杉山卓、大垣英明、冨増多喜夫、 野口 勉、三角智久

3
7
1
放射光第 4 巻第 3 号 (1991 年)
電総研における蓄積リング自由電子レーザー発嬢実験
山崎鉄夫青山田家和勝,杉山
卓F 大垣英明 F 富増多喜夫P
野口勉F 三角智久,千脇光風鈴木良一
篭子技術総合研究所
1.はじめに
のみであったが,今回の成功によって一挙に可視
自由電子レーザー (free
e
l
e
c
t
r
o
nlaser, FEL)
域に短波長化された。蓄積リングでの発振は,フ
ACO,
については既に本誌に解説 1) や比較的新しい矯報 2)
ランス Orsay の ACO と Super-
が掲載されているうえに,文献 1) に示したように
Novosibirsk の
優れた解説も多い。本稿では,解説ではなく
ACO は既に閉鎖され,
FEL の発振技術を,電総研での経験を中心に述
に転用される予定である。また,
べることにする。
は,アメリカの Stanford 大学の超伝導リニアック
VEPP-3 に次ぐものであるが,
VEPP-3 も近く別の用途
RF りニアックで
と Boeing 社一 Spectra Technology 社において可視
電総研では数年来蓄積リング TE孔t\S での可視
域 FEL の研究を進めてきたが,本年 2 月に発振の
関値に到達し,
ソ連
域で発振している。
3 月に 598nm での発振に成功し
2.
た。発振時の蓄積どーム電流はパンチ当り約
実験の概要
電総研での FEL実験配置を国 1 に示す。 FEL'こ
4mA ,電子エネルギーは 230MeV であった。短波
FEL のゲインが下がり,発振が困
おいては通常のレーザーと異って 1 パスで増幅す
難になるため,圏内では従来大阪大学や理化学研
る増幅型や自発放出光自己増幅型等もあるが,図
究所等で mm の波長領域での FEL がみられている
の様に光を光共振器ミラーで多数回往復させてそ
長になるほど,
e山
STORAGE RING
MONOCHROMATOR
++
PH O'γODIODE
4問事砂
ARRAY
OPγICAL Kし:VSTRON
PHOTO蹴UじrlPlI ER
MONOCHRO制ATOR
VACUU 糊 MIRROR MANIPUし ATOR
STREAKCAMERA
F
i
g
.
1Experimentalarrangementf
o
rFELo
s
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i
l
l
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o
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o
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a
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i
n
gTERAS.
円φ
門i
(C) 1991 The Japanese Society for Synchrotron Radiation Research
3
7
2
放射光第 4 巻第 3 号 (1991 年)
lANDAUC
A
V
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Ls
t
o
r
a
g
er
i
n
gT
E
R
A
S
.
の度に増幅させる方式は発振型と呼ばれている。
製)を用いた。これは世界最初の試みであった
電総研では 1986年に光クライストロンを試作し,
が,以蜂この素材を用いたアンジュレータが従来
同年から蓄積リング TERAS において自発放出光
の SmCo s 以上に流行するようになった。 OK の中
の発生とスペクトルの測定光共振器,電子ビー
での電子軌道は図 1 の中に模式的に示されてい
ムの性質等の要素技術の研究を進め 3) ,
1989年には
る。後で国 9 (a) に示す自発放出光のスペクトルの
FEL ゲインの測定に成功し,以降発振実験を行っ
微細構造は光クライストロン特有のもので,通常
てきた 4) 。いずれも可視域では国内で最初のもので
のアンジュレータからのものはその包絡線の形を
あった。発振型 FEL の研究は大体この様な道筋を
している。
辿る。蓄積リング TERAS については本誌でも紹
ゲイン領域では FEL ゲインは自発放出光スペクト
介されている 5) が,図 2 にその平面図を示す。
ルの勾配に比例するので,
Madey の定理7) によれば,小信号。低
OK では高いゲインが
期待できるわけである。 FEL の波長えは
3.
