「ささえ」 45号 - NPO福祉用具ネット

「 さ さ え 」
2013年 10 月発行 情報誌 第45号
発行 NPO福祉用具ネット事務局
住所:福岡県田川市伊田4395(福岡県立大学内)
TEL/FAX: 0947-42-2286
E-mail
npo-fukusiyougunet@sage.ocn.ne.jp
HP http://www10.ocn.ne.jp/~npofynet/enter.htm
情報誌「ささえ」は年4回(1月・4月・7月・10月)発行しています。
印刷 よしみ工産(株) 北九州市戸畑区天神1丁目 13-5
福祉用具はあなたの自立をささえます。
あなたのささえがNPO福祉用具ネットを元気にします。
【商品名】
【商品名】自動排泄処理装置
尿吸引ロボ 「ヒューマニー」
床ずれ防止用ハイブリッドマットレス
「アルファプラ ソラ」
新発売
ハイブリッド型
車いす用クッション
夜ぐっすり眠れるから
昼間頑張れる!
【商品名】
【発売元】 (株)タイカ
【発売元】 ユニ・チャーム ヒューマンケア(株)
「大切な芽を皆さんのやさしさに包まれながら育んでいきたい・・」
1
NPO福祉用具ネット設立
NPO福祉用具ネット設立 10 周年を迎えて
NPO福祉用具ネット理事
NPO福祉用具ネットと私との出会いは、本法
人が設立される前に遡る。大山事務局長がまだ社
会保険田川病院訪問看護ステ-ションに在籍中で、
坂田副理事長が九州日立マクセル(株)の新事業
開発室(NB)室長に就任して間もなくの頃であ
る。新規事業アイテムとして社外団体との共同開
発として推進中の介護福祉機器(介護シャワ-、
床ずれ予防マットレス等)を検討していた頃であ
る。この頃はまだ携帯電話も普及段階にあり、双
方の連絡手段としては、もっぱら固定電話でのコ
ンタクトが一般的であった。
机横の固定電話が鳴り出す。「リリリ-ン リ
リリ-ン」
・・・受話器をあげ、社名・部署名を名
乗ると、
「社会保険田川病院訪問看護ステ-ション
の大山と申します。新規事業開発室の坂田さんを
お願いします。
」の長い前ふりが始まる。当初は、
坂田副理事長と同じ職場であり、坂田氏宛ての電
話を直接取る機会も少なく特に気にとめることは
なかったが、坂田氏の新事業開発室長就任に伴っ
た席替え後も、大山氏からの坂田氏への電話連絡
先は従来と変わらず、
決まってアフタ-5
(定時後)
以降の時間帯になると、私の机横の電話が鳴り始
める。電話を受けると、決まって例の長い文言を
聞き、坂田氏に転送するのが役目となった。電話
頻度が少なければ特に気に留めることもなかった
が、とにかく印象に強く残るコール頻度に、ここ
で声しか知らない大山氏とその性格の一端を知る
こととなる。
それから数年後(NPO福祉用具ネット設立2
年目か?)のこと、筑穂町が経営する特別養護老
人ホ-ム開設に伴った福祉機器導入に当たり、N
PO福祉用具ネットが電動ベッドとP・Wave
の全床導入(33 床)を受注した。P・Waveと
して初めての受注に関係者は喜んだが、納入期限
までの期間は約 6 か月、受注は嬉しいものの坂田
氏はあせった。
そこで、P・Waveの製品化に向けた本格的
開発が急務となったことにより、坂田開発室長か
らの開発要請を受け参画を決意、この時点がNP
O福祉用具ネットと私との出会いとなり、大山事
務局長本人との直接の接触がスタ-ト、NPO福
祉用具ネットとの2人3脚での床ずれ予防ハイブ
リッドエアマット(P・Wave)の開発物語へ
2
歸山 清
と繋がる。
この頃のP・Wave試作品は、各展示会への
出展に対応するのに最低限必要な基本的動作(エ
アセルの交互膨縮)はするものの、外面だけを装
った全くの原理試作レベルにあり、ここから生み
の苦しみが始まることとなる。
参画後暫くしてのこと、まだ介護福祉機器とは
何たるや、床ずれの言葉自体は概念で耳にはして
