Construction dispute avoidance newsletter November 2012

建設紛争回避ニュースレター
(第 45 号)
FIDIC 工事下請契約条件書 2011 年版:裁判外紛争
解決手続の批評的考察
2012 年 11 月
東京オフィス
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はじめに
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第 20 条の第 2 代替条項-概要
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有望なオプションか?
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代替手段としての多数当事者仲裁
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お問い合わせ先
最近の刊行物
はじめに
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建設紛争回避ニュースレター9 月号 [リンク参照]では、長い間待ち望まれていた
FIDIC工事下請契約条件書の第一版 2011 年版(Conditions of Subcontract for
Construction of Building and Engineering Works Designed by the Employer First
Edition 2011)(以下「工事下請契約条件書 2011 年版」といいます)について検討しまし
た。
工事下請契約条件書 2011 年版の第 20 条が規定する紛争解決手続では、下請契約に
基づき生じる紛争は、まず下請契約に基づく紛争裁定委員会(以下「下請契約 DAB」と
いいます)に付託され、その後に終局決定を求めて仲裁に付託されます。下請契約の
特記条件作成の指針(以下「本指針」といいます)は、裁判外紛争解決に関する規定と
して 2 つのオプションを挙げています。ひとつは、仲裁のみを行う簡易な紛争解決手続で
ご希望の場合はこちらまでご連絡
ください(ハードコピーのみ)。
あり、もうひとつは、主契約に基づく紛争と関連性を有する紛争について、主契約に
基づく紛争裁定委員会(以下「主契約 DAB」といいます)の裁定および仲裁判断に
下請者が拘束されることを意図した、複雑な構造を規定したものです。
本稿では、第 20 条の第 2 代替条項の規定について大まかな概要を示した上で、請負者
関連リンク
>
Herbert Smith Freehills
>
Our construction and
engineering disputes
practice
>
Our Tokyo office
と下請者が注意すべき特記事項を取り上げます。
第 20 条の第 2 代替条項-概要
•
当該条項は、下請契約に基づく工期延長および/または追加の支払いに関する
下請者のクレームについて規定する副条項(第 20.1 条ないし第 20.5 条)と、紛争について規定する副条項(第 20.6 条ないし
第 20.8 条)に分かれています。
•
工期延長および/または追加の支払いに関するクレームについては、下請者は、当該クレームの原因となる事態または状況を
認知した(もしくは認知すべきであった)時点から 21 日以内に通知することを義務付けられています(第 20.1 条)。
1
建設紛争回避ニュースレター43 号、2012 年 9 月。
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•
かかるクレームは、その後「関連クレーム」(主契約に基づくクレームの原因にもなり
うる状況から生じるクレーム、またはその他主契約に基づく既存のクレームもしくは
紛争に関連するクレーム)と「非関連クレーム」に分類されます。クレームが「関連」
するか「非関連」であるかについて当事者間で意見の不一致がある場合は、最終的
2012 年 10 月号
には ICC の仲裁前審判手続(pre-arbitral referee procedure)に付託されます
アジア季刊版:建設契約に
おける約定利率
(第 20.2 条)。
•
非関連クレームに関しては、下請者は、請負者に当該クレームの詳細を提出します。
当該クレームについて合意を得られない場合、請負者は「公平な決定」を行うことを
義務付けられています(第 20.3 条)。
•
合理的な努力」を行わなければなりません。下請者は、関連クレームに関する
2
新たな重大判決:2012 年 7 月に
判示された Walter Lilly v.
Mackay 事件
2012 年 7 月号
ヤが下請者の出席を許可することを義務付ける規定はありません)。下請者がかかる
アジア季刊版:紛争裁定委員会
が下した裁定の執行
は、下請者と「事前の協議」をせずに関連クレームについてエンジニヤと合意に
達することはできません。当該副条項はさらに、下請者が所定期間内に不服申し
立ての通知を行わない場合、下請者は当該合意に拘束される可能性がある旨を
規定しており、このことに鑑みれば下請者は間違いなく、かかる文言を更に強め、
下請者の書面による事前の承認なくして請負者がエンジニヤと合意に達することを
禁止する文言にしたいところでしょう。
第 20.4 条ではさらに、エンジニヤと請負者が関連クレームについて合意し、または
エンジニヤが決定を行い、請負者が主契約に基づく工期延長および/または
追加的費用の権利を有することになった場合、請負者は、関連クレームに該当する
利益の分け前を下請者に譲渡するよう義務付けられています。ただし、請負者が
金銭的利益を譲渡する責任は、請負者が発注者から支払いを受領して初めて生じる
ものであり、この点については論議を招く可能性が高いでしょう。当該利益の下請者
の分け前について請負者と下請者が合意に達しない場合、請負者は「公平な決定」
を行い、下請者が適時に不服申し立ての通知を行わない場合、下請者はかかる
決定に拘束されます。反対に、追加の支払いおよび/または工期延長が主契約に
基づき請負者に与えられないとエンジニヤと請負者が合意するか、またはエンジニヤ
2012 年 6 月号
EPCM 契約はより洗練された
調達手段か?
