a market economy may not be the problem. Rather, the challenge may be the
necessity for people to set their criteria for dealing with goods right from the
start in order to be able to select goods to be used and arrange their own house.
The "goods" comprising one's life are not mere objects. In the lives of
individuals, "goods are the means to living" and constitute even life itself. In a
modern society with a wide variety of goods, "one's choices represent one's
values in life" and reflect a certain lifestyle.
Tatsumi strongly feels that, for people in modern times to be satisfied with
their lives, they need the skill to create such a relationship with goods that
reflects their own values in life (or even philosophies).
Against this background, a contemporary but fundamental thesis of "tidyingup" has been created.
Tidying-up can be defined as:
(1) the result of a decision regarding what "I" bring into my house or my living
space as well as the constant process of asking oneself whether or not "I" utilize
what was brought in (i.e., "I" made a right decision bringing it in);
(2) the process of creating an order (or system) for determining how "goods"
56
that carry a significant meaning as manifestations of one's values in life (or, in
a childcare context, manifestations of a school's educational philosophy) are
arranged in the settings of our lives;
(3) the process of creating a cycle (or rules) regarding how the goods are to
be dealt with over time, and
(4) the process of creating and maintaining the details of activities (or
systems) and activities (or rules) in households and communities such as
educational institutions, which involves a certain responsibility (or moral/manner)
as a community member.
However, "tidying-up" as a thesis is only acknowledged or received as a
momentary target of interest, a somewhat boring aspect of life, or an ordinary
issue faced by housewives or people working at a particular workplace. There
is no discussion (or idea) as to "what goods individuals should possess in their
everyday lives" and "how individuals should create an order and cycle in their
everyday lives". It appears that little research on this topic has been undertaken
in the past.
In the fields of economics and sociology, there is some research that
discusses "the relationship between people and goods", with a focus on "purpose
of consumption". Most notable are the concepts of "showing-off" by Veblen and
"signs of differentiation" by Baudrillard. However, they approach the issue from
the viewpoint of materials and do not really treat the goods as a reflection of a
created lifestyle or values in one's life. This may be because the U.S. and Europe
have advanced further in their research on "consumption".
Tatsumi finds it rather interesting that the fundamental thesis of "what
goods are to people" today appears not as a question in a positive sense, that
is, "why one wants to obtain or possess goods" (or desire), but as a question in a
negative sense, that is, "why the existence of goods causes problems".
This year, tidying-up is approached in primary research, and some of the
hypotheses and issues will be used as a basis for further study.
1-1- 2 Motive for research (Kimura)
Today, words such as "let's not waste (or mottainai )" or "eco" have become
clichés, but even without these words being expressed, it is extremely important
to live and improve the relationship between goods and people in societies with a
57
ハイライフ研究 13号 Report Summary
幼児における「片づけ」行動の研究
Research on the "Tidying-up" Activities of Infants
high level of consumption.
From ancient times until a few decades ago, people utilized goods more
efficiently than today. For instance, recycled materials are often excavated from
ancient houses and rice paddy fields from the Yayoi period. Food was not wasted
and almost all segments of food items were used wisely. People efficiently used
goods in their lives. However, it appears that over the last few decades, such a
history involving people and goods has been somewhat lost. Naturally, a number
of people have joined a resistance to this course of change and continue to
make a range of attempts to halt it.
Such events occur not only in adult society, but also among children.
Although it has been long argued that people are no longer attached to their
belongings, this may be due to the weakening relationship between each good
and an individual. Weak connections with communities, changes in household
composition, and shifts in society through individualism all prevent people from
feeling a strong urge to set and follow rules for collectively maintaining order.
This seems to have created a number of problems in providing childcare every
day. The ultimate issue among these may be "tidying-up".
Although it has been long discussed, the issue of "tidying-up" in childcare
centers has yet to see any solution being widely adopted. There are a number
of references and research papers, but as far as the authors are aware, none
of these take on a perspective of how individuals create order and cycles in
their everyday lives, as pointed out by Tatsumi, a researcher in this particular
field. From the viewpoint of childcare environments, further studies are required
in regard to most issues such as the effects of psychological environments
involving childcare providers, children, and parents, the relationship between the
characteristics of children and the arrangement of goods, awareness of storage,
and the relationship between forms of childcare and "tidying-up".
The intention here is to take the first step towards an overall thesis of "goods
and the lives of people" by understanding the current situation and building
a hypothesis through the observation, research and analysis, and interviews
regarding the "tidying-up" activities of children in childcare centers.