いたが、実際の症例を見たこともなく、また、ど
のように発症して進行するのかも理解できていな
い全くの土素人を、何の事前説明もないまま西日
本国際福祉機器展に出展のP・Wave説明員と
して駆り出す。どのように対応したものかと悩み
もしたが、見様見真似、聞き様聞き真似にて我流
説明を行う。その会話の中で得たご利用者に近い
方々のご意見、情報が、P・Waveの目指すべ
きところの礎になったと記憶しており、物造り前
に現場の意見の重要性に気付かされたことは、以
降の開発ステップへの取り組みに対して、貴重な
体験であり、収穫となった。
まず、目標仕様(機能、性能、構造、各部品材
料、組立性)とする具体的な仕様決めから検討が
始まる。目標仕様の設定は、機能を満足すること
はもちろんのことではあるが、コストを踏まえた
選定が不可欠である。その後、各構成部品の発注
先の選定、打合せ、試作、評価、再試作、評価を
何度となく繰返し、最終仕様に向けて完成度を上
げる。また、並行して諸性能、機能、耐久性、安
全性、臨床試験等、数多くの試験と膨大な評価時
間を費やしP・Wave誕生につなげることがで
きたことは、NPO福祉用具ネットとの2人 3 脚
の開発体制があったればこそであり、以降、同様
の開発体制で臨んだ「床ずれ防止用ハイブリッド
マットレスSORA」
、
「尿吸引ロボ ヒュ-マニ
-」
、
「車いす用クッションSORA」に於いても
例外ではなく、双方共に欠かせぬ存在にある。
シリーズ福祉用具研究会の活動報告
リーズ福祉用具研究会の活動報告
~15 周年に向けて~
周年に向けて~
シリーズ
あきらめない生活改善!
『道具・人・環境の工夫』
第4回 「生きた情報源」
染矢利章
(介護老人保健施設リストーロ若宮
理学療法士)
第4回 「夫婦愛 笑顔が戻ってきた」
酒井智恵美
(太陽シルバーサービス(株)
ケアマネージャー)
F美さんご夫婦は二人ともベッド上で過ごされ
ています。部屋は別々ですが、ベッドを向かいあ
わせに設置しており、部屋の仕切りのドアは開放
しているため、上半身を上げるとお互いの顔が見
える環境です。ただ、二人が会話する事はありま
せんが・・・
私が担当になった時には、F美さんは、無表情
で時々顔をしかめ介護に対して拒否があり、特に
リハビリに対する拒否は強かったです。そんな時
に、F美さんの耳に皮膚のトラブルが起こりまし
た。
「いつも同じ方向を向いているのが良くないの
ではないか」という結論になりベッドの方向を変
えました。その後F美さんの顔が一段と険しくな
り私達には理由が解りませんでしたが、ある日
「顔が見えん」と言ったのです。そうですベッド
の方向を変えた事でご主人の顔が見えなくなった
のです。会話のない夫婦の関係を私たちは、重要
視していなかったことに気づかせられたと同時に、
何か心が温かくなりました。その後リハビリの内
容を検討し、ベッド上での可動域訓練から、車椅
子へ移乗してのリハビリへ、リハビリの場所は天
気の良い時には庭で実施したり、屋内の仏壇の前
や生け花・ひな壇の前等々場所を変えたりしなが
ら行っていきました。リハビリの内容を変えた事
により、リハビリへの拒否はなくなり、仏壇の前
では手を合わせたり、生け花やひな壇をみて「き
れいね」と言葉を発したり、笑顔が見られる様に
なりました。訪問介護で入浴をする時には、ご主
人の部屋に寄るようにしてみると、手を握ったり
ご主人から「行っておいで」と声かけをされると
にっこり笑ったりと表情が出てきました。
改めて「リハビリとは何ぞや」と考えさせられ
ました。あのままベッド上でリハビリを続けてい
たら、今頃はリハビリに対して、嫌悪感しか感じ
なかったと思います。リハビリの方法を変えるだ
けで、生活の質が変わったのです。介護保険では
美容院への介助や映画鑑賞への介助は「生活に必
