近畿都市学会報173号 - 近畿都市学会 最新のお知らせ

近畿都市学会報
第173号
修
2010年9月30日
近畿都市学会
近畿都市学会・連絡先
■ 近畿都市学会事務局
■ 近畿都市学会編集委員会 宛先
(原稿等はすべてこちらにお願いします)
〒631-8502
奈良市山陵町1500
奈良大学文学部地理学教室内
近畿都市学会 事務局
事務局長:酒井高正
>電話&ファックス:0742-41-9539
>Eメール:[email protected]
(ご連絡は、なるべくEメールでお願い
します。)
>ホームページ:http://www.kintoshi.org/
>会費納入先: ゆうちょ銀行 振替口座
〒530-0001
大阪市北区梅田1-2-2-600
大阪駅前第2ビル6階
大阪市立大学大学院 創造都市研究科内
近畿都市学会 編集委員会
(担当)副編集長:小長谷一之
>電話:090-4649-2590
>ファックス:072-721-0064
>eメール:
[email protected]
00990-7-86235 近畿都市学会
※他の金融機関からは ゆうちょ銀行 〇九九店 (ゼロ
キユウキユウ店) 当座 0086235 キンキトシカ゛ツカイ
Ⅰ.2010(平成22)年度秋季大会のお知らせ(確定) 修 正 版
2010年度秋季大会は、 京都市 にて開催いたします。
【日時】2010年11月13日(土)10:00~20:00(懇親会含む)
【参加費】無料(京都国際マンガミュージアム見学および懇親会のみ実費をご負担い
ただきます。)
【会場】会場 京都市立京都堀川音楽高等学校 〒604-0052 京都市中京区油小路通
御池上ル押油小路238番地の1(京都市地下鉄(東西線)「二条城前駅」2番出口
より徒歩1分、堀川通に面した西門からお入りください。地図は最終ページ)
※会場ではスリッパにお履き替えいただきます。靴を入れる袋はこちらで用意いたし
ますが、ブーツなど特別な履物の場合は各自で袋などをご用意ください。
【プログラム】(最終確定版)(地図は最終ページ)
(1)10:00~12:00
エクスカーション
(学校の統合跡地利用、地図は最終ページ)
[集合]京都御池創生館(京都御池中学校)校門前に10:00(柳馬場御池上ル、京都
市地下鉄(烏丸線・東西線)「烏丸御池駅」より東へ徒歩5分、(東西線)「市役所
前駅」より西へ徒歩3分)
[コース]①10:00より 『京都御池創生館(京都御池中学校)』 見学。
②11:00より『京都国際マンガミュージアム(龍池小学校跡)』見学
(入場料は各自負担)。
見学後解散(各自昼食、会場(京都市立京都堀川音楽高等学校)へ移動)
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(2)13:00~13:30
音楽演奏「街角メドレー」
(奈良アコーディオン愛好会)
(3)13:30~13:40
(4)13:40~14:20
山田浩之 近畿都市学会会長 挨拶
門川大作 京都市長 特別講演
『「共汗」と政策の「融合」で進める
京都市の「人づくり」「まちづくり」』
(5)14:30~17:30 一般研究報告
[1]「京都市の文化政策とまちづくり」
山田浩之(京都大学名誉教授)
[2]「酷暑下におけるエクステンシブ型フィールドトリップの設計と実践
-津和野・萩・大森(石見銀山)を巡る2泊3日の行程を例にして-」
香川貴志(京都教育大学)
[3]「2012年ロンドン・オリンピックと地域再生」
高山正樹(大阪大学大学院 経済学研究科)
[4]「まちづくり型観光地の発展についての考察
-観光地のライフステージを進めないための取組-」
上田恵美子((社)奈良まちづくりセンター 副理事長)
[5]「地域共同体の一モデル
-園部町黒田地区の共有・共同・相互関係-」
木村裕(京都まちづくり研究会)
[6]「JGSS(日本版総合社会調査)から見た自動車利用」
小川雅司(羽衣国際大学 産業社会学部)
(6)18:00~20:00 懇親会(「凜月」、会費5,000円)
※京町家で旬の京料理をご賞味ください。
予約が必要ですので、懇親会参加ご希望の方は、11月10日までに、学会事務