光クライスト己ン
噌 seゐ
z''
、、
/a¥
2
,1 =,1 0(1 +
K
/
2
)I
(
2
r2)
蓄積リング TERAS は 1981 年に稼働開始したシ
ンクロトロン放射の発生・利用を目的としたもの
OK でのゲインは
であり,直線部が1. 8m と短くゲインが低いので,
国 3 に示す光クライストロン (optical
OK)6) を使用している。
klystron ,
G =1
.1
2
x1
0
- x え。2 (
N
+
N N2r
-K2[JJ]2ρ 。 fF
OK とは通常のアンジュ
1
3
OK
d)
=0
.
9
3G2N[
(
N
+
N
d
)
/
N
]f
レータを 2 個置き,上流側をエネルギ一変調用,
3
(
2
)
下流側をエネルギー変換用とし,中央に強い磁場
の分散部を設けてミクロなパンチングを強め,ゲ
で表される。ここに,
インを通常のアンジュレータの数倍まで高めよう
の磁場周期長,
とするものである。永久磁石は新稀土類永久磁石
光が電子を追い越す光の周期数 ,
(NEOMAX-35 ,
ネルギーをその静止質量 (moC ) 単位で表したも
Nd-B-Fe 系,住友特殊金属社
-174-
んは通常アンジュレータ部
N はその周期数,
2
N d は分散部内で
r は電子の全エ
放射光第 4 巻第 3 号 (1991 年〉
3
7
3
F
i
g
.
3S
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r
u
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u
r
eo
fE
T
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p
t
i
c
a
lk
l
y
s
t
r
o
n
.
の,
ρ 。は電子密度,誌はアンジュレータの偏光パ
ラメータで,
KごeB o À oI(2 7l'
(f) , f=K2j(4+2K2) ,
-J
o
moC),
(刀)
に OK が使用されてきた。
=Jl( ど)
J n は n 次のベッセル
4.
光共振器
F は電子ビームと光ビーム
一般に短波長の FEL では FEL ゲインが非常に低
G2N は 2N 周期の通常アンジュレー
いので,光共振器での損失を極力小さく抑えなけ
タによるゲインである。 f=fofr はゲ、イン劣化因数で
れば発振には至らない。従って,超低損失共振器
あり,
が必要になり,損失の測定が重要になる。電総研
関数 ,
e は単位電荷,
の重畳因子,
f
exp[
87
l
'2(
N+N
2(σ/r)2]
d)
r=
(め
では微小光共振器損失を減衰時間法 8) によって測定
しており,使用前のミラー l 枚当りの損失は
は電子ビームのエネルギー幅び 7 によるゲインの劣
30ppm の透過率を含めて 40ppm 程度である i ・ 4) 。
化を表し,
しかし短波長領域でよく用いられる誘電体多層
fo はそれ以外に起国するものである
が,後者は 1 に近い。電総研 OK の場合,
膜ミラーは自発放出光の高調波成分の照射による
N=8 ,
N d コ 74 である。 (2) 式によれば,分散部磁場を強め
劣化が著しいので,電総研では損失のその場測定
る程ゲインが高くなるように見えるが,実は (3) 式
も可能なシステムを完成させてこれをモニタして
のように電子ビームのエネルギー幅に非常に敏感
いる。図 4 は結果の一例であるが,照射量が増加
になるので,分散部の N d 値についてはビームの質
すると損失が増加し損失が少い波長帯域が狭く
を考慮に入れた妥協が必要になる。従って,十分
なり,最適波長も長波長側にシフトしている。現
に長い直線部を持つリングでは光クライストロン
状では,損失が許容範閤を上回る度にミラーを交
にしないほうが有利である。ちなみに,従来の蓄
換している。
積リング FEL では,
Frascati の Adone を除いて常
蓄積電子ビームはパンチングしているので光も
-175-
放射光第 4 巻第 3 号 (1991 年〉
3
7
4
することによって共振器長を正確にチューニング
4・・、
ぴ3
0
することができる。時間の関数としての出力信号
¥
守醐
>
<
、的 10
tぬ
o
.