要な介助ではない」との見解から認められません
が、そんな部分に意欲を引き出すポイントがある
様に感じます。
福祉用具研究会に参加するようになって2年ほ
どですが、出会いは西日本国際福祉機器展で活動
されているのがきっかけでした。
福祉機器展には、
車椅子、リフトなどの機器の情報収集と家族や介
護職員、利用者の方が楽になる便利グッズ的なも
のを探しに行っていました(最近は、ほとんど展
示がなくなりましたが)
。
たまたまNPO福祉用具
ネットのブースにスライディングボードの使い方
の冊子が置いてあり、話を聞いているうちに研究
会のお誘いを受けたのが始まりだったように思い
ます。
研究会に参加させていただいた感想は、商品開
発等もされているだけあって、かなり熱心に探究
されているなぁと感じました。
と言うのもベッド、
マットなどのカタログに載っている商品名が頻繁
に飛び交っており、話しについていけませんでし
た(今も似たような感じですが)
。
福祉用具についての情報は、カタログ、ネット
で検索、出入りの福祉用具専門相談員の方、福祉
機器展に行くぐらいでした。だいたいの機能は分
かりますが、個々の利用者さんによって使用感、
適合の為の工夫といった事が違います。実際に使
用したり、紹介したりした方が身近にいないとそ
ういったことまでなかなか分かりません。福祉用
具を選ぶ時やその後のフォローに生きた情報が少
ないと感じていました。そうした中、この研究会
は、医療、介護・福祉系等の専門職の方々が参加さ
れており、
福祉用具やその他の関連事項に関して、
いろんな職域からの意見や工夫が聞けたり、新製
品や商品を持ち込んで頂いたりして、実際に体験
できる機会があり、貴重な生きた情報源となって
います。
運営の方々も大変だと思いますが、今後も継続
して様々な発信をしていただければと思います。
まだしっかりついて行けていませんが、生きた情
報を生かせるようしていきたいと思いますので今
後ともよろしくお願い致します。
3
特集
訪問看護と訪問リハの独りごと
NPO福祉用具ネット情報誌 「ささえ」 編集委員会
ささえ 44 号では、訪問看護と訪問リハの方々にむけて貴重なご意見、質問をありがとうございま
した。そこで 45 号では訪問看護と訪問リハの独りごとと題してお返事とさせていただきます。異職
種同士、他人同士が気づいたこと、感じたこと、思ったことを「伝えあうこと」
「受け止めあうこと」
には、どのようにすればよいのでしょうね。自分を大切にしつつ、相手を大切にして「伝えあい、
受け止めあう」ことを日常生活で意識して実行しながらそれぞれの職場で生かせるようになると良
いですね。
保険
訪問看護やケアマネとの連携の必要性についてのお返事
連携の件ですが、訪問のスタッフは異常な状況(身体、家族等)がある場合は、主治医、介護
保険であればケアマネへの連絡は当然しています。又、それは業務の一環であると認識していま
す。その情報をどう生かすのかはケアマネがどのように処理するかで連携にも差がでてくるので
はないでしょうか。もちろん発見した当事者が、関係あると思えるスタッフに連絡するのがベス
トだと思います。仕事と雑事に追われてケアマネや主治医に連絡するのが精一杯の状況であり、
今後気をつけていければと思います。気づいた人が提案していくのが一番ではないでしょうか。
もっと福祉用具や住環境のことを学んで欲しいというご意見に対してのお返事
・福祉用具のすばらしさはわかりますが、導入に際し、本人や家族(介護者)のパーソナリテ
ィーにより、導入が簡単だったり、難しかったりします。又、本人や家族が積極的になっても、
ヘルパーさんが、人的介助を好まれる場合もあり実現できない状況もあります。介護保険の場
合、
良さがわかって利用したいけれど、
限度額を考えると利用につながらないこともあります。