2012 年 5 月号
責任制限
2012 年 4 月号
アジア季刊版:建設契約における
通知要件:東南アジアの観点から
2012 年 3 月号
不可抗力条項:FIDIC と ENAA
による取り扱いおよび独自条項
(bespopke clauses)の
ドラフティング
2012 年 2 月号
無駄な管理コストを回収するには
がその旨決定する場合、下請者は、所定期間内に不服申し立ての通知を行わない
2012 年 1 月号
限り、これにより拘束されることになります。
建設業者の瑕疵担保責任
クレームと同様に、下請契約に基づく紛争も「非関連紛争」と「関連紛争」に分類され
ます。「非関連クレーム」と「関連クレーム」から生じる紛争は、それぞれ自動的に
「非関連紛争」と「関連紛争」となります(第 20.6 条)。非関連クレームと関連クレーム
2011 年 12 月号
建設契約上の設計者の責任に
ついて
のいずれにも起因しない紛争の性質については、ある手続を経て判断され、かかる
2011 年 11 月号
問題について当事者間で意見の不一致がある場合は、最終的にはやはり ICC の
建設契約における、遅延に
対する救済
仲裁前審判手続により解決されることになります。
•
FIDIC 工事下請契約条件書:
第一版
エンジニヤとの会合に関与する権限を有します(しかしレッドブック には、エンジニ
会合に出席しているか、または出席を許可されているが拒否した場合を除き、請負者
•
2012 年 9 月号
2012 年 8 月号
第 20.4 条に従い、請負者は、主契約に基づくエンジニヤに関連クレームを提出する
ことを義務付けられており、当該クレームを発注者から確保するために「全ての
•
INDEX OF PREVIOUS
NEWSLETTERS
第 20.7 条に従い、非関連紛争は、請負者または下請者のいずれかにより、下請契
約 DAB による裁定に付託されます。いずれか一方の当事者が下請契約 DAB の
裁定について不服申し立ての通知を行った場合、当事者らは、当該紛争の友好的な和解を図るか、または直接 ICC の仲裁に進む
ことになります。
•
関連紛争の手続(第 20.8 条)は、長文で内容がより複雑です。
–
関連紛争は、まず請負者により主契約 DAB に付託され、請負者は、請負者と下請者を代表して、両者の利益に適うべく当該
クレームを請求するために「全ての合理的な努力」を行うことを義務付けられます。
2
「建設工事の契約条件書 発注者の設計による建築ならびに建設工事 1999 年第 1 版」(Conditions of Contract for Construction For Building and
Engineering Works Designed by the Employer First Edition 1999)。主契約として想定されている契約約款のひとつです。
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–
下請者は、関連紛争を申し立てるために、請負者に情報と支援を提供することを
義務付けられ、(とりわけ)主契約 DAB に対する提出文書の作成と口頭陳述に
関与する合理的な機会を与えられることとされています。下請者がかかる方法で
–
ハーバート・スミス・フリーヒルズ
レッドブックには発注者がこれに合意するよう義務付ける規定がないため、このよう
は、当事務所の戦略の中核に
な状況が生じる可能性は十分にあります)、請負者は、下請者と事前の協議を
据えているシングル・グローバル・
せずに関連紛争について発注者と和解に至る権利を有しません。先と同様、この
プラットフォームのより一層の充実
「事前の協議」という文言は下請者には受け入れ難いところでしょう。下請者として
を図るために、2013 年初頭に、
は、請負者と発注者が、最終的に下請者を拘束する可能性のある合意に至ること
ギニア共和国コナクリにてオフィス
に対して、より手厚い保護を求めたいところです。
を開設することとなりました。
請負者は、主契約 DAB の裁定について下請者に通知するよう義務付けられて
下請者を拘束します。
–
これは、当事務所にとってアフリカ
初のオフィスであるとともに、
2012 年 10 月 1 日付の当事務所
の合併以降、初の新規オフィス
主契約 DAB が請負者に有利な裁定を下した場合、請負者は、該当する利益を
開設となります。当地域において
発注者から確保するために全ての合理的な努力を行わなければならず、また、
目覚しい経済成長を続けている
その進捗状況について常に下請者に報告しなければなりません。関連クレームの
ギニア共和国に拠点を開設する
規定と同様、発注者から支払いを受領することが、下請者に対して同様の支払い
ことは、当事務所のアフリカ関連
を行う請負者の責任を生じさせる先行条件であり、受領された利益に関する各
業務に対する意欲の表れでもあり
当事者への配分の決定に関しても同様の規定があります。
ます。ギニア・オフィスは、
下請者が主契約 DAB の裁定について不服申し立ての通知を行った場合、
西アフリカ地域のコーポレート