58
1- 2 . Purpose and methodology of research
1- 2 -1 Purpose of research
Observations, research, and interviews were conducted on the "tidyingup" activities of infants in "childcare centers" where essential primary human
activities and field dynamics could be easily observed. There, the real nature of
human activities of "tidying-up" was pursued.
Research and analysis will play a role as basic research in the approach
towards the theses of "goods and lives of people" and "development of children".
1- 2 - 2 Targets of the research
Infants in childcare centers (mainly in the 3 to 5 year-old bracket)
(1) The reason why infants were targeted
Considering tidying-up activities as human activities, the authors discussed
who should be the research target.
Research on the lives of adults would be the least complicated. It is easier to
do interviews on adults and to get them to cooperate with the research.
However, the authors find the following problems in adults:
① in the minds of adults, the idea of "a state of being tidy" has already been
formed,
② the belief that "tidying-up" is "a good thing" has already been formed (also, the
belief is that being "incapable of tidying-up" is "a bad thing" or "embarrassing"),
③ it may be too complicated to distinguish the opinions held by various parties
(family members in front of the actors tidying-up, "someone" being absent, or the
actors judging themselves) affect the tidying-up activities, as well as the ideas
mentioned above.
*In particular, tidying-up activities are greatly influenced by the factor of
"opinion held by others" as stated in ③. During field research, there were
many instances in which childcare providers apologized as soon as the
authors opened and started checking inside closed shelves. Also, the
authors heard many stating "untidy rooms are too embarrassing to show
59
ハイライフ研究 13号 Report Summary
幼児における「片づけ」行動の研究
Research on the "Tidying-up" Activities of Infants
to guests, so I do not invite guests to my house" (even though the rooms
appeared to be more or less clean and tidy).
Therefore, the authors decided to target infants that are less affected by
the opinions held by others and expected to observe the essential aspects of
tidying-up activities.
The age bracket (school year) to be researched was also discussed.
Tidying-up activities can be observed in those as young as 1 year-old (when
instructed to return a picture book to where it belongs, these infants can follow
instructions). However, if the criteria include being able to distinguish individual
property and shared property, understanding the concept of "tidying-up" and that
the activities affect individuals as well as the order of space (rules and moral)
and then selecting tidying-up activities, 3 year-olds, at the youngest, or 4 to 5
year-olds, if possible, are deemed appropriate.
In making this decision, the authors took into account general views on
development.
① 3 year-olds: grow to be capable of self-control (control of assertiveness, selffulfillment, intent, longing and emotion)
② 4 year-olds: develop from the mental state of "desire" into belief, according to
"Theory of Mind". These infants grow into a stage in which desire and belief are
understood and are able to accurately predict the behavior of others.
(Source: Nobuko Uchida, Developmental Psychology Keywords , Yuhikaku)
In some childcare centers, same age classes and mixed age (or vertically
divided) classes are formed for 0 to 2 year-olds and 3 to 5 year-olds,
respectively. In many cases, even though the classes are not vertically divided,
3 to 5 year-old infants are naturally involved with one another during long hours
spent in preschool. Given this relationship, as well, the authors decided to
observe classes of 3 to 5 year-olds.
(2) The reason why childcare centers were chosen as the study location
For infants, childcare centers are apparently the living space away from their
60
parents and under the supervision of educators.
"Tidying-up" dealt with in this study was constituted by the way in which
individuals build and maintain relationships with the goods they are associated
with throughout their lives. Schools and public institutions are merely a small
part of their lives and thus excluded.
On the other hand, homes can be a study location.
However, at home, infants are greatly influenced by their parents. Toshiyuki
Shiomi divides the living environment for individuals into "external environment"
and "internal environment" and "external environment" into "physical environment",
"expectation environment" (under supervision), and "peer environment"
(Shiomi, "What is Environment?: Understanding from the basic principle", Child
Environmental Studies , Vol.1 No.1 2005.4). However, in modern households
that are nuclear families and which see close connections between mothers and
children, the external and internal environments for children seem to be under
the complete control of parents (especially mothers).
It was expected that the simplest aspect of tidying-up activities would be
observed in the childcare centers, a place for children unsupervised by parents
to "live" with peers with a variety of desires.
1- 2 - 3 Methodology of research
As a methodology, thorough field research was thought to form a basis. This
research was to determine the factors comprising the state of "tidying-up being
successful/not successful".