・ご指摘のとおり知らない福祉用具は一杯あります。もし気づかれたら担当セラピストに教え
てあげてください。
訪問看護ステーション間の連携の必要性に関するご意見へのお返事
・訪問看護ステーション間の連携は当事者である私たちが一番強く感じています。数年前にそ
の必要性を感じ在宅連絡協議会ができ、定期的に集まりがもたれています。
・訪問看護支援のよろず相談所として看護協会設立の訪問看護ステーション久留米、宗像がそ
の役割を担われています。ご存知ない方は一度ご相談されてはいかがでしょうか。
4
リハビリのメニューについてのご意見へのお返事
リハビリメニューはそれなりに意味があって実施していますので寝た方のリハビリも見た
目とは違う理由があるかもしれません。ただの関節可動域の訓練だけなのかもしれません。疑
問に思われたら担当セラピストにリハビリの目的を聞いてみることをお勧めします。また、患
者さんに役立つ実施してもらいたいことがあれば、担当セラピストに早く提案してあげてはい
かがでしょうか。
訪問時間の変更に関するご意見へのお返事
訪問時間ですが、確かにヘルパーさんはきちっとしていると思いますし、それが本来の姿だ
と思います。訪問時間を変更していただく場合は、緊急事態への対応、調整、祝日の振替、マ
ンパワー不足の方の訪問があげられます。変更をお願いする場合は変更して不安にならない
人、変更が理解できる人等、利用者さんや家族の状況を把握しながらきちんと承諾していただ
いて行っています。一人でも多くの利用者に満足していただきたいとの思いがあります。
最後に、次のような独りごとをいただいたので紹介します。
介護保険施設(特別養護老人ホームや介護老人保健施設など)であれば、福祉用具はその施設が
準備するものであるはずですが、なかなか個人に合ったものが提供されている例は少ないのではな
いでしょうか。開園から数十年たったところで、開園時から使っている歩行器などはかなりの使い
づらさを感じますし、危険でもあります。残念ながら、個別に対応とまではいかないようです。そ
こは仕方がないと思う部分もあるのですが、最近増えてきた有料老人ホームや高齢者専用の賃貸住
宅などは、居宅扱いですから福祉用具購入や貸与が可能なはず。しかしながら、そんな必要性を感
じてもらえていない場合があるのではないでしょうか。むしろ介護度の軽い方々が入居されている
施設ですから有効な福祉用具もあるはず。施設側はもちろん、利用者さんと施設をつなぐケアマネ
ージャーさんにも、そんな視点をもっていただいて、もしも必要ならば、専門職へつないで頂けれ
ば、有効な用具の利用が出来るのではと思います。
そして、もうひとつ、危惧しているのは、最近、そのような施設入居の方には、福祉用具は施設
が提供するべきだという意見もあるとかないとか?心配です。
編者の独りごと。
そういえば最近のことですが、有料老人ホームに行ったときのことを思い出しました。個室に入
ったとたん違和感を覚えたのです。誰が設置したのか確認できていませんが、部屋中に手すりがあ
るのですが、その高さに驚きました。151cm 程度の身長の私ですが、手すりはなんと、私の胸くらい
の高さまでもありました。入居者は夫(全盲)が 170cm 程度、妻(認知症)は 150cm 程度です。二
人ともその手すりを使用することはなく、手すりの前には自宅から持ち込まれたソファーが置かれ
ている状態でした。高齢者の終の棲家のあり方が問われ、そのあり方は多様化しつつあるようです。
NPO福祉用具ネットに係わっている専門家の皆さんの「ささえ」からこぼれ落ちてしまう生活の
域がさらに広がってきているようですね。
5
本当に申し訳ないと思っているのか?優しく聞こ
える言葉だが、彼にとっては地獄の言葉にしか聞こ
えなかった。
今、思うこと。
「福祉用具の開発に王道なし」
(その 35)
NPO福祉用具ネット 副理事 坂田 栄二
(九州ヘルスケア産業推進協議会 コーディネータ)