請負者はこれと類似する通知を行い、主契約 DAB の裁定が主契約に基づき
およびプロジェクト業務に注力
確定するのを防ぐ必要があります。レッドブックでは、請負者による不服申し立て
する予定であり、特に当事務所の
の通知は、当該紛争を ICC 仲裁による終局決定に付託する請負者の権利を生じ
エネルギーおよびインフラ関連の
させる先行条件とされています。工事下請契約条件書 2011 年版の文言はあまり
–
開設のお知らせ
主契約に基づく手続に関与することができない場合(この点においても、
おり、かかる裁定は、下請者が 7 日以内に不服申し立ての通知を行わない限り、
–
当事務所のギニア・オフィス
クライアントの皆様には、今後
明確ではないため、下請者が不服申し立ての通知を行わない場合には下請者が
ご利用いただく機会があれば、
主契約 DAB の裁定により確実に拘束されるようにするため、請負者はこの点に
幸いに存じます。
ついての文言を厳密にした方がよいでしょう。さもなければ、請負者は、主契約
プレスリリースの詳細につきまして
DAB の裁定に自らが拘束される一方で、同じ紛争に関連した下請契約に基づく
は、こちら(英文および仏文のみ)
仲裁において抗弁しなければならなくなる可能性があります。
をご覧ください。
請負者が下請者による不服申し立ての通知に返答しないか、または主契約 DAB
の裁定に対してその裁定が主契約に基づき確定することを防ぐため類似する通知
を行わない場合、当該紛争は、非関連紛争とみなされることになります。その場合、第 20.7 条が適用され、下請者は基本的には
振り出しに戻り、今度は非関連紛争として下請契約 DAB に付託し裁定を求めることが必要となります。
–
請負者が主契約に基づき不服申し立ての通知を行った場合、請負者はまず発注者との間で和解を図り、それが失敗に終わった
場合は、主契約に基づき関連紛争について、発注者との間で ICC 仲裁手続を開始することになります。下請者は、当該手続に
関与する機会を与えられます(但し、下請者は当該手続の当事者になる権利は有しません)。主契約に基づく仲裁の下での
仲裁判断は、請負者に対する拘束力と同程度において下請者を拘束するものとみなされます。仲裁判断の契約上の利益は、
請負者が定める適切な程度において、下請者と配分しなければなりません。当該配分の水準について意見の不一致がある場合、
非関連紛争とみなされ、請負者と下請者の間で仲裁によって解決されることになります。
有望なオプションか?
上記に示した第 2 代替条項の手続は、一連の FIDIC 契約約款の中でこの種のものがオプションとして盛り込まれた規定としては最初の
例であり、同様のまたは関連する主題を扱う下請契約や主契約の下で別個の紛争解決手続を行う必要性を排除できるという潜在的な
メリットがあるため、請負者にとって魅力的なオプションとなるでしょう。しかしながら、上記からお分かりの通り、その起草に問題がないわけ
ではありません。概念自体は下請者に受け入れられたとしても(もっとも多くのプロジェクトでは受け入れられる可能性は低いかもしれませ
ん)、かかる規定を真に機能するものにするためには、文言に手を加える必要があります。
実際、FIDIC 自体が上記を受け入れているものと思われます。というのも、FIDIC は、本指針における第 2 代替条項の文言に対する注釈
において、提案されている条項が長文に及び複雑であることを認めた上で、これらの条項は「試験的にのみ」提案しているとの記述がされ
ているのです。利用者においては、提案された条項を利用する前に仲裁の専門家に相談し、これらの条項がうまく機能することを確認する
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ことを推奨いたします。ハーバート・スミス・フリーヒルズはこの分野で豊富な経験を積んでおりますので、第 2 代替条項の手続を契約に
盛り込むことを検討しておられる方は、ぜひ当事務所にご連絡ください。
代替手段としての多数当事者仲裁
工事下請契約条件書の旧版(1994 年版)において、FIDIC は、主契約に基づく紛争が下請工事に関連する場合、当事者らは、発注者、
請負者および下請者の間で多数当事者仲裁の手続について合意することを望むかもしれないと予見していました。2 つの仲裁を併合
する、および/または追加当事者を既存の仲裁に追加することについて規定する多数当事者仲裁の条項は、きちんと起草されていれば、
ある状況下では、主契約に基づく裁定や仲裁判断について下請者を拘束する有望な手段になりうるものであり、FIDIC の工事下請契約
条件書 2011 年版のアプローチの代替手段として当事者らが検討したいところでしょう。
繰り返しになりますが、手続併合や当事者追加に関する規定の起草は複雑な作業ですので、そうする際には法的助言を受けることを強く
推奨いたします。助言をご希望の場合は、本稿でご紹介している当事務所の専門家までご連絡いただければ幸いです。
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