局まで、
①Eメール([email protected])か②FAX(0742-41-9539)で、
お知らせください。会費は当日徴収いたします。
★例年自治体開催である秋季大会は、京都市のご協力を得て、京都市中心部の市による整
備拠点で実施することとなりました。教育文化都市である京都市は、学校の整備や廃校の
利用やPFIの活用などにおいても優れた事例があります。ふるってご参加下さい。
★音楽高校での開催に伴い、奈良アコーディオン愛好会のご協力を得て、記念演奏を行う
こととなりました。お楽しみいただければ幸いです。
【以下参考資料】
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図 1:京都 市都心部 小学校 跡 地活用地 図 ( 出 所) 京 都市教 育 委 員会 ( 晃洋 書 房『 創造都 市 へ の戦 略 』 225頁 )
図 2:京都 御池創生 館 PFI のしくみ ( 出所 ) 報道 を もと に 臼 田作 成 (晃 洋 書房 『創造 都 市 への 戦 略』 212頁 )
写 真1・2 :京都御 池創生館 ( 出所 )(晃 洋 書房 『 創造 都市 へ の 戦略 』 206, 213頁 )
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Ⅱ.近畿都市学会理事会のご報告
近畿都市学会2010年度第4回理事会は、2010年9月24日(金)に大阪市立大
学文化交流センター談話室(大阪駅前第2ビル6階)で開催され、2010年度秋季大会
(京都市を予定)の準備、『都市研究10号』の編集等について議論しました。
Ⅲ.日本都市学会第57回大会(関東が担当、高崎市で開催)
日本都市学会代58回大会(東北が担当)のお知らせ。
日本都市学会第57回大会(2010年度)は、関東都市学会が担当し、2010年1
0月22日(金)・23日(土)
・24日(日)に、高崎市の高崎経済大学において、
「横断
国土軸と都市の再生」をテーマに開催する予定です。
日本都市学会第58回大会(2011年度)は、東北都市学会が担当する予定です。
詳細はホームページで追って連絡してまいります。学会員の皆様はスケジュールの調整
をよろしくお願いいたします。 くわしくは、 日本都市学会ホームページ
http://www.toshigaku.org/
をご覧下さい。
Ⅳ.近畿都市学会/日本都市学会年報事務局(担当近畿)のホームページ・
メールのアドレスが変更になっています(昨年より)
◎【近畿都市学会事務局連絡先】
【ホームページ】http://www.kintoshi.org/
【近畿都市学会総合受付代表メールアドレス】in[email protected]
(※電話・住所等は変更ありません)電話&ファックス:0742-41-9539
〒631-8502
奈良市山陵町1500
近畿都市学会 事務局
事務局長:酒井高正
奈良大学文学部地理学教室内
◎【日本都市学会年報事務局(担当近畿)連絡先】
【ホームページ】http://www.kintoshi.org/nenpo/
【(1)原稿・編集等に関すること】→年報(編集)事務局(担当:小長谷一之)
[email protected]
(連絡先)TEL090-4649-2590、FAX072-721-0064
〒530-0001大阪市北区梅田1-2-2-600大阪駅前第2ビル6F
大阪市立大学大学院創造都市研究科都市政策専攻
小長谷一之
宛
【(2)発送・バックナンバー・支払に関すること】→年報(刊行)事務局(担当:山崎健)
[email protected]
(連絡先)TEL&FAX078-803-7778
〒657-8501神戸市灘区鶴甲3-11
神戸大学大学院人間発達環境学研究科人間環境学専攻
山崎研究室
Ⅴ.事務局より(会員異動)
<新入会>木村裕(京都市西京区役所、専門分野:地域共同体論)
<会員種別変更>小杉八朗(名誉会員、日本都市学会に再入会)
楊岩(学生会員→普通会員)
Ⅵ.訂正役員表(172号の「2010年度総会報告」の訂正)