The following 6 childcare centers were chosen as study locations (for a
detailed overview, refer to Research report 2009: Chapter 2 ).
• K Childcare Center: Kuma-gun, Kumamoto
• O Childcare Center: Iruma-shi, Saitama
• F Childcare Center: Chigasaki-shi, Kanagawa
• H Childcare Center: Nerima-ku, Tokyo
• T Preschool: Sapporo-shi, Hokkaido
• W Childcare Center: Futtsu-shi, Chiba
(1) Determination of methodology
During the planning stage for research, research was scheduled to be carried
61
ハイライフ研究 13号 Report Summary
幼児における「片づけ」行動の研究
Research on the "Tidying-up" Activities of Infants
out by starting with observation of the tidying-up activities of infants. However,
after visiting K Childcare Center on June 15, 2009 for a test, it was deemed
difficult to determine the factors of "tidying-up" through observation of tidying-up
activities at the beginning.
The main reason was that tidying-up activities are greatly affected by
environmental factors and observing the activities of infants does not reveal
whether these activities are natural (intrinsic) for infants or required by the
environment.
Upon discussion, it was decided that environmental factors were to be
thoroughly checked first and activities observed based on the hypothesis
established as a result of analysis. To be more specific, questionnaires for
childcare centers (mainly human environment), record of storage status
(physical environment), and interviews with educators (human environment) were
conducted.
(2) Selection of target childcare centers
Care was exercised not to allow an imbalance in child upbringing
environments between the target childcare centers. For instance, targets should
not be selected from metropolitan areas or a particular area such as the Kanto
area exclusively.
Further, licensed childcare centers meeting the criteria for childcare center
establishment were selected as the main target-childcare centers. Reference
target-childcare centers selected were childcare centers with governmentapproved licenses. As tidying-up (state of goods) is deeply associated with the
size of living space, it was decided to exclude childcare centers which did not
have enough space generally required for living.
In addition, the targets included childcare centers that either Kimura had
visited for research in the past or Tatsumi was involved with. Given that tidyingup is an area subject to a high level of psychological pressure such that "not
being able to tidy up is embarrassing", it was assumed that a more natural state
could be observed in childcare centers with which the authors had already built a
familiarity (this assumption was confirmed in the actual research).
The 6 target childcare centers are referred as follows:
62
• Main target-childcare centers: K Childcare Center, O Childcare Center, F
Childcare Center, and H Childcare Center
• Reference target-childcare centers: T Preschool and W Childcare Center
The former are all licensed childcare centers. H Childcare Center is public
(publically funded but privately operated), while the other 3 childcare centers
are managed by a social welfare corporation (privately funded and operated).
Although operated under different principles, the childcare centers were
considered general childcare centers. Each childcare center had separate
buildings and gardens.
The last two were both licensed preschool/childcare centers selected as a
reference as opposed to "general childcare center".
T Preschool is a special category preschool that offers experiencing nature
and has met the general license criteria as well as the standards specifically
required by Hokkaido Prefecture, but it is similar to general childcare centers
in terms of establishment standards. Also, under the principle of "educating
children to pursue the meaning of birth, living, and death", the preschool
endeavors to set a real-life example of "children (or juniors in life) learning by
observing what parents (or adults) do" and, for tidying-up, educators "show the
way" and encourage children to actively decide what to do rather than forcing
them to act. This is contrary to "general" childcare centers where "tidying-up" is a
part of childcare. Thus, T Preschool was selected as a reference despite being a
preschool.
As referred in previous research in chapter 3 of this research report 2009 ,
W Childcare Center, with a unique approach to "tidying-up", has been a leader in
that field, which is why the Center was selected as a reference.
1- 2 - 4 Research team
The research team consisted of the following members:
Research and analysis
Nagisa Tatsumi (author, official member of Association for Children's
Environment, and part-time lecturer at Kyoritsu Women's University)
Ayumi Kimura (full-time lecturer at Shinohara Gakuen, Director of
Association for Children's Environment, and former part-time lecturer at
63
ハイライフ研究 13号 Report Summary
幼児における「片づけ」行動の研究
Research on the "Tidying-up" Activities of Infants
Shiraume Gakuen University and Izumi Junior College)
Research supervisor
Shinichi Sentoda (Research Institute for High-Life, Senior Researcher)
1- 3 . Results and conclusion of research
This study quite simply confirms that "tidying-up" became a significant
problem for childcare centers.