.
J
>
ド
>
q
S(t) ロ L
s
(
t
2
m (l-p)m
(
4
)
¥Er
v500mA.h
、口
¥
ト
戸。
門出gLF1コ
0O
Zは
u
の大きさ S(t) は
四
@、-
問
で与えられる。ここに s は検出器の応答特性も含
、、/
.
E=O
剛門醐崎幽閉幽四 o
P は 1 往復当りの共
δ は共振器長のヂチューン, m は往復
回数である。従って,パンチ長が短く,共振器損
I
590 600 610 620
WAVELENGTH (nm)
めた電子パンチの時間構造,
振器損失,
芭 =245mA.h
口町
@[email protected]@[email protected]
570 580
0
/
630
失が少ないほどこの方法の精度は高くなる。電総
研では現在:t 15μm 程度の粗調整が可能である。
F
i
g
.
4Round-t
r
i
pc
a
v
i
t
yl
o
s
sv
s
.w
a
v
e
l
e
n
g
t
h
.E i
st
h
e
一方, ミラーの駆動については上記のような並
amounto
fexposureexpressedby(
s
t
o
r
e
dc
u
r
r
e
n
t
)
x(integr剖ed exposuret
i
m
e
)
.
進はもちろんのこと,共振器長が長いのでミラー
の回転の精度も高くする必要がある。ミラーは超
高真空中にあるので精密な調整は非常に難しい
パンチ状になっている。この光のパンチが光共振
が,電総研ではステッピング・モーターとピエゾ
器を 1 往復した後次の電子ノ〈ンチと重畳して電子
素子を併用した超高真空ミラ…精密駆動装置を試
からエネルギーをもらい受けて増幅されるが,
作した。駆動精度は 0.2μm 以上である。通常,
こ
の増幅が多数回続くためには光共振器長が電子パ
蓄積リング FEL ではリングの加速周波数を微調整
ンチ間隔の半分に正確に調整されている必要があ
してパンチ間隔を逆に光共振器長の 2 倍に合わせ
る。 FEL ゲインが低い場合,通常のレーザーに比
ているが,
べて非常に長い光共振器長を μm オーダ…の精度
少問題がある。電総研のシステムでは共振器長の
で設定する必要があるが,発振条件を捜しながら
調整のみで十分である。
いきなりこの精度で設定することは不可能に近
い。そこで,まず 10μm 程度の粗調整を行い,
し
なお,
リングの局長が変化したりするので多
レ…ザー・ビームと電子ビ…ムの横方向
の重畳も重要で,光共振器の Reyleigh 長は通常ア
かる後レーザー発振を観測しながら μm オーダー
ンジュレータ長程度が選ばれるが,
に追い込んでいく必要がある。
ビームの条件を考慮して決める必要がある。電総
電総研では,以下に述べるような粗調整の方法
もちろん電子
研の光共振器長は 5.238m ,凹面鏡の曲率半径は
3m であり,従って Reyleigh 長は 1m である。
を確立している。自発放出光を光共振器で共振さ
せ,下流側のミラーから出てくる光を分光器を通
した後ストリーク・カメラで受けて,その時間構
5.
電子ビーム
造を観測する(函 1 参照、)。共振器長が短すぎる
短波長の FEL では特に電子ビームの質が問題に
と光のパンチは次第に電子パンチより前にずれて
なり,電総研でも蓄積ビームのエネルギー幅や 3
くるので出力パルス光は図 5 (b) の様に前に尾を引
次元のプロフィールの測定を行っていることは,
き,長すぎると逆に後に尾を号|く。光共振器長が
文献 1 )でも述べた。ここではそれ以降のことに
チューンされると (a) の様に左右対称になり,パル
ついて述べる。
ス幅も細くなる。従って,このパルス波形を観測
TERAS の通常運転では周長 31 .45m 中に 18 バ
-176-
3
7
5
放射光第 4 巻第 3 号 (1991 年)
ROIH POSITION(NS)
0
・ 2.03
F
'
!