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宛
【2010年度役員(原則としてアイウエオ順、任期 2010 年 6 月~2011 年 5 月)】
2010年7月3日の総会で承認されました石田、坂西の両新評議員のお名前が前号会
報172号の役員リストの印刷時に抜けておりました。ここにお詫びいたしますとともに、
下記のとおり訂正いたします。また、その後、小杉八朗名誉会員が日本都市学会に再入会
されました。
(会長)山田浩之
(理事)編集:綿貫伸一郎(委員長)、小長谷一之、佐々木雅幸
集会:山崎健(委員長)、久隆浩
庶務:酒井高正(事務局長)、碓井照子、實清隆
(評議員)石田信博、井出光、内田敬、香川貴志、加藤一誠、加藤恵正、金坂清則、
坂西明子、佐藤彰男、関根秀和、醍醐昌英、高山正樹、淡野明彦、寺本光雄、
徳岡一幸、長尾謙吉、中川万喜子、藤井正、前川知史、増田昇、三輪康一、
文世一、安田孝、安田丑作、山田誠
(監査)野口隆、山本剛郎
(幹事)井垣貴子、井上馨、上田恵美子、後藤暁夫、佐野光彦、中井郷之、中西久雄、
吉川浩
(事務局)奈良大学文学部地理学教室(酒井高正研究室)
【参考:日本都市学会関係】
(日本都市学会理事)高山正樹、久隆浩(以上支部選出理事)、山田浩之(支部会長理事)
(日本都市学会常任理事=年報事務局担当)小長谷一之、山崎健
(日本都市学会論文賞審査委員)實清隆、高山正樹
【参考:名誉会員】
名誉会員(日本都市学会在籍)小杉八朗、小森星児、竹村保治、成田孝三、西川幸治、
三輪雅久
名誉会員(近畿のみ)天野光三、石原照敏、大久保昌一、岡本登太郎、片倉健雄、
倉田和四生、近藤公夫、田口芳明、鳴海邦碩、西田彦一、宮本憲一、
安井司、吉井藤重郎
Ⅶ.2010年度秋季大会研究発表要旨
[1]京都市の文化政策とまちづくり
山田浩之(京都大学名誉教授)
1.今日の京都は、二つの顔を持っている。一つは、歴史都市(平安遷都 794 年)の顔
である。1200 年をこえる歴史の故に、京都は宗教都市(宗教法人数 2432)、祭礼都市(祇
園祭、葵祭など)でもあり、伝統都市と言ってもよい。
もう一つは、近代都市の顔である。先端技術産業を擁する先端産業都市でもあり、時に
は前衛都市(五木寛之)と呼ばれることもある。戦後の京都市は、この二つの面を生かし
て、観光文化都市(国際文化観光都市建設法 1950)、文化芸術都市(世界文化自由都市宣
言 ’78、京都文化芸術都市創生条例 2006)として発展しようとしている。
2.京都が近代都市としての顔をもつようになったのは、明治維新以後、文明開化(近
代化)を推進したからである。初代京都府知事槇村正直は東京遷都による京都の衰退を救
うため、殖産興業政策(舎密社)と文化開発(番組小学校 1869、等)から成る「京都策」
を実施し、次いで北垣国道知事は、琵琶湖疎水等の都市インフラ建設を進めた。
他方、明治 20 年代から、歴史都市としての伝統を自覚して、文化遺産の保護(古社寺
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保存法 1897)を進めるとともに、歴史都市を演出(第4回内国博覧会 1895)しつつ、伝
統の保存・継承への努力がはじまる。
3.明治に始った近代化と伝統の継承という二つの流れは、第2次大戦後にも継 続し 、
両者の対立と調整が、京都まちづくりの歴史を彩るが、戦後の文化政策は、大きく3期に
分けられる。
第1期(戦後~70 年代後半)―基本的には近代化路線が追及されるが、特徴的なことは
高山義三市長(1950~66)のリーダーシップによって、文化行政が大きく前進したことで
ある(京都市交響楽団発足 1956、文化局設置 ’60 など)。なお、京都タワー竣工(’64)
を契機として、第1次景観論争が生じる。
第2期(70 年代後半~20 世紀末)―「世界文化自由都市宣言」
(1978)が行われ、文化
政策と都市政策が結合する。伝統保存の動きが活発となり(伝統建造物群保存地区条例 ’76、
古都京都の文化財の世界遺産登録 ’94)。他方、近代化(都市開発)も進む(市電の廃止 ’78、