One of the issues is regarding "children's ability to tidy up". The issue is how
to encourage children to start tidying-up while letting them play or how to trigger
the "tidying-up" activities (with which children are not actively engaged).
Another issue is with regards to a "tidy environment". Childcare providers
find it difficult to change the physical environment in a childcare center where
children live and providers practice childcare in a "tidy" state. The problem is
made complicated when the issue of building design is involved.
In addition, the authors managed to find and organize discussion points (or
approaches) that will be further studied.
(1) Is there any relationship between the state of "physical environment" and
quality of childcare (or life)?
Tidying-up is an order and cycle of goods used in our lives. It is not surprising
that there is a relationship between the feeling that "tidying-up is successful" and
the feeling that the childcare performed in that environment is "unsuccessful/
successful". The authors wish to develop a methodology to assess along with
the testing of the "tidying-up indexes" in (4).
Also, this study led to the thesis of what kind of tidying-up activities
children are afforded by their physical environment. This is associated with the
"development of children and tidying-up" in section (3), and it is necessary to
verify whether a child's tendency to prefer order, such as a preference for lining
objects up, leads directly to tidying up.
(2) A discussion on the meaning of "tidying-up" is needed
Normally, no question is raised as to what acts constitute "tidying-up", as
64
the word expresses itself. Field studies start by discussing how the acts are
performed or what difficulties are found in the acts.
However, the authors were under the impression that children did not have
any idea of "tidying-up". Tidying-up may not be a part of primary human activities.
Therefore, the question is why adults feel that tidying-up is important and that
not being tidy is embarrassing.
It may be desirable to start an interview with the question of what a "tidy
state" is.
(3) What is the relationship between the development of children and tidying-up?
What does "tidying-up" mean to the development of children? Does "Showing
the way" help children to develop the idea of tidying-up? Or do adults have to
pass on the culture of tidying-up?
Continued observation seems to be the only and most effective investigation
process.
(4) Testing of "tidying-up indexes"
This field study provides the understanding that it is entirely subjective
whether or not a particular space is "tidy" or not. Here, the authors wish to
introduce objective indexes ("tidying-up indexes"). The indexes prepared here are
provisional.
The authors wish to continue research using these indexes as highly
accurate indexes to assess whether or not tidying-up is successful in the