まだお店の在庫はあるぞ
“無いものは、しかた無い。
”
そこですぐに立ち直った彼がとった行動は、販売
店に残っているシャワーヘッドを買い集める事だっ
た。近くのホームセンターに電話をしてみた。
明るい声の店員さんが、
「もうメーカーさんからは入りません。でもあと
2、3台だったら残ってますよ。
」
おお、なんということか!メーカーにはなくても
市場にはまだ残っているではないか。
他のホームセンターにも電話を掛けた。どこも、
数は少ないが、いくつかずつ在庫していた。
松原はその日のうちに、数十台分をかき集めた。
メーカーから直接買うのではないので、価格は高く
なるが、彼にとっては背に腹は変えられない。こう
して材料手配
の目途は立っ
た。
シャワーヘッドは 3 か月後
ポンプの問題は解決した。次は、お客の好みがは
っきりしているシャワーヘッドである。
これまで試作に使ってきたシャワーヘッドも優れ
もので、松原のお気に入りである。数多くのメーカ
ーの中から選び抜いたもので、手のひらにすっぽり
と入る丸くてコンパクトなヘッドである。
シャワーヘッドは、高い精度が要求されるため、
金型代はポンプに比べるとはるかに高い。当然、松
原の手には負えない投資となる。
そこで、このメーカーにも電話で交渉することに
した。しかし、相手は一流メーカーである。ポンプ
メーカーのように、うまく対応してくれるか判らな
い。それでも交渉するしかないと松原は思い切って
電話を掛けた。
ポンプメーカーに話した経験から、今回は流暢に
説明が進んだ。
介護シャワーに使いたいという彼の申し出にその
メーカーは、すぐに納得してくれた。
“こりゃ、良いぞ!”
内心喜んでいるところに、そのメーカーは冷水の
ような言葉をかけてきた。
「今、もっと性能を上げるために金型を改造して
いるんですよ。お渡しできるのは 3 か月先になりま
すねー」
「えーー!」
と松原の絶句。
松原はすぐにでも生産を始める気でいた。既に販
売計画も立てていた。これは大きなつまずきだった。
手回しの
良 い カ タロ
グ作り
そのころ大
山は、何をし
てたかって?
実はシャワー
のカタログに使う写真撮影を始めていたんですよ。
松原の苦悩も知らないで、既に大山の頭の中では、
介護シャワーが完成していたのだ。
大山は、大きな会議室を借り切って、テーブルの
上に水色の毛氈を広げ、松原が作った試作品をこね
くり回していた。
その脇には、急きょ呼ばれたカメラマンが大きな
カメラを構えて待ち構えている。
いつ加工できるの? 今でしょ!
勿論、すぐにシャワーヘッドが手に入ってもその
ままでは使えない。ヘッドの中に節水の仕掛けを組
込み、しかもシャワーがリング状に噴射するように
孔の加工も必要だからだ。この加工だけでも 1 か月
はかかる。入手が 3 か月先で、そこから改造を始め
ると、完成するのは 4 か月も先になる。
加工は、今しかない。今、加工できないと商品化
できない。そこで松原はさらに食い下がった。
「古いタイプのヘッドでもいいのですが、在庫は
何台分かはありませんか?」
「金型が変わるので、生産はすでに止めており、
在庫は全部出荷してしまいました。申し訳ありませ
ん。
」
迷ディレクター ただ今奮闘中
「ハイ、撮って!」
会議室に大山の声が響くたびに、カメラマンはシ
ャッターを切る。しばらくすると、また“撮って”
という指示が飛ぶ。まさに“大山ディレクター”と
化していた。
介護シャワーは、複雑な構成であるから、なかな
かポーズが決まらない。電源アダプターの長い 100
v用コード、電源アダプターからポンプまでの直流
コード、さらに太くて長いホース。どれをとっても、
長いものばかりで、テーブルの上はホースが“のた
6
手じゃねー。
」
と、自分の手を、ひっくり返したり曲げたりしなが
らしげしげと眺める。