地下鉄建設の開始―烏丸線開業 ’81、東西線開業 ’97)。新京都駅・京都ホテル建設(’91
~)を契機に、第2次景観論争が生ずる。
都心部小学校の統廃合が進み、小学校跡地活用審議会が設置(’93)され、新しい文化施
設の建設が進められる(京都芸術センター 2000、国際マンガミュージアム 2006)。
第3期(20 世紀末~)―伝統の保存・継承の重視へ動く(歴史都市・京都創生策 2003、
新景観政策 2007)。
4.都市開発・文化開発における近代化が主旋律であったが、京都は伝統の保存・継承、
歴史都市の再生にも努力し(二兎を追う)、都市としての多様性を獲得してきた。
[2]酷暑下におけるエクステンシブ型フィールドトリップの設計と実践
-津和野・萩・大森(石見銀山)を巡る 2 泊 3 日の行程を例にして-
香川貴志(京都教育大学)
地理学のように地域調査を主たる手法とする研究分野では、教育においてもフィールド
ワークが重視される。今回の報告は、京都教育大学で設置されている「地理学特講」の概
略を紹介し、酷暑下におけるコース設計の工夫、現地実習の実践内容を披露する。
実施月日は 8 月 7~9 日の 2 泊 3 日であった。この現地実習は、行き先を問わず現地集
合・解散が原則であり、今回もそのようにした。したがって、1日目と3日目は各々2 コマ
しか授業時間が確保できず、事前学習会4回で 7 コマを取り、全部で 15 コマ(30 時間 、
2 単位)とした。事前学習会では、対象地域に関わる、地理学を中心とした論文を各自が
読み(重複しないよう別途調整)、その内容を A4 用紙1枚にまとめて発表させ、その後に
質疑応答を行った。受講生の人数との関係で発表時間は一人当たり 10 分である。参加者
は、別科目でコース立案にも参画する大学院生も含め 21 名である。人数がこのくらいに
なると、ビジネスホテルよりも旅館形式の宿の方が便利ある。今回は島根県益田市の同じ
宿に連泊したが、これは2日目の萩を身軽に歩くためである。酷暑下でのコース設計には、
熱中症などの疾病を未然に防ぐため、無理をしない特段の配慮が要求される。
1日目は新山口駅で集合し、
「SLやまぐち号」で津和野に移動し、景観保全の状況を観
察しながら殿町(鯉の泳ぐ水路がある)まで団体行動とした。受講生には歴史学に感心が
ある者も多く、全てを団体行動にすると不評を買うのが必至なので、殿町で解散し自由行
動の時間を確保して津和野駅で再集合のうえ、列車で宿のある益田へ移動した。
2日目は 7 時台に益田駅を出る強行軍になったが、東萩駅からバスセンターまでバスで
移動し、そこから市街地を巡って萩博物館に至った。途中では、電柱地中化や歴史的建造
物の保全など見るべきものが多かった。萩博物館に入館以後は自由行動とし、東萩駅で再
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集合した。自由行動については1日目も2日目も地域観察の課題を与えているので、漫然
と市街地を巡ることは出来ない一方、疲労と相談しながら各自が行動できる。
3日目は、チェックアウトの後、やはり 7 時台の列車で大田市を目指し、石見銀山に向
かった。ここでは終始団体行動であったが、団体行動では受講生の体力差の見極めが難し
い。適度な休憩ポイントの設定が不可欠である。1日目と2日目の自由行動時における、
受講生の行動パターンを含めた他の詳細は、大会当日に口頭で報告する。
[3]2012 年ロンドン・オリンピックと地域再生
高山正樹(大阪大学大学院 経済学研究科)
2012 年の夏季オリンピック(2012 年 7 月 27 日~8 月 12 日、パラリンピックは 8 月 29
日~9 月 9 日)はロンドンで開催される。同市での開催は 1908 年、1948 年についで 3 度
目である。最近時のオリンピックと同様に、ロンドン・オリンピックも経済開発、地域開
発の意味も持っている。主会場となるのはロンドン市内でも荒廃が著しい東部や Thames
Gateway という戦略的開発促進地域である。その中心となる Newham Borough にはスタ