space or who can (or has the capacity to) tidy up properly. It will be possible
to use the objective "tidying-up indexes" widely in the assessment of systems,
mechanisms, and schemes such as "designing of easy-to-tidy-up public space"
or "organizational role assignment for easy tidying-up".
65
ハイライフ研究 13号
ハイライフ研究所の
研究活動一覧
刊行物 平成10年度(1998.4∼1999.3)
研究報告書をご希望の方は、メールまたはファックス にてお問い合わせください。 E-mail: [email protected]: 03-3563-7987
研究報告書
・コンビニエンスストアの課題∼利用実態調査を踏まえて∼
・少子化に伴う家族のライフスタイル
・複数居住への期待と現状
・多様化する住居の社会的背景と所有形態・デザインの傾向
・新大江町総合発展計画基本構想
平成5・6年度(1993.5∼1995.3)
・日本の食文化に見るライフスタイル(縄文∼江戸)
平成11年度(1999.4∼2000.3)
・銀座座会∼銀座フォークロア∼
・高齢者と情報ネットワーク
・若い世代から見た銀座とハイライフ
・ハイテク時代の家庭の情報化に関する研究
・関西からみた<銀座イメージ>に関する研究
・
「ネオ50'S」世代研究
・山の手文化研究∼ホームコンサートのある生活∼
・子供と環境∼子供の遊び場の創生にむけて∼
平成12年度(2000.4∼2001.3)
・情報化(マルチメディア化)による家庭生活の変容
・ブランドを通して見た食ライフスタイル変化
・温泉山形Cl調査報告書
・高齢化社会におけるターミネーションに関する研究
∼温泉山形「湯めぐり・街めぐり44」推進構想∼
・団塊世代の女性「私達」の履歴書
平成7年度(1995.4∼1996.3)
平成13年度(2001.4∼2002.3)
・日本の食文化にみるライフスタイル(明治∼平成)
・少子化における結婚観に関する研究
・銀座座会∼銀座の仕掛け∼
・団塊世代と戦前・戦中派世代「50∼54歳」の肖像
・
「銀座」
と「心斎橋」の比較研究∼銀座研究1995∼
・大都市のシーンに関する研究(中間報告)
・山の手文化研究∼キーワード集∼
・阪神大震災におけるマルチメディアの役割と実際
平成14年度(2002.4∼2003.3)
・自己実現欲求の再考に関する研究 ∼アフターマズローの展望∼
・家事の社会サービス化、社会サービスの家事化に関する研究
・国際貢献ボランティア活動等促進基本構想策定調査
・団塊世代の地域分布とその生活スタイル
・大山自然公園周辺地域開発整備構想
・食のライフスタイルのこれまでとこれから
・大都市のシーンに関する研究
平成8年度(1996.4∼1997.3)
・大都市のシーンに関する研究講演録
・銀座座会∼銀座の未来∼
・台北のシーンの変遷
・食に関する意識調査
・座会「新しい人間、新しい社会一“楽しみ価値”
への対応」
・ネットライフ2000∼豊かなコミュニティーを目指して∼
・バリ島のライフスタイルからみたハイライフの一考察
平成15年度(2003.4∼2004.3)
・移動型マルチメディアに関する研究
・環境と都市のライフスタイル研究
・英国人のリタイア後のライフスタイルに関する調査
・現代家族のライフスタイルとストレス
・国際貢献ボランティア活動等促進基本構想策定調査(第2次)
・団塊世代夫婦の行方
・
「定年期夫婦の“光”
と
“影”
」に関する調査研究
平成9年度(1997.4∼1998.3)
・銀座座会∼銀座が残すべきもの∼
平成16年度(2004.4∼2005.3)
・関西から見た銀座の未来
・持続可能な社会を目指して
・ネットサイド・エンパイアーズ
・世代間交流の活性化による新たなコミュニティ形成に関する研究
・ジャパニーズ家族の行方
・
「リタイアドシニアの財布構造」調査研究
66
平成17年度(2005.4∼2006.3)
・
「東京圏都市研究プロジェクト」調査レポート
情報生活研究助成対象研究報告書
・
「環境首都へのみち」持続可能な地域社会に向けて
第1回(1997.4∼1998.3)
・食と家族に関する研究調査報告書ー食卓ニケーションの復活
・移動体通信メディアの普及にともなう社会・文化変容の研究
・富裕層のライフスタイル研究報告書
・地域へのインターネット導入に向けた支援体制の枠組みに 一日本版富裕層の特性と可能性の研究一
関する調査研究
・ 団塊世代と団塊ジュニア世代の価値観比較調査研究
・近代日本における視覚情報メディアと情報流通に関する情報
社会史的研究
平成18年度(2006.4∼2007.3)
・東京圏のエリアマーケティング
東京のライフスタイル研究ー東京はモザイク都市
第2回(1998.4∼1999.3)
・企業組織における就業形態の変化が個人の生活に及ぼす影響
・
「都市の価値をはかる」研究報告書
・高度情報社会におけるニュースの変容
・
「環境首都へのみち」持続可能な地域社会に向けてー2
・コミュニティFM放送の課題と「公共圏」の形成
・
「団塊世代の退職研究」総合報告書
・家庭の食育を支援する社会サービスに関する研究
機 関 誌
・ホスピタリティの研究ー持続可能型の社会をめざしてー
・
「はいらいふ研究1号」特集:都市のくつろぎ
・
「はいらいふ研究2号」特集:高度情報化社会の価値観
平成19年度(2007.4∼2008.3)
・
「はいらいふ研究3号」特集:フードスタイルと生活実感
・
「都市の価値をはかる」研究報告書ー2
・
「はいらいふ研究4号」特集:日本の多元文化主義とは
・
「環境首都へのみち」持続可能な地域社会に向けてー3
・
「はいらいふ研究5号」特集:都市の情報生活文化
・
「東京の都市の活性化と都市文化」研究
・
「はいらいふ研究6号」特集:都市を動かす力
・ホスピタリティの研究ー2
・
「はいらいふ研究7号」特集:シニアマーケティングを考える
・ユビキタス時代における暮らしのあり方に関する研究
・
「はいらいふ研究8号」特集:富裕層マーケティングを考える
・少子高齢化社会における地方社会の行方研究
・
「ハイライフ研究9号」特集:団塊の世代'07年問題を考える
富裕層の研究Part-2
平成20年度(2008.4∼2009.3)
・
「ハイライフ研究10号」特集:クール・ジャパン!?