「どこからか手タレ(手だけが出演するタレントの
こと)を探しておいでよ。モデル代は払えないから
ね!」
横でカメラを覗いていたカメラマンに指示を出す。
カメラマンも慣れたもので、
「ちょっと探してきまーす。
」
と部屋を出て行った。
彼は、開発室の中を歩き回りながら、そ知らぬ振
りをして女性の手を見て回っている。
女性に、いきなり“手を見せてよ”とはさすがに
言いにくい。差し出された手を見て写真写りが悪そ
うな手だと、返答のしようがないからだ。
彼が探し求める手は、若くて張りがあり、細くしな
やかで、爪もよく手入れされている手だ。特に細さ
としなやかさは、握られたシャワーヘッドを小さく、
優しく見せることができる。
打ち回って”収拾が付かない。かなりの枚数を撮っ
たが、大山はそれでも満足しない。
ついには、コードやホースをそれぞれ束ねて独立
させた。これでは、どのコードがどの部品につなが
り、ホースをどこに接続すれば良いのか、初めての
人は写真を見ただけでは理解できそうにないが。
その時の写真が、下のものである。
「こんな扱いにくいものを、ようも作ったもんや
ねー」
大山のブツブツという独り言は止まらない。
おまけにコード類だけではなかった。コンパクト
で丸いシャワーヘッドも、テーブルの上で転がり、
倒れ、シャワーの噴出孔がちゃんと正面を向いてく
れない。
手を貸して
勿論、大山は、このリング状噴射孔配列に特徴が
あることは承知しており、そのためにも何とか正面
を向かせたいのだ。
しばらく部屋を出て行っていたが、どこからか粘
土とテープを持って戻ってきた。その粘土をシャワ
ーヘッドの下
において、無
理やり正面を
向くように押
し付ける。そ
れでも不安定
なので、ヘッ
ドの後ろ側を
透明テープで
引っ張る。す
るとヘッドは
ちゃんと正面を向いた。
その瞬間、大山の顔は“ドヤ顔”になっていた。
キレイな手を探せ!
次は、使用状態の写真を撮らなくてはいけない。
そのためにはシャワーヘッドを握る手が必要になる。
「きれいな手の人は、誰かね・・・。さすがに私の
7
開発室をぐるっと一巡した彼は、一人の女性の机
の横に立ち、
「ちょっと.
.
. 手を見せてくれん?」
と、くちごもりながら、切り出した。彼女の手をも
っとしっかり確認したかったからだ。
すると彼女は、とっさに後ろに逃げるようにイス
を動かして、 “サッ”と服の下に手を隠し、面食ら
ったような顔をしながら、彼の顔をじっと見ている。
“これはまずいことになったぞ”と感じた彼は、
「いやー・・・、実はね…」
彼は、断られるかもしれないと思いながら、
“手タ
レ”を探していることを詳しく話した。
すると、意外にもあっさりと笑いながら、
「なぁんだー!そんなことなん・・・。良いですよ。
」
と、手を差し出した。その手は思った通り、細長く
しなやかだった。
“これはいけるぞ”と感じた彼は、
「今、撮影中なんだけど、ちょっと手を貸してくれ
ん?」
私たちは日頃、手伝ってもらうときに“手を貸し
て”と言って頼むが、まさに“手を貸して”とはこ
のことか。彼は、日本語の語源に触れたような思い
で、妙に納得しながら、彼女を会議室へ連れて行っ
た。
部屋には大山ディレクターが、いまか今かと待ち
構えていた。
「忙しいのにごめんね。この丸い部分をこんな風に
握って。そうそう!そのままでじっとしといて。
」
そういいながら、自分でカメラのシャッターを切っ
た。
(次号へ続く)
事務局だより
事務局だより
創立10周年記念行事の報告
創立10周年記念行事の報告
9月7日、NPO福祉用具ネット創立 10 周年を記
念して、基調講演・シンポジウムを開催いたしまし
た。
参加者は合計 144 名。
参加者の内訳は、
会員約 60%、
非会員 40%でした。職種は福祉用具専門相談員や介
護・看護職・リハ職、行政関係者からメーカー、さ
らに一般の方と幅広い分野から参加していただきま