ジアムをはじめ数多くの競技施設が整備されている。政府、ロンドン市、地元は 2012 年
の開催地に名乗りを上げた時から、国民経済や地域経済の活性化、地元のインフラ整備に
加えて環境に配慮した持続可能性を追究したオリンピックという点を積極的にアッピール
してきた。開催についてロンドン市民や地元民の反対の声は聞こえてこない。その意味で
は官民、政府、地元が一体となったオリンピックで何の障害のないようにも見える。すで
に各競技施設、関連施設も順調に建設が進み、国民経済や地元経済への効果も表れている
と言ってよい。
オリンピック関連施設が多く集中するリー河谷や運河周辺とドックランド周辺の地域は、
かつて工場や運輸関連施設が立地していた。産業構造の変化やドック廃止はこの地域の役
割をなくした。結果としてこの地域には広大な遊休地が広がっていたし、目下も遊休地が
見られる。同時に、廃棄物処分地としても利用されてきた地域である。また、ロンドン市
内でも移民も含めてノン・ホワイトが多く居住し、失業率も高く、最も貧しい地域の一つ
でもある。
さて、ここで開発の現状や Newham Borough の特徴を瞥見しておきたい。スタジアム
や選手村をはじめ各種施設は、ユーロスター停車駅にもなる Stratford 駅周辺に建設され
ているほか、ドックランドにもいくつかの競技施設が建設されている。もちろん、東部地
域のみでなく、市内中心部、西部の競技施設をはじめサッカー競技などロンドン以外の都
市での開催もある。同時に、市街地や古いマーケットの更新事業も進められている。また、
各施設へのアクセスの整備(Javelin、Underground、Overground など)も進んでいる。
Newham Borough には南アジア系やアフリカ系の民族が多く住んでいる。2001 年
Census データによると、人口 243,891 人、内キリスト教徒は 46.84%、イスラム教徒 24.31%、
ヒンドウー教徒 6.93%である。ロンドン、イングランドに比べてムスリムやヒンドウーの
割合がかなり高い。
本研究は、この地域で進められる事業が地域再生をもたらすかどうかを検討することで
ある。ただ、開発に関する評価は、事前評価はあるものの、結果次第という側面もある。
その評価基準は、経済活動の活性化の程度、地元民の雇用と所得の安定度、加えて多様な
民族の居住する地域コミュニティの成熟度が考えられよう。
本報告ではオリンピックを契機に地域再生が進んでいる現状を報告するとともに、地域
再生の課題や予測を示すことで、研究の中間報告としたい。
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[4]まちづくり型観光地の発展についての考察
-観光地のライフステージを進めないための取組-
上田恵美子((社)奈良まちづくりセンター 副理事長)
1.観光地のライフサイクル
近年、国の政策の後押しもあって以前にまして観光振興が盛り上がりをみせているが、
観光地は開発のあり方次第ではライフサイクルを早めてしまうことはあまり気に留められ
ることがない。現に温泉をはじめとする旧来からの観光地がさびれてしまった例は全国各
地に存在する。観光地のライフサイクルを早めている要因は、過度の開発、混雑、ライフ
スタイルの変化、観光地間の競争の激化など多様で複合的だが、本報告ではまちづくりを
核として発展してきたまちづくり型観光地を対象に、観光関連事業者の立地によるライフ
ステージの進展について考察する。
2.まちづくり型観光地の事業者の特徴
このところの観光商品は、徹底した合理化によって提供されるリーズナブルな観光商品
と、他方で少々高額でも手づくり感が味わえたり、さらにはカスタマイズされたりといっ
た付加価値が高いものの2極化の傾向が見られる。まちづくり型観光地の場合は特に後者
との関わりが重要であり、観光地のライフステージの早い段階から、後者のタイプの事業
者が外部から進出してくる。しかし、高品質な地域外からの店舗の進出が観光地の評価を
高めたことで、連続して域外からの進出が続くが、いつのまにか出店の品質が下がり、観