・食の健康と世代別食育支援展開に関する研究
・
「ハイライフ研究11号」特集:和回帰ーその本質とゆくえを探る
−幼児・児童保有世帯に向けた食育アプローチ−
・コンテンツが形成するライフスタイル調査研究
・地域イノベーションの研究
−少子高齢化社会における地方社会の行方研究 その2−
・都市圏居住の価値を探る研究
平成21年度(2009.4∼2010.3)
・都市圏居住の価値を探る - 2009
・食の健康と世代別食育支援展開に関する研究 - 2
−食生活力が高齢者の生活を変える−
・幼児における「片づけ」行動の研究
ー「育児」と「物と人と暮らし」研究のファーストステップとしてー
・
「ハイライフ研究12号」平成20年度研究およびセミナー・サマリー
書 籍
・
『生活コンセプト1998』PHP研究所(1997.12)
・
『東京山の手大研究』都市出版(1998.3)
・
『コンセプト1999』PHP研究所(1998.12)
・
『コンセプト2000「団塊」家族』PHP研究所(1999.12)
・
『共立夫婦』日科技連出版社(2001.9)
・
『ブロードバンド生活読本』日科技連出版社(2002.3)
・
『マーケティング・トランスファー 8つの法則』宣伝会議
(2003.6)
・
『データで斬る逆転のマーケティング「100万人の時代」』
高木書房(2006.4)
・
『環境首都コンテストー地域から日本を変える7つの提案』
学芸出版社(2009.3)
67
ハイライフ研究 13号
ハイライフ研究所の
研究活動一覧
シンポジウム他
銀座シンポジウム
・都市の文化を考えなおす「銀座はどこに行くのか」
ヤマハホール(1995.10.11)
∼食の健康と世代別食育アプローチに関する研究∼
ホテルヴィラフォンテーヌ汐留(2010.2.17)
・「都市の水辺に暮らす」その未来への展望
・リレートーク「銀座は文化の揺りかご」
∼21世紀の都市型ライフスタイルを考える∼
銀座ガスホール(1996.10.14)
東京国際交流館(2010.2.21)
・マルチカルチャーの時代∼なぜ再び銀座なのか∼
文祥堂イベントホール(1997.11.25)
ハイライフセミナー
・複数居住の期待と現状 TEPCOスペース(1999.12.6)
・少子化に伴う家族のライフスタイル TEPCOスペース(2000.2.7)
・日本経済新生の戦略 銀座コムホール(2000.10.11)
・ハイテク時代の家庭の情報化 TEPCOスペース(2000.11.27)
・情報技術の特質と事業戦略への転換
ハイライフWEB公開ミニセミナー
・
「持続可能な自治体コンテスト」
ドイツの事例から
ハイライフセミナー室(2009.2.12)
・ブラジル環境首都 クリチバ「CURITIBA」
とは
ハイライフセミナー室(2009.3.24)
・持続可能な社会を目指すツーリズムの研究
ハイライフセミナー室(2009.8.5)
・縮小する都市―ドイツの先進事例を訪ねる
ドルトムント
(独)研究室(2009.12.25)
銀座コムホール(2000.12.11)
展 示
・エネルギー新時代へむけて 銀座コムホール(2002.1.23)
・
「都市の価値をはかる」研究報告展示
・団塊世代の女性、「私達」の履歴書 銀座コムホール(2002.3.12)
・持続可能な社会へのチャレンジ 銀座コムホール(2003.3.7)
・持続可能な生活環境を目指して 銀座コムホール(2004.3.4)
・シニアマーケティング最前線 銀座コムホール(2005.3.10)
・持続可能な社会を目指すスウェーデンのエコロジー建築
銀座コムホール(2005.9.29)
・挑戦 地域から日本を変える 銀座コムホール(2006.3.2)
・挑戦 地域から日本を変える∼環境首都への道∼パート2
銀座コムホール(2007.2.22)
・ストアの店頭における食育支援 銀座コムホール(2008.2.13)
・挑戦 地域から日本を変える∼環境首都への道∼パート3
銀座コムホール(2008.2.28)
・食の健康と世代別食育アプローチに関する研究
∼幼児・児童保有世帯に向けた食育アプローチ∼
ホテルヴィラフォンテーヌ汐留(2009.2.18)
・環境首都コンテスト 地域から日本を変える7つの提案
∼書籍の趣旨・内容説明にかえて∼
東京セミナー こだまホール(2009.3.6)
京都セミナー メルパルク京都(2009.3.9)
68
・食生活力が高齢者の生活を変える
東京国際フォーラム
(2007.3.16∼17)