{
H
H(NS)
PEλK(NS)>COυNT
• 3
0
.
.
(
)
616388
16.32・>
1
.
0
.
(
3
:A
^RE
50807862
800000
600000
400000
200000
。
5
。
10
lS
20
2S
30
35
NS
(
a
)
RO{# POSIT10N(NS)
O
.41
。
PEAJ
{(NS)>COUNT
30.4
.1
AREA
何時代 NS)
,. 252222
14.70
1
.J20
21923776
400000
300000
200000
100000
。
。
5
10
lS
20
2S
30
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NS
(
b
)
F
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.(
a
)a
l
m
o
s
ttuned ,
a
n
d(
b
)d
e
t
u
n
e
dby-30μm.
ンチのビームが回転している。一方光共振器長は
時間構造を示したもので,上図のように全てのパ
5.238m なので,光が 1 往復した時に次の電子ノ〈ン
ンチに電子が詰まっていたものが第 l 段階の RF­
チと重畳するためには 3 パンチのみが必要で,残
KO で中央の図のように 6 パンチになり,第 2 段階
りのパンチは発振には不要である上に自発放出光
で下図のように 3 パンチになっている。 2 段階に
を発してミラーの劣化を促進する。そこで,電総
分けているのは,この様な正弦波そのものを用い
研では 2 段階の RF -KO (
r
a
d
i
o
f
r
e
q
u
e
n
c
yknock
る方法では節の隣のパンチが溶ちにくいからであ
-out) 法を用いて,加速周波数を分周したものと
る。
ベータトロン周波数とを混合・増幅した RF 電力
3 パンチ・モードでは 18 パンチの場合よりパン
を図 2 の RF-KO 電極に印加することによって 3
チ間相互作用が弱いのでビームの質は多少良い
パンチに落している 9) 。図 6 は電子ビームのパンチ
が,まだまだエネルギー幅も広く,
-177-
FEL には適し
376
放射光第 4 巻第 3 号 (1991 年〉
ていないので,[email protected]
(
a
)
する必要がある。電総研ではそのために 2 加速空
胴方式 10) の研究を行ってきた 9) 。蓄積ビームには
シンクロト口ン振動と呼ばれる縦振動があり,パ
ンチ間相互作用によって全ノ〈ンチが共振するとこ
れがどームの不安定性を誘起する。そこに高調波
の成分を与えるとシンクロトロン振動が速く減衰
して,
1
8 b盟問 ches
ビームが安定化される。電総研では,図 2
に示したようにリングの主加速空腕(1フ1. 6
2MHz)
の 2 倍高調波 (343. 24MHz) の Landau 加速空胴を
'b 詰 5 7. 4 mA
設置しその電力,共鳴周波数,および位相を調
整することによって,主としてパンチ間相互作用
[email protected]
(
b
)
からの信号の周波数スペクトルを示す。 (a) は
Landau 加速空胴を動作させない場合のもので,中
央の周波数の他にビームの不安定性の指標となる
サイドバンドが見られる。シンク口ト口ン周波数
は約 80kHz で,縦軸は対数でとってあるのでどー
クはそれほど高くないが 6 重極までが現れてい
6
る。 Landau 加速空闘を働かせて上記の調整を行う
bunch 告S
と (b) のようにサイドバンドがきれいに消える。こ
I
7
.
0mA
b=1
の操作中に自発放出光スペクトノレを観測している
と,電子ビームのエネルギ…幅が急速に狭くなる
ことが明かにわかる。この様にして現在ではパン
(
c
)
チ当り 6mA 以上の安定な 3 パンチのビームが得ら
れるようになった。
パンチ間相互作用を抑制するには他にフィード
バッグによる方法もあり 111 ,電総研でも研究が始
められている。なお,[email protected]
[email protected]
3
を印加することによって抑制しているゆ。
bunch 母 S
Ib=
3
6.
ゲイン測定
予測される FEL ゲインが光共振器損失より十分
F
i
g
.