光地の評価を下げてしまう。こうした現象がまちづくり型観光地に起こりつつある。
3.ライフステージを進展させないために
①ルール化
まちづくり型観光地のなかで、商業化に対する規制に早くから取組んできた例として有
名なのが、江戸期の中山道宿場町であった妻籠宿である。妻籠宿では昔の趣を残す町並み
を残そうと「売らない、貸さない、壊さない」という住民憲章を掲げてきたが、近年は後
継者不足という問題を抱えている。他方、外部からの大規模開発を徹底して排除しながら、
小規模な進出は受け入れてまちづくりを進めてきたのが、まちづくり型観光地のリーダー
的存在とされる由布院である。しかし、その結果、観光客は増えたもののメインストリー
トの景観が乱れ、昔からの常連客が離れつつある。そこで、由布院ではメインストリート
に景観条例を使った規制をかけ、派手な看板などを抑えて緑化を進めるなどの景観形成を
行っている。
②共感を生むための取組み
観光客は、観光商品に基本的な機能だけではなく地域性を活かした新しさや創造性を求
めるようになっており、特にまちづくり型観光地では地元事業者の商品・サービスに共感
を覚えたときにリピータとなる。しかし、共感の輪はもともとが観光客や観光事業者とい
った枠組みのものではなく、広く地域住民、事業者や地元組織に広がる共通の感覚である。
最近の奈良では、奈良に関わるブログやツイッターが広がり、ツイッターでの呼びかけで
奈良愛好者のイベントには多くの人が参加している。商業化による乱れを規制だけで軌道
修正するには限界があり、平行して、地元を中心に対話を広げていくことが必要と考えら
れる。
学会当日は、こうした流れについて整理しながら報告したい。
[5]地域共同体の一モデル
-黒田地区の共有・共同・相互関係-
木村裕(京都まちづくり研究会)
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京都府南丹市園部町黒田地区は、丹波地方の農村集落であるが、他地域と同様に戦後の
社会経済の変動を経験してきた。しかし、
「限界集落」などの過疎化が進む地域共同体とは
異なり、地域社会の流動化、人口流出・世帯流出にさらされることは少なく、また農村地
域の姿としても、山々に囲まれその中に農地が広がるという形がほぼ改変されることなく、
さらに放置によって荒廃することもなく維持されてきた。それは、京都市に通勤可能な距
離にあり、就労や就学での地理的・経済的条件に恵まれたことが背景にあるが、同時に地
域内での多様な取り組みが作用している。
第1に、黒田モデルでは営農活動が個人及び集団で確実に行われており、農地及び水利の
管理は行き届いていて、集落の風景には美しいものがある。地域共同体の中で生活や生業が
継続され、地域共同体の良好な自然環境と景観が共同で維持されることにより、地域共同体
への愛着と誇りが深まっているのである。
第2に、自治組織や営農組合組織のほか、講組織・クラブ組織などの「弱い結合」が重な
り合っている状況を背景として、住民の「水平的な関係」が形成されている。その中で、自
己実現が図られるとともに、相互理解が深まって集団的に互酬が行われており、連帯意識も
強くなっている。
第3に、共同作業の実施や共有財産の維持管理が継続され、これらを担う役員は、選挙や
互選により基本的に広く地区住民全体で担われている。そして、自治活動への参画が自己実
現の場となり、地域貢献への志向も高くなっている。
第4に、地域共同体の中で、個人の自由、自立という点が確保されることが重要である。就
労や教育、消費活動などにおいて自由度の高さが必要であるが、「弱い結合」や地域自治の
中で自由な空間・気風が確保されることにより、豊かな人間性が養われやすくなる。
黒田モデルは、旧来からの地縁的繋がりの強い地域共同体であり、農村モデルであること
や流動化にさらされなかった特異性を踏まえ評価する必要がある。しかし、地域の姿やその
機能がどこにおいても維持されるためには、黒田モデルのように日常的な「共有・共同」の
営為が積み重ねられ、重層的な組織形成を背景とした「水平的」な人間関係の形成とともに、