した。アンケートにたくさんの意見を頂戴いたしま
した。参加していただいた皆様には大変満足してい
ただいたようです。詳細は次号で改めてご報告させ
ていただきます。
定款の変更認証がおりました。
25 年度総会にて議決を得た定款の変更の手続き
がすべて完了しました。8 月 13 日に認証がおりまし
たので、その後、法務局などへの諸手続きをすべて
済ませたことをご報告いたします。
主な変更点は、8 つの事業の文章を整理して 4 つ
にまとめたものです。事業内容に変更点はなく今後
の事業も基本的には従来と同じになります。
【7月から9月までの事務局の主なうごき】
7月 設立総会準備
7月2日 長崎大学出張
共同研究の打合わせのため
7月3日 別府リハビリテーションセンター出張
開発品モニター試験のため
7月4日 博多出張
九州ヘルスケア産業推進協議会設立総会
7月9日 熊本出張 くまもとバイオメディカル関
連技術・市場調査研究会セミナーにて講演
7月 10 日 福岡県立大学福祉用具体験講座にて「排
泄ケアの最前線」
7月 12 日 FJC協会見学会事業
大分県中津市 いずみの園施設見学
7月 18 日 介護施設訪問
共同研究の準備打ち合わせのため
7月 20 日 看護のキネステティクス®3日目研修会
開催
7月 25 日 福祉用具研究会にて、自動排泄処理装置
の選び方発表
7月 27 日 施設見学 直方市開業医院
7月 29 日 久留米大学出張 医工連携マッチング
セミナー出席
7月 30 日 介護施設訪問
共同研究の準備打ち合わせのため
8
8月
8月2日 本郷先生面談 九州経済産業局との面談
に同席
8月3日 宮若市出張 シンポジスト打合せ
8月6日 東京出張 検証
8月7日 飯塚市出張 シンポジスト打合せ
8月9日 開発相談 熊本企業
8月 12 日 開発相談 大阪企業
8月 13 日 西日本国際福祉機器展打ち合わせ
8月 14 日 飯塚市出張 シンポジスト打合せ
8月 16 日 京都橘大学村田先生と打合せ
坂田副理事長ご母堂様お通夜出席
8月 17 日 葬儀参列
シンポジスト打合せ
8月 18 日 飯塚市出張 飯塚研究開発センター 医
工学連携基礎講座研修会参加
8月 20 日 午前 北九州法務局 定款変更手続き
午後 九州経済産業局 九州ヘルスケア
サービス部会出席
8月 21 日 篠栗町施設訪問
福祉用具研究会
8月 22 日 法務局 定款変更手続き
8月 24 日 FJC協会セミナー
8月 28 日 シンポジスとスライド打合せ
8月 26 日から 27 日 兵庫県西明石出張
自動排泄処理装置説明のため
8月 30 日 篠栗町施設訪問
創立 10 周年配布資料印刷発注
9月
9月 2日 西日本国際福祉機器展セミナー企画書提出
9月3日 介護施設訪問
9月7日 創立 10 周年イベント開催
9月 12 日 北九州市出張 九州栄養福祉大学
開発品打合せ
9月 14 日 開発相談
9月 18 日から 20 日 東京国際福祉機器展出張
9月 27 日 動作介助とポジショニングフォローアッ
プ研修会
9月 28 日から 29 日 動作介助とポジショニング技術
習得コース研修会
【10 月から 12 月まで確定している事業】
10 月 1 日 ささえ 45 号発行
10 月5日 FJC協会施設見学
10 月 10 日企業との打ち合わせ
11 月 19 日ヘルスケアサービス部会
11 月 21 日西日本国際福祉機器展設営
11 月 22 日(金)から
(金)から 24 日(日)西
(日)西日本国際福祉機
器展出展。排泄ケアセミナー&介護技術セミナーを
器展出展。排泄ケアセミナー&介護技術セミナーを
開催。セミナーの詳細はホームページでご覧いただ
開催。セミナーの詳細はホームページでご覧いただ
けます。是非、会場にお越しください。
けます。是非、会場にお越しください。