6E
l
e
c
t
r
o
n
-beambunchs
t
r
u
c
t
u
r
e(
a
)b
e
f
o
r
et
h
eRF-
に高い場合には必要はないが, TERAS での実験
KO(
f
u
l
lbunches) , (む)甜er t
h
ef
i
r
s
t
-s
t
e
pRF-KO(
6 ではゲインが低く発振ぎりぎりなので,外部レ­
bunches) , and(
c
)a
f
t
e
rt
h
esecond・・- s
t
e
pRF-KO(
3
b
u
n
c
h
e
s
)
.
ザーによるゲイン測定が必要であった。測定法に
ついては文献1)でも述べてある。電子エネルギーを
-178-
3
7
7
放射光第 4 巻第 3 号 (1991 年〉
る。図 8 (b) は同時に測定した自発放出光スペクト
(
a
)
ルであるが,前記の Madey の定理が確認できる。
ア.発振実験
ゲイン測定である程度の発振の目処が立っと,
いよいよ発振実験にとりかかる。
蓄積リング内の電子ビームは光クライストロン
の中で光と相互作用してこれを増幅する。電総研
の場合,下流側ミラーからの出力光は図 1 のよう
に分光器を通り,そのスペクトルは後におかれた
[email protected]
o
j 思= •
で測定される。電子ビームを安定化させた後共振
4
器や電子ビームの微調整を行うと,
FEL のゲイン
が光共振器損失を上回れば,光のビームが共振器
(
b
)
内で往復運動をする度に成長してコヒーレントな
レーザーになって発振する。出力光の一部はスト
[email protected],共振器長調整やパ
ンチ長測定に使用される。
図 9 (a) は発振前の自発放出光スペクトル,
(
b
)
と (c) は発振時のスペクトルを示しているが,
(
c
)
は測定装置の前にフィルタを置いて強度を約 1 /1 20
に落したものである。この様な測定結果から,
FEL のピーク出力は 10mW 以上と推定されてい
る。図 9 (b) ,
=0.8k開
i 蕗=
(む)の発振スペクトルのピークは
598nm にあるが,
6.2 開 A
幅が狭くなり
(a) の自発放出光スペクトルより
(0.3nm 程度) ,ピークは山と山の
間隔の約 20% 長波長側にシフトしている。前者は
F
i
g
.
7Frequencys
p
e
c
t
r
ao
fs
i
g
n
a
lfromab
u
t
t
o
n
光がコヒーレントになったためで,当然のことで
monitorwhent
h
ebeami
s(
a
)n
o
ts
t
a
b
i
l
i
z
e
dand(
b
)
ある。ピークのシフトは Madey の定理によれば山
stabilized. 了he s
c
a
l
eo
ftheabscissai
s1
0
0
k
H
z
/
d
i
v
.
と山の間隔の 25% になるはずであるが,多少それ
からずれている。 ACO での実験でも同様な傾向が
変化させて測定したデータを図 8 (a) に示す 1 ・ 4) 。
見られたが,
パンチ当り1. 6mA の蓄積電流で 1 x 1
0
-4程度のゲ
た 13)
インが得られている。これは上記の光共振器損失
らのずれを,共振した自発放出光の横方向電磁界
を考えると発振ぎりぎりの線であるが,ゲインは
が TEM∞以外のモードも含んでいたためであろう
蓄積電流の増加と共に高くなる傾向か見られ,か
と推測しているが,電総研の実験では自発放出光
っ電子ビームの質は現在ではこの当時より優れて
の共振が TEM∞モードのみであることを事前に確
いるので,蓄積電流が増加すれば発振は可能であ
認している。何か別の理由がありそうな感じであ
-179-
0
シフトはさらに小さくて 15% であっ
ACO のグループは,この Madey の定理か
放射光
3
7
8
第 4 巻第 3 号 (1991 年)
.
.
.
旬、
t
p 10
0
守由
>
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、嶋幽,
(
C
J
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一10
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(
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トト
E凶
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忽o
{.3.5
1
悼の
4Enu
ωコOωcscom ω£ち
hSωcg
一c
240
245
E
l
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c
t
r
o
nE
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g
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(
b
)
F
i
g
.