自治運営の形が整えられ、個人の自由・自立の確保が必要になってくると考える。それは、
旧来の閉鎖的な村落共同体とは異なり、個人が大切にされ、また地域の知恵や地域文化とい
うものが共有される共同体である。個人の自立と自己実現の活動により、「文化度」の高い
地域共同体を実現することが、現代社会において求められている。これらは今後の地域共同
体のあり方を検討する時の一つの素材となるものと考える。
[6]JGSS(日本版総合社会調査)から見た自動車利用
小川雅司(羽衣国際大学 産業社会学部 准教授)
交通は我々の経済活動や生活に大きな便益をもたらしているが、同時に、様々な問題も
引き起こしている。なかでも、自動車交通による環境・エネルギー問題は最も深刻な交通
問題の1つで、今日、その解決が強く求められている。そして、それを解決する方法は以
下のいくつかに整理することができる。
まずは、技術による解決策で、電気・水素自動車やハイブリッド車などが普及すること
で、自動車からの汚染物質の排出は少なくなり、また、エネルギーの消費効率が改善する
ことが期待できる。しかしながら、技術の改善だけでこの問題を解決することは難しいで
あろう。そこで、交通需要管理による自動車解決策が必要となる。ここには、市場メカニ
ズムを活用した課金政策や、都市構造に着目して、高密度な都市形成を進めるコンパクト
シティ政策が含まれる。そして、自動車交通を抑制するためには、それに影響する要因を
明らかにする必要があるが、これまでの研究は、自由トリップに注目すべきであるにも関
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わらず、通勤・通学時の自動車利用だけを対象とした研究が多く、また、地域データを用
いた分析では、個人や家計の属性に関する変数が限られている。
そこで本報告では、以上のことを考慮して、JGSS(日本版総合社会調査)の 2005
年調査のデータを用いて、家計構成や土地利用、自動車への意識と自動車利用との関係を
利用目的別に明らかにすることを試みた。
その結果、高い人口密度を示す「14 大都市ダミー」や「3大都市圏市部ダミー」はすべ
ての目的において有意(-)となったが、回帰係数の大きさが通勤・通学>買物・用事>
レジャー>送迎の順になり、人口が高密度である効果が目的ごとで異なることが明らかと
なった。また、乳幼児ダミーが通勤・通学以外で有意(+)であることから、乳幼児を連
れる家族に配慮した公共交通サービスの改善が必要と考えられる。新興地域(ニュータウ
ンを含む)ダミーは買物・用事目的の自動車利用に対してのみ有意(+)となったが、こ
れは当該地域が中心市街地から離れ、また、地域内に歩いて行ける店舗が少ない傾向が1
つの原因であろう。危険地域ダミーは送迎目的のみ有意(+)となり、安心・安全のまち
づくりが送迎時の自動車利用を抑制する効果を持っていると考えられる。さらに、事故意
識ダミーはレジャー時においてのみ有意(-)であり、自動車の安全性向上や事故意識を
軽減する自動車保険がレジャー時の自動車利用にとって、重要なポイントとなっている。
最後に、自由度調整済決定係数を目的別にみると、レジャーや送迎時の値が相対的に極
端に低い。送迎やレジャー時の自動車利用要因は通勤・通学や買物・用事と比較して、よ
り多様である。そして、自動車利用に影響する要因も目的別で異なることから、自動車利
用と一言で言っても、その中身は利用目的によって大きく異なることを確認することがで
きた。
Ⅷ.2010(平成22)年度秋季大会会場(京都市御池周辺)地図
① エクスカーション]京都御池創生館(「烏丸御池駅」1番出口から東に5分、
または「市役所前駅」ゼスト御池13番出口から西に3分)
② エクスカーション]京都国際マンガミュージアム(「烏丸御池駅」2番出口すぐ)
③ 会場]京都堀川音楽高校(「二条城前駅」2番出口すぐ)
④ 懇親会]凜月(「烏丸御池駅」2番出口から北西に2分)
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