8(a)γ'ypi侃 I peak- g
a
i
ns
p
e
c
t
r
a and
(
b
)spon-taneous 叩 emission s
p
e
c
t
r
u
m
.
る。図 10 に電総研で得られた FEL のパターンを示
に短波長なるほどゲインが低くなることに起因し
す。
ている。当所では,次の段階として長直線部が 7m
と長い FEL 用小型リング NIJI-N を川崎重工社と
8. 今後の展望
協力して建設し 14) ,最近ビーム蓄積に成功してい
以上のように電総研では可視域での FEL の発振
る。このリングに設置する 6.3m の光クライストロ
に成功したが,おそらくゲインがあまり高くない
ンも設計中で,可視から紫外,さらには真空紫外
ことと調整か不十分なために長時間にわたる安定
へと短波長化の研究を進めていく予定である o
な発振は得られていない。今後も Q スイッチング
FEL を考慮にいれた加速器の建設は,今後流行す
等の実験を続けて,より良いデータを得るべく努
るであろう。短波長化のためには,加速器のみな
力を重ねていく予定である。
らずミラーの問題等多くの障害があるが,それら
TERAS の様に直線部の短いリングでは,ゲイン
が低いので飛躍的な短波長化は困難である。短波
長化の困難さは,
(1)式と (2) 式から明らかなよう
は着実に乗り越えられていくであろう。
国内では,アメリカ等の諸外国より研究の開始
が遅れたために FEL の研究は大きく水を開けられ
-180-
放射光第 4 巻第 3 号 (1991 年)
3
7
9
(
a
)
(
b
)
F
i
g
.
1
0FELpa抗ern a
tEγし
FEL の短波長化が進めばそれに応じて応用分野
が広がることは勿論,
この領域での研究成果は長
波長領域での研究にもフィードバックされ,大出
[email protected],中。
(
c
)
長波長領域自由電子レーザーの応用分野も広がっ
ていくものと期待される。
電総研における蓄積りング FEL の研究は,昭和
63 年度までは科学技術振興調整費,平成元年度か
らは原子力試験研究費でリニアック・蓄積リン
570
600
630
グ・グループの共同で研究が進められている。最
WAV監L監閥GTH (
nm)
後に,
2 加速空腕方式について御指導頂いている
日本原子力研究所の宮原義一氏に感謝の意を表す
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monochromator.
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ていたが,現在では原子力基盤技術総合的研究
(原子力基盤クロスオーバー研究:当所の他日本
原子力研究所,[email protected],理化
文献
1) 山崎鉄夫:放射光,第 2 巻第 3 号,
学研究所が参加)の枠組みの下で実施されている
19(1989); 山崎鉄
夫:電子技術総合研究所議報, 54 , 7
0
4
(
1
9
9
0
)
.
ものの他,大阪大学,東京大学等においても FEL
2) 山崎鉄夫:放射光, 3, 1
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5
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1
9
8
9
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.
の研究が進められており,合計十指に余るプロジ
3
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. Yamazaki , T
. Nakamura, T
. Tomimasu , S
.
ェクトが進行中である。さらに最近関西に自由電
Sugiyama, and T
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子レーザー研究所も発足している。
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-181-
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放射光第 4 巻第 3 号 (1991 年)
Chiwaki , R
. Suzuki , H
.Ohgaki , T
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. Nakamura , T
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Yamazaki , T
. Noguchi , S
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. Tomimasu , Y
. Miyahara, S
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1987-1990,巳lectrotech.
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. Sugiyama,
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Tomimasu , T
. Mikado , M. Chiwaki , R
. Suzuki ,
.Kinoshita, a
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. Yamazaki , S
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Sugiyama, T
.Tomimasu , T
.Mikado , M.Chiwaki ,
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. Tomimasu , T
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5) 富増多喜夫:放射光,第 l 巻第 1 号, 33(1989).
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. Yamazaki , S
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Tomimasu:ibid. , p